新暦076年 5月13日
第1管理世界「ミッドチルダ」
ミッドチルダ南部 魔法大演芸ホール
依然としてミッドチルダは
この日も、一体の
『ふふはははははは。愚民者よ。仮面の呪縛を受けるがよい』
呪術師を彷彿とさせる外見の
「うわあああ!」
「きゃ!」
「なんだこれ!?」
呪術的な力を内包した仮面が装着された途端、人々は豹変し、たちまち凶暴化する。
気が狂ったように手当たり次第に暴れ回り、周りの物を破壊衝動のまま次々と壊し始めた。全てはカースドキュラの描いたシナリオ通りだ。
『はははははは。いいぞ、もっと暴れろ。己の欲望のままに!!』
「そうはさせない!」
すると、
カースドキュラは、大挙して自分と対峙する眼前の敵を仮面越しに見つめながら、胸の高鳴りを覚える。
『ほう・・・噂に名高い魔導と死神の混成部隊のお出ましか』
「てめえ! 街の連中に何をしやがった!?」
『ふはははははは。我が力は仮面を身に付けた相手を意のままに操ること。その呪いを今直ぐ貴様達にも分けてやろう』
宣言するや、中空に複数の仮面を召喚。それらを目の前の標的である六課メンバーへと無作為に飛ばした。
「「きゃ!」」
「「うわああ」」
ティアナと吉良、エリオ、キャロへ強引に装着された呪いの仮面。
刹那、瞳部分から鋭い爪を持つ腕を生やした仮面を身に着けた吉良とキャロは奇声を発し、近くにいた仲間へ有無を言わさず襲い掛かった。
「危ない!」
斬魄刀で斬りかかって来た吉良の斬撃を躱し、更にはキャロによって操られるフリードの火炎攻撃が容赦なく襲来。
全員人が違った様に凶暴さ剥き出しとなった二人に戸惑いを抱く。
「おい! てめぇらいきなりなにしやがる!」
「キャロ! 吉良さんも一体どうしたんですか!?」
「あの仮面だよ! あの仮面に操られてるんだ!」
吉良達の顔に纏わり付く仮面を見て、豹変した理由を看破する浦太郎。
「「ぐあああああ・・・・・・」」
二人だけが仮面の呪いを受けている訳ではない。
至るところ釘が打ち込まれ、額に日本語で“呪”と刻印された痛々しい仮面を装着したティアナとエリオは、終始苦しみ喘ぎながら地に横たわっていた。
「ティア!! しっかりして!!」
「エリオ君もしっかり!!」
スバルとギンガが声をかけるも、周りの呼びかけすらも応じられない強い呪いをその身に受ける二人は終始苦痛の叫喚をあげ続ける。
『ふはははは。見たか、我が仮面の力を。“凶暴化の仮面”は装着した者の精神を凶暴化させる。“
「だったら! あなたを倒せば四人を救えるはず!」
仮面の呪いの元凶が
無数の魔力スフィアを召喚し一斉射撃状態を形成。カースドキュラへと攻撃を繰り出そうとする。
「アクセルシューター・・・!」
『そうはいかん! これでも喰らうがよい!』
なのはの高い魔力を脅威と感じ取った途端、カースドキュラが新たな仮面を召喚―――なのはの顔へ装備させる。
「きゃ!!」
「なのは!!」
ムンクが描いた某有名絵画の登場人物を連想させるような仮面を身に付けた直後より、なのはの魔力は仮面へと吸収され、魔力スフィアは自然消滅する。
『“魔力吸収の仮面”。これでお前の魔力を根こそぎ吸い取ってやる』
「ううぅ・・・ああああああ・・・・・・!!」
仮面の呪いによって際限なく吸収され続ける魔力。なのはは真綿で首を絞められるかの如く、じわじわと己の力を奪われ、反撃の機会を逸した。
「テメー!! 卍解ッ!!」
業腹な状況に恋次の堪忍袋の緒が切れた。卍解を発動させると、躊躇なくカースドキュラへ目掛けて狒骨大砲を放った。
『“鉄壁の仮面”!!』
飛んでくるレーザー砲の直撃を受け止める為、カースドキュラは正面に金属質で両手を差し出したような形の仮面を召喚。恋次の攻撃を完全に防いだ。
『身の程知らずが! 貴様にはこれをくれてやる! “弱体化の仮面”!!』
「弱体化!?」
危険なワードを耳にし、驚愕と不安を露わにする恋次。
カースドキュラによって新たに召喚された、翁の顔を思わせる額に“弱”と刻印された仮面。
次の瞬間、飛んできた仮面は恋次本人ではなく狒狒王蛇尾丸の体へと装着された。その効果によって狒狒王の力が見る見る弱まり、悲鳴のような声を発した直後、青菜に塩を振った様にクタっとなった。
「な・・・・・・・・・・・・に・・・・・・・・・!?」
『ふはははは。我が仮面の力に敵は無し!! さぁ、仮面の宴を愉しもうぞ!!』
甲高く笑い、魔力と霊力を練り上げ仮面を身に付けた者達へと念を強く送る。
カースドキュラによって凶暴化の仮面を装着され、念を送られた人々は一様に破壊活動を停止し、一箇所に呼び寄せられる。
そして、彼らはカースドキュラの意志に従い標的を機動六課メンバーへと見定め、大挙として押し寄せた。
一般市民が牙を剥いて襲い掛かる。仮面の呪いを受けず、正気を保っていた残りのメンバーはゾンビの如くどっと群がり、数の暴力と凶暴さを増した人々の攻撃に険しい表情を浮かべる。
「や、やめろーテメーら!」
「これじゃあ攻撃できない!!」
「一般市民相手を傷つけずに奴を倒す方法はないか!?」
「有るならとっくにやってるって!!」
『手も足も出せまい。そこで指を咥えて見てるがいい。この世界が仮面によって侵略される様をな!!』
高らかに勝利宣言をするカースドキュラに六課メンバーは打つ手無し。
機動六課隊舎で現場の映像をモニターしていたはやて達も極めて困難な状況を見ながら、起死回生の策を講じるのに必死だった。
「八神司令!!」
「はやてちゃん、どうしましょう!?」
「く・・・・・・。この状況を打開する方法は無いんか!?」
万事休す―――そう思われたとき、それは突如として起こった。
「毎度ッ! そば処閻魔、ご注文の品です!!」
あまりにも唐突だった。素っ頓狂な言葉が聞こえ振り返ると、日本古来の蕎麦屋と思しき格好をした男性が自転車を勢いよく漕ぎながら
『なんだ? 出前など頼んだ覚えはない!』
当然の反応を示すカースドキュラだったが、相手はそんな返答など聞いていない様子で真っ直ぐ突進し、躊躇無く自転車をぶつけ敵を吹っ飛ばした。
『ぐあああ・・・貴様、何をするのだ?!』
訳の分からない事態にカースドキュラは怒髪天を突く。
「おりゃああ!」
抗議をした直後、自転車を降りた蕎麦屋は威勢のいい声を出しながらキレのある格闘技を用いて攻撃を繰り出した。
「わたぁー!」
すると、蕎麦屋は戸惑いを露わにする彼らの方へ振り返り、不敵な笑みを浮かべる。
「お待たせしたぜ、ボーイズ&ガール達!」
「おまえいったい・・・」
「見ればわかるだろ。ただの通りすがりの蕎麦屋さ。Don’t you believe me?」
『貴様・・・・・・ふざけるなっ!』
蕎麦屋の態度にカースドキュラは激昂した。
「・・・ならば仕方がない。Attention please.」
目の前の敵を見据えた後、蕎麦屋は丼の蓋を開け、その中から刀の柄を引っ張り出した。
取り出されたのは一本の直刀であり、その形状に見覚えのある恋次達は挙って目を見開き驚愕した。
「あの刀は・・・!」
「まさか!」
「あいつが!?」
周りの反応を見つつ、口角をあげた蕎麦屋は手にした斬魄刀・晩翠を天高く掲げ、威勢のいい声で唱える。
「
特殊な解号とともに蕎麦屋の周りを黒い霧が包み込む。やがて、瞬く間に【翡翠の魔導死神】へと変身を遂げた。
「翡翠の魔導死神さんですー!」
「なんと・・・しかし、こんな登場の仕方があっていいのか?」
「とりあえずクロノくんは黙っといてくれるか」
登場の仕方に文句をつけるクロノを黙らせ、はやてはモニター画面を注視―――駆けつけた翡翠の魔導死神の戦いを静観する。
『貴様も仮面の呪いを受けろ―――!』
あらゆる呪いを込めた仮面と言う仮面を召喚。標的・翡翠の魔導死神へと放つカースドキュラ。
しかし、翡翠の魔導死神は飛んでくる仮面をひとつ残らず晩翠で斬り捨てる。
『このおぉぉぉ!!』
気に食わないカースドキュラは、手持ちの仮面から幾重もの破壊光線を放つ。翡翠の魔導死神は特に慌てず瞬歩で華麗に避ける。
すると、凶暴化の仮面を身に付けた吉良を始めとする人々が、翡翠の魔導死神の背後から一遍に襲い掛かった。
「レストリクトロック」
あらかじめ攻撃の手を読んでいた翡翠の魔導死神は、範囲対象にある全ての相手を光の輪で拘束する集束系の上位バインド系捕縛魔法「レストリクトロック」を発動。仮面を装着した相手を根こそぎ一網打尽とする。
『おのれええええ!!』
独壇場を妨げる翡翠の魔導死神の存在は目障りでしかなかった。カースドキュラは手当たり次第に仮面を出し、その目から破壊光線を乱射する。
「―――テストゥド―――」
対する翡翠の魔導死神は、己へと向けられる攻撃を多重移動防壁魔法「テストゥド」で一手に受け止めた。
質量体の運動ベクトルの逆転、電磁波や音波の屈折、分子の振動数を設定値に合わせる、マギオンの侵入を阻止するなど、様々な用途に富んだ障壁を不規則な順番で切り替えながら絶え間なく展開・更新し続ける事で壁は無敵の強度を誇る。カースドキュラの攻撃はこの障壁の前では全く意味を為さない。
やがて、射程こそ短いものの対物非透過の性質を持ったその障壁を正面に見据えたカースドキュラ目掛けて高速で叩きつける。
『のおおおおおお!!』
魔力密集度が非常に高く、機甲兵器すら軽々と押し潰す破壊力を秘めた障壁を叩きつけられ、カースドキュラは一瞬だが動く事すら出来なくなった。
「座興は
静かに呟いた直後、翡翠の魔導死神とカースドキュラの身の回りの景色だけが暗黒によって包み込まれた。
『な、なんだこれは!? 何も見えんぞ!!』
唐突に訪れた闇の世界。先ほどまで感じていた敵の霊圧すら感じ取れない状況に言い知れぬ畏怖を抱いた、次の瞬間―――
「―――
刹那に体を貫く感触を一度に何度も味わった。
やがて、闇が晴れるとともにカースドキュラは力の全てを失って倒れていた。
カースドキュラが倒された直後、人々に取り付いていた仮面が効力を失い砕け散る。操られ呪いに蝕まれていた人々が全員正気に戻った。
刀を納め、翡翠の魔導死神は
おもむろに後ろへと振り返り、正気を取り戻したなのは達を見ながら声をかける。
「翡翠の魔導死神はいつも君達の傍にいる。君達の未来に幸あれ――――――」
そう言い残し、静かに立ち去ろうとした矢先。
「翡翠の魔導死神さん!」
唐突に引き止めるなのはの声。翡翠の魔導死神は背を向けたまま立ち止まった。
「・・・最後にひとつだけ聞かせもらってもいいですか? あなたは・・・・・・ユーノ・スクライアという男性について何か知っていませんか?」
恐る恐る問いかけるなのは。周りも固唾を飲んで見守った。
「あぁ。知ってる―――」
「じゃあ!! 今どこにいるかわかりますか!?」
すると、長い沈黙ののちに翡翠の魔導死神は閉ざしていた口を開き答えた。
「死んだ」
「え・・・・・・・・・・・・」
「君の知ってるユーノ・スクライアは、死んだよ」
聞いた瞬間、なのはは目の前の景色が真っ暗になり、到底受け入れ難い事実に対し全思考が凍りついた。
*
午後18時23分―――
ミッドチルダ中央南駐屯地内A73区画
機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 部隊長室
「報告は以上です」
「ご苦労様です。テスタロッサ・ハラオウン執務官」
はやてが不備が無いことを確認し、「ほんなら今日はこれであがってもええよ」と、笑みを浮かべた直後、フェイトは言うかどうか迷った末におもむろに問いかける。
「はやて・・・昼間の翡翠の魔導死神さんの話だけど・・・・・・どう思う?」
すると、先ほどまで朗らかな笑みを浮かべていたはやても表情を一変。重く険しいものへと変わり、眉間に皺を寄せながら両手を組んだ。
「ユーノくんが死んだ・・・・・・か。どうにも私らには実感の湧かん言葉に思えてならへん。せやけど、たとえ冗談でもなのはちゃんにはダメージが大きかったようやな」
「なのは・・・・・・」
この場にはいない親友の精神的な心の傷を懸念し、今の自分では何も力になれないもどかしい現実にフェイトは苛立ちを募らせた。
*
同時刻―――
ミッド住宅街 高町家
戦いの後、先に自宅へと戻ったなのはは自室へと閉じこもっていた。
一人ベッドの中にうずくまり、翡翠の魔導死神から聞かされた言葉がただただ信じられず、精神の動揺は最高潮に達していた。
『あなたは・・・・・・ユーノ・スクライアという男性について何か知っていませんか?』
『死んだ』
『君の知ってるユーノ・スクライアは、死んだよ』
「ウソだ・・・ウソだ・・・ウソだ、ウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだ。ユーノ君が死ぬだなんて絶対ウソ!! ユーノ君・・・・・・ウソだって言ってよ!!」
何度も何度も翡翠の魔導死神の言葉を否定し、震える声をあげながら、止めどなく漏れ出る涙を枕へと流す。
このとき、ヴィヴィオは部屋の隙間からレイジングハートやクリスと一緒になのはの容体を心配していた。
〈Master・・・・・・〉
「ママ・・・・・・」
かつて絶望を希望へと変え、幸せな人生を与えてくれた命の恩人であり、エース・オブ・エースと呼ばれる母のこんなにも弱り切った姿を見るのは初めてだった。
(こんなとき・・・・・・わたしはどうすればママを励ましてあげられるかな・・・・・・・・・)
ヴィヴィオは深い悲しみと悔しさを宿した表情で見つめながら、自分では母を慰める事すらできない歯がゆい状況を酷く呪った。
*
ジェイル・スカリエッティ 地下アジト
機人四天王の一人、トーレによって誕生した
その失態をスカリエッティは狂気の宿った笑みを浮かべながら糾弾する。
「トーレ、
「申し訳ありません。ドクターの期待に答えるどころか、またしてもこのような醜態を晒す結果に・・・・・・」
トーレらしからぬ失態に本人が一番羞恥する。
そんな折、側で話を聞いていたファイが見下した様子でトーレに問いかけた。
「トーレ。貴様、ザックームのあの一件以来ずいぶんと弛んでいるんじゃないのか? だから今回の様に結果が伴わないのだ」
「なんだと!? そう言う貴様こそどうなのだファイ! 貴様とて大した成果をあげていないではないか!」
「止しなさいトーレ。ドクターのご面前よ」
「ほーら。トーレ姉様も少し落ち着きませんとよ」
ウーノとクアットロに窘められ、ファイへの苛立ちは完全に鎮まらないもののトーレは隠忍自重する事にした。
「ふむ。ではここは私が君たちへひとつ面白い趣向を見せてあげるとしよう」
「おもしろい趣向・・・ですか?」
スカリエッティから飛び出した言葉はいつも特別な意味を含んでいた。
四人が怪訝する様を見つめながら、狂気の科学者は終始不気味な笑みを浮かべていた。
「ふふふ・・・・・・・・・きっと君達も気に入ってくれると思うよ。」
◇
5月14日―――
機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 第1オフィス
夜が明け、朝が来た。
オフィスでデスクワークに励む職員の中で唯一なのははずっと上の空だった。
ユーノの死という自分の中では最も非現実的で衝撃的な話を信じられないという思いから昨夜は一睡も出来ず、目の下にはくっきりとした隈が出来ている。
そんななのはを気にして、愛弟子のスバルを始め、フォワードメンバーの大半が声をかけ体調を気遣った。
「なのはさん・・・どこか具合でも悪いんですか?」
「目の下に隈ができてますよ?」
「え。あぁ・・・うんうん。なんでもないよ。ただちょっと寝不足気味で」
「睡眠不足は体に毒ですよ。ただでさえ、なのはさんは日頃からがんばり過ぎていますから」
「にゃはは。それを言われるとさすがにショックかも・・・・・・。そうだね、今日は帰ったらいつもよりも熱めのお風呂に入って早めに寝るようにするね」
ゴーン・・・。ゴーン・・・。
「あ、ちょうどお昼のチャイムが鳴ったね。みんなで食堂に行こうか」
このとき、明らかになのはは無理をしていた。
浦太郎はそれを看破し、空元気を振りまき気丈を振る舞う彼女を気にしていた。
*
正午過ぎ―――
同隊舎内 食堂ホール
「あん! ・・・・・・ん~~~!!! やっぱここの店のプリンは超絶ウメーぜ!!」
わざわざ地球から取り寄せた高級プリンに舌鼓する鬼太郎の顔が一気に綻んだ。
二十代も後半に差し掛かりながら、どこか子供染みた嗜好を持つ鬼太郎を周りは素直にかわいいと思った。
「鬼太郎さん、ほんとにプリンがお好きなんですね」
「ちょっと子供っぽいところがなんともかわいいですよね」
「あぁ!? おいエリオ・・・てめぇ誰が子供っぽいだと!!」
エリオの失言を鬼太郎は努々聞き逃さなかった。怒りの矛先を向けられたエリオは慌てて弁明する。
「す、すみません!! 決して鬼太郎さんの事を子供っぽいとか幼稚だなーと言ったつもりは無くてですね!」
「今言ってんじゃねぇかよ!! “現在進行形”でなぁ!!」
墓穴を掘って、理不尽な言葉と物理的な暴力に晒されるエリオは終始四面楚歌だった。
吉良や恋次がエリオを気の毒と思う一方、二人の視線は同じテーブルに付いているなのはへと向けられる。
なのはは先ほどからあまり食事に手を付けていない。明らかに気分は沈んでおり、終始顔色は悲しみを内包していた。
恋次と吉良は互いに顔を見合わせると、彼女の事を気に掛け声をかける。
「スバル達から寝不足と聞いたけど、大丈夫なのかい?」
「え? いえ・・・大したことじゃないですよ。単に寝苦しくて寝付けないだけですから!」
慌てて取り繕う様子のなのは。その様が益々不安でいたたまれなかった。
「オメーも見かけによらず疲れてんじゃねえのか。疲れたときは甘いものが一番だぜ」
「そうだ。これなのはちゃんにあげるよ」
すると、近くのテーブルに座っていた浦太郎が嗜好品であるハーゲンダッツの一つをおもむろに差し出した。
「浦太郎さん・・・でもこれは」
思わず面を食らうなのはだったが、浦太郎は気にするなと言わんばかりに柔らかい笑みを向けて来た。
「僕が良いって言ってるんだ。たまには贅沢しないとね♪」
「・・・・・・ありがとうございます。じゃあ、遠慮なくいただきます」
仲間に気遣われ、少しずつだがなのはの顔に笑顔が戻り始める。
ようやく彼女らしくなってきたと周りもほっとしたのも束の間。信じ難いニュースが唐突に飛び込んだ。
『―――次のニュースです。第145観測指定世界にて遺跡発掘の調査を行っていた【スクライア族】の集落が、跡形も無く焼き尽くされ、現場からは白骨化した遺体が数十体見つかった事が管理局の調査で判明いたしました』
「え・・・・・・。」
『調査担当員によれば遺体は少なくとも死後四年近くは経過しているものと見られ、現時点で生存者確認は出来ておりません。スクライア族は同時期から行方を眩ませており、管理局も調査団を派遣して捜索に当たっていましたが、今回の発見によりスクライア族はほぼ全滅したものと見られています。また、スクライア族出身で若き考古学者として名を馳せ、四年前から行方不明となっているユーノ・スクライア氏の身元の特定についても急ぎ確認をしております』
「ユーノ君が・・・・・・ユーノ君が・・・・・・」
翡翠の魔導死神からもたらされた情報、今し方飛び込んだニュースの相乗効果によって、落ち着きを取り戻し始めたなのはの精神は再び動揺する。
アイスを食べていたスプーンを床に落とした次の瞬間、目の前が暗くなったなのはは、そのまま気を失い椅子から倒れ落ちた。
「なのは!!」
「なのはさん!!」
フェイト達が慌ててなのはへと駆け寄る。彼女はそのまま医務室へと運び込まれた。
*
同隊舎内 医務室
シャマルによって入念に診察を受けた結果、なのはは軽い貧血と診断された。
「うん・・・脳波はまったく異常無し。ほんとに軽い貧血みたいね」
「すみませんシャマル先生。ご心配おかけしました」
「いいのよ。私は医者だから、患者さんの健康を診るのが仕事。なのはちゃんみたいな聞き分けの悪いひどい患者さんには特に目を光らせないとね」
「うぅぅ・・・」
11歳の時の事故以来、なのははシャマルには全く頭が上がらない。健康診断の度、彼女からはたびたび厳しい指摘を受けると、なのははぐうの音も出せなくなる。
「とりあえず何も無くてよかったわ。次からは気を付けるようにね」
「はい・・・・・・」
真摯に主治医の言葉を耳に入れつつ、なのはは意味が無いと知りつつ、シャマルに例の話を持ち出した。
「シャマル先生・・・・・・ユーノ君、本当に死んでしまったんでしょうか」
聞いた瞬間、カルテを書いていたシャマルは一瞬手を止めたが、やがて即座に彼女の不安を払拭しようとした。
「・・・・・・バカね。あのユーノ君がなのはちゃんを残して一人で死ぬわけないじゃない」
「でもさっきニュースでスクライア族はほぼ全滅って!」
「だからといって、=ユーノ君の死、となるわけじゃないでしょ?」
「だけどわたし、翡翠の魔導死神さんに聞いたんです。ユーノ君のことを・・・そしたら彼は言ったんです。“君の知ってるユーノ・スクライアという男は死んだ”って。わたし・・・・・・それを聞いて頭がまっ白になって・・・あれ以来ちっとも眠れなくて・・・・・・」
震える声で言いながら、なのはは首からぶら下げていたロケットを強く握りしめる。
相当にこえた様子のなのはは見ていて痛々しかった。シャマルは何とか彼女を元気づけようとする。
「た、たちの悪い冗談よ! 根も葉もない事を信じる必要は無いわ。もう~、翡翠の魔導死神さんも人が悪いにもほどがあるわね」
「本当に冗談ならいいんですけど・・・・・・どうにもあの言葉がすごく真実味を帯びてて怖いんです。なぜだかわからないんですけど、翡翠の魔導死神さんからは逆らえない何かを感じるんです」
「なのはちゃん・・・・・・」
恋次達以外、未だ翡翠の魔導死神の正体に気付いていない。
確たる証拠も無ければ、実際にユーノの死体を確認した訳でもない。だけどなのはの言う事もまた一理あると感じているのも事実だった。
ふうと溜息を突いた後、シャマルはなのはに早期療養を求める。
「・・・事実が本当かどうかは別として、今はまず自分の体を労わらなきゃ。今日はもう仕事を終えて、真っ直ぐ帰宅すること。疲れが溜まってるのよ。あ、言っとくけどこれは医者としての正式なドクターストップですからね」
「はい・・・・・・わかりました」
釘を刺された事でなのはは大人しく早退届を提出し、いつもよりも早い時間に隊舎を後にした。
シャマルは一人医務室でコーヒーを飲むかたわら、なのは以上に頻繁に医局を訪れていたユーノの事を思い出しながら、おもむろに呟く。
「今のなのはちゃんに最も効く薬は他でもないあなたなのに・・・・・・ユーノ君・・・・・・あなたは一体どこで何をしているの? もしも私たちの知らないところで死んでしまったのなら、化けてでもいいからちゃんとなのはちゃんの前に出て来なさいよ」
*
午後17時05分―――
ミッド住宅街 高町家
「ただいまー。」
「あ、おかえりママー! 今日はいつもよりも早かったんだね」
家に帰るなり、真っ先にヴィヴィオが笑顔でなのはを出迎えてくれた。
「ただいまヴィヴィオ。今日は早上がりにしてもらったんだ」
「そうなんだ。それより体はだいじょうぶ? 朝行くときは具合悪そうだったよね?」
「へーきだよ。それよりおなかすいたでしょ? すぐにお夕飯作るから」
「あ、それならだいじょうぶ。もう作ってあるから!」
「え? もしかしてヴィヴィオが・・・?」
「その通り!! ・・・と言いたいところだけど、わたしは手伝っただけ。作ってくれたのは・・・」
なのはの手を引いてリビングへと足を運ぶヴィヴィオ。
すると、なのはの目に飛び込んだのはキッチンで料理をしていたエプロン姿の浦太郎だった。
「いやー。おかえり」
「浦太郎さん!? どうしてここに・・・?」
「はやてちゃんに頼まれたんだよ。“自分もフェイトちゃんも仕事で隊舎を離れられないから、なのはちゃんのお世話をしてほしい”って」
「で。浦太郎さんがなのはママが元気になるようにって栄養満点の料理を作ってくれたんだよ! もちろん、わたしもがんばって手伝ったんだ」
「さぁ、早く座って食べよう」
「ありがとうございます。浦太郎さん・・・ヴィヴィオもありがとう」
自分の為にここまで尽くしてくれる仲間や家族が近くに居る事が本当に幸せだと実感した瞬間だった。
この恩はいつか返さなければならない―――そう思いながら、なのはは浦太郎とヴィヴィオが作った夕食を頂くことにした。
夕食を食べ終えたなのはとヴィヴィオは、六課隊舎へと戻る浦太郎を出送る為、玄関の外に立った。
「今日は本当にありがとうございました」
「またいつでも遊びに来てくださいね!」
「僕にできることがあったら何でも相談してよ♪ あと、あんまり辛いなら絶対に無理はしない事だよ」
「はい。肝に銘じます」
車のエンジンをかけ、ギアを入れようとした直後。浦太郎は真顔でなのはに言い残す。
「それと―――君が心の底から求め続ける限り、君の幼馴染は必ず戻ってくる」
「!」
「僕はそう信じるよ」
優しい笑顔で呼びかけ、浦太郎は車を発進させ高町家を後にした。
浦太郎からの心遣いになのはは深く感謝し双眸には涙を溜める。走る去る浦太郎の車を眼で追いながら、最後に深々と頭を下げた。
首都高を走るかたわら、浦太郎は映像通信でユーノと連絡を取っていた。
『どうしたんだい? お前から連絡して来るなんて』
「店長・・・なんであのとき、なのはちゃんにあんな事言っちゃったんですか?」
『・・・なんだ。お前も失言だったんじゃないかと非難するのか。ついさっき恋次さんから “女を泣かす男は最低の屑野郎”だって・・・・・めちゃめちゃ言われたばかりで、結構凹んでるだよ』
「こればっかりは恋次さんの言う通りです。店長に弁明の余地はないですよ」
普段は従業員を嗜める側のユーノが自身の失言を逆に糾弾されている。このときばかりはユーノもぐうの音が出ずにいた。
「今のなのはちゃんは心の底から店長を求めてる。いい加減仮面なんか付けずに腹をくくって出てきたらいいんじゃないですか。もう四年も経つんだ・・・・・・そろそろ踏ん切りが付いてもいい頃だと思うな僕は」
『踏ん切りか・・・・・・だったら尚更、なのはは僕なんかの影を求めちゃいけないんだ。彼女のこれからの人生に僕はとりたてて必要は無いよ』
なのは絡みの話になった途端に自己評価が一段と低くなるのが、ユーノの昔から変わる事の無い悪い癖だった。
断片的に過去に二人の間に何が起こったのかは知っている浦太郎だが、第三者の視点から見てもその縺れ具合は見ていて実にむず痒い。現に今こうして話している間にも自嘲的な笑みを向けるユーノは、正直見ていて心地の良いものではなかった。
浦太郎はどこか悲しそうに互いを求め合いながら擦れ違い続けるユーノとなのはの関係を悲嘆し、溜息を突く。
「・・・・・・自分は必要ない・・・か。それを決めるのは店長じゃ無くて、なのはちゃんの方だと思うけどな」
*
午後10時55分―――
ミッド住宅街 高町家
就寝間際、なのはは縁側でひとり座りながら今宵の月を眺めていた。
「今日は下弦の月・・・・・・そう言えばユーノ君と一緒にお月見をした時も、今日と同じ月だったなー」
鮮明に蘇る幼き頃の思い出。だが不思議と、大人になってからの思い出らしい思い出が殆どない事になのはは今になって気付いた。
自分達の進路がはっきりと別れて以来、なのはは戦いの道を突き進み、ユーノは情報部門のトップとしてそれぞれの持ち場で成果を上げて来た。
それでもなのははユーノとは肝胆相照らす仲だと信じ続けてきた。だが、それこそ自惚れ以外の何物でもなかった。
おもむろに首にぶら下げていたロケットを開く。中に収められたユーノの写真は笑っているが、どこか作った様に不自然だった。
なのはは作った様に笑うユーノの笑顔は正直好きじゃなかった。だが、探し出した数少ない写真の中で唯一のスマイルショットだった。
今一度なのはは冷静になって思案する。翡翠の魔導死神の言葉にどれほどの真実味があったのか。
逡巡した末、なのははユーノが死んでいないという可能性に賭け、前向きに捕え直す事にした。
「うん・・・・・・だいじょうぶ。ユーノ君はきっと生きてる! だってユーノ君、ああ見えてアウトドア派だし、いざってときは自分の身くらい守れるもん!」
そう言いつつもどこか不安が拭えない。同時にユーノの事を考えれば考えるほど、彼に会いたいという気持ちが急速に膨れ上がってきた。
「でも・・・・・・やっぱりそばにいて欲しい・・・・・・ユーノ君・・・・・・・会いたいよ・・・・・・」
切実なる乙女の願い。
そしてその願いを口に唱えた直後、なのはの目に不思議な光景が飛び込んだ。
ふと空を見れば、季節はずれ―――もといミッドの中央では観測される事の無い七色に輝くオーロラらしき光のカーテンが目に映った。
「え」
幻想的な光景に目を奪われるなのはだったが、やがてオーロラは一瞬にしてその姿を消し去った。
「なに・・・・・・いまの?」
あまりにも儚い出来事に不思議がるなのは。
その後、唐突に催した強烈な眠気に誘われた彼女は寝室へと戻り、重力に任せてベッドへと倒れ込んだ。
「なんか・・・・・・すっごく・・・・・・ねむ、い・・・・・・」
目を瞑った途端、なのははたちまち深い眠りに落ちた。
だが、この眠りから自力で覚める事が如何に困難な事なのか―――それを身を持って味わうのであった。
『・・・・・・あれ?』
気が付くと、なのはは見知らぬ場所に一人立ち尽くしていた。
よく見るとそこは日本の昔ながらの風景で、軒並み飲食店が立ち並んだ商店街の様な場所だった。
『どこだろう、ここ?』
おそらく、自分が夢を見ているのだろうと言うことは薄々気づいていたが、妙に臨場感があり、懐かしさの様なものを感じて止まない。
『って、私なんでこんな格好してるの?!』
周りの景色ばかりに気を取られていて気付かなかったが、なのは自身も浴衣という出で立ちをしており、その脈絡の無さに疑問符を浮かべる。
すると、そのとき―――前方から浴衣を着こんだ小さな少女がこちらへと走って来るのが目に入った。
『え!』
目の前から走ってくる少女を見るや、なのはは目を見開いた。
紛れも無くそれは幼少期の頃の自分だった。外観からして5、6歳前後の少女は、なのはの前を通り過ぎると、一度立ち止まってから振り返り、怪訝そうに問いかける。
『どうしたの?』
『あの・・・もしかして?』
『お祭りはじまってるよ!』
言うと、小さななのはは満面の笑みを浮かべ、元気よく走り出して行った。
『待って!』
自分を追って慣れない下駄で走るなのはが角に差し掛かったとき、ある不思議な生物と邂逅した。
おとぎ話に出て来そうな愛らしい姿をしたヒツジが目の前に現れたのだった。
『ヒツジ・・・・・・?』
◇
5月15日―――
機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 医務室
「ママ! ママってば!」
午後6時過ぎ―――。
ヴィヴィオが必死に枕元で呼びかけるも、なのはは一向に目を覚まさない。仲間達もこの事態に不安を拭い切れなかった。
「発見されてからもう10時間は経つな」
「仮に11時に寝たとしたら、18時間以上眠ってる事になります」
「シャマル、どうなのだ?」
「医学的にはね・・・
「チクショー! どうして目を覚まさないんだよ!? 原因はなんなんだよ!!」
「落ち着けヴィータ。お前が叫んだところでなのはは目を覚まさん」
「けどよ!!」
眠ってからなのはは一度も目を覚まさない。
おとぎ話ならば、王子のキスで目覚めるところだが、そんな非科学的な話で解決できるほど簡単な事ではない。
「ちょっと・・・見てもらいたいものがあるの」
すると、シャマルはおもむろに皆にそう言い、眠っているなのはの右の上瞼を少しだけ開いて見せた。
全員が覗き込むと、なのはの瞳はピクピクと、左右水平方向に眼振しているのが見て取れた。
「眼球が運動してる?」
「そうなの」
「おい、これがどうだって言うんだよ? 眼球が動いてたらなんなんだよ!?」
「眼球運動? まさか・・・・・・レム睡眠ってこと!?」
吃驚した浦太郎がその事に気づくと、シャマルは首肯してから一つの事実を告げた。
「なのはちゃんは、
「なんやて!?」
「まさか・・・そんな!」
驚愕の事実に驚く面々。
「な・・・なんなんだよ。そのレム睡眠っつーのは・・・?」
一方、恋次は聞き慣れない単語に加えて皆が驚いている理由がイマイチ解らず困惑するばかりだった
「睡眠には『レム睡眠』と『ノンレム睡眠』というのがあって、ノンレム睡眠は脳が休眠して体が動いてる状態。逆に体が休んでて脳が覚醒している状態のレム睡眠のときに夢を見ると言われてるんです。本来は周期的にレム睡眠とノンレム睡眠の状態がやってくるはずなんですが、なのはちゃんの場合は初めて脳波を調べたときからもう8時間・・・レム睡眠の状態が続いているんです」
「じゃあ・・・ママはずっと夢を見続けている?」
生理学的にはあり得ない時間を費やしレム睡眠の元に夢を見続けるなのはを、全員で怪訝そうに見つめた。
同じ頃、街でもなのは同様に謎のオーロラを目撃した者が多数現れ始めた。
「おい! あれなんだ?」
「あ、今変なのが・・・」
オーロラを目撃する者とそうでない者が疎らに出始めるも、この後に起こる症状は一様にして同じだった。
目撃した直後に強烈な睡魔に襲われ、やがて糸が切れたように倒れ込み、人々は深い眠りへと誘われた。
「どうしたんですか!?」
「どうしたの!? しっかりして!!」
*
ジェイル・スカリエッティ 地下アジト
オーロラを目撃した者が次々と眠りに落ちる―――この不可解な現象に深く関与していたのは、スカリエッティ一派だった。
機人四天王はスカリエッティ自らが演出した催しによって巻き起こるトラブルを映像越しに見ながら、スカリエッティに真意を問う。
「ドクターの言っていた面白い趣向とはこの事ですか?」
「夢へと誘う
「すばらしいアイディアですわ~! さすがはドクター~! 惚れ惚れします~」
「ふふふ。人が見る夢は実に興味深いものだ。私は是非とも知りたいのだよ。眠っている最中に人間などんなことを考えているのか。これはその為の臨床実験でもあるのだよ。ふはははははははは・・・・・・」
*
機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 総合司令室
街で起きた異変はリンディ・ハラオウンを通してすぐさま機動六課へと報告された。
『なのはさんと同様の症状で今迄に35人の患者が病院に収容されたようよ』
「一体どうして?」
『原因はまだ・・・ただ、倒れた人が直前にオーロラのようなものを見たという証言を多数聞いているわ』
「オーロラ?」
夢とオーロラの因果関係がまるでわからない六課メンバー。
と、そこへかなり大がかりな機械を持って技術顧問のマリエル・アテンザが現れた。
「お待たせ! みんな、秘密兵器を持って来たわ!」
「秘密兵器?」
マリエルは医務室で寝ているなのはを運び出すと、持ってきた秘密兵器を寝ているなのはの枕元に覆い被せるように置いた。
「セッティング完了っと!」
「マリーさん、なんですかこのヘンテコな機械は?」
「
「ヘンテコな機械でもいかがわしい発明でもありません! これは私の長年の研究の成果である装置・・・その名も『ドリームシアター』!」
「ドリーム・・・」
「シアター・・・?」
居合わせた者全員が、マリーの持ち込んだ謎の装置の名前を聞いた直後に互いの顔を見合わせた。
「この機械はね、睡眠中に発せられる脳波をキャッチして、それを映像としてモニターに再生させる事ができる装置なの」
「つまり・・・今、ママが見ている夢を見れるという事ですか?」
「簡単に言えばそういう事。本当は夢を見るだけじゃなくて、見た夢を録画できるところまで行きたかったんだけど・・・さすがに開発予算と現代の魔法科学力の限界という壁にぶち当たったねー。もしも仮にアニュラス・ジェイドに協力をしてもらえたら、結果は違って来たのでしょうけど」
「なんでもいいけどよ。とにかく早いところ使ってみせてくれ」
不安は拭い切れないが、藁にも縋る思いでこの装置に賭ける事にした。
マリエルは微調整を繰り返し、全ての準備が万端整ったのを確認してから、意を決して装置を起動させる。
「いきます―――」
起動した途端、なのはの枕元を覆うように置かれた装置が淡い光を放ち始めた。
全員がメインモニターへ注目すると、見えてきたのは全く鮮明ではない砂嵐ばかりが流れる映像だった。
「何が何だかさっぱりわからねえな。これじゃ壊れたテレビと一緒だぜ」
「おい、ほんとにこの装置信用できるのかよ?」
「失礼ですね。ちゃんとした機械なんですってば!」
「あっ。なんか見えてきましたよ!」
ドリームシアターの機能に疑いを持った直後、ぼんやりとだがスクリーンに映像が浮かび上がってきた。
全員が注視すると、映されたのはピンクを基調とするおとぎ話に登場しそうなヒツジの様な生き物だった
「なに? 動物・・・?」
「これは・・・ヒツジかしら?」
「やはりそうだったのね」
なのはが見ている夢に出てくるヒツジを見た直後、マリエルは確信した様子で皆に説明した。
「今まで8名の患者で調査してみたところ、全員がこのヒツジの夢を見ていたの。つまり、なのはちゃん達はヒツジによって眠らされている可能性が高いの」
「そのヒツジは、なのはちゃんの頭の中にいるんですか?」
「いえ。この場合・・・
「別次元から?」
「この状態が続くとなのはちゃんだけでなく、他の患者さんにも危険が及ぶ可能性があるわね」
「そんな・・・・・・!」
「
「断定はできません。ただ、もしそれが正しかったしても今の私たちではどうすることも・・・・・・私たちは夢に干渉する力は持っていませんから」
「く・・・・・・」
「ママ・・・!」
夢の中は覗き見れても、その中に入って行く事が出来ない非情な現実。
六課メンバーは痒いところに手が届かない状況に終始、険しい表情を浮かべるばかりだった。
*
第97管理外世界「地球」
東京都 松前町 スクライア商店
しかし、望みが完全に消え失せたわけではなかった。
浦太郎から事の次第をメールでもらったユーノは、携帯を閉じると、愛刀を封印した仕込み杖を握りしめ身支度を整える。
ちょうど金太郎が夕食の準備を進めていたので、ユーノは金太郎に一声かける。
「金太郎。ちょっと用足ししてくる。夕飯は後で食べるよ」
「かしこまりました」
留守を任せ、一人地下へと続く階段を降りて行く。
地下訓練場に降り立ったユーノは、目の前に聳え立つ巨大な門―――恋次達をミッドチルダへと送り届けた異世界へのゲート・幻魔の扉の前に立った。
「なのは・・・・・・・・僕が必ず救ってみせる」
決意を固めた直後、おもむろに印を結ぶ。
すると、閉ざされていた幻魔の扉が金属音を響かせながらゆっくりと開き始め、それに伴いユーノも能力を解放する。
「黒暗天! 権現!」
自身の姿を任意の姿に変化させる晩翠の能力『
ゲートが完全に開かれたと同時に、ユーノは一切の躊躇も抱かずなのはの夢の中へと向かって扉の向こう側へと飛び込んだ。
*
夢想空間 なのはの夢の中
幻魔の扉を通って、無事ユーノはなのはの夢の中へ到着した。
「ここは・・・?」
辺りを見渡すと、昔懐かしい商店街が広がる風景が瞳に飛び込んでくる。
「ここが、なのはの夢の世界・・・か」
この世界の何処かになのはがいる事はわかっていた。早速、ユーノはなのはの魔力反応を追って捜索を開始する。
商店街を抜けて十五分くらい歩いた先、ユーノが辿り着いたのは自信も一度は見覚えのある景色だった。
「ここは・・・・・・・・・・・・」
美しい桜の花々が満開に咲き誇るそこは、旧アースラーメンバーとともに花見を開いた場所だった。
ユーノにとっても思い出深い場所のひとつだった。思わず感慨深く浸っていたが、気を取り直してなのはを探す事にした。
すると、ちょうど桜の木々の間で、なのはが立ち尽くしているのが見えた。
おもむろに歩み寄ろうとした時だった。ユーノはなのはの様子がおかしい事に気付いた。よく見ると、なのはは何かを羨望に満ちた眼差しで見つめていた。
彼女の視線を追うと、何故彼女が羨望しているのかが何となく分かった。
なのはが見ていたのは9歳の頃の自分自身。そして隣には仲睦ましく話をする同い年の少年―――すなわち、子ども時代のユーノがいた。
(なのは・・・・・・君はそんなに寂しい思いをしていたのか・・・・・・・・・)
ここに来て分かった事がある。なのはは周りには気丈に振る舞っているが、一人の時はいつだって辛いのを我慢していると言うこと。出会った頃と何ひとつ変わっていないと言うことだった。
さらに言えば、なのはは四年という歳月を経ているにもかかわらず、ユーノとの再会を本気で切望していた。
ユーノはこんなにも自分の事を思っていながら、敢えて突き放すような状況を作ってしまった自分自身が本気で嫌になりそうだった。
今すぐにでも彼女の前に出て声をかけたい。だが、肝心の勇気が湧いてこない。彼女を前にしたとき、どうしても震えが止まらなくなるのだ。
(僕は・・・・・・こんなときに限って・・・・・・・・・なんて情けない奴なんだ!!)
四年の間に少しは成長し、強くなった気でいた自分が馬鹿みたいだった。
沸々と湧き上がるなのはへの強烈な情念。この四年の思いの丈を彼女の前で曝け出したい。だけどその為の勇気と度胸が無い。
酷く落胆した後、ひとまずなのはを連れ戻すのが先決だと思い、翡翠の魔導死神として彼女へ接近しようとした直後―――
「!」
唐突に目の前に現れた例のヒツジ。
警戒を露わにするユーノを見据えた途端、ヒツジは愛らしい表情から一変。形相を作り出した。
刹那、気が付くとユーノは先ほどいた場所から荒れ果てた大地とその中央に不気味な居城を構える不思議な空間に一人佇んでいた。
「!?」
目を凝らすと、ユーノは居城の牢の中で捕われたなのはを始めとする夢の世界に捕われた人々の姿を確認した。
何としてもあそこから救出せんと動き出そうとした矢先、背後に敵の気配を感じた。
振り返れば、先ほど見たヒツジが群れを成して集まり、やがて一つにまとまり巨大な姿を形成する。
「これは・・・・・・!」
無数のヒツジが集まって生まれた複眼を持つヒツジの獣人を模した
なのは達の救出を懸けて、夢の中でインキュラスとの闘争を繰り広げる。
ちょうど、現実世界でなのはの夢をモニターしていた六課メンバーは、インキュラスと戦闘行為に突入した翡翠の魔導死神を確認。全員が目を疑った。
「まさか・・・・・・翡翠の魔導死神が・・・・・・」
「なのはさんの夢に入った?」
「輝け、晩翠―――」
鋭い斬撃を浴びせるも、インキュラスは瞬間移動能力や俊敏な動きでユーノの攻撃を悉く躱しては、背後を突いてくる。
「くっ・・・・・・」
夢の中という現実空間とかけ離れた慣れない環境に加え、なのはを救出しなければならないという使命感から来る焦りがユーノの動きを鈍らせる。
あまつさえ現実の世界以上にこの夢の世界では霊力と魔力の消費が著しく、長時間の戦闘は極めて不利だった。
(ここに長居する訳にはいかない。早いところこいつを倒して、なのは達を助けなきゃ・・・・・・)
即行で勝負を決めようと事を急ごうとするあまり、ユーノの動きのキレが普段とは比べ物にならないくらい悪くなる。
インキュラスはそんなユーノを嘲笑うかの如く動きで攻撃を躱して翻弄。
そして、隙を突くとオーロラ状の光の筒・キュラスターによってユーノを閉じ込め、身動きを完全に封じた。
「翡翠の魔導死神さん!」
自分達を助ける為に危険を顧みずに戦う翡翠の魔導死神が敵の手に落ちた。
なのはは牢の中で鉄格子を握りしめながら、窮地に陥った彼を手助けする事すら叶わない状況にとてもも隔靴掻痒する。
「翡翠の魔導死神さん・・・・・・わたしは・・・・・・」
だがそのとき、なのははある事を思い出す。
おもむろに首に手を当ててみると、それは在った。十年以上連れ添った愛機《レイジングハート・エクセリオン》が確かに光り輝いていた。
「そうだよ・・・わたし・・・・・・」
何も出来ないなんて言うは嘘。
自分が一人の人間である以前に、一人の魔導師である事を思い出す。
直後、なのはは魔力を解き放ち、防護服を身に纏う。そして鉄格子の中からレイジングハートを構える。
「私は―――時空管理局・機動六課の高町なのはなんだ!」
〈Divine Buster〉
なのはの強い意志に基づき、レイジングハートの先端から桜色に輝く長距離砲撃魔法・ディバインバスターが放たれた。
放たれた砲撃はユーノを覆っていたキュラスターを外側から破壊。振り返ったユーノは、なのはから頑張ってとエールを送られ、無言で頷く。
「チェーンバインド×10!」
十本のチェーンバインドを用いてインキュラスを拘束。先程まで受けていた仕打ちをそっくりそのまま相手に行う。
そうして敵の身動きを封じ込めてる隙に、ユーノは霊圧を研ぎ澄ませるとともに、大技を用いるのに必要な詠唱を唱える。
「我は神を
刹那、頃合いを見計ってユーノは留めの一撃をインキュラスへと放った。
「破道の八十九・改変 『
恋次にも用いた超弩級の砲撃技。その直撃を受けたインキュラスの体は、瞬く間に爆散した。
爆発した直後、インキュラスから漏れ出た神々しいまでの光の粒子・マギオンが霧散し、夢の世界へと拡散される。
人々はこの勝利にこの上なく歓喜し、なのはも翡翠の魔導死神の勝利を心から称賛する。
そして、戦いを終えたユーノは降り注ぐ無数のマギオンに紛れながら、秘かに夢の世界からの脱出を果たした。
*
午後19時22分―――
機動六課 ミッドチルダ地上本部 医務室
インキュラスが倒された事で、なのはの脳波は睡眠状態から覚醒状態へ移行されようとしていた。
マリエルが確認すると、パッと開けた様な笑みを浮かべ皆に報告する。
「なのはちゃんのレム睡眠が終了したわ!」
聞いた直後、フェイトとヴィヴィオでなのはの体を揺すってみた。
「なのは! なのは!」
「ママ、起きて!」
すると、呼びかけに答えたなのはがおもむろに目を覚ます。
「ん・・・・・・あれ・・・・・・みんな・・・・・・どうして?」
自室で寝ていると思い込んでいたなのはは、周りの状況と自分の寝間着姿を見て思わず―――。
「もしかして・・・・・・寝起きどっきり!?」
聞いた瞬間、間の抜けた言葉にたちまち脱力したものの、全員安堵の笑みを浮かべて目覚めたなのはに声をかける。
「コノヤロウ!! 散々人に心配かけやがって!!」
「でも・・・よかった! ママがちゃんと起きてくれて・・・///」
大好きな母が再び目を覚ましてくれた事が何よりも嬉しく、ヴィヴィオは歓喜の涙を流してなのはの胸に抱きついた。
なのはもそんなヴィヴィオを愛おしく抱きしめ、優しく頭を撫でてやった。
「ごめんねヴィヴィオ。心配かけて。私はもうだいじょうぶだよ」
のちに―――なのはと同じ症状に陥っていた人々も眠りから回復したという報告がクロノを通してリンディの元へと届けられた。
『原因不明の睡眠に陥っていた人々はすべて目覚めたようです』
「そう。でも一体なんだったのかしら?」
『確かなことは、なのはも他の人々も翡翠の魔導死神によって救われたと言うことです』
「まさか夢の中にまで入っていけるなんて・・・・・・本当に、私たちは彼に感謝してもし切れないわね」
『しかし統括官。彼の正体は果たして何者なのでしょうか?』
「確かに気にはなるわね。でも・・・・・・あんまりこっちがちょっかい出すと痛い目を合いそうだから、深く詮索しない方がいいのかもしれいわね」
達観した様子でクロノに忠告した後、リンディは高血圧も糖尿病のリスクもお構いなしの激甘リンディ茶を飲んでほっとするのだった。
◇
5月16日―――
第97管理外世界「地球」
東京都 松前町 スクライア商店
「ユーノ店長、今日も嫌々参ったぞ」
などと文句を言いつつも時間ピッタリに修行へと現れた白鳥。
すると、店の奥から出て来た金太郎がシーッと指を立てながら歩み寄って来た。
「どうかお静かに。店長はお疲れのため寝ております」
「寝ているだと? この私がせっかく参ったというのに何たる不敬な」
「ご安心ください。白鳥殿の修行は私が全責任を持って仰せつかります。さぁ白鳥殿・・・・・・今日もビシバシ参りましょうぞ」
「え・・・! いや・・・・・・その・・・・・・あ、そうだ!! ちょっと急用を思い出したので今日の所は!!」
踵を返し逃げようとする白鳥の首根っこを掴み、金太郎は太く逞しい上腕二頭筋でその首を押さえつけ、
―――ゴキッ!
「うぎゃああああああああああああああああああ!!!」
甲高い白鳥の悲鳴もなんのその、なのはの夢の世界から帰還を果たしたユーノは茶の間ですやすやと寝息を立てていた。
「ん・・・・・・なのは・・・・・・・・・」
教えて、ユーノ先生!
ユ「今日は夢について解説だ♪ 医学的な観点からも解説したいので、特別に一護さんにも手伝ってもらいまーす♪」
一「なんで俺が・・・・・・だいたい俺の専門は外科なんだってば。この前から言ってるけど」
ユ「細かいことはこの際無きにして。ささ、夢についてだけど・・・劇中でも言っていたように夢は脳が覚醒状態にあるレム睡眠時に見る物と言われているんだ。でもここで疑問に感じるんだけど・・・どうして人は夢を見るのでしょうか? 医学的立場から一護さん、解説お願いします!」
一「ったくしゃーねーな。医学的に見るとだな、夢を見るのは情報処理に伴ったノイズと考えるのが妥当だ。記憶の断片がアトランダムに現れてくるから、突拍子も無い様な奇想天外なストーリーが多いのもそのためだ。ただ、不安だとか嬉しいとか、感情に関わるもの、特に怖い夢を見るケースが多いことは確かだな」
ユ「なるほど、そうだったんですね。道理で最近怖い夢ばかり見ると思ったよ」
一「ちなみにお前が見た夢ってなんだ?」
ユ「まぁここ三日ぐらいの話で言えば・・・三日前は何の因果かスキージャンプ台の上から滑走して着地に失敗して複雑骨折しましたし、一昨日は断頭台でいきなり首を切られたり、昨日なんか核ミサイルの熱波で体を焼かれる夢を見ましたね」
一「おまえ・・・・・・絶対精神状態病んでるだろ」
夢の内容から相当にユーノが精神的に重い疾患を抱えているのではないかと、本気で疑って止まない一護だった。
魔導師図鑑ハイパー!
午後10時過ぎ。
高町なのはの一人娘、ヴィヴィオはベッドの中で悶々としていた。
ヴィ「うぅぅ・・・眠れないよー・・・」
いつもならば午後9時には就寝しているが、今日に限っては目が冴えてしまい、眠れずにいた。
ヴィ「どうしよう・・・明日も朝練だから寝坊できないし・・・・・・あ、そうだ! こういう時はヒツジの数を数えればいいって、前にママが言ってたっけ。よーし、そうとわかったら早速実践!!」
とても素直な性格のヴィヴィオ。モノは試しとヒツジの数を数えてみる事に。
ヴィ(ヒツジが1匹・・・ヒツジが2匹・・・ヒツジが3匹・・・)
順調に頭の中でヒツジの数を数える。
しかし、ここから予想外の方向へ突き進んでいく。
ヴィ(ヒツジが5匹・・・ヒツジが6匹・・・ヒツジが7・・・・・・あ、あれ?)
柵を乗り越えるヒツジを数えていたが、ある瞬間よりヒツジの形が変化して、漢字の「羊」と言う時に置き換わる。
ヴィ(えっと・・・・・今のはノーカウントってことで。気を取り直して・・・)
もう一度柵を乗り越えるヒツジを数えようとするが、今度はヒツジが柵に躓くというトラブルが発生。
ヴィ(あ~ん、ぶつかっちゃった! ええい、今度こそ・・・!)
三度目の正直とヒツジを数え直す。すると、ヒツジに混じって執事が柵を飛び越えるビジョンが思い浮かぶ。
ヴィ(ヒツジ・・・じゃなくて執事? 執事じゃなくてヒツジ・・・あれ・・・えーと・・・)
そうこうしている内に訳が分からなくなったヴィヴィオはベッドから飛び起きる。
ヴィ「って!! わたし今なに数えてるんだっけ!?」
次回予告
鬼「復讐の狂犬・
浦「僕たちの攻撃を受けても幾度となく復活する不屈の闘志。しかし、僕たちが最も恐れていたのは
ユ「次回、ユーノ・スクライア外伝・・・『金色の
登場魔導虚
カースドキュラ
声:水島裕
大道芸人の魔導師が幼生虚との融合によって誕生した魔導虚。
呪術師を彷彿とさせる外見で、様々な能力を付与した仮面を操る能力を持つ。
相手の精神を乗っ取り凶暴化させる「凶暴化の仮面」を始め、攻撃と守備を奪い呪いによって死に至らしめる「呪魂の仮面」、魔力を際限なく吸収する「魔力吸収の仮面」、攻撃を防御する「鉄壁の仮面」、相手の攻撃力をダウンさせる「弱体化の仮面」など様々用途に分かれている。
仮面能力を駆使して機動六課メンバーを追い詰めるが、駆けつけた翡翠の魔導死神の攻撃を受けて倒された。
インキュラス
人間の夢の中に現れた、複眼を持つヒツジの獣人のような魔導虚。
オーロラのような光を発生させ、それを見た者をレム睡眠状態にし、その時に生じる脳波を吸い取る。普段は「スモールインキュラス」の姿で分裂している。瞬間移動能力や俊敏な動き、光の筒「キュラスター」に相手を閉じ込める光線などで翡翠の魔導死神を苦戦させるが、なのはの加勢で形勢が逆転し、最後は燬鷇剿滅神炎炮の一撃で倒される。
名前の由来は、夢魔や淫魔とも呼ばれる悪魔「インキュバス」から。