ユーノ・スクライア外伝   作:重要大事

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第19話「神の化身」

一か月前―――

第97管理外世界「地球」

東京都 松前町 スクライア商店

 

「そいつがそうなのか?」

 一護の問いかけに、ユーノは「ええ」と答える。

「しっかし・・・こんな小さなカプセルにそんなすげー力が宿ってるなんて、未だに信じらんねーな」

 そう言いながら、おもむろに一護が手に取ったのはユーノが独自に設計・開発を試みたカプセル様の新型魔力カートリッジだった。灰色を基調とした本体色と、スライド式の起動スイッチが付いた従来の物とは明らかに仕様が異なるものだった。

「そのカートリッジは僕が持ちうる知識の全てを結集させて造り上げた発明品です。ブラスターモードに代わる力を模索すること四年、ようやく納得のいく形になりました」

「あとは本人が使いこなせるかどうかだが・・・・・・」

 懸念を交えて呟く一護の言葉に、ユーノはあっさりと否定し微笑を浮かべた。

「大丈夫ですよ。なのはなら。彼女は僕の・・・・・・いや、天性の魔法の才能に恵まれたエース・オブ・エースですから」

 僕の弟子です・・・そう言いかけた後、直ぐに言うのを取りやめたユーノを一護は横目で一瞥し、持っていたカートリッジを元の場所へ戻した。

「何にせよ、お前は本当に愛弟子思いの師匠だと思うな」

「弟子・・・か。僕にとってなのはは弟子である以上に、僕の命の恩人で、何より大切な護るべき女性なんです―――」

 なのはを思うゆえに様々な感情を孕んだ言葉を吐いた後、ユーノは遠い異世界で戦う女性の事を思い続けた。

 

           ≒

 

 機人四天王の手によって市街地へと放たれた量産型の魔導虚(ホロウロギア)・デスベイトは、ミッドチルダ市民を恐怖に陥れた。

 押し寄せる魔導虚(ホロウロギア)の大軍に各々立ち向かう機動六課メンバー。その最中、引き裂かれた空間の向こう側から大型の(ホロウ)―――大虚(メノスグランデ)が現れた。

 

 リミッター解除した六課隊長陣並びに阿散井恋次は、超弩級の必殺技で大虚(メノスグランデ)を攻撃するが、大量のデスベイトとなのは達から与えられた巨大エネルギーを吸収した大虚(メノスグランデ)は、地上最悪の『メノスグランデ・エンカルナシオン』へと進化を遂げてしまったのである。

 

 一般市民にも視覚できる存在となったメノスグランデ・エンカルナシオンは、ミッドチルダの地に初めて降り立った「恐怖の大王」と化していた。

 

           ≡

 

新暦079年5月23日

第1管理世界「ミッドチルダ」

 

『臨時ニュースをお伝えします。先ほど中央政府はミッドチルダ南部に突如出現した“巨大不明生物”に関する緊急災害対策本部を設置致しました。これにより国民みなさまの安全に対して万全の対策を講じ、速やかな避難活動を実行する為、地上本部及び関係省庁との連絡を密とした―――』

 テレビから報道される重大事案発生に関するニュース。

 人々は前触れも無くその姿を顕現させた未知なる巨大生物の襲来に恐怖し、街は大パニックとなっていた。

『この信号は止まっています。直ちに降車して警邏隊の指示に従って行動して下さい』

『区内全域に避難指示が発令されました。住民の方は直ちに避難して下さい』

 避難指定を受けた区域でひっきりなしに避難指示を誘導する放送が流れる。

 総人口3億人を超えるミッドチルダは『人種のサラダボウル』とも呼ばれ、様々な世界や国から集まった人がそれぞれの文化を共存させながら決して互いに交わることのない多文化主義(セグリケーション)を形成している。

 老若男女問わず街中には人がごった返している。

 道路は車と言う車で埋め尽くされ、須らく彼らは地上を征服せんと現れた恐怖の大王の存在に怯え、我先にと逃げる事に必死だった。それこそ他人の事など歯牙にかける余裕すらなく。

「押さないで! 落ち着いて避難して下さい!」

「地震災害の避難場所では役に立たない! 新たな避難場所の指示を乞う! どうぞォ!!」

 かつてない異常事態に直面した管理局員もまた、他の人々と同じく思考が全く追いつかずどうしていいか分からなかった。

 

           *

 

ミッドチルダ中央南駐屯地内A73区画

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 総合司令室

 

魔導虚(ホロウロギア)と思われる巨大不明生物はC29地区からG87地区方面を移動中。平均移動速度は時速13キロ程度と判明しました」

「図体がデカい割にずいぶんと遅いわね」

 シャリオからもたらされる情報を聞き、マリエルはメインスクリーンに映るメノスを見ながら訝しげに顎に手を添える。

「この速度でも3時間もあれば首都圏を縦断します!」

「クラナガンは意外と狭いし脆いからな。ここは住民の自主避難に任せるしかないか」

 ルキノの言葉に同意するように、グリフィスは懸念交じりに呟いた。

「周辺部の避難状況は?」

「既に現場では交通統制によるコントロールを徹底させています」

「それにしても、今まで空いていた孔を塞いでいるあれはなんだ? 敵の目的は地上の制圧だけではないのか?」

 クロノが最も懸念しているもの―――メノスグランデ・エンカルナシオンの体に空いた巨大な孔を塞ぐ肉塊状の物質。心臓の如く一定のリズムで脈を打つように蠢くそれは、見る側に言い知れぬ畏怖を与える。

 

「失礼するよ―――」

 そのとき、司令室の扉が開かれ聞き覚えのない低い男性の声で話しかけられた。

 振り返った瞬間、クロノ達全員が目の前の人物を見るなり、目を見開き驚愕の表情を浮かべた。

「あ、あなたは・・・!」

 複数人の地上局員を率いてやってきたいかつい風貌の男。

 その男こそ、JS事件で失脚・死亡したレジアス・ゲイズの後任として地上部隊首都防衛長官に就任した人物―――フィリップ・レオンハルト大将だった。

「機動六課後見人筆頭並びに本局次元航行部隊提督のクロノ・ハラオウン提督とお見受けする。地上部隊防衛長官のフィリップ・レオンハルトだ。本事案の対応について只今をもって機動六課から地上部隊が任務を引き継ぐ事となった」

「な・・・」

「なんですって!?」

 突拍子も無く聞かされた衝撃の内容にクロノはもとより、居合わせたバックヤード陣営も挙って耳を疑った。

「ま、待ってください! あの魔導虚(ホロウロギア)を地上部隊だけで対処する・・・そう仰ってるんですか!?」

「そうだ。地上で起きた事案は地上部隊が対処する。本局所属の機動六課は大人しく我々のリベロに徹していてばよい」

「しかし、魔導虚(ホロウロギア)は我々の人知を超えた力を秘めています! 失礼を承知で申し上げますが・・・あなた方はあれの脅威をまるで分っていらっしゃらない!」

「既に災害緊急対策の布告を総理が宣言し、巨大不明生物に対する治安維持の為の地上部隊による武力行使命令が下された」

「なんですって!?」

「事態が事態だからな。超法規的な処置として防衛出動を下すしか対応がなかったのだ」

 管理局法、第76条【防衛出動】。

 国家の存立危機という最悪の事態に直面した場合、国またはそれに準ずる主体そのものに対して武力攻撃がなされていなくても、国家の存立が危うくなる場合には、管理局の防衛出動が認められるというのがこの法律に記された法的根拠である。

 聞いた瞬間、目を剥き仰天するクロノを見ながら、フィリップは淡々と事実のみを言葉に表した。

「ですが現場は人口密集地です! 今は攻撃より避難を優先すべきです! 現実問題、管理局による短時間での避難誘導は困難を極めています。防衛出動となれば、逃げ遅れた住民や局員を戦闘事態に巻き込む可能性が!」

「国益を守るのもまた管理局の使命だ。多少の犠牲は止むえないという覚悟もまた我々には必要だ。それが理解できんほど君も夢想論者ではないと思っているよ。クロノ・ハラオウン提督」

「それは・・・・・・ですがしかし!!」

「では仮に本局との安全保障条約を盾にして、君の所属する次元航行部隊に今回の一件の肩代わりしてもらえと? 答えはNOだ。まずはこの国と地上本部が動くのが鉄則。()しんば安保条約があっても、本局は飽く迄支援の立場だ」

「しかしあれは生物です! 下手に刺激すると被害がさらに拡大する可能性もあります!」

 安易な攻撃は避けるべきと危惧したマリエルが訴えるも、フィリップから返ってきたのは予想外の言葉だった。

「そう・・・―――生物だ。だからこそ人の力で駆除する事が出来る。同じ自然災害と区分しても地震や台風とは違う」

 頑として揺るがない決意と覚悟がひしひしと滲み出す。

 レオンハルトは良くも悪くも決して揺るがない大木だった。国家防衛の為ならば、どんな強硬な手段も辞さないという心構えは、嘗てのレジアス・ゲイズ元中将を彷彿とさせるものだった。

「君達の心情は察しよう。だが、ここは次元世界(うみ)ではなく地上世界(おか)だ。私はこの世界の平和を守る大任を背負う立場。何としても被害の拡大を防ぐ為に尽力する」

 往年の大将の凛然たる立ち振る舞いを前に、クロノを始め若い局員達は不承不承気味に引き下がる他なかった。

 これ程無力感を味わったのはいつ以来だろう・・・・・・。クロノはただただ遣る瀬無い思いを抱いた様子で、右拳を強く握りしめた

 

           *

 

ジェイル・スカリエッティ 地下アジト

 

「よくやってくれた。機人四天王諸君」

 スカリエッティは恭しく膝を突く四人の戦闘機人の行動を高く評価し、狂気染みた笑顔ながら終始ご満悦の様子だった。

「まんまと機動六課は我々の用意した策に嵌ってくれたな」

「脳筋思考の方々をこちらの都合の良い方向に誘導するのは実に容易かったですわ~。これでゆっくりと計画を【第二段階】に進める事ができますわ」

「既に我々の勝利は決まったも同然」

「ようやく私たちの悲願、ドクターの夢が叶う日が来たのですね」

 トーレ、クアットロ、ファイ、ウーノも目前に迫る勝利を早くも確信した様子だった。

「それはどうかな?」

 すると、朝駆けの駄賃と考え、気の緩みがちな機人四天王を見たスカリエッティが口角をあげながら嗜める。

「この次元世界にはまだあの男―――翡翠の魔導死神がいる。邪魔される可能性は大いに高い」

「しかしドクター。如何に翡翠の魔導死神とて、人口密集地帯であの巨大なメノス相手に縦横無尽に力を振えるとは思えませぬ」

「仮にあのメノスを封じる事が出来たとしても、その前に()()が完成したら全ては水の泡。気付いた時には手遅れです」

 

           *

 

『先ほど災害対策基本法の災害緊急事態の布告を総理が宣言。巨大不明生物に対し、地上部隊による防衛出動が決定されました。緊急処置として国会の承認を事後に回し、害獣駆除を目的とした新暦初となる質量兵器による武力行使命令を総理が下した模様です』

 

           ≡

 

ミッドチルダ中央 首相官邸

 

 ミッドチルダの国益と国民の命を著しく脅かす巨大生物の脅威に対抗する為、地上本部を主体とした高官らが一堂に官邸へと会し首相と面会。

 現在、防衛大臣とも交えた作戦の草案について、レオンハルトは険しい表情で資料に目を通す首相に説明する。

「統合方面総監を指揮官とした統合任務部隊を編成。作戦目的は【駆除】とします」

「陸士部隊は住民の避難誘導が優先で対応できない為、即応可能な回転翼機を主力とした作戦を立案しました」

「総理、市街地との作戦なので老人や病人が残っている可能性もあります!」

「だとしたら現場を見ない事には判断しかねるだろう」

「現状では国民の生命及び私有財産への損害もやむを得ないと考えます。総理・・・ここは苦しいところですが、承認のご決断を」

 この期に及んで渋る態度を取る首相。レオンハルトは一貫して果敢な心をもってして、迅速な武力行使の承認を要求した。

「――――――わかった」

 

           *

 

同時刻―――

ミッドチルダ市内 とある駐機場

 

「ざけんじゃねー! なんであたしらが大人しく引き下がって、地上部隊が出しゃばってくんだよ!!」

「どう考えても腑に落ちねーぞ!」

 魔導虚(ホロウロギア)対策を全面的に任されている筈の自分達が地上部隊の後方支援に回る事が解った途端、ヴィータと恋次が激しく抗弁する。

 彼らだけではない。なのは達も皆それぞれ納得など出来ていない様子で、何とかならないかとクロノに懇願するが、芳しい言葉や態度が返ってくることは無かった。

『すまない。僕も必死に食い下がったんだが・・・地上部隊の大将に青二歳の提督の言葉などまるで聞く耳持たなかった』

「レオンハルト殿は意志の強いお方です。こと防衛思想に関しては何よりもそれが顕著に表れる傾向があります。それがあの方の長所であり短所でもあるのですが」

「なんだよ金太郎、地上部隊の大将と知り合いなのか?」

「ええ。昔ちょっと・・・」

 複雑な感情を内心抱きながら、金太郎はややゴリ押し気味な英断を下したレオンハルトの心情を鑑みた。

「クロノくん・・・何とかして止めさせてもらえんのか!?」

『すまないはやて。僕の権限ではどうする事も出来ないんだ。首相が正式な防衛出動を発令した時点で、攻撃中止はありえない』

「そんな・・・・・・」

 突き付けられる非情な現実に言葉を紡ぐなのは達。

『間もなく地上部隊による総攻撃が始まる。納得できないかもしれないが、ここは一旦隊舎へ戻ってくれ』

「やれやれ・・・・・・つくづく嫌になるよね。嘘と欺瞞に満ち溢れたまるで詐欺師の様な国家権力って奴がさ」

 機能しているように見えて実際は機能不全を起こしている管理局を皮肉ったように、浦太郎は自分を含めた全ての治安維持に携わる者達を嗤笑(ししょう)した。

 

           *

 

 メノスグランデ・エンカルナシオン駆逐の為に、地上部隊による総攻撃が始まろうとしていたおよそ数時前、ユーノ・スクライアはCW社へと向かった。

 ミッド地上に出現したメノスへの対抗手段を講じるべく、第1開発部を拠点とする対策本部を設置。ユーノは司書長時代の顔の広さや幅を利かせ、ありとあらゆるコネクションの全てを使い、各界から様々な分野のエキスパートを集結させた「メノスグランデ特設災害対策本部」―――通称「虚災対(きょさいたい)」を編成した。

 

           ≡

 

第3管理世界「ヴァイゼン」

カレドヴルフ・テクニクス本社開発センター

メノスグランデ特設災害対策本部 二階会議室

 

「虚災対リーダーを務めるユーノ・スクライアです。各自忙しい身でありながら、僕の個人的な呼びかけに答えてくれたことに感謝します。本対策室の中では、どう動いても人事査定には影響はありません。よって役職や上下関係の縦割りを気にせずここでは自由に発言して欲しいです。なお、僕が『翡翠の魔導死神』の正体であることは他言無用ですのであしからず」

「という事だ。まぁ便宜上はこの俺、ウシヤマが指揮を執るが・・・そもそも出世に無縁な各界のはぐれ者、一匹狼、変わり者、オタク、問題児、鼻つまみ者、厄介者、学会の異端児など、そういった連中の集まりだ。気にせず好きにやってくれ。で、推定された基本スペックはこれだ。各自で確認してくれ」

 手持ちの資料をテーブルの上に無造作に置くウシヤマ。

 首を斜めに振らない骨太達・・・・・・といえば聞こえはいいが、その実はドがつくほどの曲者ばかりが一堂に会する。集まったメンバーは配布された資料を各々手に取り内容を確認。その内容を見て目を見開いた。

 【巨大不明生物(メノスグランデ)に関する基礎情報】と題した資料に書かれていたのは、推定される身長や体長、体重と言った一般的な情報のみ。それ以外の具体的な記述はどこにも見受けられなかった。

「これだけですか?」

 思わずメンバーの一人が唖然としながら問いかける。

「それだけだ。それから先を調べるのも我々の仕事だ。他に何か基礎情報があれば共有しておきたい」

「ちなみに、事前にミッドで行われた有識者会議では、あまりにも常識から外れて過ぎていて何もわからないという結論だったそうです」

「ほか、行動生物学的にも何かないか?」

「行動パターンと言っても奴はただ移動しているだけです。なので思考も特定できません」

「知能レベルも不明だが、我々とのコミュニケーションはムリだろうな」

「素朴な疑問なんだが・・・あれのエネルギー源は何なんだ?」

「確かに身体の活動だけではなく、基礎代謝だけでもかなりのエネルギー量が必要です。消化器官による酸素変換では消費量や動作効率が説明できませんね」

「あと気がかりなのは、あの肉塊状の物質ですが・・・」

 人知を超えた巨大生物の身体的な構造に目が離せない有識者達。

 様々な憶測や疑念を膨らませていると、リーダーであるユーノがおもむろに口を開いた。

「その事について、僕の方で既に分析が終了しています。これをご覧ください」

 コンソールを操作してメインモニターにある映像を公開する。

 映し出された驚愕の事実を目の当たりにした途端、虚災対所属のメンバーは挙って声を裏返した。

「こいつは驚いたぁ!!」

「悪い冗談っぽいですね・・・ユーノさんも。あり得ませんって」

「バカヤロウ!! プロフェッサーが冗談言うと思ってんのか!? 紛れも無い事実だ」

「僕らの仕事はただ単にアレを倒す方法を模索するだけじゃありません。アレが抱える時限爆弾も一緒に世界から取り除く必要があるんです」

 都合の悪い事実に目を背けた来る者が殆どだ。

 しかし、だからこそユーノは不都合な事実と正面から立ち向かう事が必要だと居合わせた全員に発破を掛ける。

 そのときだった。肩で息を切らしたウシヤマの部下達が大慌てで会議室へ詰めかけ、ユーノへ報告してきた。

 

「プロフェッサー! 間もなくミッド地上部隊による総攻撃が始まります!」

 

           *

 

第1管理世界「ミッドチルダ」

ミッドチルダ西部 緊急災害対策本部

 

「総理入ります!」

 ミッドチルダ首相、現行の内閣総理大臣を本部長とする緊急対策本部は万が一の時に備え、首都から少し外れた場所に設置可能な災害対策予備施設が存在する。

 首相を始め閣僚並びに政財界の大物達は挙ってモニターを凝視。クラナガンへの進行を続ける巨大なる敵・メノスの動静を警戒する。

「目標はエルセア市内を抜け、トマリア方面へと進行する模様」

「巨大不明生物、2時間以内にクラナガン侵入の可能性大!」

「総理、事前にお伝えした通り、攻撃に際し万が一逃げ遅れた住民がいる場合はそれを巻き込むリスクが存在しますが・・・・・・首都上陸を許すわけにはいかずここは侵攻阻止を優先すべきと考えます」

「あれのエネルギー源が不明確ではありますが、近くには魔導炉関連施設も多くあります。もしも怪物に襲われたりでもしたら、エネルギーの枯渇だけでなく有害物質が漏れて大変な事になります」

「総理、今のうちに叩くべきです! また、他の主要世界からミッドチルダ政府が弱腰と見られる状況はゆめゆめ避けたいと考えます」

「総理。命令があれば地上部隊は市街地でも徹底的にやります。災害緊急事態の布告は今も継続中です。攻撃は・・・総理のご意思で決まります」

「わかっている―――・・・始めてくれ」

 断腸の思いではあったが、ミッド史上稀に見る国難に立ち向かうという強い覚悟を決めた総理大臣の一言は、何よりも力強かった。

 

           *

 

ミッドチルダ地上本部 地下作戦指揮所

 

 レオンハルトからの通達を受けた地上本部作戦指揮所では、メノス掃討作戦の為の最終調整が行われていた。

「総理から新たな作戦が指名された。武器使用は無制限までを想定。防衛大臣及びレオンハルト大将からはいざとなったら徹底的にやれ。必ず都内に侵入前に駆除せよとの事だ」

「よし。タマリバーを戦場とする駆除作戦・・・【B-2号】を発動せよ」

「了解。タマリバーを絶対防衛ラインと想定するB-2号を・・・“タマ作戦”を開始!」

 

           *

 

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 総合司令室

 

 地上部隊によって展開される作戦の模様を隊舎で静観する六課メンバー。

「いよいよ始まるんやな」

「馬鹿げてやがる。どう足掻いたところで人間の力じゃメノスは倒せねー」

 話のオチは既に見えていると悲嘆する恋次を余所に、着実にクラナガン方面へと進行し、首都上陸も時間の問題となったメノスグランデ・エンカルナシオン。

 それを迎え撃つ迎撃兵器がおもむろに姿を現した。

「ちょっと・・・!?」

「まさか!!」

 しかし、その実戦兵器を見たなのは達は挙って驚愕した。

 モニター画面に映ったのは魔力を殆ど使わず物理エネルギーを直接ぶつける事を想定した新暦以前まで主流だった兵器―――戦車や戦闘機など管理局法によって原則保有及び使用が禁止された『質量兵器』のオンパレードだったのだ。

「ウソだろ!! あれってみんなバリバリ質量兵器じゃねーか?!」

「そんな・・・質量兵器保有は管理局法で禁止されている筈じゃ・・・!」

「キャロ殿の言う通り、『原則』保有と使用は禁止されております。しかし、これにはいくつかの抜け穴があります」

「抜け穴?」

「防衛出動の為の個別的自衛権の行使、でしょ?」

 訝しむ若いフォワードメンバーの疑問に対し、浦太郎は眼鏡の位置を微調整してから鋭く言及した。

 【個別的自衛権】―――管理局法第51条により、管理世界に認められた自衛の権利のことを指す。自国が他国から武力攻撃を受けた場合に、自国を防衛するために武力の行使をもって反撃する権利であり、その為ならばどのような自衛手段を用いても良いと記載されている。

 現行の管理局法で使用が禁じられている質量兵器も管理局の適正な許可を得る事で、デバイスとして登録することが出来る。同時に国家レベルにおける防衛事案発生時の使用―――個別的自衛権の行使の際にも容認されるのである。

「ミッドチルダ憲法では質量兵器を用いた武器使用を禁止してはおりません。自国に対する侵害を排除するための行為を行う権利・・・個別的自衛権の行使を容認せざるを得ない状況で治安出動が出されれば、『質量兵器』保有と使用の禁止という枷を外す事が出来るのです。JS事件以降、ミッド地上ではレオンハルト殿が主体となって構造改革を推し進めて参りました。既存の魔法至上主義を脱し、普遍的な武力で以て国益を守ることこそが地上の正義であると信じ、秘かに政府と取引し用意していたのでしょう」

 意外な事実を知って声を詰まらせるメンバーを見、金太郎は質量兵器保有に関する条文を明記した管理局法の穴を突いた高度な政治的判断について補足した。

「そんな・・・・・・じゃあ私たちが信じた魔法は何のための力なんですか!? 傷つけずに相手を制圧するための力として魔法があるはずなのに、これじゃ私たちがここにいる意味がないじゃないですか!?」

 入局以来、一途に魔法の力とその可能性を信じてきたなのはは悲痛な思いを口にする。

 それを横で聞いた恋次は、感情的な彼女の肩に手を当てると、諌める様に冷静な見解を口にした。

「おまえの気持ちは分かる。だが、敢えて言わせてもらうが・・・・・・相手を傷つけない武力は武力とは呼ばねえ。魔法だって使い方を誤れば相手を傷つける。結局のところ、大事なのはその力を正しく制御できるかどうかだ。質量兵器だろうか魔法だろうか関係ねえ」

「それに国家の存亡の機となれば、稀少保有スキルを持つ魔導師の力に頼るより・・・汎用性に優れ、誰でも容易に使用が可能な大量破壊兵器を用いる方がリスクが低いと考えるのは至極当然だよ」

 と、吉良も客観的な立場で率直な意見を口にする。

 これにはなのは達も思わぬ面を食らってしまった。シグナムら古い騎士はそれほど大きなショックを受けていない。一方、生まれ以来安全が考慮された魔法の使用を前提としてその力の扱いを享受してきた若い魔導師達は違った。

「だけど、これじゃあ悪しき歴史を繰り返してるだけじゃないですか! 長い時間をかけて人類は過去の反省を全く活かせないなんて・・・」

 悪い歴史に向かって逆行を始めた人間の習性を哀れむフェイト。

 彼女の気持ちを慮るとともに、クロノは遣る瀬無さを抱いた様子で口にした。

「残念な話ではあるが、人間は不完全な生き物だ。どれだけの教訓を得てもいずれは忘れてしまう。だから世界から争いの火種は消えない。もしもユーノがここにいたとしたら、僕の代わりにこう言ってくれただろう」

 忘却―――それは人間に備わった自己防衛機能。繰り返される歴史の中で、人間は幾度となく何度でも過ちを繰り返すのである。

 

           *

 

ミッドチルダ西部 緊急災害対策本部

 

「対戦ヘリ小隊による威力偵察、準備完了!」

「全街頭地区の避難の完了を確認しました」

「間違いないだろうな?」

「私は現場の報告を信じるだけです」

「目標は依然進行中です。総理・・・・・・質量武器使用の承認をお願いします」

「質量武器の使用を許可する―――」

 レオンハルトからの要請を受け、首相は険しい表情を浮かべながら武器使用の承認を口にした。

 

           *

 

同時刻―――

タマリバー近郊駐機場 地上部隊戦闘団前方指揮所

 

「総理の下命を確認しました!」

「射撃を許可する。射撃開始」

「タマ作戦フェーズ1を開始する。射撃開始。繰り返す、射撃開始。送れ」

『CP1了解。射撃開始する』

 指揮所からの攻撃開始命令が下された瞬間、回転翼機部隊が一斉に前方の巨大な怪物へと機銃掃射を開始した。

 メノスグランデ・エンカルナシオンの仮面目掛けてぶつかる無数の弾丸。それらは全てポップコーンの様に弾けるだけで、敵の進行を食い止めるには程遠い。

「機関砲、全弾命中! しかし、効果は認めず!」

「弾丸を30ミリに切り替えろ。もう少し様子を見る」

 敵の動きを牽制しつつ、機関砲の口径を大きくして再び標的への攻撃を再開。

 だが、やはり先に見た結果と同様であり、メノスグランデ・エルカルナシオンの進行速度は依然落ちる気配すらない。

 

『威力偵察第三班転回中。他報告せよ』

『第三小隊攻撃続行中。目標健在。未だ効果なし』

「1万5千発もの機関砲を食らい続けて、傷ひとつ付かんとは・・・・・・!」

「総理、人口密集地ですが止むを得ません。ミサイルの使用を許可しましょう」

「総理・・・苦しいところですが、御決断を!」

 レオンハルトと防衛大臣からの進言に、内閣総理大臣が出した決断は・・・・・・。

「今より武器の無制限使用を―――許可します!」

 

『CP1、攻撃を機関砲から誘導弾に切り替える。発射準備出来次第、全弾射撃。送れ』

『了解。P1からP4へ。誘導弾全弾発射! 目標、前方巨大不明生物!』

『距離700! 発射用意・・・・・・発射!』

 全ての回転翼機部隊から破壊能力の高い誘導弾、対戦車ミサイルを用いた攻撃が展開された。

 全長300メートルを超える大きさのメノスは狙い打ちされ、絶えず衝撃と巨大な爆発音が響き渡る。

 対策室でミサイル攻撃の結果を固唾を飲んで見守る閣僚達。

 黒煙が晴れ、モニター画面に映ったのは―――ミサイル攻撃ですらほぼ無傷と言って過言ではない五体満足のメノスの姿だった。

「誘導弾全弾命中! しかし目視による損傷確認できません」

「ミサイルでも死なないのか!?」

「なんてやつだ・・・・・・!」

「目標の外皮攻防は予想以上です!」

「作戦をフェイズ2に移行させます」

 

 回転翼機部隊での攻撃が失敗に終わった事を受け、レオンハルトは次の作戦を瞬時展開するよう指揮所へ通達。

 次なる作戦は、タマリバーで展開された質量戦車中隊を主体とした陸上部隊による一斉射撃。これにより絶対防衛ラインと想定したタマリバーへの侵入を水際で食い止めるつもりだ。

『こちらタイガー1、射撃開始! 繰り返す、射撃開始!』

『目標、正面の敵着部!』

『各車、射撃開始!』

 スコープで敵との距離を慎重に測り、進行してくるメノス目掛けて戦車隊が一斉に大質力砲撃を開始。

 相手を確実に仕留める事を主体とした殺傷能力抜群の巨大質量エネルギーの塊が巨大な生物の外皮に着弾。

 かつてないほど凄まじい光景に市民や既存の局員魔導師は呆気にとられるばかり。

 しかし、どれほどの砲撃を受けてもなお不気味に蠢く肉塊状の物質を腹に抱えたままメノスの進行速度は衰える事を知らない。

「愚かな。あんな矮小な力で倒せるほどやわではない」

「そうですわね~、そうですわね~。いよいよですわ~。もうすぐたくさんの愛らしい幼生虚(ラーバ・ホロウ)ちゃんを育てられるんですわ~」

 迫る危機に必死で抗おうとする人間達の行為を観察するトーレとクアットロ。

 二人は口角を緩め、未だ真実に気付く気配すらない人々をとても愚かで、哀れな事だとせせら笑った。

 

「目標、堤防指揮を越えタマリバー河川区域に侵入!」

「作戦をフェイズ3に移行。直ちに航空攻撃を開始!」

 戦車部隊だけの攻撃では埒が明かないと判断し、待機していた戦闘機部隊とも協力した陸空による総力戦を展開する。

『クリアードアタック、クリアードアタック。ファイア、レディー・ナウ』

 高度数百メートルの上空を飛翔する戦闘機から魔力エネルギーほぼゼロの空爆が実施された。

 メノスの頭部目掛けて投下された爆撃は強力な爆風を伴い、メノスの視界を黒煙で包み込む。戦車部隊も相乗攻撃を仕掛け徹底的に息の根を止めようとする。

 だが、次の瞬間―――・・・業を煮やしたかのように、メノスの動きが突如豹変した。

 進化に伴い大きく発達したその脚を使って、前方に見える陸橋を無造作に蹴り上げ、自分を攻撃し続けた戦車隊に反撃した。

「全車脱出! 全速後退!」

 直ちに脱出を図る戦車隊。

 しかし、蹴り上げられた陸橋の一部が逃げ遅れた戦車と指揮所を襲撃。作戦に参加していた多くの局員が破壊された陸橋の下敷きとなった。

 沈黙する災害対策本部。モニター画面に映るメノスは指揮所を越え、クラナガン方面へ真っ直ぐ突き進む。

『目標、タマリバーを越えクラナガンに侵入!』

『CP1及び全機重火器・残弾無し!』

『タイガー1、こちら視界ゼロ。目標確認できず』

「前方指揮所壊滅! タマ戦闘団指揮機能喪失!」

「目標、防衛ライン突破! 防御陣地崩壊! 作戦続行不能!!」

「くそっ!! 総理・・・残念ながらここまです!」

「わかった―――・・・作戦を終了する!」

 結果は散々たるものとなった。

 地上部隊の総攻撃をもってしても、メノスの進行を食い止める事は出来なかった。

 そればかりか、多大なる犠牲を払うだけの負け戦となった事に首相と官僚各員、そして何よりレオンハルト自身最も憤りと悔しさを隠せなかった。

 

           *

 

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 総合司令室

 

「おいおいマジかよ・・・・・・」

「だから言わんこっちゃねーんだ!」

「でもだからって、こんなに一方的にやられるなんて」

 あまりにも規格外な力をその身に宿したメノスグランデ・エンカルナシオン。

 恐怖の大王と形容していたが、次第にその存在はより高次の存在―――この地上の穢れを払拭する為に降り立った「神の化身」とさえ思えてならなかった。

「メノスグランデ中央部の肉塊状物質からエントロピーが急激に増大!」

「それに伴い高濃度のレギオン粒子反応を確認!」

 不意に、メノス解析に当たっていたアルトとルキノがある事実を報告した。

「このレギオン発生パターンはどこかで・・・」

 見覚えのあるものだと、マリエルが疑問に思っていた折、急激に増え続るレギオン反応を見たシャリオがハッとした表情を浮かべ立ち上がった。

「マリーさん!! この反応はザックームの時と同じです!!」

「そういうことだったのね!」

 敵の真の目的を遅ればせながら気付いたマリエルは、モニター画面越しに映るメノスが腹に抱えた爆弾の正体を見破った。

「あれは“幼生虚(ラーバ・ホロウ)プラント”よ!!」

 

           *

 

第3管理世界「ヴァイゼン」

カレドヴルフ・テクニクス本社開発センター

メノスグランデ特設災害対策本部 二階会議室

 

「タマ作戦は失敗です! メノスは健在! 依然進行中です!」

「地上部隊の総力戦も徒労と化すとは・・・・・・!」

「予測計算を凌駕する事故防御力です!!」

魔導虚(ホロウロギア)が外からの魔法や物理兵器で倒せるなら、私達も苦労しなくて済みます」

「まさに人知を超えた完全生物か」

 リアルタイムで市街地での戦闘を見ていた虚災対のメンバー。

 冷静な意見を交わしつつ、その実驚異的とも言えるメノスグランデ・エンカルナシオンという存在に目を背けたくなった。

「とにかく、ここは何としてでも対策法を見つけ出さねば・・・」

「しかし情報共有があったものの、ここにきて色々と手詰まり感が出てきたな」

「ですね。ユーノさんの報告はインパクトがありましたもんね。まさかあの巨大生物の腹に抱えたものが無数の怪物を生み出す為の培養プラントだったとは」

「これでメノスが次元世界で最も厄介な生物であるという事実が確定しました」

「とは言えメノスもまた生き物だ。ならば必ず倒せる・・・筈だが」

「それを探るのもまた我々虚災体の仕事だ。生体情報だけでなく、行動にも何かヒントは無いか?」

 サブリーダー的役割を担うウシヤマが積極的に発破をかけるが、メンバーの反応は芳しくなかった。

「とは言え歩くだけですよ? 大体歩くだけでもプラントは育ってるんですよね・・・・・・あれ? でもその場合、どうやってそれだけのエネルギーを確保してるんだ?」

「確かに、何も食べずただ歩くだけでプラントを育てるだけのエネルギーを確保できるとは思えない」

 何の気なくメンバーの一人が口にした一言に周りも共感し、思案に暮れる。

「そっか! そう言う事か!!」

 直後、虚災対の最年少メンバーにしてリーダーを務めるユーノが大声を発した。他のメンバーが挙って彼へと視線を向ける。

「わかったんですよ。奴を倒す解決への糸口が―――!!」

 

           *

 

第1管理世界「ミッドチルダ」

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 総合司令室

 

 虚災対が活路を見出そうとしていた頃、マリエルは判明した衝撃の事実を居合わせた全員へ赤裸々に公表した。

大虚(メノスグランデ)の中心部は幼生虚(ラーバ・ホロウ)プラントよ。以前、機人四天王が魔力駆動炉ザックームを制圧したのはその為だったわ!」

「あのメノスはそれ自体が膨大なエネルギーを作り出す為の手段。言わば“生きるエネルギー駆動機関”なんです!」

「そして、敵の策略にまんまとはまり・・・大量の魔導虚(ホロウロギア)から得たエネルギーに加え、トリプルブレイカーと狒骨大砲はその起爆剤としてあれの進化を促す為に利用された」

「チキショウ!! スカリエッティの野郎!! 舐めたマネしやがって!!」

「急がなければメノスによる人的災害はもとより、幼生虚(ラーバ・ホロウ)が大量に生産されてしまう!」

「八神司令、本局より複数の次元航行艦が到着しました!」

 被害拡大を懸念した本局はメノスグランデ・エンカルナシオンを危険度の極めて高い生物と判断し、地上本部による総攻撃が行われる3時間前より次元航行部隊を事前にミッド方面へと向かわせていた。

 モニターを注視する六課メンバー。

 亜空間を突き抜け、最新鋭の次元航行艦数十隻がクラナガンに到着。全艦隊の主砲がメノスへと向けられた。

「よし! さすがのアイツでも艦隊の攻撃を受ければ一溜まりもねえ!!」

(いや違う・・・・・・この途方もない違和感は一体・・・・・・)

 吉良が感じたその違和感は直後に現実のものとなった。

 不意にメノスは進行を停止させ、赤く光る背びれ部分を天に突き出す様に屈み始めた。

「何しようとしているの?」

 一抹の不安を抱き息を飲むティアナ。

 すると、赤く光る部分が次第に紫色に変化し、メノスの口が顔の半分以上に裂けながらゆっくりと開く。

 それに伴い毒々しい紫色の膨大なエネルギーが口元に集束され始めた。

「“虚閃(セロ)”だ!! あの野郎、虚閃(セロ)を放つ気だ!! おい!! 早く逃げるよう艦隊の連中に伝えるんだ!!」

 事の真相に気付いた恋次が退避命令を出すようクロノに進言した直後、事態は最悪の方向へとシフトした。

 刹那、眼球が瞬膜に覆われると同時に虚閃(セロ)は細いレーザービーム状に変化。ガスバーナーの要領で射線上数百メートルの距離にある次元航行艦一隻を焼き切るように撃墜。

 衝撃的な光景に言葉を無くすメンバー。さらにモニター画面を見続けていると、メノスは背鰭の下の赤く光った部分からレーザー状の虚閃(セロ)を複数放射させ、そのうえ尻尾の先端部からも同じ虚閃(セロ)を放つ能力を備えていた。

 自身の背後、高空などの口からの攻撃だけでは対処しにくい位置にいる敵全てを焼き払う究極の一撃をもって、駆けつけた次元航行艦の全てを返り討ちにした。

「そんな・・・・・・」

「ウソでしょ・・・・・・・・・」

「次元航行艦隊が全て・・・・・・撃ち落とされた・・・・・・だと?!」

 あまりに常軌を逸した光景と予想不能な理不尽な虚閃(セロ)によって駆逐された次元航行艦隊。その悲惨な姿に力が抜け欠ける六課メンバー。

 忽ち火の海と化した街の姿。依然として人類に滅びの警鐘を与え続ける神の化身。

「あんな奴・・・勝てっこねえ!!」

 アギトが言い放った言葉に誰もが項垂れる。

 究極の生命体へと進化を遂げたメノスグランデ・エンカルナシオン―――それはまさに人類が抗うには途方も無く巨大な絶望の塊だった。

 

「いいや。希望ならまだある」

 諦めかけた時、その声は聞こえた。

「翡翠の魔導死神さん!」

 沈みかけた六課メンバーの心に活を入れたのは、虚災対本部から直行した翡翠の魔導死神だった。

「でも、どうやって? あれは最早僕たちの人智を超えた存在・・・神の化身ですよ!」

「神の化身なんかじゃない。人間の力をあまり見くびらないでもらいたいよ。何のために人間の頭脳はあると思う? どうにも立ち行かなくなった状況を打破する第三の道を見つけ出す為にあるんだ。そして見つけ出したんだ・・・・・・その第三の道をね」

 語りかけながら、翡翠の魔導死神は虚災対で練り上げた具体的な活路をプランとして纏め上げたデータを立体映像で表示。

 六課メンバーは目の前に映し出された詳細不明の極めて難解で複雑な何かの構造を表したかのような図式を見せられた。

「これは?」

「あの大虚(メノスグランデ)の構造レイヤーで、元素を変換する生体機能部の分子構造図を表している。“元素変換細胞膜”とでもいうのかな・・・水素や窒素と陽子数が少ない物質を取り入れて細胞膜を通して、細胞内の元素を必要な分子に変換してしまう。メノスはその崩壊熱を利用した《熱核エネルギー生体変換器官》を有した混合栄養生物と推測できる」

 何を言っているのか全く理解できない。専門用語の羅列と多用によって六課メンバーの悉くが頭に疑問符を浮かべ思考までもが停止する。

「えーっと・・・つまり、簡単に言いますと?」

 苦々しい表情で問いかけるなのは。翡翠の魔導死神は咬み砕いた言葉で説明する。

「要するに、水や空気さえあればどこでも生きていける霞を食する仙人みたいなものなんだ。メノスは人類を脅かす脅威であり、同時に人類に無限の可能性を示唆する福音でもあるんだ」

「そんなバケモノ相手にどうやって対抗するつもりなんだ?」

「メノスは幼生虚(ラーバ・ホロウ)プラントへのエネルギー供給を行う為に、絶えず多量の酸素を必要としていて、その為に移動し続けている可能性が非常に高い。そこから考えられる即応可能な唯一の対処法は、体外からの冷却による強制停止だ」

「そっか!! メノスは回遊魚と同じって事ね! マグロは泳ぐのを止めると呼吸が出来ずに死んでしまう。メノスも歩くのを止めるとプラントが育てられないばかりか自身も窒息してしまう。死ぬまでずっと休むことなく歩き続ける必要がある。だから冷却さえ出来れば死に至るかは不明だけど、少なくとも活動の停止は可能ってことね!!」

 マリエルも翡翠の魔導死神が言わんとしている意味を理解し、希望を見出した様子でパッと花の開いたような笑みを浮かべた。

「八神部隊長の《アーテム・デム・アイセス》、ハラオウン提督の《エターナルコフィン》を上乗せして強制停止させる。これを“プラン・マカハドマ”として、僕から提案させてもらうよ。何か異論や質問はあるかい?」

 異論はおろか質問すら湧かなかった。そんな思考すら出来なかった。

 全ての手の内を見透かした翡翠の魔導死神が立案した作戦は、六課メンバーからすれば願ってもいない好機。地獄で仏の状況で巡り合えた【最後の希望】だった。

「ったく。相変わらずこんな短時間でここまでの作戦を思いつくなんて・・・・・・まじでどうかしてるぜおまえ」

「計算上では実現可能だと言うことがまた怖いですね」

「でも、それが唯一残された私たちの最後の抵抗ならやるしかないよ」

「トリプルブレイカーが効かず、地上部隊と次元航行艦隊でも倒せない敵! 今にも完成されそうな幼生虚(ラーバ・ホロウ)プラント!」

「部隊長、やりましょう!! 私たちに出来ること全部!!」

「八神部隊長!!」

 たった一つでも希望を見出す事が出来ただけで、沈みがちだった心に光が差す。

 開けたように笑みを浮かべ士気を高める六課メンバーを見、はやては険しい表情から一変、口元を緩めた。

「ええやろう・・・・・・おし。ほんならやるで。神の化身がなんや! この世界は何が何でも私たちの手で取り戻す!! いくで、機動六課前線メンバー各員!! 《オペレーション・マカハドマ》、発令!! 作戦開始や!!」

 血気盛んな声を張り上げ、はやては作戦の決行を宣言。

 直後、翡翠の魔導死神はなのはへと顔を向けるなり言葉を発した。

「高町一尉。今回の作戦、君には重要な役割があるんだ」

「え?」

 

           *

 

午後7時過ぎ―――

ミッドチルダ中央部 首都クラナガン

 

 街を蹂躙する巨影。

 破壊神メノスグランデ・エンカルナシオンの進撃は止まらない。そして、誰にも止められないまま腹部中心で脈打つ幼生虚(ラーバ・ホロウ)プラントは完成間近だった。

「もう間もなくだな」

「あ~ん!! ついに完成しちゃうのね~、愛しの幼生虚(ラーバ・ホロウ)ちゃ~ん♡」

「ん? あれは―――」

 ふと、空を見上げたときだった。ウーノはメノスへ向かって飛んで行く複数の小さな飛翔体を確認。

 視界感度を上げて確かめると、八神はやてを筆頭とした機動六課前線メンバーだった。

「愚かな。今さら何をしても無駄だと何故わからん?」

 高を括った機人四天王は無意味な抵抗と斬り捨て、犬死を好んでいるとさえ思える彼らに敢えて手を出す気にもなれなかった。

 

「吉良、奴の動きを封じるぞ」

「あぁ」

 メノスの頭頂部付近で制止したザフィーラ、吉良の二人は歩を進める敵の動きを見ながら攻撃のタイミングを見計らう。

 次の瞬間―――二人はメノス進行を食い止める為の術式を展開した。

「囲め、鋼の軛!!」

「縛道の七十五、五柱鉄貫!」

 天より降り注ぐ白い槍状の物体が複数メノスの体へ突き刺さる。さらに、吉良が繰り出す五本の鉄柱が巨体ゆえに鈍重なメノスの体を封じ込めた。

「先陣突破! ヴィータちゃん、恋次さん、鬼太郎さん、お願い!」

「「「おう!」」」

 ヴォルケンリッター参謀・シャマルによる現場管制の元に展開されるオペレーション・マカハドマ。

 吉良とザフィーラが敵の動きを封じた直後、第一陣として鉄槌の騎士ヴィータと阿散井恋次、桃谷鬼太郎がメノスを攻撃する。

轟天爆砕(ごうてんばくさい)!! ギガントッ! シュラァァァ―――クゥゥゥ!!!」

「咆えろ、狒狒王蛇尾丸!!」

「必殺・・・俺達の必殺技!!」

  結界・バリア破壊効果を併せ持つヴィータ最大の一撃・ギガトンシュラーク。恋次の卍解が繰り出す霊圧を帯びた体当たり、鬼太郎の烈火が生み出す爆発的な炎エネルギーが合わさり、強力無比な一撃となってメノスを襲撃した。

「シグナム、フェイトちゃん、浦太郎さん!」

 第一陣に次いで、第二陣要員であるフェイト・T・ハラオウンと烈火の将シグナム(アギト融合状態)、亀井浦太郎が中空より三点同時攻撃を仕掛ける。

「翔けよ、隼!」

「貫け、雷神!」

「絡めろ、海神(わだつみ)! クラーケントライデント!」

 弓矢状に変化したレヴァンティン・シュベルトフォルムから出される魔力を乗せた斬撃・シュツルムファルケン。極大の魔法刃から結界・バリア破壊効果を伴ったジェットザンバー。魔力で出来た巨大な烏賊を自身の背後に召喚させ、三つに分裂させ敵を捕らえダメージを与える水流魔法。

 人間業とも思えぬ巨大な力と力が合わさり生み出されるエネルギーは計り知れない。

 メノスは苦しみの咆哮をあげると、体を縛り付ける鉄柱と楔を破壊し、ゆっくりとその脚を上げて体を起こす。

「フォワードのみんな!!」

 敵が状態を起こした直後、シャマルの掛け声を合図に空に最も近いビルの屋上で待機していたフォワードメンバーが動き出す。

「「「ダブルストライクドライバー!!」」」

「「シュゥゥゥ―――トォ!!!」」

 ウィングロードで接近したナカジマ姉妹による魔力付与打撃と雷を纏ったエリオのストラーダから繰り出される斬撃。ティアナとキャロによる純粋魔力射撃がメノスを狙い撃ちにする。

 業を煮やしたメノスは、背びれで赤く光ってあるものを紫色へ徐々に変化させ、口腔内に魔力と霊圧のエネルギーを集束し始めた。

 最強最悪の破壊力を秘めた虚閃(セロ)、【絶望の閃光(セロ・デゼスペラシオン)】が放たれそうになった直後―――

 

「スイング・オブ・ハデス!!」

「破道の八十八 『飛竜撃賊震天雷砲(ひりゅうげきぞくしんてんらいほう)』!!」

 金太郎の最大の切り札と、翡翠の魔導死神が繰り出す最強クラスの巨大光線がメノスの前後よりほぼ同じタイミングでクリーンヒット。

 虚閃(セロ)を放つことなく再び消沈。メノスはその巨体を地に伏せた。

「はやてちゃん、クロノ提督!」

 いよいよ作戦も終盤の段階までやってきた。

 作戦の肝である凍結を担う役割を負った八神はやて(リイン融合状態)と、クロノ・ハラオウンは術式に必要な詠唱に集中していた。

「仄白き雪の王 銀の翼以て―――」

「悠久なる凍土 凍てつく棺のうちにて―――」

 次第に周りの空気が急激に冷え、メノスが倒れた地上一帯に氷が広がり始める。

「〈氷結の息吹-アーテム・デス・アイセス-〉!!」

「エターナルコフィン!!」

 詠唱完了に伴い、両者は持ちうる力のすべてをぶつけるつもりで眼下のメノス目掛けて一撃必殺の氷結魔法を放つ。

 はやての周辺に発生した4個の立方体から氷結効果を放つ広域凍結魔法が展開。それに上乗せる形で、クロノが持つ氷結の杖《デュランダル》にプリセットされたランクオーバーSの高等魔法 が攻撃目標対象であるメノスを中心に、付近に存在するもの全てを凍結・強制停止させた。

 当初の目論み通り、メノスは凍結化によったその機能を完全に停止。全身のすべてを氷によって埋め尽くされた。

「今や、なのはちゃん!!」

 作戦のトリを飾るのはエース・オブ・エース―――高町なのは。

 手にした魔導の杖・レイジングハートに新たに搭載された新型カートリッジシステム。その初使用にやや緊張した面持ちながら、なのははゆっくりと高所から氷漬けとなったメノスに狙いを定める。

 

           ≒

 

数時間前―――

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 デバイスルーム

 

 翡翠の魔導死神から一人呼び出しを受けたなのはは、彼の口からある衝撃的な言葉を聞かされた。

「高町一尉。君には今後一切、《ブラスターモード》の使用を禁じる」

「え!?」

 耳を疑うような言葉だった。なのははおろか、愛機レイジングハートすら翡翠の魔導死神の言葉を理解しかねた。

「そ、そんな! 藪から棒に何を言い出すんですか!?」

「僕は君の体を思って言ってるんだ。ブラスターは絶大な力だ。だがそれゆえに反動も大きい。JS事件で後遺症を負い、その上度重なる魔導虚(ホロウロギア)との戦いで蓄積されたダメージは決して見逃せない。千丈の堤も蟻の一穴から崩壊すると言うように、いつあの事故と同じ運命を辿っても不思議じゃない」

「それは・・・・・・・・・でも、ブラスターは私とレイジングハートの最後の切り札なんです! あれを失ったら私は!」

「だからこそ、ハイリスクハイリターンな力は効率が悪いと言っている。それに君だって思い知ったんじゃないのか。ブラスターモードを使っても倒せない敵の強大さを」

 これにはなのはも思わず口籠った。事実を突き付けられた時ほど、もどかしく悔しい気持ちになる事も無い。

 何も言い返せないなのはは拳をぎゅっと握りしめる。そんな彼女に、翡翠の魔導死神はすかさず救いの手を差し伸べた。

「代わりに君には()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ブラスターを・・・凌ぐ力・・・!?」

 

           ≒

 

 数十分前に交わしたやりとりを思い返すとともに、なのはは組み込まれた新型機構の名を口にする。

「これが私とレイジングハートの新しい切り札・・・―――“ARカートリッジ”!!」

〈AR set. Load cartridge〉

 

『ARカートリッジ』

 

 正式名称「オーグメンテッド・リアクター・リファイニング・カートリッジ」。

 カートリッジに内蔵された「マギオン自動スキーム」と、「マギオン自動反応炉」によって魔導師が保有するマギオンを増強・精製することで強大な魔力エネルギーを作り出すアニュラス・ジェイド最強の大発明である。

 

「みんな、離れてて!!」

 凍結したメノスを破壊力抜群の集束砲で殲滅する。それはまさに彼女だからこそできる、いや―――彼女にしかできない重要な役割だった。

 いつにも増して巨大に膨れ上がったキラキラと輝く無数の魔力素の塊。

まるで全てを飲み込んでしまうかのようなそれは太陽の如く。地上で仰ぎ見ていた機人四天王も度肝を抜くほどだった。

「何をするつもりだ?」

「まさか・・・・・・いやあり得ん!」

「そうですわ! そんなバカげた話があってたまるものですか!!」

「いいえ。あの眼は・・・・・・」

 ウーノは息を飲んで確信する。曇り気ひとつ無いなのはの眼に宿った確固たる覚悟を―――・・・。

 

「全力全開ッ!! スターライト――――――ブレイカァァァアアア!!!」

 刹那、今までに拝んだことのない超規格外な集束砲が天空より地上のメノス目掛けて一直線に降り注ぐ。

 周囲の物を一切合財呑みこみ、拡大し続ける魔力爆発。

 単純な質量でこれだけの破壊力を秘めた砲撃をなのははブラスターモードでも撃った事が無かった。

「わああああああああああああああああああああああああああああ」

 過剰なエネルギーの余波が術者であるなのはとそのデバイス自身にも襲い掛かった。

 

 しばらく経つと、地上の全てを飲み込む勢いで放たれた砲撃は収まり、凍結化したメノスグランデ・エンカルナシオンは魔力と霊子に分解されながら幼生虚(ラーバ・ホロウ)プラントともども消滅を果たした。

「やったー!!」

「大成功よ!!」

 事の成り行きを六課隊舎で見守っていたマリエルらバックヤード陣営は、メノスの消滅を確認するや歓喜の声を上げて舞いあがった。

 

「そんな馬鹿な!!」

「あのメノスグランデを・・・・・・」

「きぃぃ~~~もうちょっとだったのに~~~!!」

「信じ難いが今回も我々の負けだな。許さんぞ・・・機動六課! 翡翠の魔導死神!!」

 あと一歩のところまで行きながら、全てを台無しにされた事に業腹な機人四天王。

 特にファイは機動六課、とりわけ翡翠の魔導死神への怨嗟を強く抱くと、次なる機会において必ず復讐する事を誓った。

 

「はっ、はっ、はっ、はっ・・・や・・・っ・・・た・・・?」

 たった一度の砲撃で全ての魔力を使い果たしたなのは。

 身を守るバリアジャケットは酷くボロボロになり、十数年連れ添った愛機はコア部分こそ無事で済んだものの、蒸気を上げる外装は半壊するダメージを負った。

「うっ・・・・・・・・・」

 直後、使い慣れぬ力を全開で使った反動から、なのはは全身の力が一気に抜け足場を保てずそのまま勢いをつけて落下した。

「なのは!」

 すかさず、フェイトがソニックムーブで落下するなのはを受け止めた。これにより、大事には至らずに済んだ。

「だいじょうぶ?」

「ありがとうフェイトちゃん・・・わたしはだいじょうぶ。だけど・・・これは使い方を間違えると大変なことになる。翡翠の魔導死神さん、途轍もない物を作っちゃったよ・・・」

 なのははレイジングハートを半壊させる原因ともなった新しく搭載された新型カートリッジの超絶的な威力に驚愕を通り越して、恐怖すら覚える。

(なのは・・・ごめん。ブラスターの負担軽減を目的に作ったはずが、君の体や相棒に傷をつける事になってしまった!!)

 遠目から戦いの様子を伺っていた翡翠の魔導死神こと、ユーノは満身創痍のなのはと傷ついたレイジングハートを見ながら、悔しそうに拳にギュッと力を込める。

(ARカートリッジ・・・・・・まだまだ改良が必要だな)

 己の技術の未熟さを痛感したユーノは、同じ轍を踏まぬよう早期にARカートリッジの問題点及び機能不全改善を心に誓った。

 

 

 

 

 

 

 こうして人類は最大の危機を乗り越えた。

 しかし、高町なのはの新たなる力―――ARカートリッジは、果たして次なる戦いにおいても勝利の鍵となり得るのだろうか。

 

 

 

 

 

 

参照・参考文献

原作:久保帯人 『BLEACH 6巻』 (集英社・2002)

 

用語解説

※1 リベロ=主部隊の補佐的役割を担う部隊。後方支援やリザーブとも訳される。

※2 エントロピー=原子的排列および運動状態の混沌性・不規則性の程度を表す量。

 

 

 

 

 

 

教えて、ユーノ先生!

 

「今日はメノスについてだ♪」

「正式名称は『大虚(メノスグランデ)』。幾百の(ホロウ)が折り重なって生まれたとされる巨大な(ホロウ)の事で、その名の通り偉大なる存在だ」

「作中で登場したメノス以外にも三段階に階級が分けられており、最上級メノスの力は尸魂界(ソウル・ソサエティ)の隊長格を上回るとされている」

「ちなみに、今回登場したメノスは“ギリアン”と呼ばれ、メノスの中の最下層に位置する存在なんだ」

一「しっかしメノスまで魔導虚(ホロウロギア)化するなんてなぁー。作中での暴れっぷりと言い、管理局の対応と言い、まるでこの前織姫と一緒に映画館で見て来た『シ○・●ジラ』みたいだったな!」

織「怪獣映画であんなに怖いと思ったのは初めてだったけど、ミッドだとそれがリアルに起こったんだから大変だよねー」

ユ「でも、なのは達はきっちりと自分達の世界を護り抜きましたよ。まぁこれもすべては僕の作ったARカートリッジとプラン・マカハドマあってのことですけど♪ なーっはははは!!!」

 と、さり気無く自分の功績を誇示するユーノの発言に一護と織姫は苦笑する。

一「いや・・・お前がそう言うキャラじゃねぇーのは知ってるから、ムリに鼻高くすることは無いと思うぜ」

織「そうですよ。ユーノさんは謙虚であってこそのユーノさんですから・・・」

ユ「あぁ・・・・・・やっぱり僕らしくないですかね。わかってるんですよ・・・・・・自分でもね、これは僕のキャラじゃ無いってことくらい」

一「じゃあなんでやったんだよ。キャラブレするくらいならやるなよ」

 

 

 

魔導師図鑑ハイパー!

 

 スクライア商店メンバー三人で街を歩いていた時の事・・・

鬼「思うんだが・・・熊って人生の大半を顔で損してるよな?」

金「藪から棒に何を馬鹿な事を言う」

浦「いやいや自分の顔もう一度鏡で見直してみなって。言っちゃなんだけど、リアルに世界の北野作品に出て来そうな強面だって。これじゃ子供には好かれないよ」

 浦太郎から指摘され、改めて周りを気にする金太郎。

 確かに自分へと向けられる視線は常に恐怖や畏怖といったものの類。好意を持っている人間は一人たりとも見受けられない。

 すると、そこへボールを追いかけていた5歳くらいの子供が、金太郎の前から現れた。

子「おじさーん、ボールとって!」

 金太郎は足元のボールを拾い上げ、子供へと手渡す。

子「ありがとうおじさん!」

金「ちゃんと前を見て歩くんだよ」

 と、そのとき。不意に子供がつぶらな瞳で金太郎へ問いかける。

子「ねー。おじさん」

金「なんだい?」

子「いままで何人殺してきたの?」

浦・鬼((な・・・・・・))

 子供から飛び出た言葉にたちまち顔が凍りつく浦太郎と鬼太郎。

 やがて、沈黙を置いた末に金太郎は子供の顔をじっと見ながらサングラス越しに言葉を紡ぐ。

金「・・・・・・知りたい?」

浦・鬼「「ウワアアアアアアアアアアアアア!!!!」」

 咄嗟に二人が止めに入った事で金太郎の口からトラウマ必至レベルの話が飛び出す事は無かった。

鬼「子どもになんつー事言おうとしてんだよ!!」

浦「金ちゃんのは洒落にならない話になるからやめて!!」

金「なぜ私ばかりこんな役回りなんだ・・・・・・」




次回予告

織「ユーノさんの古巣・無限書庫のシステムが乗っ取られた!」
「魔の本から放たれた魑魅魍魎。永遠の命を持つその力になのはさん達は為す術もない」
一「無限書庫の・・・いや、次元世界の存亡は元・無限書庫司書長である俺のバカ弟子の手にかかっているのか」
ユ「次回、ユーノ・スクライア外伝・・・『図書館事変』。無限書庫の平和は僕が守る!!」






登場魔導虚
メノスグランデ・エンカルナシオン
スカリエッティによって虚圏からミッドチルダへと呼び出されたギリアンが「虚食反応(プレデイション)」によって大量のデスベイトを食らった結果、突然変異を起こし変貌した新種の大虚で魔導虚。
体内には、生体原子炉とも言える「熱核エネルギー変換生体器官」を持つ。それによって生み出されるエネルギーは極めて莫大であり、孔を塞ぐ肉塊状の物質の中で幼生虚プラントの生成も行った。外皮は極めて強靭であり、強い再生力ゆえに卍解した恋次の狒狒王蛇尾丸の攻撃やなのは達のトリプルブレイカーを直撃させるもまったく効果が無かった。また、体の大きさと頑丈さにより単に進行するだけで進路上の建物が倒壊し、尻尾を振り回せば当たった建物が倒壊する。
攻撃手段として、霊圧と魔力を集中させた通常の虚閃の数百倍の破壊規模を誇る「絶望の閃光(セロ・デゼスペラシオン)」(発射の際は赤く光る部分が紫色に変化し、眼球を瞬膜のような器官で覆い、口が顔の半分以上に裂けながら開き展開する)を放つ。集束された虚閃は紫色の細いレーザービーム状に変化し、ガスバーナーの要領で標的を焼き切ってしまう。この虚閃の射程距離は非常に長く、自身からかなりの距離に位置する標的にも命中させられる。さらに、背鰭や尻尾の先端部からもレーザー状の虚閃を複数放射することも可能であることから、自身の背後や高空などの口からの虚閃だけでは対処しにくい位置にいる敵への攻撃を可能とするなど、状況に合わせて新たな防御や攻撃を即座に実現している。
エネルギーの生成には歩行による酸素吸入が必要不可欠だが、もし歩行を止めると酸素の吸入が出来なくなるため窒息状態となってエネルギー生成器官の機能が停止し、そのまま全身の活動が停止してしまう。
ユーノを中心メンバーとなって集められたメノスグランデ特設災害対策本部は飽和攻撃に対する反応と生成器官の特性を利用し、外部から超低温の凍結攻撃でメノスを封じ込める「プラン・マカハドマ」と「オペレーション・マカハドマ」により、凍結させることに成功。最後はARカートリッジを使用したなのはのスターライトブレイカーを受け、幼生虚プラントごと消滅した。
名前の由来は、「化身」を意味するスペイン語の「Encarnación」から。
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