ユーノ・スクライア外伝   作:重要大事

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第15話「聖王の聖櫃(セイクリッド・アーク)

一か月前―――

尸魂界(ソウル・ソサエティ)

瀞霊廷(せいれいてい) 一番隊 隊首室

 

「失礼致します。総隊長、今お時間宜しいでしょうか?」

 

 戸が開かれると、眼鏡を掛けた理知的な女性の副隊長―――伊勢七緒が、京楽総隊長の元へとやって来た。

 七緒の顔を見た京楽はいつもの飄々とした調子の声で出迎えた。

「やぁ七緒ちゃん。なにもそんな格式ばって改まらなくてもいいのに。ボクと君の仲じゃないか。遠慮せずにボクの胸に飛び込んできてくれてもいいんだよ?」

「総隊長、真面目に聞いてください。現世よりお客様です」

「客? このボクに用がある人間は限られていると思うけど、誰だい?」

 すると、七緒の背後から緑を基調とする和装に身を包んだ細身の人物がおもむろに京楽の前に出る。

「僕ですよ、京楽さん」

 はにかんだ笑みと共にその来客―――ユーノは被っていた帽子を手に取り、京楽へと挨拶をした。

「いやー。これは珍しいお客様だ。ボクになにか御用かなスクライアクン」

 京楽は久方振りにお目にかかる一護の愛弟子であるユーノを快く迎え入れた。

 左目だけとなった京楽の()は眼前のユーノをしかと捕え、手付かずな事務仕事を放り出して、彼の前に出る。

「お久しぶりです。実はちょっと、折り入ってお願いがあって来たんです」

 傍で控えた七緒も実のところ気になった様子で、眼鏡の位置を微調整しながらユーノと京楽の話に耳を(そばだ)てる。

「ん~。内容にもよるけどね・・・・・・君がこのボクに直接会って話があるってことは・・・・・・相当に重要な事なんだろう?」

「ええ。護廷十三隊の今後の活動にとっても非常に重要な事なんです」

「・・・言ってごらん。君にはいろいろと貸しがあるからね。出来る限りの事では協力をしてあげるよ」

 

           ≒

 

 護廷十三隊三番隊隊長・阿散井恋次は、管理局本局と並ぶ機動六課最大支援組織「聖王教会」の教会騎士カリム・グラシアへ謁見の為、はやてとともに教会本部を訪れる事となった。

 

           ≡

 

新暦076年 5月8日

第1管理世界「ミッドチルダ」

ミッドチルダ北部 ベルカ自治領「聖王教会」大聖堂

 

「阿散井恋次さんですね? 初めまして、聖王教会教会騎士カリム・グラシアと申します。本日はお忙しい暇の中のご来訪に感謝いたします」

「前置きはいいさ。それより本題に入ろうぜ。今日俺をここへ呼んだ理由とやらを」

 単刀直入に要件を話すよう所望する恋次。

 カリムは恋次の隣に座るはやてと顔を見合わせ、一瞬考えた末、「そうですね・・・」と口にし、執務室に差す日差しをブラインドで覆ってから本題に入る。

「今回あなたをお招きしたのは他でもありません。是非ともある予言について死神の皆さんにも知っておいて欲しいと思ったからです」

「予言?」

「以前にちらっとお話したと思います。カリムはこれから先の未来に起こる出来事を詩文形式で書き出す稀少スキルを持ってるんです」

 はやての説明の後、カリムは手元にあった羊皮紙を束ねたものを解き、恋次に見せる形で中空に浮遊させた。

「私の能力・・・【予言者の著書(プロフェーティン・シュリフテン)】が書き出したこの世界の行く末を示した予言。今ご覧頂いているのはその原文となります」

 ただでさえ難解な古代ベルカ語で書き綴られた予言。恋次からすれば文字と言うよりミミズがうねった跡にしか思えてならない。

 困惑する恋次を見かねたカリムは、直ぐにこうなる事を予測して、あらかじめ用意していた物を取り出した。

「・・・ここに私や教会の予言解釈担当部署並びに有識者達との間で現代語に翻訳したものがあります。こちらに目を通して頂きけますか」

「お、おぉ・・・」

 それを聞いて少し安堵した。恋次はあのまま訳の分からない文字をずっと見せられるのかとばかり思っていたので、カリムの計らいに正直救われた。

 早速目を通すと、漸く日常会話程度に理解し始めたミッド文字で著された文字をおもむろに目で追った。

「!」

 文章を読んだ直後、恋次の様相が露骨に変化した。

「恋次さん、どないしたんですか?」

「何かありましたか?」

 はやてとカリムは怪訝に見つめながら恋次におもむろに尋ねる。

「なぁ・・・・・・これってホントにお前が予言したものなんだよな?」

「はい・・・・・・そうですが」

 発言の意図がよくわからず、問われた事に訝しむカリム。

 そして、面を喰らっているカリムやはやての前で恋次は驚愕の事実を吐露した。

「・・・・・・俺はミッドチルダ(ここ)に来る前、これと全く同じ内容の予言を尸魂界(ソウル・ソサエティ)で見た事がある」

「「え!?」」

 一瞬聞き違いかと耳を疑った。

 しかし、聞き違いなどではない事がこの後すぐに恋次の口から語られた。

「あれは三か月前―――遠征任務から帰って来てしばらく経った後、俺と吉良は護廷十三隊総隊長より直々の呼び出しを受けた」

 

           ≒

 

三か月前―――

尸魂界(ソウル・ソサエティ)

瀞霊廷(せいれいてい) 一番隊 隊首室

 

「やあ、二人とも、忙しいところ悪かったねえ」

 京楽総隊長が普段と変わらぬ調子で片手を上げて出迎えるを見て、吉良が声をあげた。

「総隊長。三番隊(僕達)だけ呼び出したのは、何か特別な理由でもあるのですか?」

「ああ、まあねえ。ちょっと面倒な事になってきたものでねぇ、どうも」

「面倒な事、ですか?」

「ちょっとこれを見てくれるかい?」

 京楽はそう言うと、懐から一通の便箋を取り出し、二人へと手渡した。

「京楽隊長・・・これは?」

「現世からボク宛てに届いた連名の書簡さ。差出人は“黒崎一護”や“浦原喜助”と言った君らもよく知る者達ばかりだ」

「一護が京楽隊長に手紙を書いたって事ですか?! で、中身は?」

「ん~・・・どうにも奇妙な内容でね。最初は良く分からなかったんだけど・・・・・・あ、君らも読んでみてくれるかい?」

 京楽からの許しを得、二人は渡された手紙を拝見する。

 

『古に忘れ去られし禁忌の宝玉砕かれし時、これから起こる大破壊の幕が上がる。

 新たなる混沌の始まりを告げるは、輪廻の理に外れし死せる者達。

 それを先駆けに欲望の種は数多の海と世界へと伝播す。

 ついに世界の民は灼熱にも似た邪悪なる意志のもとに灰焼きにされよう。

 これを止められし者、すなわち光であり闇である者。

 光であり闇である者、志を同じくする十の戦士達と共に混沌に呑まれんとする世界を救わん』

 

 そこに書かれていたのは、極めて抽象的で解釈のし難い文章だった。恋次と吉良も思わず戸惑いを露わにする。

「あの・・・京楽隊長・・・・・・な、なんすかこれ?」

「何かの比喩の様に思えますが・・・・・・これはもしかすると、予言・・・ですか?」

「ボクも吉良クンと同じ考えに至ったよ。どうやら現世では不穏な種が芽吹き始めている様でね。実際、ここ最近現世で一部の(ホロウ)が突然変異を起こしているという報告が技術開発局から上がってるんだ」

 ふぅー・・・。肩の力を抜くように深く息を吐き出し、京楽は二人の方を見ながら率直な自分の意見を口にする。

「これは、飽く迄ボクの主観でしかないんだけど・・・・・・おそらく、その手紙に書かれてある予言は、ボク達にこう言ってるんじゃないかな。“早いうちに手を打たないと手遅れになる”・・・ってね。でなきゃ、わざわざ一護クン達が連名でボクに手紙なんか出すとは思えないんだ」

「事情はわかりました・・・・・・ですが、なぜ僕たちなんですか?」

「腑に落ちないようだね。まぁ、ムリもないか。本当はルキアちゃんを現世に派遣させようとも思ったけど、大戦以来浮竹の調子がずっと悪いからね、今彼女を瀞霊挺(ここ)から動かすわけにはいかないんだ。そこで、彼女に次いで一護クン達と接触機会が多い君達が適任だと思ったんだよ」

「京楽隊長。俺らは現世で何をすれば?」

「詳しいことはまた追って通達するよ。いずれにせよ、遠征から戻ってきたばかりで悪いんだけど・・・・・・君達にはまた面倒事を押し付ける事になる。今のうちに思い残しが無いようこっちで過ごしておくといい」

 言われた恋次と吉良は、京楽から再び手元にある書簡へと目を移す。

 和紙に書き綴られた奇怪な予言―――それが何を示すものかを、このとき二人は知る由も無かった。

 

 文章の意味を知る事になるのは、ひと月後に下された『魔導虚(ホロウロギア)に関する実態調査』の過程で、ミッドチルダへ向かう事となった後だった。

 

           ◇

 

現在―――

第1管理世界「ミッドチルダ」

ミッドチルダ北部 ベルカ自治領「聖王教会」大聖堂

 

「では・・・私の予言と同じ解釈を示した文書が阿散井さん達の元にも?」

「それも地球からの手紙って・・・・・・どないなっとんねん?!」

「こっちが聞きてぇくらいだよ。ただ、あの後手紙の差出人の欄を思い返してみたんだが・・・・・・何の因果か連名の最後に“翡翠の魔導死神”ってのが書かれてあった」

「翡翠の魔導死神!? ・・・ということは、死神の皆さんに予言を伝えたのは彼なんか・・・?」

 予想外の人物の名が飛び出した、はやてとカリムは相当に驚いたものの、どこか合点が行く名であるとも思った。

「でも・・・やっぱりおかしいわね。この予言は本局上層部並びに機動六課前線メンバー、それに一部の関係者以外には公開していないものです。一体どこで予言内容が漏れたというの?」

「漏れたんじゃなくて、奴自身が同じ事を予言してたとしたら・・・どうだ?」

「「え!」」

 聞き捨てならない恋次の発言に挙って耳を疑う二人。

 恋次は唖然とする彼女達を見ながら、自らの推測を交えた見解を述べる。

「あの男に関して俺らが知っている情報は極めて少ない。だが、これまで数々の危機難題を乗り越えて来られたのもあいつのお陰と言っても過言じゃねえ。ここからは俺の憶測だが・・・・・・翡翠の魔導死神は、これから起こり得る未来を遥か以前に予期し、俺ら死神を焚きつけて魔導師(お前達)とを鉢合わるよう仕組んだんだよ」

 

           *

 

第97管理外世界「地球」

東京都 松前町 スクライア商店

 

「ただーいま―――っ。アイス買ってきたよーン」

 外出先から戻ったユーノは飄々とした口調で戸を開け、留守を預かっていた金太郎に話しかける。

「金太郎・・・白鳥さんの容体は?」

 すると、金太郎は深刻な面持ちでユーノを床の間へと連れて行く。

 静かに戸が開けられたとき、ユーノの目に飛び込んだのは、部屋の真ん中に敷かれた布団で臥位(がい)を決め込んだ白鳥の姿。

 その姿はさながら死に立て直後の人間の様であり、ユーノと金太郎は間近でそれを見ながらぼそっと口にする。

「・・・死んじゃったようだね」

「・・・死にましたな」

「せめて、供養はしっかりしておかないと」

 そう口にして、懐に忍ばせていた数珠をユーノが取り出した直後。

 ばっと、勢いよく布団が捲り上がり、今し方死人呼ばわりされた白鳥が取り乱した様子で起き上がった。

「誰が死んだと!? この私がこの程度の事でくたばると思っているのか!?」

 すると直後、金太郎は無言で包帯が巻かれた白鳥の左腕を軽く突くように触れた。

「だああああああああああ!!!!」

 触れた瞬間に全身を駆け巡る激痛に喘ぐ白鳥。

 再び死人のように布団で寝臥(ねが)を決め込み、半分魂の抜け落ちた彼を見、ユーノはややドライな口調で語る。

「ムリはしないで下さい。たださえ、あなたのなまり切った体を鍛えるのは相当大変なんですから。あなたの覚悟がどれほどのものか―――魔導死神としてどれだけのポテンシャルを秘めているのかも含め、僕がこの四年で実践してきたトレーニングメニューをこなせるかどうかで見極めさせてもらいますよ。ま、温室育ちの白鳥さんにはちょっとキツ過ぎたかもしれませんけど」

 この言い方が気に入らなかった。

 白鳥は(ほとばし)るような全身の痛みを堪え、眉間に皺の寄った発汗が尋常ではない顔つきでユーノの事を睨み付ける。

「舐めるなよ、ぼったくり商店めが・・・私は護廷十三隊一番隊第三席にして・・・創業より二百年を誇る『白鳥重工』が跡取り息子、白鳥礼二であるぞ・・・・・・この私がこの程度の事で根を上げてなどいられぬ・・・!  私は何者にも屈することのない力を必ずや手に入れる。そして、私の大切な者を必ずや守り抜いてみせる・・・!」

「―――その意気と力強い言葉はとても惚れ惚れしますね。では、その意気に免じて次のトレーニングに移りましょうか♪ 金太郎、用意して」

「承知」

 狂気を宿した笑顔で金太郎へと指示を出すユーノ。

 それを見た途端、白鳥は先ほどまでの強きを忽ち失い、別の意味で発汗機能が異常に働いた。

「え・・・・・・ま、待ってくれ! この状態で次のトレーニングなどできるわけが・・・!!」

「さぁ白鳥殿・・・覚悟をお決めくださいませ」

「い、いやだ・・・! (イヤ)だよ!! ひ・・・ひやあああああああああああああああああああああああ!!!」

 

           *

 

第1管理世界「ミッドチルダ」

ミッドチルダ北部 ベルカ自治領「聖王教会」大聖堂

 

 カリムとの会合を終え、恋次とはやてはカリム・グラシアの側近を務めるシスター、シャッハ・ヌエラに連れられ聖堂の外を歩いていた。

「・・・それにしても驚きました。この世界で起こり得る出来事をカリム以外に予言できる者がいたとは」

「俺は予言なんてものは信じねー。何が起こっても全部まとめて解決すりゃいいんだ」

「そやけどほんまに翡翠の魔導死神さんは何者なんや? 恋次さんと同じ死神なら過去に同じ組織に在籍してたいう可能性はないんですか?」

「あいつは護廷十三隊所属の死神じゃねえ。わかってんのは奴は元々魔導師だったが、何らかの理由で死神の力に目覚めたって事だ」

「突発的に死神の力に目覚めた魔導師・・・・・・果たしてそのような事が本当に?」

 俄かには信じられないはやてとシャッハ。

 そんな折、ふと三人の目に奇妙な光景が映った。教会を訪れた信仰心の篤い聖王教の信徒達が挙ってある場所に群がっていたのだ。

「なんだこの人だかりは?」

「あぁ・・・ちょうど三日前、エヴァリーナから秘蔵の聖遺物が届けられたのでそれを一目見ようと集まってるんだと思います」

「エヴァリーナってどこだよ?」

「聖王教会の本山がある第28番の管理世界です。そこのエヴァリーナ教皇庁から期間限定で聖遺物『聖王の聖櫃(セイクリッド・アーク)』が持ち運ばれました」

 どのような物か気になり、恋次達も他の信徒に交じって噂の聖遺物を見学する。

 その聖遺物―――聖王の聖櫃(セイクリッド・アーク)は、古代ベルカ諸王時代の聖王の遺体を安置した棺の事で、細部には豪奢な装飾が施されており、信徒達は熱心に祈りを捧げていた。

「この聖櫃(せいひつ)には今からおよそ800年ほど前、当時の古代ベルカに実在したゼーゲブレヒト王朝の第5代国王、ルイス・ゼーゲブレヒト氏が眠っております。ルイス氏の治世はゼーゲブレヒト朝の最盛期にあたり、特に内政に力を入れた事で長期間の平和を保ち、王国は繁栄を極めました。国内外を問わず、争いを収めるよう努力したため『ベルカの調停者』とも呼ばれ、高潔で敬虔な人格から理想の聖王教王と現在も評価されています」

「へぇー。すごい人やったんですねー」

「よくわかんねーけど、俺にはこの箱が装飾こそ豪華なただの棺桶にしか見えねーよ」

 古代ベルカ時代の魔法を継承するはやては歴史に秘かなロマンを馳せる。

 一方の恋次は古代ベルカの歴史にあまり興味の無い顔つきで、厳重に安置された眼前の聖櫃を凝視する。

 多くの信徒達に見守られる聖遺物。

 しかし、この群衆に混じって悪意ある者の手が秘かに伸びようとしていた事を、このとき誰も気づいていなかった。

 

 その日の夜―――。

 人が居なくなり、静まり返った広大な聖王教会大聖堂を、守衛がいつものように巡回していた時だった。

「ふぁ~・・・。ったく、やっともらった仕事だが、酒でも飲まなきゃやってらんねぇ。だだっ広い聖堂と礼拝堂に修道院。時々どこからか妙な音が響いてくるし、さっさと終わらせて・・・・・・」

 つまらなそうに言いながら、聖堂の中へ入った折、守衛は激甚(げきじん)な状況を目の当たりにした。

「!」

 守衛はしかと見た。血染めの逆五芒星に体と蝋燭を安置させ、頭部を砕かれ無残に殺された神父の変わり果てた姿を―――。

「あ・・・ああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

           ◇

 

 翌日―――。

 聖王教会で起きた凄惨な殺人事件は大々的にテレビ等で報道され、ミッドチルダを始め全世界を震撼させた。

 調査の為に、本局執務官のフェイトとティアナが現地へと向かう事となった。

 

           ≡

 

5月9日―――

ミッドチルダ北部 ベルカ自治領「聖王教会」大聖堂

 

 管理局捜査関係者及び教会騎士団を中心に捜査が進められる中、カリムは凄惨な事件の結果に終始沈痛な面持ちでいた。

「騎士カリム」

 すると、背後から声を掛けられ、振り返るとちょうど現場に到着したフェイトとティアナが歩み寄って来た。

「フェイト執務官。ランスター執務官も」

「この度はご愁傷様です」

「被害に遭われた方の身元を確認したいのですが・・・」

 そう言われた後、カリムは二人を事件現場である聖堂へと誘導する。

 現場検証が今まさに行われている中、二人は被害に遭った教会の神父及び状況を現認。そのあまりの凄絶さに二人は顔を歪め絶句し欠けた。

「ひどすぎる・・・とても人間のやる事とは思えない」

「完全に頭部が砕かれています。状況からして、この石が凶器でしょうか・・・」

 ティアナは血がべっとりと付着した人の頭くらいの大きさの石を見て判断。

 やがて、カリムの口から今回非業の最期を遂げた尊い殉教者の名が語られる。

「・・・殺害されたのはクラウス・ベック神父。この教会で聖遺物を管理する役職に就いていました」

「この紋章は?」

 フェイトが注目したのは、殺害されたクラウス神父の下に描かれた血染めの逆五芒星陣だった。

「五芒星は本来、天との繋がりを示す神聖な象徴です。しかし、それを逆さに描いたこれは地の底との繋がり・・・すなわち悪魔召喚を意味しています」

「悪魔召喚ですか?」

 

 ひと通りの現場検証を終え、フェイトとティアナは遺体を発見した守衛から当時の状況を伺う事にした。

「あなたが第一発見者ですね?」

「はい。守衛のジェームズ・チェスターです」

「遺体発見時、不審な人物を見かけませんでしたか?」

「ええーとその・・・暗闇の中を人影が走って逃げて行きました。フードを被った」

「他には?」

「聖堂の方から物音がして中に入ったら・・・」

「当時、司祭と神父ならびにシスター全員が宿舎にいた事が確認されています。念の為、監視カメラの映像を確認しましたが、敷地内に侵入者は発見できませんでした」

 と、聴取を進めていた時だった。

 執務室の扉が勢いよく開かれ、息を切らし血相を変えたシャッハがカリムへと呼びかけてきた。

「騎士カリム、大変です!」

「どうしたのシャッハ?」

「第2聖堂保管庫に保管されていたはずの聖槍(せいそう)聖王の聖櫃(セイクリッド・アーク)が丸ごと・・・・・・消えています!」

「「「!?」」」

 聞いた瞬間、カリムを始めこの場に居合わせた者全員に衝撃が走った。

 

           *

 

 殺人事件と盗難事件が一度に発生した事を受け、聖王教会と機動六課は合同で二つの事件の解明に乗り出した。

 

           ≡

 

ミッドチルダ中央南駐屯地内A73区画

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 総合司令室

 

「教会の保管庫より紛失した『聖槍』というのは、古代ベルカ時代に初代聖王の脇腹を刺したとされる槍の事だ。世界中の聖王教会各地にこれを模したレプリカがあり、ミッド教会本部に保管されていたのは、99.9パーセントの確率で本物と判定されたものだったそうだ」

「一般公開される事無く長らくホコリを被ってたものが持ち出されたってか。しかも、奇特な事に棺桶の中のミイラごとな」

『こんな事は前代未聞の出来事です。一刻も早く犯人を捕まえ、事件を解決しなければ聖王教会の地位は失墜。人々は信仰の対象を失いかねません』

 聖王教会が直面する一大事。教会の信用失墜とそれがもたらす次元世界への悪影響をカリムは何より危惧していた。

 旧六課時代より聖王教会と密接に関わりあって来た六課メンバーもカリムに共感し忖度(そんたく)する中、恋次がふと今回の件に疑問を呈した。

「つーかよ・・・この事件って俺らと別に関係なくねえのか? 俺らの専門は古代遺物(ロストロギア)“アンゴルモア”、それに魔導虚(ホロウロギア)の筈だ。殺人だの盗難事件なんざ別の担当部署に任せればいいだけのこと・・・・・・「それはあきません!」

 真っ当な恋次の言い分だが、これを快く思わないはやてが口を挟んだ。

「聖王教会は機動六課の最大の支援団体なんです。だからこの事件は何としても私達の手で解決せなあかんのです!」

「で、でもよ・・・犯人の目星も付いてないんだろ? どうやって捜査を広げようって言うんだ?」

「とりあえず、もう一度現場を確認してみたいと思います。何か見落としている重要な手掛かりがあるかもしれません」

「あ、そうだ。どうせなら強力な助っ人の力を借りようよ」

「助っ人?」

 浦太郎の発言に挙って耳を傾ける六課メンバー。

「僕と先輩が今働いてる職場の上司さ。かなりのインテリジェンスでね、難問奇問の一つや二つわけないよ」

 

           *

 

 再度調査の為、教会本部へ向けて移動を開始したフェイト、ティアナ、浦太郎、そして恋次の四人。

 道中、恋次はふと浦太郎を一瞥。隣に座る浦太郎はメールで上司であるユーノへ連絡を取っており、頃合いを見た恋次は念話越しで問いかける。

(さっきユーノに何をメールしてたんだ?)

(聖王教会に古くから伝わる聖槍と聖王ルイス・ゼーゲブレヒトについて、詳しく調べてもらうよう頼んだんです)

(なんでまた、聖遺物なんかについて調べるんだ?)

(聖遺物は聖王教会にとって信仰の対象であるとともに、それ自体が強い力を秘めていたり、ちょっとした曰くつきの代物だったりするんです。列聖(れっせい)されたルイス・ゼーゲブレヒト王だって、多くの書物で“サン=ルイス”と記述のあるほど生粋の聖人だったとされていますが、果たしてそれが本当かどうも眉唾物です)

(俺は正直宗教なんざ肌に合わねえから何とも思っちゃいねーけどよ・・・・・・そんな俺ですら今回の事件に関して、教会事体にきな臭さも感じちゃいるがな)

 などと言っていると、いつの間にか窓の外は突然の豪雨に見舞われていた。

 様相が一変した景色。雷鳴を轟かせる悪天候に恋次は言い知れぬ不穏さを感じ始める。

「嫌な天気だな・・・・・・何かが起こる前兆にならなきゃいいが」

 

           *

 

午後18時過ぎ―――

ミッドチルダ北部 ベルカ自治領「聖王教会」大聖堂

 

 教会へと到着した一行。

 しかし、着いて早々予期せぬ非常事態が彼らを待ち受けていた。

 車から降りた一行の元へ、聖堂より教会に勤める散切りの茶髪に中世的な容姿の元ナンバーズの8番目・オットーと、栗色のストレートヘアの元ナンバーズの12番目・ディードが雨に打たれながら駆け寄ってきた。

「皆さん、すぐに来て下さい!」

「とても恐ろしい・・・恐ろしいことが!」

 

 二人に連れられ教会の宿舎へと向かった時、彼らは惨い光景に出くわした。

「そんな・・・」

「ウソだろ!?」

 昨夜、神父が亡くなったばかりだというのに、今し方一人の神父が縄で拘束され、歯を悉く抜かれて死んでいるという悲惨な状況が目の前に広がっていた。

 しかも最初に殺害されたクラウス神父同様、床には血染めの逆五芒星が描かれていた。

「シスターシャッハ、彼は?」

「フランチェスコ神父・・・! 教会騎士団の副団長です!」

 目の前で惨たらしく変わり果てた騎士団の悲惨すぎる死を前に、シャッハは涙を堪え切れなかった。

「17時以降の外出禁止を徹底していました・・・見回りも数人で行動して、警備も強化していたのに・・・」

 立て続けに二人もの聖職者が殺されると言う常軌を逸した事体に教会関係者は計り知れない恐怖を覚える。

 フェイトは冷静に死体を調べ、死に至った原因を分析する。

「首に絞められた痕がある。恐らく絞殺されたのでしょう・・・その後で、すべての歯を抜かれた」

「恐ろしい・・・一体誰が何のためにこんな惨い事を?」

「悪魔だ・・・この教会に悪魔の下僕が居るんだ!」

「悪魔だと? なにバカみてーな事ヌカして・・・「きゃぁぁぁぁ!!」

 そのとき、部屋の外でディードの悲鳴が響いた。

 慌てて部屋を飛び出し、恋次達が悲鳴を発したディードと近くに群がるシスター達を掻き分け、別の部屋の扉を開ける。

「失礼!」

 中を覗くと、四人の目に入ったのは、眼球を見事に抉り取られた状態で逆五芒星の上に横たわるシスターの姿だった。

「今度はシスターが・・・」

「しかも目玉を抜かれてやがる!」

 気が動転しまいそうな状況が続く。

 改めて殺害されたシャッハと同じ教会騎士団に所属する修道女、シスタードロティアの死因を調べると、フランチェスコ同様首に絞められた痕が残っていた。

「やはり絞殺された痕がありますね・・・でも、一連の殺害方法には何か共通点が見受けられるような・・・・・・」

「“殉教者のステンドグラス”だわ!」

 カリムがハッと思い出し大声で発した。

「ステンドグラス? どういう事だよ?」問いかける恋次。カリムはシャッハとともに詳細な説明をする。

「教会は長らく、殉教者を、神と人間を仲介できる存在・・・聖人と同じ位置づけとして祈りの対象としてきました。ここの聖堂には過去に迫害を受けて死んでいった信徒達を祀ったステンドグラスが飾られているんです」

「最初の殺人・・・石打ちの刑はクラウス神父。全ての歯を抜かれたフランチェスコ神父。そしてシスタードロティアも同様に・・・」

「つまりこれは、過去の殉教者達になぞらえた殺人事件?」

「何故、そんなことを・・・だとしたらこの先も!」

「ええ。ステンドグラスに描かれた数だけ、人が殺される可能性があります。動機や目的は不明ですが、この聖王教会に殺人鬼が徘徊しているのは間違いありません」

「ここは応援を呼びましょう。事は我々だけの手には負えない状況になっています。良いですね、騎士カリム」

「・・・致し方ありません。他の聖職者達にはパニックならないよう、私から説明します」

 

 午後19時を迎えようとしていた折、外からの応援を寄こす事を決断した聖王教会だが、またしても予期せぬ事態に見舞われた。

「そうですか・・・はい。はい・・・わかりました」

 通信を終え、シャッハは深刻そうな表情でカリムやフェイト達に説明する。

「先ほどからの大雨で陸路も空路も、教会への道全てが封鎖されているようです・・・応援部隊も到着までに時間が掛かるとのことです」

「そう。あとは・・・祈るだけね」

「しかしこうしてみると改めて悲しく、寂しいものですね。何しろ一度に三つもの尊い命が・・・」

「翻弄されていやがるな。何もかも、目に見えない力によって」

「手掛かりを探す為にここへ来たっていうのに、この短期間で三人もの犠牲を出す事になるなんて・・・」

 ピピピ・・・。

 早くも出鼻をくじかれ行き詰まりを見せ始めていた砌、浦太郎宛てに外部からの音声通信が届いた。

「店長からだ!」

 浦太郎は空間ディスプレイを開いて音声受信が出来る状態を構築する。

『浦太郎・・・宿題が終わったよ』

「ありがとうございます。で、結果は?」

 変声機を用いて会話を進める浦太郎の上司、もといユーノ。その話に全員が真摯に耳を傾ける。

『教会に保管されている聖槍は、元は聖王家が代々所有してきた神器とされていた。歴代の王達が戦で挙って使用してきたそれは、第5代国王だったルイス・ゼーゲブレヒトが使った時、半径10キロの土地が一瞬で吹っ飛んだという伝承がある曰くつきだ。恐らく犯人はルイスの遺体を盗み出し、何らかの方法で遺体と聖槍をシンクロさせる事で絶大な力を得ようとしているのかもしれない』

「そんな方法が本当にあるんですか?」

『可能性はゼロじゃない。現に、君達は既に霊魂となった人間が怪物となった姿をこの目で目撃している筈だよ』

 その言葉にティアナを始め、誰もが顔を歪める。

 魔導虚(ホロウロギア)事件が起こる以前なら誰も霊魂の存在を真面に取り扱う事は無かっただろう。

 だが、スカリエッティによる干渉を受けた事で、ミッドチルダは嘗てないほど霊的物質が多く集まり、顕著な異変を起こす様になった。

『それと、聖王ルイス・ゼーゲブレヒト個人について、無限書庫で“ベルカの調停者”や“サン=ルイス”などのキーワードで照合したところ・・・その中に他の書籍とは明らかに異質な記録を見つけ出した』

「異質?」

『800年前、当時の教会の司祭が記録したとされる手記だよ。それによると、ルイス・ゼーゲブレヒトは表向きこそ高潔で敬虔な人格者だったとされているが、実際は真逆の残忍かつ極めて猟奇的な性格の野心家で、そして何より悪魔崇拝を好み、何人者の従者をその為の生け贄に捧げていたと記されていた』

「「「「「「え!」」」」」」

『手記にはさらにこう書かれていた。“ルイス国王は病的なまでの破壊願望の持ち主で、破壊こそが快楽であり、至福であるという歪んだ嗜好を兼ね備えていた”・・・と。事態を重く見た教会は、北方の王と結託して、その邪悪な魂を抑え込み柩へと封印した・・・』

「ちょっと待ってください! その話が本当ならば・・・教会そのものが清貧を重んじてきた聖徒達を今の今まで欺いていたという事になります!」

 突き付けられた驚愕の事実を受容し難い教会関係者。

 列聖されるには余りにも残酷すぎるルイス王の所業を聞かされ、シャッハは周章狼狽し、画面向こう側のユーノへと問いかける。

『誠に残念ですが・・・そういう事になりますね。歴史を知るという事は必ずしも光だけを抽出するという訳ではない。隠されていた真実を解き明かす際、時として目も当てられぬ残酷な結果に出くわす事もある。それでも人は自分達が積み重ねてきた歴史の事実から目を背けてはならないんだ』

 聞いた直後、シャッハを始めカリムも声を詰まらせた。

 長年、考古学者として歴史を観察・熟考する立場にあるユーノだからこそ重みのある持論だと浦太郎は思った。

 やがて通信が切れると、ティアナは自分達だけでは手に入れられない情報を容易に提供した浦太郎の上司に疑問を呈する。

「何者なんですか? 浦太郎さんの上司の方は・・・・・・無限書庫にアクセスできる人間など管理局員か、それこそ司書資格を持つごく限られた者だけですし」

「まぁ細かい事は良いじゃない。それより―――」

 見事に話をスルーし、浦太郎は想像を遥かに絶する史実にショックを隠し切れない様子のカリム達を懸念。

 見かねたフェイトがおもむろに近づき、二人の事を気遣った。

「お二人とも、大丈夫ですか?」

「すみません。とてもじゃありませんが、些か信じ難く困惑しています」

「今日はもう休まれませんか? どの道この天気では応援部隊が到着するのは最低でも明日の朝になります」

「・・・・・・そうですね。では、宿舎へご案内いたします」

 

 午後23時13分―――。

 教会の宿舎で一夜を過ごす事になった恋次は、得にする事も無く、あてがわれたベッドで爆睡を決め込んでいた。

「恋次さん、起きてください・・・」

 しかし、寝入ってから数時間と立たないうち、恋次は唐突に浦太郎によって覚醒を促された。

「・・・なんだよー? もう朝メシの時間か?」

「そうじゃなくて。変なんですよ」

「変って何がだよ・・・」

「さっき水を飲みに行ったんですけど、宿舎に僕ら以外の人の気配を感じないんです。それだけじゃないんです。聖堂にも礼拝堂にも、どこを見ても人が居ないんです!」

「なんだと?」

 話を告げられるや、恋次の脳は即座に覚醒した。

 部屋を出た二人は別の宿舎で同様に異変を察したフェイトとティアナと連絡を取り合い、宿舎の外で落ち合う事にした。

 雨は激しさを増しており、四人は傘を差しながら忽然と姿を消した聖職者を捜索するが、依然として発見できず時間ばかりが過ぎて行った。

「騎士カリムともシスターシャッハとも連絡がつきません。なんだか・・・嫌な予感がします」

「殺戮が繰り返される理由・・・それに、消えた人たちはどこに行ったのか」

 袋小路に迷い込んだ今、四人が縋るのは一つしかなかった。

 誰もいない聖堂へ赴き、恋次と浦太郎を除く二人はステンドグラスに描かれた殉教者、そして聖王教会の信仰の最たる象徴―――初代聖王を模したブロンズ像に祈祷する。

「やれやれ・・・こんな時に神頼みとはな。神なら目の前にいるじぇねーか」

「恋次さんの場合は神って言うよりただのゴロツキにしか見えませんけど」

「ぶっ飛ばされてーか出歯亀!」

 信仰心の薄い二人が不毛な口論を勃発させようとした矢先、不意にティアナがある事に気づいた。

「フェイトさん、この台座に描かれてある天使、何だか他のものとは様子が異なります」

 言いながら、聖王像足下にある台座へと近づくティアナ。

 フェイトもこの目で確認すると、台座に描かれた天使のタイルはその見た目には不釣り合いな髑髏を大事そうに包容していたのだ。

「もしかしたら・・・・・・」

 何かあるに違いない。そう思って、恐る恐る台座のタイルを手で押してみた。

 すると、フェイトの予想通り鍵の役割を果たす目的のタイルが凹み、仕掛けられていたカラクリが作動。

 四人は目の前で起こる事象に度肝を抜いた。鍵の作動に伴い、台座はゆっくりと左へとずれ、その下に隠されていた地下への道を作り出す。

「聖堂の下に隠し部屋への通路が・・・!」

「どうやら僕たちは地獄への入り口を見つけてしまったようだね」

 

 聖堂地下に封印されていた秘密の通路を発見した四人は、消えた聖職者達の手掛かりを追って広大な地下空間へと潜入した。

「こんなに広い地下空間が隠されていたのか・・・」

「どうやら大昔の戦争時に避難民を収容していた地下壕痕みたいですね」

「しかし、ここにも誰もいないようですが・・・」

 と、そのとき―――。地下の奥から奇妙な叫び声のような物音が聞こえてきた。

「なにかしら?」

「どうやら奥になにかありそうだな」

 事件の手掛かりが掴めるかもと藁にも縋る思いで奥へと向かう。

 奥にはより開けた空間が形成されていた。反響し木霊する数十の人の声。恐る恐る恋次達が顔を覗かせたとき、そこには異様な光景が広がっていた。

「―――今一度問う。この私は誰だっ!!」

「貴方様は主の使い。地上の王国を築かれる御方です!」

「そうだ! 私は主の使い!」

 避難時にも祈りを捧げられるようにと古の時代に造られた地下礼拝堂。そこに集まった失踪した神父及び修道女達。

 フェイトが確認すると、多くの聖職者に混じってカリムやシャッハらがおり、聖職者の殆ど全員が眼前にて仰々しいまでに指導者を装う一人の若い神父を崇めていた。

「あれは・・・一体何を?」

「なんか目が完全にイっちまってるぜあいつ。さっきから訳わかんねぇ事ばっかし言ってやがる」

 恋次だけではない。フェイトもティアナも、浦太郎にも狂気を宿した表情を浮かべるその神父の立ち振る舞い事体が異様に思えてならない。

「ここに在られるのは誰だ!」

「「「「「我々の主であります!」」」」」

「私は誰だ!」

「「「「「貴方様は主の使い。新たな地上の王国を築かれる御方です!」」」」」

「では! この御方は!」

 声高に問う神父が指差す者を見、恋次達は目を見開いた。

 そこには教会から盗み出され、行方の分からくなっていた聖遺物―――『聖王の聖櫃(セイクリッド・アーク)』に眠りし王、ルイス・ゼーゲブレヒトがミイラ化した姿で横たわっていた。

「消えた筈の聖王の聖櫃(セイクリッド・アーク)・・・!」

「神聖にして、崇高なるもの・・・」

「店長曰くルイスは北方の王の手によって封印された。その後聖王教の汚点を拭うかのように教会の根回しで聖櫃はエヴァリーナへと持ち出された」

「あの男から言い知れぬ霊圧を感じる。もしかすると封印されていたルイスの魂があの男に乗り移ったのか?」

「つまり、今目の前にいる神父は現代に蘇ったルイス・ゼーゲブレヒトそのもの!」

「しかも本性は史実とは真逆のトチ狂った男と来た。こりゃ明らかにマズイ状況になってきたぜ」

 悪魔崇拝に傾倒した狂気を内包した王・・・いや、狂気という悪魔そのものである王が現代へと蘇った―――考えただけでも背筋が凍りそうだった。

「今一度問う! 私は誰だ!」

「「「「「貴方様は主の使い。地上の王国を築かれる御方です!」」」」」

「そうだ! この地上に再び強いゼーゲブレヒト帝国を取り戻す!」

 高らかに宣言する王の言葉に、マインドコントロールを受けた聖職者達が口を揃えて賛美の言葉を発する。

「どいつもこいつも狂ってやがる!」

「みんな魔法で催眠状態にあるんです」

 と、そのとき。四人が身を潜めていた事に気付いていた聖王ルイスが支配下にある聖職者達へ厳命を下した。

「では生贄として、そこに管理局からの使者が居る。捕えて神に捧げよ!」

「バレたか」

「急いで退散しましょう!」

 大急ぎで元来た道を戻る恋次達。

 しかし、地下豪を出たとき、聖堂には既に催眠状態に陥った聖職者達が挙って彼らを待ち構えていた。

「「「「「イーブメン・・・イーブメン・・・イーブメン・・・」」」」」

 不気味な言霊を唱える彼らはさながら生気を無くした死人のようだった。

 当惑する四人は止む無く地下へ戻ろうとするが、背後からはカリムやシャッハなどの顔見知りが近づいてきた。

「騎士カリム・・・! シスターシャッハ!」

「「イーブメン・・・イーブメン・・・」」

「僕達・・・囲まれた?」

「「「イーブメン・・・イーブメン・・・イーブメン・・・」」」

 挟み撃ちにされ逃げ場をなくし欠けたそのとき―――

「縛道の二十一、『赤煙遁(せきえんとん)』!」

 恋次が状況を打開する為の鬼道を発動した。

 詠唱破棄で床に手を手を突いた途端、霊圧が変化した赤い爆煙が発生し、視界はたちまち封じられた。

「今のうちだ!」

 そう思って脱出を図ろうとした矢先、地下から勢いよく何かの影が飛び出した。

「はははははは!!!」

 飛び出て来たのは同じく教会から盗み出された聖遺物『聖槍』を手にした聖王ルイスの魂が憑依した神父だった。

 狂った笑みを浮かべながら聖槍で恋次を串刺しにしようとする。咄嗟に恋次は斬魄刀で槍の一撃を押さえつける事なきを得た。

「殺せ! 八つ裂きにするのだぁぁぁ!!」

 すると、ボーっという鈍い音が教会のあちこちから響き渡る。

 この音とともに、イーブメンという単語を口々に唱え、ぞろぞろと洗脳された教会関係者が集まってきた。

「この音で洗脳されているようですね」

「目を覚ましてください! この男は主の使いなんかじゃありません!」

「無駄だ。今のこいつらに俺たちの言葉は通じねえ。かくなる上は・・・・・・」

 恋次は斬魄刀を眼前に見据えた標的―――ルイス・ゼーゲブレヒトの魂を憑依させた神父へと突き立て宣戦布告。

「てめえを斬って連中の目を覚まさせてやる!!」

「おもしろい。我に歯向かう者は何人たりとも生かして帰さぬ!! うおおおおおおおおおおお」

 咆哮をあげた直後、邪悪なる魂は依り代としていた若き神父の肉体から離れ、今迄集めた生命エネルギーと依り代とした神父の生命エネルギーを食らって実体化する。

「そろそろ頃合いね・・・」

 さらに、秘かに事の成り行きを傍観していた機人四天王ウーノの手により、幼生虚(ラーバ・ホロウ)が投下された。

 これにより、聖王ルイス・ゼーゲブレヒトは生前の巨大な魔力と幼生虚(ラーバ・ホロウ)から得た霊力を得て、邪神を彷彿とせせる姿の魔導虚(ホロウロギア)・フルーフケーニヒへと変貌を遂げる。

『ははははははは!!! 死の苦痛を骨の髄まで味わうがいい!!!』

 再び聖槍を手にして恵まれた魔力が生み出す破壊の一撃を放つ。

 史実に増して強力な攻撃を回避し、恋次達は教会の破壊行為と信徒達の命すらも何とも思わない狂気の塊と化した地上最悪の敵への対処に四苦八苦した。

「咆えろ、蛇尾丸!!」

 始解した恋次は蛇尾丸の刀身を伸ばして攻撃を仕掛ける。

 しかし、フルーフケーニヒの魔力を帯びた外装は蛇尾丸の刃をまるで受け付けず、容易に弾き返した。

「ならば―――卍解!! 狒狒王蛇尾丸!!」

 手加減できる相手ではないと判断した恋次は、中空で浮遊する敵と正面から向き合い、霊圧を研ぎ澄ましながら攻撃の機会を伺った。

 

 その頃、六課への応援要請を済ませたフェイト達は、地上にて洗脳を受けたシャッハ達の相手をするのに苦慮していた。

「シスターシャッハ! みなさん、どうか正気に戻ってください!」

 必死に呼びかけを繰り返すフェイト。ティアナも同様に呼びかけるが、教会騎士団は完全な操り人形と化し、聞く耳を持たなかった。

「二人とも無駄だよ。アイツが死なない限り元には戻らないよ」

「ですが・・・・・・」

 浦太郎の言葉は至極正しいものの、ティアナは頭上にて戦う恋次の戦況があまり芳しくない事を危惧していた。

 

「はっ、はっ、はっ、はぁっ」

 魔導虚(ホロウロギア)と化した聖王ルイスと対峙する恋次は力の差を見せつけられた。

 激しい霊圧の消費によって肩で息をする恋次を余所に、フルーフケーニヒは余裕綽々と血の付いた聖槍を手にしている。

 恋次はこの状況を非常に悔しく思い、疲弊した身でありながらも己の意地を貫こうと懸命に攻撃を続行する。

「おおおおおおおお」

 蛇の頭部と化した巨大な刀身を目の前の標的へと伸ばす。

 フルーフケーニヒは不敵に笑みを浮かべ、聖槍で向かって来る蛇尾丸を軽々と受け止める。そして軽い力で蛇尾丸を弾き反らす。

「!」

 呆気にとられる恋次だったが、次の瞬間、間合へ入り込んだフルーフケーニヒの聖槍が恋次の体を斬り裂いた。

「くそッ!!」

 斬られた箇所から血が吹き出す。苦痛に顔を歪める恋次を見ながら、フルーフケーニヒは狂気を宿した顔で嘲弄(ちょうろう)する。

『・・・ク・・・ははははははははははははは。そんなものか!! 貴様の力と言うのは!! もっと苦痛を味わせてやろう!! 極上にして凶悪なまでのな!!』

 言うと、手持ちの聖槍を恋次へと突き付け、フルーフケーニヒは先端から魔力と霊力を圧縮した巨大な火球を勢いよく放つ。

「狒骨大砲!」

 火球を相殺させる為、恋次も大技で対抗。辛うじてこれを退ける。

『ではこれならどうだ!』

 すると、今度は聖槍の先端から無数の緑色の光を放った。

 しかもその矛先は恋次ではなく、眼下のフェイト達へと向けられた。

「逃げろ!!」

 慌ててフェイト達に身の危険を知らせるが、それよりも先に破滅の光は地上へと降り注ぎ三人を直撃した。

「「「うわあああああ」」」

 恋次の目の前で大ダメージを負う仲間達。恋次はあまりにも下衆なフルーフケーニヒのやり方に堪忍袋の緒が切れた。

「このカスヤロウぉぉぉ!!」

 怒髪天を突く恋次の一撃が繰り出される。

 だが、フルーフケーニヒは瞬時に攻撃を回避して恋次の懐に槍を向ける。

 咄嗟に恋次は向かって来る槍撃を狒狒王蛇尾丸の骨であり刃でもある部位で受け止めるが、敵は終始余裕の笑みを浮かべていた。

『―――それで・・・我を止めたつもりか?』

 直後、亀裂の入った刃が突き砕かれ、恋次の腹は聖槍によって射抜かれた。

「・・・が・・・ッ」

 槍の一撃はとても強烈だった。

 ただでさえ少なっている血を一度に持っていかれ、さらには内臓のいくつかは破裂。恋次は戦う余力さえ残されぬほどに追いつめられた。

『ははははははははは!!! 最後に! 我が名を教えてやろう!! 我はゼーゲブレヒト朝第5代国王ルイス・ゼーゲブレヒト!!! この地に再び我が帝国を築き上げるのだ!!!』

 声高らかに自らの存在を尊大に誇示する相手を険しい表情で見据える恋次。

 射抜かれた箇所から噴き出る血の流出を残った霊力で抑えつつ、恋次は眼下の大地で大きなダメージを追って倒れるフェイト達を見下ろした。

(このままじゃ全滅だ・・・・・・・・・・・くっそ。こっちは卍解してんだぞ。なのにこの差はなんだよ・・・・・・)

 絶体絶命の窮地に立たされた。この戦略差を覆す方法はあるにはあるが、それを用いる為の承認許可が今は無い。

(チキショウ・・・ここまでなのかよ・・・!?)

 万策尽きた。歯がゆさを抱えて拳を強く握りしめた、そのとき―――。

 

 ―――おやおや? 恋次さんったら、ずいぶん手酷くやられてるじゃないですか?

「!」

 ―――やれやれ、やっぱり様子を見に来て正解でしたね。

(ゆ・・・ゆーの・・・・・・か?)

 恋次に向けて念話で話しかけてくるユーノの声がはっきりと脳内で(こだま)する。

 ―――あ、もしかして実は「死神」っていうのは死を司る神の事じゃなくて、神ワザみたいに死にまくるって意味だったんですか?

(て、てめえ・・・この状況で何言ってやがるんだよ? つまんねえジョーダン言うだけなら引っ込んでろモヤシ眼鏡!)

 ―――酷い言われ様だな。せっかく京楽さんに掛け合って、恋次さんの“限定解除”許可を出してもらったのに。

(なに・・・・・・!)

 ―――そんな風に言われるなら僕も考えを改めないといけませんかね~。

(ま、待ってくれ!! 今の話本当なのか!?)

 ―――この状況で嘘ついても仕方のない事です。

 ―――もう安心して下さい。今すぐ枷を外してあげます。

 念話越しに語りかけた後、別所で戦況を観察していたユーノは、口角を緩めてから手持ちのリモコン型装置で恋次の限定解除を承認する。

 

「―――阿散井恋次、能力限定解除」

 

 スイッチを押すと同時に、恋次の胸に刻印された椿を模した隊章に封印された巨大な霊圧が一気に解放された。

 溢れ出た霊力は巨大な光柱となり、応援の為に現地へと向かっていたなのは達の目にもはっきりと視認できた。

「な・・・なにあれ!?」

「教会の方からだ!」

「この霊圧・・・・・・まさか・・・・・・!!」

 事の次第に気付いた吉良は驚愕の表情を浮かべ、急いで現地へと向かう。

 

 一方、フルーフケーニヒ自身も恋次の急激な力の上昇に気付いた様子だった。

『なんだ? 急にあの男の力がハネ上がった・・・』

 ドンッ―――。

 刹那、フルーフケーニヒは左腕に違和感を覚える。恐る恐る確かめると、そこにあるはずの腕が見事に捥ぎ取られ無くなっていた。

『・・・な・・・・・・何だと・・・・・・!?』

 事態の把握もままならぬ中、前方にある霊圧の光柱から恋次が姿を現した。

『!』

 フルーフケーニヒは眼前の敵を前に唖然とした。今の今まで圧倒的な力で甚振って来た相手の傷が綺麗に塞がり、何事も無かった様子でケロッとした表情の恋次が目の前に立っていたのだ。

「ふぅー。ったく・・・あいつの言葉はどこまでが本当で嘘なのかまるでわからねえ。だが、お前が助けてくれなかったら今ごろ俺は死体に殺された死神っていう汚名を着る事になっちまってたぜ」

『馬鹿な・・・貴様はさっきまで満身創痍だったはずだ! どうやって傷を塞いだ!?』

「てめえに教える義理はねえ。さーて・・・・・・こっからが本番だぜ!!」

 言うや、恋次は全身に滾る力を憚る事無く解放し、標的・フルーフケーニヒへの反撃を開始した。

 

 同じ頃―――。

 フェイト達を救出したなのは達は、上空で凄まじい力でぶつかり合い、敵を追い詰める恋次の並外れた力を目の当たりにした。

「あれって恋次さんの卍解だよね?」

「けどあいつの力・・・前にあたしらと模擬戦した時とは比べ物にならないくらいデカくなってやがる!?」

 すると、ヴィータの疑問に答える形で吉良が説明する。

「―――“限定解除”したのさ」

「限定解除!?」

「死神にもあたしらと同じものがあるのかよ?」

「・・・確かに、僕ら死神と君ら管理局の魔導師は同じ概念を持っているのかもしれない。だが、死神の限定解除は君らが思ってる限定解除とは根本的に意味合いが異なる」

「どういう事ですか?」

「魔導師における能力限定が“各部隊が保有できる最大魔導師ランクの調整”を目的としているのに対し、護廷十三隊の隊長・副隊長クラスの死神は現世の霊なるものに不要な影響を及ぼさない為に、それぞれの隊章を模した限定霊印を体の一部に打ち付ける。そうする事で霊圧を極端に制限されるんだ」

「極端って・・・どれくらい?」

「個人の霊圧の度合いにもよるが、総じて限定率は80パーセントと定められている」

「は、80パーセント!?」

「てことはつまり・・・」

 呆気にとられるなのはとヴィータを余所に、吉良は全ての力を解放して戦う恋次を見ながら、誇らしげな表情で言う。

「今の阿散井くんの霊圧は今迄の――――――5倍さ」

 

『ぐあああああああ』

 今迄とは比肩にならない力によって、フルーフケーニヒは圧倒されていた。

 主力武器である聖槍は使い物にならなくなり、残り魔力と霊力も殆ど残らぬほど形勢は逆転した。

「終わりだぜ。ルイス・ゼーゲブレヒト。死人はおとなしくあの世でお寝んねしてな」

『クソッ!!』

 状況が不利と見るや、躊躇いなく敵前逃亡を試みる。

「誰が逃がすかよ」

 恋次は逃げるフルーフケーニヒを努々逃がすつもりなどない。

 敵に背を見せて逃げるという致命的なミスを犯した相手に狙いを定め、恋次は最大霊力でもって攻撃する。

「オロチ王奥義!!  蜿蜒長蛇!!」

『う・・・うわああああああああああああああああ』

 熱破壊能力を秘めた巨大な砲弾と化した蛇尾丸が無慈悲に獲物を捕らえる。

 死神・阿散井恋次の手にかかって、聖王史上最も邪悪で凶悪な者の魂は残滓すら残らぬ形で浄化された。

 

           *

 

尸魂界(ソウル・ソサエティ)

瀞霊廷(せいれいてい) 一番隊 隊首室

 

「七緒ちゃん。たった四年の間に彼・・・・・・スクライアクンは随分と成長したと思わないかい?」

 しみじみと呟くように語る京楽の言葉に、七緒は聞き役に徹した。

「初めてここへ来た時、まだ死神の力のこともよくわからないヨチヨチ歩きのヒヨッコでしかなかった彼が・・・・・・いつの間にか総隊長であるボクを目前にしても物怖じしないどころか、駆け引きを仕掛けてくるようになったんだ」

 数年ばかり顔を合わせぬうちに信じ難い速さと期間で成長を遂げたユーノに、京楽は驚きを通り越して呆れ、あるいは恐怖さえ感じていた。

「やれやれ・・・・・・一護クンもとんだ食えない男を弟子に持ったもんだよ。できれば彼を敵に回すのだけはしたくないね・・・・・・」

 

「何しろ今のスクライアクンは―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

参照・参考文献

原作:久保帯人 『BLEACH 22、24巻』 (集英社・2006)

原作:久保帯人 著者:成田良悟『BLEACH Can't Fear Your Own World 1』 (集英社・2017)

 

用語解説

※列聖=死者を聖人に加えること。

 

 

 

 

 

 

教えて、ユーノ先生!

 

ユ「今日は聖王教会についてだ♪」

「聖王教会は、次元世界最大規模を誇る宗教だ。原典で初登場したのは『StrikerS』からになるけど、本作中では少し話を広げて脚色し、厚みを加えている」

「聖王教が信仰の対象としているのは宗教そのものを教え広めた初代聖王。そしてその傍に仕えた者や殉教者達、あるいは聖遺物などが当たる」

「他の宗教よりも寛大で厳格な教義が少ないという点でたちまち広がり、今ではその信徒の数は億単位に上る」

 と、ここで恋次が今回の限定解除についてユーノへ質問する。

恋「ところでおまえ・・・どうやって京楽隊長から限定解除許可出してもらったんだ?」

ユ「あ、やっぱり気になりますか?」

恋「あたりめーだろうが! 一般人のくせして総隊長に謁見するだけでもすげーことなのに、限定解除許可を出すなんて異常だろうが!」

ユ「でも京楽さん、案外あっさりOKしてくれましたよ。何しろ僕が持ってきた清酒で一晩語り合ったら上機嫌で承諾してくれましたから♪」

 話を聞いた瞬間、恋次は一組織を取りまとめる長たる者の言動とは思えぬものの、京楽なら決してあり得なくはない事態に絶句した。

恋(京楽隊長・・・!! あんたそれで本当に良いのかよ・・・!!)

 

 

 

魔導師図鑑ハイパー!

 

 今明かされる、魔導死神・白鳥礼二の修行の模様―――

白「いやだぁぁぁ!!! もうこれ以上はやりたくな~~~い!!!」

金「踏ん張りどころですぞ白鳥殿」

 金太郎の補助を受けながら、腕立て伏せ・状態起こし・スクワットを各1000回ずつ、そしてランニング40キロを毎日やらされていた。

 しかし、これは飽く迄も基礎トレーニング過ぎない。

 これらをこなした後、白鳥はスクライア商店の地下で厳しい戦闘訓練を行うのだ。

白「ふぎゃあああああああああああああ!!!」

 金太郎の大技が炸裂し、白鳥は呆気なく吹っ飛ばされる。

金「まだまだこんなものではありませんぞ。私の全力をもって白鳥殿・・・あなたを心身ともに鍛えさせていただきます」

白「もういい・・・もう強くなりたいとか言わないから・・・・・・早く私を解放してくれ!!」

金「ならば至極単純。私を倒してみて下され」

白「ムリー!! ゴールデンベアーを倒すなどどうかして・・・・・・あ・・・・・・あああああああああああああああああ!!!」

 ユーノと一護が静かに見守る中、金太郎指導の下、白鳥は着実に成長を遂げて・・・いるのかは本人次第だが、とにかく頑張っていた。

一「なぁ。ちょっとやり過ぎじゃねえのか?」

ユ「その言葉、そっくりそのまま返しますよ」




次回予告

織「ある夜空を覆った不思議なオーロラ。そのオーロラを見た者は死ぬまで眠り続けるという。そしてなんと、なのはさんまでもがその犠牲者に」
一「ユーノはなのはの夢の世界に飛び込む決意を固める。果たして未知なる世界で待ち受ける敵の正体はなんだ?」
ユ「次回、ユーノ・スクライア外伝・・・『眠れる夢の乙女』。なのは、君は必ず僕が助けるから」






登場人物
ルイス・ゼーゲブレヒト
声:島﨑信長
古代ベルカに存在したゼーゲブレヒト朝の第5代の国王で、800年前に即位した聖王。
その治世はゼーゲブレヒト朝の最盛期にあたり、死後、聖王教会より列聖され、ここから、Saint-Louis(サン=ルイス)と呼ばれるようになった。内政に力を入れ長期の平和を保ったため、彼の治世の間、王国は繁栄した。国内外を問わず、争いを収めるよう努力した事から「ベルカの調停者」と呼ばれ、高潔で敬虔な人格から理想の聖王教王と評価されている。
その本性は残忍かつ極めて猟奇的な性格の野心家。生前は悪魔崇拝に傾倒し、多くの従者を生け贄に捧げた。また、病的な程の破壊願望の持ち主であり、破壊こそが快楽であり、至福であるという歪んだ嗜好を兼ね備えていた。こうした性格ゆえに事態を重く見た教会は北方の国の王を借りてルイスを聖櫃に封印した事が、ユーノによって無限書庫から発掘された当時の資料によって判明した。
聖王の聖櫃の中で実態を持たない霊魂の姿で長らく眠っていたが、ウーノの手によって復活し、教会の若い神父の体を乗っ取り、現代に再びゼーゲブレヒト帝国を復活させるという目的を果す為に聖王教会で暗躍を開始。騎士団の副団長や強い魔力を持つ聖職者を次々と手に掛け、催眠魔法によって聖職者全員の精神を乗っ取り手中に収める。
モデルは、フランス王国カペー朝第9代の国王「ルイ9世」から。



登場魔導虚
フルーフケーニヒ
声:島﨑信長
かつて古代ベルカに存在したゼーゲブレヒト朝の第5代の国王だったルイス・ゼーゲブレヒトの魂が幼生虚の力を取り込んで誕生した魔導虚。
邪神を彷彿とさせる姿をしており、主力武器である聖槍を用いた物理攻撃や魔力付加攻撃を得意とする。作中では巨大な火球を放つ「ヘルズマグナ」、無数の光を雨のように降らせる「デスレイン」を使用した。
狒狒王蛇尾丸の攻撃すらも防ぐ強力な防御力を有し、多彩で強力な攻撃で恋次や機動六課の魔導師達を翻弄し、圧倒的な力の差を見せる。しかし、限定解除をした恋次の『蜿蜒長蛇』により戦死した。
名前の由来は、ドイツ語で「呪い」と「王」を意味する単語「Fluch」と「König」から。
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