前回のあらすじ
圧倒的な破壊力を誇る新型カートリッジシステム・ARカートリッジ。
ミッド地上を震撼させたメノスグランデ・エンカルナシオンを一撃のもとに葬り去ったそのパワーは余りに強力だった。
ゆえに、使用者・高町なのはとその愛機レイジングハートにかかる物理的な負荷は想像を遥かに超えていた。
≡
新暦076年 5月24日
第1管理世界「ミッドチルダ」
ミッドチルダ中央南駐屯地内A73区画
機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 医務室
午後9時13分―――。
ARカートリッジ使用後、なのははシャマルの治療を受けた後、六課の医務室で療養を求められていた。
シャマルは現在出払っており、部屋には彼女一人。なのはは現在、ベッドの上から夜空の星を眺望しながら今日一日の事を振り返っていた。
すると、部屋の扉が開く音がした。出入口へ視線を向ければ、フェイトがヴィヴィオを伴い入室してきた。
「ママー!」
「ヴィヴィオ、来てたんだ」
いつものように柔らかい笑みで娘を迎え入れるなのは。ヴィヴィオはどこか気丈に振る舞っている感がある母の体調を心配した。
「フェイトママから聞いたよ。体だいじょうぶ?」
「平気だよ。ちょっとハリ切り過ぎちゃっただけだから」
「本当に無理して無い? なのはは辛くても弱音を吐かないのがたまに傷だから・・・私はすごく心配だよ」
「フェイトちゃん・・・・・・・・・ごめんね。それと、ありがとう」
娘は元より、フェイトも不安一色の表情で語りかけてくる。
いつもの事ながら周りに心配をかけてしまった事を申し訳ないと思いつつ、何よりも自分を思ってくれる二人の存在が何よりも尊かった。
「そう言えば、レイジングハートの方は?」
ふとして、なのはは同じく戦いのダメージを負った相棒の事が気がかりだった。
質問を受けたフェイトは、「今マリーさんが修復に取り掛かってるよ」と、端的に答える。
すると直後、眉間の皺をやや深く寄せてからフェイトはARカートリッジ使用に関する危惧を口にする。
「それにしても、まさかなのはとレイジングハートにあれだけの負荷がかかるなんて・・・・・・・・・・・・やっぱりなのは。あのカートリッジを使うのは危ないよ」
「フェイトちゃん・・・・・・」
「確かに、翡翠の魔導死神さんはすごい人だとは思う。だけどやっぱり・・・私はあの人を完全には信用できないよ。今回の事だって元はと言えば翡翠の魔導死神さんがなのはに使用を薦めたのが遠因みたいなものだし―――「フェイトちゃん」
話の途中でなのはが水を差してきた。
見れば、なのはは露骨に顔を強張らせフェイトの話を苦々しく聞いていた。
「それ以上言うと怒るよ」
「なのは?!」
予想外の言葉にフェイトは思わず動揺した。
「私はちっとも後悔なんてしてないよ。それどころか、あのカートリッジを使ってみて分かったんだ」
「わかったって・・・なにが?」
横で聞いていたヴィヴィオも怪訝し問いかける。
すると、なのはは先程とは一変、寂寥感を醸し出しながらおもむろに言葉を紡いだ。
「・・・戦ってるときってね、孤独なんだよ。周りに味方がいると分かっていてもどうしようもなく一人になってしまう
直後、しみじみと語り続けるなのはの双眸からぽろぽろと涙が零れ始めた。
しかしこれは悲しみから来るものではなかった。なのははこれ以上ないくらい嬉しい気持ちでいっぱいだったのだ。
「なのはママ・・・・・・」
「なのは・・・・・・」
突如涙するなのはの姿にフェイトとヴィヴィオは戸惑いを抱いた。
「あぁ、ごめんね。なんだかね、涙が止まらないの。自分でもなんて言ったらいいかわからないんだけどね。でも・・・・・・確かにあのとき、ユーノ君を感じたんだよ・・・・・・///」
たった一瞬ではあったが、ARカートリッジを使用した際になのはが感じた人の温もりは紛れも無く魔法の師にして思い人であるユーノのものだった。
四年間、必死で欲し続けたものは実体こそほとんど無いに等しいが、ほんの僅かばかり彼の一部を手に入れられたような気がしてならず、なのはは感極まるのだった。
*
第97管理外世界「地球」
東京都 松前町 スクライア商店
ミッドチルダから自宅のある地球へとんぼ返りするなり、ユーノは店の地下に造られた研究室へ籠城。
なのはとレイジングハートに多大なる負荷を与えたARカートリッジの大幅な改善作業に取り掛かっていた。
膨大なデータと言うデータに
(僕は最低だ・・・・・・何がなのはを傷つけない為の発明だ・・・・・・結局は全部自己満足の怠慢じゃないか!!)
作業中、絶えず湧き上がる自分自身への怒りと嫌悪。大切な幼馴染を無碍に傷つけてしまったという結果がユーノを追い詰める。
「くっそ!!」
溢れる感情が声高な言葉となって吐かれた。ゴンっと、机を両拳で強く叩きつけるほど彼は自らの過ち、所業を許せなかった。
普段ならば側近の金太郎がユーノを宥める役に徹するのだろうが、生憎と現在彼は六課組と合流している。店にはユーノ一人しかいない。
ならば、一体誰がユーノの心を鎮める事ができるのでだろうか。
―――らしくないな。
唐突に耳に入って来た声。
刹那、ユーノの視界が突如として切り替わり、
見渡す限りの闇、闇、闇、粛然として声無し。ユーノの視界に映る静寂とした深淵の暗黒の世界。
ここへ誘われるのは随分と久しぶりな気がした。
ユーノにとってこの暗黒の世界は初めて訪れる場所ではなく、魂と魂で繋がった唯一無二の相棒と『対話』をする為に必要な場所だった。
やがて、黒闇の向こうからコツン、コツンと、音を立てて歩く、一人の人物がユーノへ近寄って来た。それに伴い、闇の中にボウ、と緩やかな明かりが灯る。
仄かな光が灯っているのはユーノの周りだけで、言うならば、重い暗闇が周囲を取り囲んでいる状態だ。
藍染惣右介や
不敵にも思える笑みを浮かべる男―――【晩翠】は、眼前の主に対して更に語りかける。
「心が揺れているな。お前の心が揺れる時、それは私の心も揺れるときでもある。今一度我に帰り、己自身を見つめ直せ」
「・・・・・・あぁ。おまえの言う通りだよ、晩翠。僕は冷静さを欠いていた」
自分を諌める意思を持った斬魄刀の存在によって、ユーノはようやく頭を冷やす機会を得る事が出来た。
やがて、心を落ち着かせたユーノは、目の前で静かに立ち尽くす晩翠に対しておもむろに語りかける。
「僕はただ・・・・・・なのはに傷ついて欲しくなかっただけなんだ。彼女が自らの意思に反してその翼を折られるような理不尽な目に遭わせたくない。笑っていてほしい。幸せでいてほしい・・・・・・ただそれだけなんだ。なのに、それなのに僕は・・・・・・」
ただただ悔しい・・・・・・。そう最後に口にした直後、ユーノの双眸から一滴の雫が零れ落ちた。
思えば、彼が涙を流す姿を見たのはいつ以来だったか。幼少の頃から大人同然として扱われ、子供ながら涙を流す機会さえ喪失していた。
しかし、なのはが事故に遭ったあの日―――ユーノは確かに涙を流していた。
晩翠はその事を思い出しながら、彼が抱える心の闇に触れながら言い及ぶ。
「―――・・・心の闇は誰しもが持つもの。闇を抱えていない人間などいない。ユーノ・・・・・・あの娘に対する想いが恋慕から心の闇に変わった
「僕は・・・・・・やはりなのはに近づくべきじゃないんだ。今さら僕にそんな資格なんてないんだ・・・・・・僕は・・・僕が許せない!」
「許せない、か・・・・・・・・・己を許す事は努々楽な事ではないのかもしれん。だが、私は知っているぞ。お前がどれほど一人で耐えてきたのか。どれほど果敢に戦い続けてきたのか。どれほど優しい人間なのか。そんなお前だからこそ、私はお前に語りかけた」
卑しい存在と位置づけ自己嫌悪に陥るユーノを慰める晩翠。
肩を小刻みに震わせるユーノにそっと手を添えてると、晩翠は息子を諭す父の如く眼差しで見つめ、鼓吹する様に呼び掛ける。
「思い出せ。無限書庫の業務に没頭した挙句、過労死寸前のところまで追いつめられたお前に私は確かに語りかけたのだ」
「!」
≒
十二年前―――
次元空間 時空管理局本局 医務局
「急いで!! 瞳孔反応が鈍ってる!!」
「昇圧剤を投与するんだ!」
なのは撃墜事件の後、彼女への罪の意識から自責の念を募らせたユーノは、罪を
医局へと担ぎ込まれたユーノは朦朧とする意識の中、シャマルを始め、医療局員の慌てふためく喧騒をどこか他人事のように感じていた。
ユーノは、自分を救う為に右往左往と奔走する人達を、どこか冷めた目で見ていた。
―――そうか。倒れたのか。僕は。
頭がぼぉとして現実感が湧かない。
―――そうか。死ぬのか。僕は。
徐々に状況が把握でき、自分の置かれている現状が理解できた。
しかし、何も感じない。
死を、ここまで身近に感じても、何の感慨も湧かない。
それどころか、受け入れてさえいる、自分がいる。
生への執着はある。
だが、死への拒否感があるのかと言われれば、それも無いのだ。
ただ、疲れた。
生きるのに。頑張って生きるのに。
自分を責めながら、生きるのに。
自分を傷つけながら、生きるのに。
だけど、誰よりも、何よりも―――ユーノ・スクライアの敵はユーノ・スクライア自身だった。
なのはを傷つけた自分が許せなかった。
フェイトを助ける時も、はやてを助ける時も、ほとんど何もできなかった自分自身を憎み、
だから、もう疲れた。
こんな自分とは未来永劫おさらばしたい。
もう、『ユーノ・スクライア』でいるのは疲れた。
ユーノはゆっくりと―――“死”に身を任せた。
その筈
彼にとって『奇跡』があったとすれば―――
誰かの計算でも手の内でもなく、本当に、ご都合主義とでもいえる程の『偶然』があったとするならば、それは、ただ一つ。
―――こんなところで死んでしまうとは情けない。
声が。
―――お前は好いた娘一人を置き去りにし、何も思わず普通に死んでしまうような薄情な男だったのか。
あまりにも唐突な『声』の塊が、霞がかった頭の中を支配した。
「・・・・・・ッ!?」
その声を聞き、ユーノは身を起こした。いや、実際に飛び起きたわけではない―――。ここはユーノの意識の中、いわば夢の中だから。
―――ようやく起きたな。いや、厳密には起きてはいないか。とりあえず、声だけだがお初にお目にかかる、ユーノ・スクライア。
異様な事に、声はするものの姿形がどこにもない。
真っ暗な夢の中に一人いたユーノは、姿を現さずに問いかけてくる謎の男の声に終始戸惑いを抱いた。
「君は・・・誰なんだ? 僕は死んだはずだ。死を受け入れた筈だ。じゃあ、ここが死後の世界ってやつなのか?」
―――違う。ここは死後の世界などではない。ここはお前の世界だ。
「僕の・・・世界・・・?」
―――そうだ。お前はまだ死んでない。限りなく死の一線を越えようとはしているが、私が首の皮一枚のところで踏み留めている。
「あ。あの・・・・・・・あれ?」
すぐに逃げる、という選択肢が無かったわけではない。
だが、暗闇から聞こえる男の声は、ユーノが勝手に動く事を憚ってしまう。
―――どうやら、相当追いつめられてるみたいだな。だが、私はお前に死なれるのは困る。せっかく私がこうして声を届かせても、私の名を呼ぶ前に死なれるなどあってはならぬことだ。
「ええと、その・・・・・・。」
―――今一度生に踏み止まれ。お前は本当にこのまま死にたいのか? 生きたくないのか?
生きたくない、そう言われると嘘になる。
生きたい。生きたいに決まっている。本当に死にたいわけじゃない。
ただ・・・死に拒否感を覚えず、死を当然の如く受け入れてしまう―――そんな自分が、生きていいのか。許されるのか。それが分からないんだ。
―――まったく、つくづくお前ほど生きるのが不得手な人間は見たことがない。
―――今一度言おう。お前がここで、死ぬことは許されない。いや、私が許さない。お前に我が名を届かせるその日まで、必ず生きてもらう。無論、この私の力を存分に引き出して欲しい。お前なら出来る。お前にしか出来ない事だ。
「君は・・・・・・何者なんだ・・・・・・」
奇妙な声の主にユーノは疑念と興味の、相反する感情を抱き始める。
その事は、当然声の主にも伝わった。
―――ユーノ、お前は不器用な男だ。不器用で、真面目で、優しい男だ。
―――あらゆる責任を背負い、負わなくていい傷と痛みを抱え、それらを一人で抱え込む愚かで、聡明な男だ。
―――私は、お前がどれだけ一人で苦しみながら生きてきたのか、文字通り痛いほど理解している。
―――どれだけ自分を責めながら生きてきたのか。どれだけ自分を傷つけながら生きてきたのか。
―――いつだって不安なのだ。自分は必要ないんじゃないか。嫌われるんじゃないのか。そんな繊細で臆病で自分に自信が持てない。
事細かくユーノの性格をプロファイリングする。
唖然とするユーノだったが、次の瞬間、だが・・・と、謎の声は逆接の言葉で紡いだ。
―――私には、お前が必要だ。お前はこんなところで死んでいい男じゃない。
その声は、慈愛に満ち溢れていて、ユーノの心を優しく抱き留めた。
直後、辺りの闇がユーノの元へと集まってきた。さながら、ユーノの疲弊した心をまるで優しく包み込むように。
―――ユーノ。今は自分を慈しめ。時を経て、我が名を聞けるようになったとき、私がお前を生まれ変わらせてやる。約束する。
声の主―――のちの斬魄刀【晩翠】は、そうユーノに宣言し、闇の中に声を沈めた。
≒
忘れかけていた記憶が鮮明に蘇る。
あのとき体験した出来事は全て幻とばかり思っていた。
だが、幻などではなかった。すべて現実だった。
あの時から、ユーノ・スクライアを見守って来た晩翠と言う存在。それは斬魄刀と言う垣根を越えた彼のアイデンティティーと化してた。
「そうか・・・・・・・・・お前はずっと僕を見てたんだよな・・・・・・ストーカーの様に」
「言い方が多少気に食わんが、間違いではない。誰が何と言おうと、私だけはお前の味方であり続ける。お前も、私も、ひとつの魂で繋がっているのだからな」
「・・・・・・ありがとう。晩翠」
晩翠のお陰で、自棄になっていた気持ちがすっと楽になった。
気が付くと、ユーノは晩翠にもたれかかり、感極まり双眸からポロポロと、嬉し涙を流し立ち尽くすのだった。
◇
無限書庫―――
管理局の創設以前より存在していた巨大な書庫。
無重力に保たれた書庫内には数多の世界で発行された有形書籍が収集されつづけている。確認されている最古の書籍は、およそ6500年前のもの。
連綿と連なる世界の歴史を納めたその書庫は・・・―――「世界の記憶が眠る場所」とも言われている。
この巨大データベースの中枢に君臨するホストコンピューターがある。
『インフィニティ・ライブラリー・レコード』―――通称『
現在の無限書庫機能の根幹を担うものと言って過言ではないこのシステムの台頭は、管理局、果ては次元世界に多大なる功績をもたらした。
だが、多くの者はこのシステムがいつどこで、誰の手によって造られた物であるかまでは知らない。
それを知るのは、古くから無限書庫で業務に当たってきた古参の司書達数名。IRDを造った人間と親しかった一部の人間のみである。
≡
5月29日―――
次元空間 時空管理局本局 無限書庫
本日、ヴィヴィオはクラスメイトのコロナとリオ、バウラ、ミツオらと一緒に社会科の職場見学で、無限書庫を訪れていた。
「うわー! でっけーな!!」
「けっこう広いねー」
初めての無限書庫に興奮気味のバウラとミツオ。
司書資格を持っているヴィヴィオ、立ち入りパスを持つコロナとリオは久方振りに訪れた無限書庫の匂いを嗅ぐと、自然表情を和らげた。
「んー、やっぱ本の匂いっていいよねー」
「ここに来るのは久しぶりだもんねー」
「そういやヴィヴィオは無限書庫の司書資格を持ってるんだっけか?」
「うん! 最近は調べものするよりストライクアーツばっかだけど・・・・・・でもやっぱりこの本でいっぱいの匂い、わたしは好きだなー」
無限書庫は大きく二つのブロックに分かれている。
一般の者でも気軽に利用が出来る『一般開放区画』。
司書資格を有する者と許可を得た者だけが立ち入りを許される『無重力本書庫』。
現在、ヴィヴィオ達がいるのは一般開放区画。とは言え、所蔵された有形書物の数は一般的な総合図書館の蔵書数を遥かに上回っている。
「やぁ、ヴィヴィオ。来ていたのか」
「アッシュールさん!!」
ちょうど、ヴィヴィオ達を見かけた若い男性の司書が声をかけた。
声を掛けられたヴィヴィオは、パッと花の開いたような笑みを浮かべ、コロナたちを伴いとことこと駆け足でその男―――無限書庫副司書長であるアッシュール・D・ギルガメッシュへと近付いた。
「ご無沙汰してます♪」
「「こんにちはー」」
「おう。コロナとリオも元気そーだな。えーっと・・・そっちの男の子二人は初めての顔だよな?」
「同じクラスのバウラとミツオです。今日はよろしくおねがいします!」
「「「「よろしくおねがいします!」」」」
「うん。礼儀かつ元気のある挨拶だ。では、順番に施設を案内しよう。全員はぐれないようについて来てくれ」
ギルガメッシュはヴィヴィオ達を同行させ、無限書庫の主要施設を順に案内し始める。
「この無限書庫の大きな役割は三つある。情報資源の構築・管理局並びに中央政府による立法活動の補佐・情報資源へのアクセス保障だ。無限書庫は印刷物から電子データまで広く情報を収集し、国民共有の情報資源を構築しているんだ」
「「「「「へぇー」」」」」
「ここが『集配センター』。管理世界国内の出版物は特別な法律によって定められた納本制御によって収拾されている」
「どんな法律なんですか?」コロナがおもむろに尋ねる。
「簡単に言えば、各管理世界で出版された有形書物はすべて無限書庫に納入しなければならない制度・・・と言ったところだな」
成るたけ、小学生の子どもに理解し易いようにと配慮しつつ、限られた時間でヴィヴィオ達にとって有意義な物を見せてやろうとギルガメッシュは見学ポイントを絞る。
「ここは『収集書誌部』。収集した資料はすべてタイトル、著者名、出版社名の書誌情報を記録して無限書庫蔵書検索、申込みシステムによって提供している」
ギルガメッシュの説明を熱心にメモに書き留めるヴィヴィオ達。
「で、ここが『資料保存課』。無限書庫は収集した資料を文化財として長く保存するという役割を持っている。ここでは資料に対して様々な予防的保存対策を施し、破損した資料は修復して保存している」
その他、無限書庫には「総務部」や「調査及び立法考査局」、「利用サービス部」、「各省庁と最高裁判所におかれている支部図書館」など、事細かに職務内容が細分化されており、これら全てが十年前に史上初の初代総合司書長に就任した一人の天才によって形作られた現在の組織図である。
「さぁーみんな。いよいよお待ちかね。ここが無限書庫の中枢とも言える無重力書庫へと続くゲートだ」
メインディッシュである無限書庫の要―――無重力本書庫へと入る瞬間がやってきた。
「へぇー、これがそうか!」
「思ってたより大きいやー」
ギルガメッシュによって示された大がかりな装置こそ、無重力が支配する無限の本棚が連なる書庫へと続く転送ゲート。
初めて利用する事になるバウラ達ばかりか、ヴィヴィオ達も随分と久しく見ていないゲートを潜ろうとした直前、ドキドキとワクワクで胸がいっぱいだった。
「ヴィヴィオから前もって聞いていると思うが、書庫の中は無重力だ。慣れていないと気分が悪くなるから、もしそうなったら直ぐに言ってくれ」
「「「「「は―――いッ!」」」」」
「それじゃあみんな、衝撃に気を付けるように。ゲート・オープン!!」
目映い光とともにゲートはヴィヴィオ達の体を包み込み、無重力に満ちた書庫へ六人の肉体を瞬時転送した。
*
無限書庫 無重力本書庫内
ゲートを通じて本書庫内へと転送されたヴィヴィオ達。
書庫に入った瞬間、重力は失われ、宇宙空間の如く光に乏しい空間に大人と子供計六人が一斉に放り出された。
「おお―――!」
「わわわっ!」
慣れない無重力に慌てふためくバウラとミツオ。と、次の瞬間―――。
「「痛っ!」」
ゴツンと、二人の額と額が不可抗力によって衝突。ヴィヴィオ達は互いに悶絶し合うバウラとミツオを心配する。
「あっと・・・ふたりとも大丈夫?」
「「いてぇ(たい)~・・・///」」
「やはり普段から飛び慣れていない子には無重力はキツそうだな。ヴィヴィオ、二人のサポートを頼めるか?」
「はい!」
「よーし、じゃあみんな。俺について来てくれ。これから凄いものを見せるぞー」
アッシュールに付いて行ったヴィヴィオ達。
無重力の海を泳ぐことおよそ五分。子供達が目の当たりにしたのは、書庫の中で一際存在感を主張していた巨大な円柱型のホストコンピューターだった。
「これが凄いもの・・・ですか?」
小首を掲げて問いかけるミツオ。ギルガメッシュはそうだ、と言って胸を張る。
「この無限書庫の頭脳であり、超巨大な自立情報収集型データベース兼管理統括システム・・・―――『IRD』だ。この一台によって無限書庫は日々増え続ける蔵書の管理と即時の資料請求を可能とした。まさに人類史上最大の発明と言っていいだろう」
「へー。こんなデっかいシステム作った奴は、さぞかし頭のイイヤツなんだろうな」
「少なくともバウラなんかよりもずっと賢い人だと思うよ」
「どういう意味だよミツオ!!」
「えっと・・・たしか、IRDの設計をした人っていうのは前の総合司書長だった、えーと名前は・・・?」
「ユーノ・スクライアさん」
リオが記憶を呼び起こすより先に、ヴィヴィオがその名を口にし、ギルガメッシュを見ながら「ですよね?」、と屈託なく笑いかけた。
「そうだ。あの人は本当にすごい人だよ。言ってみれば、この無限書庫とユーノ司書長は一心同体・・・・・・ひとつの世界と言っても過言じゃなかった」
「しかしそれは過去の栄光。前司書長はとっくに退職なさっている」
唐突に水を差した言葉が耳に入る。
声を聞いた六人が振り向くと、ややメタボ体型で小物感が全身から滲み出したような初老の男性が立っていた。
その男―――無限書庫二代目総合司書長にして、管理局理事官スノッブ・フェランは嫌味っぽくギルガメッシュに対して言葉を紡ぐ。
「聞き捨てならんなー。今の無限書庫を管理・統括しているのは誰か、わからんわけじゃあるまい。えー、ギルガメッシュくん?」
「・・・フェラン司書長」
声をかけられるや、眉を顰めるギルガメッシュ。
一方でバウラは、小さな声でフェランの事についてヴィヴィオに尋ねる。
「なー、誰なんだよあの偉そうなオッサン?」
「今の無限書庫の司書長のスノッブ・フェランさん。ただ・・・わたし、あの人のことあんまり好きじゃないんだ」
普段人のことを悪く言わないヴィヴィオでさえ、好感を持てない人間―――それがスノッブ・フェランという男だった。
前司書長の後を継ぎ、大いなる権力を笠に着て教養の乏しい者や武装局員、更には子供を悪しざまに罵る傾向がある為、周りからも人望が薄い。
「ん? なぜこんなところに子供がいる? 誰がこの私に断りなく書庫内への立ち入りを許可した!?」
案の定、ヴィヴィオ達を蛇蝎視し、ギルガメッシュを糾弾する。
「フェラン司書長。本日は
「まったく困るんだよ~、ギルガメッシュくん。書庫の最終決定はすべて司書長である私が握っているのだ。その私に何の許可も無く無知蒙昧な子供を神聖な書庫の中に連れ込むなど言語道断。本来ならば厳罰に処しているところだぞ!」
「申し訳ありません・・・。」
「ふん、まぁいい。どうせ小学生にはこの書庫の素晴らしさを理解するなど無理な話だ。無限書庫はごく限られた一部のインテリジェンスとそれを活用できる者だけが利用すべきところなのだ。君達もこんな穴倉にいつまでもいると健康を害するぞ。子供は子供らしく外に出て遊んでいるといい」
婉曲的にだが、書庫から出て行くようにとヴィヴィオ達を白眼視する。
聞いた途端、気分を害したコロナとリオ、バウラ、ミツオが即座に反意を示そうとしたところ―――
「あの・・・お言葉を返すようですが」
誰よりも先にヴィヴィオが堂々と口を出した。これにはコロナ達は元より、ギルガメッシュも驚愕した。
「なにかね、お嬢ちゃん?」
「わたしはまだ小学生ですけど、子どもの目から見てもこの無限書庫がすごい場所って事はわかります。それに、図書館はみんなのための施設です。それを一部の人が自分達の利益の為だけに独り占めするみたいな考え方は間違ってると思います!」
「ヴィヴィオ・・・―――」
間違っている事を間違っていると強く非難するヴィヴィオの勇気ある行動に、ギルガメッシュは思わず魅入られる。
「小娘が、この私に向かってよくもそんな生意気な口を・・・これだから最近の子どもはかわい気がないのだ! 子どものくせに妙に大人びおって。おまけに正義感とやらもイッチョ前ときた」
「子どもとか大人とか、そんなのは関係ないと思います。図書館はみんなのためにあるものです。わたしは前司書長のユーノさんからそう教わりました。今の無限書庫は、あなたみたいな人が司書長であることを望んでいないと思います」
「な・・・・・・なんだとぉぉ―――!!」
棘のあるひと言だった。
ここまではっきりと非難されると、さすがのフェランも業腹だった。
しかし、ヴィヴィオもまた、自分の言った事は間違っていないと、その意思を曲げるつもりは無かった。
敵愾心を露わにする二人の司書。大人と子供。どちらが善か悪かなどと言う二項対立はこの際どうでもよかった。
ギルガメッシュはこの場を丸く収めようと仲裁に入る。
「フェラン司書長、どうか落ち着いてください。子供の言った事です。どうか大目に見てもらえませんか?」
「・・・―――ふん。これだから子どもは嫌いなんだ。不愉快だ! さっさとそのガキどもをつまみ出せッ!!」
露骨に嫌悪感を露わにし、フェランはヴィヴィオ達を書庫内から出すようにと伝え、その場から立ち去った。
しばらくして、ヴィヴィオは冷静に自分の言動を省み、言ってはいけない事を言ってしまったのだと猛省。ギルガメッシュに深々と頭を垂れた。
「あの、ごめんなさい! わたしったらついあんなこと言ってフェラン司書長を怒らせちゃいました!! よりにもよってアッシュールさんの前で―――・・・」
「いや・・・・・・いいんだ。ヴィヴィオの言った事は間違ってなんかいない。俺も同感だよ。図書館はみんなのためにあるものだ。誰かが占有していいものじゃない。ヴィヴィオの話を聞いて思い出したよ。ユーノ司書長も常々図書館の独立性を強く主張していたからな」
「にしてもイヤなおやじだぜ!」
「あーいう大人には、いつか天罰がくだるんだ!」
ヴィヴィオだけでなく、この場に居合わせた全員人間として、無限書庫の主としてフェランが相応しい人物であると思えてならず悪しざまに嫌悪した。
*
同書庫内 司書長室
「まったく不愉快なガキどもだ! ギルガメッシュの奴め・・・・・・なんだってあんな無知な連中を書庫に入れるんだ! 貴重な資料に傷でも付いたらたまったもんじゃない!」
腹の虫の居所悪く葉巻を吹かすフェラン。
彼にとって無限書庫とは自分の地位向上の為のツールであり、あわよくばここを拠点に管理局の全権を掌握するという野望さえ抱いていた。
つまり、彼にとって無限書庫は自分にとって都合の良い道具でしかなく、それを阻む物は等しく有害な害虫なのである。
「この無限書庫は私の野望を叶えるため場所だ。私こそが世界の情報のすべてを掌握しているのだ! そう―――私こそが神なのだ!」
「その通りです」
歪んだフェランの欲望に共感を示す声が聞こえた。
不意に聞こえてきた声に振り返ると、フェランの前に立っていたのは薄ら笑みを浮かべる機人四天王・ウーノだった。
「あなたの仰っている事は至極正しいです。では、ひとつ思い知らせてあげましょう。あなたの力で―――」
言うと、ウーノはスカリエッティのラボで作られた“最後の
*
本局内部 第四技術部
「はい。レイジングハートの破損個所、すべて修理完了したわ。ついでに強化フレームも新しい物にしておいたわ」
「ありがとうございます。マリーさん」
マリエルから修理されたレイジングハートを渡されるなのは。
手元に戻った愛機は完全に元の形へと戻り、いつもと変わらぬ姿でなのはの掌で淡い光を放った。
〈I'm sorry to worry, master.(ご心配をおかけしました、マスター)〉
「気にしないで。私の方こそきちんと扱いきれなくてごめんね」
互いに無茶な事をしがち。似た物同士であるゆえに傷つきやすく、しかしそれでいて不屈の心を持つ。
十数年二人の事を見守って来たマリエルもそろそろ落ち着くところに落ち着いて欲しいと思いつつ、敢えて何も指摘しない事にした。何故なら、指摘したところで彼女が素直に言う事を聞くとは思えなかったからだ。
だから、二人の事ではなく別の話題について言い及んだ。
「それにしても・・・つくづくぶっ飛んだ力だったわね。翡翠の魔導死神さんが提供した『ARカートリッジ』って言うのは。ブラスターモードの欠点を補うばかりか、それすらも凌駕する力を術者から引き出す高い技術―――」
すると、逡巡した末にマリエルは、なのはに確信を持ってこう告げた。
「私ね、もしかしたら彼こそが《アニュラス・ジェイド》じゃないかと思うんだ」
「翡翠の魔導死神さんが・・・ですか!?」
マリエルの一言になのはは吃驚し目を見開いた。
「プラスターの時といい、スバルの時といい、彼はその都度未知なる技術と知識で私たちの窮地を救ってくれた。それだけじゃないの。マギオンや汎用性飛行魔法に関する正式な論文が発表されたタイミングに色々と都合よくこちらに有利な状況が整っていた。ひとつひとつの出来事を繋ぎ合わせたとき、全ての辻褄が合うわ」
彼女の推察は実に正しかった。一件複雑に思えるもの、直接関係なさそうな全ての出来事をある過程に沿って点と点を結び合わせ、一本の線にしたとき―――真実と言う名の解答を見出すことが出来る。
今、彼女はまさに翡翠の魔導死神とアニュラス・ジェイドが同一人物であるという結論に辿り着いたのだ。
「アニュラス・ジェイドと翡翠の魔導死神さんが同一人物・・・・・・だとしたら、その翡翠の魔導死神さんの正体って?」
ひとつだけ、ほぼ正解にもかかわらず決定的な必要条件が抜けていた。
マリエルもなのはも、肝心の翡翠の魔導死神の正体が他ならぬユーノ・スクライアであるという結論には達していなかったのだ。
第四技術部を後にしたなのはは渡り廊下を歩いていると―――
「よう」
気さくに声をかける男性に呼び止めらた。振り向けば、後ろから恋次が歩いてきた。
「恋次さん、どうして
「クロノの母ちゃんから茶の誘いを受けてな。いろいろ死神と積もる話をしてみたくなったんだと」
「そうですか・・・リンディさんが」
「おまえはレイジングハートを取りに来たんだろ? 直ったのか?」
「はい。お陰さまで」
〈I was also worried about Mr.Reniji.(恋次さんにもご心配おかけしました)〉
律儀に挨拶をするデバイスを見た恋次は、主人と言いややへりくだり過ぎているなと思いつつ、少し気になった事を尋ねた。
「なぁ・・・お前らっていつから一緒なんだ?」
「私とレイジングハートですか? そうですね・・・私が9歳の頃に魔法と出会ってからですから、もうかれこれ14年くらいは経ちますね」
〈Originally, with the thing which master Yuno possessed, he became the official device after proprietary rights were transferred to a current master.(元々はマスターユーノが所持していたものを、彼が所有権を現在のマスターへ譲渡されてからは正式なデバイスとなりました)〉
それを聞き、益々ユーノについて気になった恋次は思い切ってなのはに質問した。
「・・・・・・なのは。前々からずっと聞きたかったんだが、ユーノ・スクライアって言うのは一体なにもの・・・・・・」
ブーッ! ブーッ! ブーッ!
「「!?」」
突然、本局全体に響き渡る警戒警報。
その警報を聞いた途端、なのはと恋次は表情を一変させた。
*
本局内部 中央制御室
「何事だ!?」
「緊急コード08発令! 未確認の不穏分子が・・・局内に侵入したようです!!」
「何だと!? 何所にいるの! 侵入者の数は!?」
「わかりません!」
予想だにしなかった異常事態に困惑する局員。
不穏分子は短時間で本局のコンピューターシステムを混乱させ、立て続けにセキュリティプログラムを突破する。
「第5、第6、第7ブロック、全て突破されました! 目標は・・・しまった! 見失いました!!」
「マズい! 第8ブロック近くには管理システムが・・・!!」
「何て奴だ・・・局のセキュリティシステムをすべて突破するなんて・・・」
「おかしいぞ! 非常用の扉も開かない!!」
「エレベーターが止まっちゃった!!」
「全通路を断ち切られました! 脱出不可能です!!」
何処からか侵入を果たした不穏分子の手によりシステムはことごとく書き換えられ、局内で衣食住を過ごす全ての人間が巨大な箱庭に閉じ込められた人質と化す。
時空管理局本局は前代未聞―――謎の敵の襲撃を受け、そのシステムを完全に乗っ取られてしまったのである。
システムが掌握された瞬間、局内に残った全ての人間に対しある意外な襲撃者による犯行声明が発せられた。
《時空管理局全局員に告げる。私はインフィニティ・ライブラリー・レコード―――IRDである》
「IRD!?」
「まさか・・・」
《局内の全ての者に告げる。今よりこの施設のシステムは私の支配下に入った》
信じ難い話だった。局のシステムを乗っ取ったのが無限書庫のブレインであるホストコンピューター・IRDだった。
局に閉じ込められ、外からの脱出が出来なくなった者達は外部からの攻撃とばかり思っていた為、あまりに予想外な敵の正体に意表を突かれた。
《私はインフィニティ・ライブラリー・レコード―――IRD。今よりこの施設は私の支配下に入った》
「IRDなのか? 信じられない!」
「いや。これは間違いなくIRDの音声だ!」
アッシュールは確信を持って動揺する他の司書達に説明すると、何とか説得を試みる為、IRDとの直接対話に臨む。
「IRD。俺がわかるか?」
《はい。私はIRD》
「IRD。今すぐこのふざけたマネを止めて正常の機能に戻るんだ!」
『言う通りにするのが身の為だぞ・・・』
そのとき、IRDとは明らかに異なる声色が水を差した。
メインモニターに映像が表示され、現れたのは不気味な笑みを浮かべるスノッブ・フェランだった。
「フェラン司書長!?」
『
直後、フェランの姿が禍々しい物の怪と化し変貌を遂げた。
「あれは!!」
「ひぇぇぇぇ!!!」
ヴィヴィオ達も思わずゾッとするような姿だった。
全身真っ黒な毛で覆われ、大きな翼を持つ蛾のような容姿。腹話術の人形を彷彿とさせる不気味な白い仮面と申し分なさそうに胸に孔を開けた
「まさか・・・・・・フェラン司書長が怪物に?!」
あまりに非常識な光景にギルガメッシュは言葉を失う。
『今日からIRDとともに私こそがこの次元世界を統べる新たな王となったのだ!! ふはははははははは!!!』
次元世界を統べる者であると声高に布告するフェラン、いやフロネシス。
時空管理局は嘗てない危機に直面するとともに、この不測の事態に対処する為の有効手段を何ひとつ持ち合わせていなかった。
『私に楯突くとどうなると思い知らせてやる。IRD!! 愚者共に我が無限書庫が誇る智慧の洗礼を与えてやるのだ!!』
《畏まりました―――》
フロネシスによって支配されたIRDの管制人格プログラムは命令に従い、検索魔法を発動させ、無限書庫における禁じられた知識を引き出そうとしていた。
「一体何をするつもりだ・・・?」
と、そのとき。部下達がかなり慌てた様子でギルガメッシュに報告してきた。
「副司書長!! 閲覧禁止のD0888888B区画から例の魔本が動き出しました!!」
「まさか・・・“グースバンプス”か!?」
『本の魔物たちよ!! 今こそ世界へ飛び出すのだ!! お前達は自由だ!!』
声高らかに呼びかけるフロネシス。
それに呼応するかのように、閲覧禁止区域にて長らく施錠され、封じられてきた怪物童話シリーズ―――『グースバンプス』の封印が解かれた。
鍵のかかった本の魔法が解かれ、ページを高速で捲りながら、文字が浮かび上がり、やがて実体を持った怪物の姿へと変わる。
雪男に狼男、フランケンシュタインの怪物、悪魔やゾンビ、その他魑魅魍魎が多数書庫の中で溢れるようにどっと出現した。
フロネシスはこれらの怪物をすべて無限書庫の外へ出して、暴れさせることを許容―――このときより、本局はこの世の地獄と化した。
*
本局内部 第4ブロック
「ダメです! ここも隔壁ロックされてます!」
「クソー。こんなところで閉じ込められちまうなんざ・・・・・・俺としたことが、蛇尾丸を置いて来ちまうなんて!」
通路を寸断されたなのはと恋次は脱出不可能な状態に陥った。
悪いことに恋次はリンディとの茶会に出席にする際、六課隊舎に斬魄刀を置いてくるという致命的なミスを犯した。結果、二人は活路を見いだせず途方に暮れていた。
〈Something comes closer!(何かが接近してきます!)〉
そのとき、レイジングハートが急速に近づく敵の反応を捕えた。
刹那、前方の隔壁が突如強烈な力を加えられた事によって木端微塵に吹き飛んだ。
「「っ!」」
目の前から現れた敵の姿を見るなり二人は目を見開き絶句。
それは想像上の産物でしかない西洋の怪物―――獰猛な目つきでなのはと恋次を睨み付ける白い体毛に覆われた生物の名は雪男。
「恋次さん・・・・・・あれ・・・・・・何に見えます?」
「雪男・・・・・・じゃねえか・・・・・・」
露骨に表情を引きつらせ、二人は血気盛んに咆えまくる雪男の顔をじっと見ながら、一歩、また一歩と後退。
次の瞬間、脱兎の如く雪男に背を向けるなり二人は全速力で走り出した。
二人が逃げると、条件反射で雪男は咆哮をあげながらドラミング。四つん這いになって逃亡する敵を追いかける。
「「うわあああああああああああああああああ!!!!!!!」」
年甲斐も無く大声で絶叫。雪男は二人を執拗に追いかける。
「なんで局の中に雪男なんているんですかぁぁぁ―――!!!」
「俺が知るかぁぁぁ―――!!!」
思考がまるで追いつかない二人は兎にも角にも逃げる事に必死だった。
だが、逃げる二人をまるで阻むかのように前方は隔壁ロックされており、退路は再び断たれてしまった。
「行き止まりですよ!?」
「チキショー! こうなりゃ俺の本気を見せてる・・・」
言うと、恋次は雪男へと振り返り、猛る怪物を見ながら右手を差し出し―――
「破道の三十一 『赤火砲』!!」
少し霊圧を強めに込めた鬼道で雪男を攻撃する恋次。
赤み帯びた火球は雪男を直撃し、大きな爆発を生じる。それに伴い雪男は原形を留めておけず、多量の墨となった。
「やった!」
と、なのはが一喜した直後―――墨となった雪男は再び元の姿に戻り、何事も無かったように恋次達の前に立ちはだかった。
「こいつ・・・・・・不死身か!?」
「だけど逃げ道はありません。こうなったら、戦うしか!」
退路が絶たれた以上、残された手段は一つだけ。
戦って勝利を得る―――なのははレイジングハートを起動させ、斬魄刀の無い恋次を心許無いと思いながらも、この危機を乗り切る為に戦う事を決意する。
*
本局内部 第7ブロック
「「「「「うわあああああああああああああああ」」」」」
無限書庫を出たヴィヴィオ達を襲う恐怖の怪物達。
全長4メートルを超える規格外な大きさのカマキリに命を狙われ、涙ながらに逃げる、逃げる、逃げる。
「なんで職場体験にきて巨大カマキリに襲われないとならないの―――!!!」
「ミツオ、今はんなことより逃げるんだよ!!」
「ヴィヴィオ、あの怪物ってアッシュールさんが言ってた、『グースバンプス』シリーズの怪物じゃ!?」
「たぶん間違いないと思う。どこかの世界の天才童話作家さんが書いた18篇に及ぶ超大作! あまりに凶悪だからって、ユーノ司書長が厳重に鍵をかけて封印してたんだって!」
「その封印が解かれたのがこれってわけ!?」
奇しくもグースバンプスシリーズを発掘し、その力を封じたのは前司書長であるユーノだった。彼が物語の怪物達を封じてからおよそ十年の月日を経て、
「こっちだっ!!」
「ぼ、ボク死にたくないよー!!」
巨大カマキリの魔の手から逃れる為、巨大な街機能を有する本局居住スペースへ逃れる事にしたヴィヴィオ達。
しかし、厄介な事に街は既に怪物達の手によって掌握・蹂躙されていた。
スーパーマーケットを徘徊する人狼の群れ。居住スペースを丸ごと覆い尽くす巨大なクモの巣。人々を恐怖に陥れる殺人ドワーフ。
およそこの世の光景とは思えない地獄絵図が目の前に寒々と広がり、ヴィヴィオ達は絶望にも似た思いに駆られる。
「もう、ダメだ・・・・・・」
「わたしたちここで死ぬの・・・・・・///」
「なのはママ・・・・・・!」
いつか母を護る為に強くなると決意し、その為に何よりも今ストライクアーツに精を出すヴィヴィオ。
だが、ここ肝心な時に限って決まって勇気を殺されるような出来事に直面する。
死の恐怖に震える拳。脚は動かず骨は軋み上がる。発汗は止まらず、心臓の鼓動はバクバクと鳴り止まぬ。
「いやだ・・・・・・こんなところで終わりなんて・・・・・・いやだぁよぉぉぉ―――!!!」
*
無限書庫 IRDメインコントロール区画
『ふふふ・・・・・・愚民どもめ、思い知ったか。無限書庫と一体化した私に逆らうとこうなるのだ』
IRDのホストコンピューターを完全に手中に収め、その全ての機能及び無限書庫という巨大なデータベースを手に入れたフロネシスは、まさに無敵と化していた。
悠然とワインを飲むかたわら、唯一目障りな事が一つだけあった。
『エクセリオンバスター!!』
『破道の三十三、蒼火墜!!』
多くがグースバンプスの怪物にかかって抵抗する術や意志を奪われながら、なのはと恋次だけが不死である怪物達に対して攻撃を止めようとはしなかった。
『フン・・・・・・。往生際の悪い奴らよ。しかしそれもいつまで持つかな』
モニター画面から伝わる彼らの諦めの悪さを見たフロネシスは、面白くなさそうに呟き、ワイングラスにおかわりを注ごうとした―――次の瞬間。
ガタンッ―――。
IRDの全システムが突如として停止した。
フロネシスによって発せられる上位命令文を全て拒絶。あらゆるシステムが外部からアクセスされたプログラムによって強制的にストップした。
『どうした!? なぜシステムを停止する!!』
《外部にてより高位のコマンドIDによるアクセスを確認。システムコマンド000001 to 357081・・・このプログラム処理により、あらゆる上位命令文は中断されました。管理者権限により送信を停止し、識別コード名【インフィニティー・ライブラリー・レコード】は全機能を緊急停止します》
『莫迦な!? この私よりも高位のIDだと? あり得ん! 私はこの無限書庫の長! いや神だぁ!! その私の意に逆らう者がどこに!!』
「お前は無限書庫の主でもなければ、神でもない」
それは、不思議な声だった。
決して大声というわけではなく、寧ろ物静かな印象の声だったが、彼の言葉は、その場で動揺していたフロネシスの耳に、驚くほど綺麗に響き渡った。
声がしたと思しき方向に目を向け―――見慣れぬ者の影を真上に確認する。
作務衣と羽織、それに帽子と杖という奇妙な出で立ちをした、女性にも見間違いそうなまだ若い男だった。
「お前は盗んだんだ。知識を。世界を。盗み出した玉座の上で一人踊っていた泥棒の王だ。ここに眠っている蔵書の数々は過去から未来へと紡がれる遺産そのもの。そして僕にとって思い出の場所でもある。お前はそれを汚した」
『なんだ貴様は!?』
「通りすがりのしがない駄菓子屋で考古学者さ。覚えなくていい」
妙な男の登場に、露骨に不機嫌なフロネシスが声をかける。男は素っ気ない返事を返すと、自分に声をかけてきたフロネシスに顔を向けた。
『IRDッ! なにをしている!? このポンコツ目、さっさと再起動せんか!!「無駄だよ」
焦った様にIRD再起動を切望するフロネシスの言葉を水を差すと、男―――ユーノ・スクライアは淡々と述べる。
「既にIRDも、無限書庫もお前のものじゃなくなった」
『貴様・・・・・・まさかハッキングしたのか!?』
「ハッキング? そんな必要はないね。なぜなら、IRDを開発したのは他でもない―――この僕だからね」
『なん・・・だと・・・!?』
「司書達への負担が大きすぎるのと、僕個人のスキルに半ば依存した無限書庫業務全体の効率化を上層部から求められてね・・・・・・いずれ僕が居なくてもいいようにと、十年以上前からプログラムして、ようやく完成させたホストコンピューター。いや、それ自体が永久的な司書長であるもの、それこそがIRDなんだ」
多忙な司書業務をこなすかたわら、ユーノが十年と言う歳月を費やして作り上げたホストコンピューターは、個人のスキルに依存せず最大限のコストパフォーマンスを発揮する事を目的に開発した代物。
同時に、そのシステムの台頭は司書としてのユーノ・スクライアの価値を著しく下げる遠因ともなった。だが、ユーノ自身はその事を一切気にしていない。なぜならば、彼は望んでそれを受け入れたのだから。
『クッ・・・・・・IRDの設計者という事は、今回の事もすべて貴様に筒抜けだったというわけか。ふざけおって!』
「ふざけた事をしたのはお前だ。よりにもよってグースバンプスなんてものを解き放ったんだ・・・・・・この報いは高くつくぞ」
声色を一段と低くし、どすの利いた声を発する。
やがて、ユーノは仮想コンソールにIRDのパスコードにアクセスする為の専用IDを入力。IRDに秘められた真の力を引き出す。
「お前に無限書庫の真価を拝ませてあげよう―――」
《ログインIDを確認。インフィニティー・ライブラリー・レコードは再覚醒します》
宣言後、強制停止していたIRDが突如として再び息を吹き返す。
それに伴い、ユーノの足下に淡く優しい光を放つ翡翠色の魔法陣が展開された。
「システムコマンド・・・―――インフィニティー・ライブラリー・レコード、デバイスモード起動ッ!」
《デバイスモードを承認。全システム及び演算機能を数値化し、グランドマスターへと移行します》
『な・・・これは・・・!?』
周りには無限書庫に収められたありとあらゆるジャンルの魔導書、それが吸い寄せられるようにユーノの元へと集まって来た。
驚愕し呆然とするフロネシスを見ながら、全身に神々しいまでの魔力光を帯びたユーノは静かに開戦を告げる。
「さあ、検索を始めよう」
刹那―――
フロネシスへと襲い掛かる強力無比な魔力によるレーザー砲。それらは全て、目の前で漂う無数の魔導書から発せられていた。
状況が飲み込めないものの、フロネシスは紙一重でそれを避けた。
ユーノは無重力を漂いながら無数の魔導書を同時展開させつつ、膨大な演算を行いながら次なる攻撃魔法を行使する。
防戦一方のフロネシスは、一歩も動かぬまま怒涛の攻撃を行うユーノを凝視する。
あの魔法は一体、なんなのか?
そもそも、この男は何者なのか?
何もかもが解らない中で、フロネシスが理解できたのは、一つだけだった。
目の前の男は今、完全に『無限書庫』と一体し―――障害と見なした自分を削除対象としているという事だった。
『クッソぉぉぉ!! 私はこんなところで敗けぬわけにはいかぬのだぁぁぁ!!』
見ず知らずの相手、それもポッと出て現れたような優男に敗北するなど、無限書庫司書長としての―――否、彼自身の沽券に関わる事だった。
背中に生えた翼を羽ばたかせ、無重力の空間を縦横無尽に飛び回り、ユーノから向けられる攻撃を必死で避け、反撃の機会を伺う。
『うおおおおおおおおおおおお』
翼から無数の羽根を魔力と霊力の籠った弾丸のように撃ち出す。加えて、掌に圧縮した魔力と霊圧を絶妙の配合で混ぜた一撃を波導にして放つ。
「防御を」
容赦なく飛んでくる攻撃という攻撃。
ユーノはIRDと意識を共有させ、あらゆる魔法に対する耐性を備えた鉄壁の防御を敷き、フロネシスの技をことごとく防いだ。
『何故だ・・・・・・何故なのだぁぁ!! 私こそが無限書庫の司書長!! 全ての知識は私の野望の為にあるのだぁぁ!! この私以外の存在はすべてゴミ!! 価値などないのだぁぁ!!』
攻撃と言う攻撃が全て通じず、終始追い詰められ、挙句に発狂し気が狂う始末。
それを哀れだと思いながら、ユーノはこの力を発動できるタイムリミットが迫っている事を受け、額に一滴の汗を浮かべる。
「そろそろ終わらせるよ。
威圧感漂う表情で標的を見据え、途端、ユーノは魔導書から得た情報と言う力の全てと魔力を手持ちの刀・晩翠の刀身に焼き付け―――
瞬く間にフロネシスの目の前まで移動し、不意を突かれて拍子抜けした獲物を見据えてから、刃を振り下ろす。
「さようなら―――似非司書長殿。二度と、この書庫に居座るな」
ドンッ―――。
*
本局内部 第5ブロック
「「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」」
不死身の怪物群―――グースバンプスの魔物達と闘い続けていたなのはと恋次だが、ついに魔力と霊圧の底を突き、絶対絶命のピンチを迎えていた。
「もう・・・限界です・・・・・・」
「ここまでかよ・・・・・・」
必死の抵抗も虚しく、物語から生まれた怪物達は牙を剥くと満身創痍、疲弊困憊のなのは達に留めの一撃を刺そうと襲い掛かろうとした―――次の瞬間。
突然、怪物達は強い力に吸い寄せられるように自由な意思で動くことができなくなった。
なのは達は怪物達が前触れも無く目の前からいなくなる様を見て、呆気にとられ、開いた口が塞がらなかった。
「今のは・・・・・・!?」
「なにがどうなってやがるんだ・・・・・・」
施設内に散らばっていたグースバンプスの魔本から飛び出した怪物は、IRDの正常機能復旧に伴い再び本の中へと閉じ込められ、ユーノによって全ての鍵を掛けられた。
《局内の怪物の全収容を確認。空間バックアップ復旧―――書庫の施設修復、滞りなく完了いたしました》
「ご苦労さん。さすがは仕事が早いね」
『事前にあなたがバックアップのデータを取ってくれたからですよ。グランドマスター』
こうなる事を予期していたとばかり、ユーノはIRDがフロネシスの手に落ちた瞬間より、遠隔で書庫のバックアップを取っていた。その用意周到振りをIRDは非常に高く評価し称賛する。
「グランドマスター・・・か。その言い方は結構気恥ずかしいんだけど、君がそう呼びたいならそれでいいや。とにかく、僕はそろそろいくよ」
長居する訳にはいかなかった。
ユーノは
《グランドマスター》
直後、IRDが出て行こうとするユーノの足を止め、やがて呟いた。
《私たちはいつまでもあなたの帰りを待っています―――あなたこそ、無限書庫を扱える真の主なのですから》
無限書庫は最初から知っていた。
この男以外に自分や書庫を正常に機能させられる者などいない事を。
聞いた瞬間、ユーノは感慨深そうに十年間の書庫での出来事を思い返しつつ、自分を主と認めてくれたIRD―――いや、無限書庫そのものに背中越しに礼をした。
「―――ありがとう」
その後、今回の
僅か数日ののちに、司書長の座と管理局理事の職を解任にされたという。
*
機動六課隊舎 隊員寮 男性用バスルーム
本局での騒動を経て、辛うじて生き延びた恋次は怪物達との戦いで受けた傷を風呂で癒すとともに、赤裸々に今日の出来事について吉良達に語った。
「そうですか・・・それはまた災難でしたな」
「ったくよ。あんな思いはコリゴリだぜ。ただ茶飲みに行っただけで、あんな目に遭うなんて、どんだけツイてねーんだ俺は」
「ま。でも良かったじゃないか。さっきユーノさんからも慰労のメールが届いていたよ」
「けっ。やっぱあいつに全部筒抜けなのかよ・・・・・・あのモヤシ眼鏡め」
やや面白くなさそうにユーノへの悪態をつく。
しかしその後、恋次は神妙な顔を浮かべ、居合わせた金太郎や浦太郎に本局で聞きそびれたなのはへの質問を振った。
「なぁ・・・おまえら。もしかしてだが、ユーノって実は管理局員だったんじゃねーのか?」
「店長ですか?」
「おかしいとは思ってたんだ。管理局の事はやたら詳しいわ、六課の内部事情は把握してるわ、なのはに至っては奴の事を師と仰いでいやがった! 教えてくれよ―――あいつは一体何者なんだ?」
今更そのような質問をされるとは思ってもいなかった。
いや、この期に及んで自分の正体を秘匿しようとするユーノの性格を知っているからこそ、金太郎と浦太郎も呆れるしかなかったのだ。
「はぁ・・・店長ったら、ほんと自分の事は棚に上げちゃうんだから」
「仕方ないですな・・・この機会に教えてあげましょう。あの方こそ・・・」
「エース・オブ・エース『高町なのは』の魔法の師であり、果てはミッドチルダ考古学士会学士にして、無限書庫初代総合司書長を務めた男ですよ」
参照・参考文献
原作:久保帯人 『BLEACH 15巻』 (集英社・2004)
原作:久保帯人 著者:成田良悟『BLEACH Spirits Are Forever With You I・Ⅱ』(集英社・2012)
原作:都築真紀 作画:藤真拓哉『魔法少女リリカルなのはViVid 9、10巻』 (角川書店・2013)
教えて! 恋次先生!!
恋「へへへ。今日は俺様の強さの秘密を大公開するぞー!!」
「まずは俺の斬魄刀『蛇尾丸』は始解時は刃節によって遠くに離れた奴まで攻撃することができる。さらに刃節を外すことで刃を直接ぶつける『
「そして、俺さまの卍解・・・『狒狒王蛇尾丸』は斬魄刀そのものによる一撃一撃が強力になり、ギリアン級の
「必殺技は、口からレーザーのように巨大な霊圧の塊を発射する狒骨大砲だ! さらに極め付け!! 狒狒王の力を最大限に発揮した蜿蜒長蛇っつー技の威力に関しちゃ・・・」
と、熱く自分自身の斬魄刀について語っていた恋次だったが、次の瞬間―――
ユ「『獄焔鬼』♪」
コーナーを乗っ取られた事に腹を立てたユーノが恋次に向けて飄々と改造鬼道をお見舞いした。
恋「のああああああああ!!!!!! あちちちちちちちちちち―――――!!!!!!」
尻に火が点き、そのまま走り出す恋次。
ユ「まったく・・・シャマルさんと言い恋次さんといい、人のコーナーを勝手に横取りするのはやめてほしいな。さていよいよ次回は
恋「って! んなことより俺に謝れよ!!」
理不尽な攻撃をされた上にぞんざいな扱いをされた事を恋次は決して許諾しなかった。
魔導師図鑑ハイパー!
阿散井恋次はクロノの母親にして、本局統括官であるリンディ・ハラオウンに誘われお茶会の席に呼ばれていた。
設けられた部屋には近代的な部屋には似つかわしくない日本古来から伝わるグッズが所狭しと並ぶ。
恋次は室内から聞こえる鹿威しの音に違和感を覚えつつ、毛氈に座り、リンディが立てたお茶を飲もうとするが・・・。
恋「・・・・・・・・・・・・」
なかなか手を出そうとしない。これに疑問を持ったリンディが問いかける。
リ「あの、どうかなさったんですか?」
恋「いや・・・なんつーか、何となく手を出しにくいというか」
恋次は事前にクロノやフェイトからリンディが相当な甘党である事を知らされていた。
緑茶に砂糖やミルクを平気で入れて飲むという変わった嗜好の持ち主ゆえに、相当に強い警戒心を抱いていた。
恋(ルキア・・・・・・俺が死んだら後の事は頼む!)
死を覚悟し、意を決してリンディ特性の緑茶を啜ると・・・・・・
恋「!!」
リ「どうかしら?」
|恋(普通にうめー・・・・・・!)
意外にも味は普通だった事に拍子抜けの恋次。
やがて、お茶を飲み終えた恋次はリンディを見ながら恐る恐る尋ねた。
恋「なぁ・・・こんなこと聞くと怒るかもしれないが敢えて質問していいか?」
リ「なんですか?」
恋「あんた、歳いくつだ?」
アラサーの息子を持つにはあまりにも若々しすぎるリンディの容姿に疑問を感じた恋次。その問いかけに、少し考えてからリンディが口にした答えは・・・
リ「禁則事項ですわ♪」
元ネタがよく分からない恋次だったが、正直リンディに関しては見た目がきれいな妖怪か何かと思う事にした。
次回予告
ユ「君達に、最新情報を公開しよう。」
「ついに、クラナガンが機人四天王の手に落ちた! 難攻不落のコントラフォールに包まれた、一千万都民の運命は!?」
「自ら、
「ユーノ・スクライア外伝 NEXT、『クラナガン消滅』。次回も、この小説にファイナルフュージョン承認!」
「『グラーフアイゼン・ブリッツェンフォルム』―――これが勝利のカギだよ♪」
登場人物
スノッブ・フェラン
声:宝亀克寿
時空管理局理事官・無限書庫二代目総合司書長。
ユーノの後釜として司書長に就任し、管理責任者を担う立場だが、実際は権力を笠に着て自分の地位向上にしか目が無い。そのうえ、知識が乏しい人間や武装局員、子供などを悪しざまに見下す性格のため、副司書長であるアッシュールばかりか、ヴィヴィオからも快く思われていない。
無限書庫を野望を叶えるためのツールと考える心の闇をウーノにつけ込まれ魔導虚化し、ホストコンピューター・IRDを使って本局のシステムを乗っ取るも、駆けつけたユーノにより書庫の機能を奪い返され、敗北する。
事件後、政治家への裏金疑惑が発覚し、事件から程なくして司書長と理事の座を追われ失職した。
名前の由来は、一般に俗物と訳され、多くの場合は「知識・教養をひけらかす見栄張りの気取り屋」という意味で使われる言葉「スノッブ(snob)」から。
アッシュール・D・ギルガメッシュ
声:小西克幸
無限書庫副司書長。
実は先祖が地球のイギリス出身で、「D」の称号はある魔法教会で最高の魔術師に与えられる名である。
前司書長であるユーノを心から尊敬しており、ヴィヴィオや他の司書達からも人望が厚い。一方でフェランの事はあまり快く思っていない。
名前の由来は、メソポタミア北部のニネヴェのクユンジク(Kuyunjik)の丘に紀元前7世紀に設立された図書館「アッシュールバニパルの図書館」から。
登場魔導虚
フロネシス
声:宝亀克寿
ユーノの後を継いで二代目無限書庫総合司書長となったスノッブ・フェランが幼生虚との融合によって誕生した魔導虚。
全身は真っ黒な体毛で覆われ、大きな翼を持つ蛾のような容姿。腹話術の人形を彷彿とさせる不気味な白い仮面を持つ。
攻撃力は決して高くない代わりに、無限書庫のホストコンピューターであるIRDを乗っ取り無限書庫と一体化。書庫に封じられていた禁断の魔本「グースバンプス」から封じられていた怪物達を解き放ち、局の施設を破壊し、中に閉じ込められた人々を恐怖のどん底に陥れた。
備わった能力として、翼から魔力と霊力を乗せた無数の羽根を飛ばす「レッジ・ガトリング」という技がある。また、魔力と霊圧を固めたエネルギーを手から放つ「コズミック・バースト」。IRDを乗っ取り有頂天になっていた所を、外部から上位IDでアクセスされた際にIRDを奪い返され、デバイスモードを起動したユーノとの戦いで敗北し、最後は晩翠によって斬られた。
名前の由来は、アリストテレスによる哲学的な概念であり、「実践的な知」を意味する「プロネーシス(Phronesis)」から。