ユーノ・スクライア外伝   作:重要大事

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第21話「クラナガン消滅」

 ジェイル・スカリエッティの軌道拘置所脱獄に始まったこの物語には、未だ語られていない多くの謎が残っている。

 魔導師でありながら、死神の力に目覚めた青年・ユーノ。魔導死神としてその類稀なる能力で魔導虚(ホロウロギア)を倒し、秘密裡に死神や魔導師達の動向を操るこの男は果たして―――・・・どこから来たのか。

 また、(ホロウ)魔導虚(ホロウロギア)へと変貌させる古代遺物(ロストロギア)・アンゴルモア。絶大なエネルギーを持ったこの結晶物とは何なのか。

 尸魂界(ソウル・ソサエティ)からの使者としてユーノと同じ魔導死神の力を持つ男・白鳥礼二。彼に隠された未知なる力とは何か?

 そして―――・・・。

 

           ≡

 

数日前―――

新暦079年5月29日

ジェイル・スカリエッティ 地下アジト

 

「・・・あまり私もこんな事は言いたくはないのだが、言わざるを得ない。君達の度重なる失敗によって、私が二年間で育て上げた幼生虚(ラーバ・ホロウ)は今や一体を残すのみとなってしまった」

 狂気染みた笑みを浮かべるも、明確に機人四天王への落胆、そして怒りの感情を声に籠らせスカリエッティは糾弾する。

「さて、どうするつもりなのかね? 機人四天王諸君。弁明があれば是非とも聞かせてもらおうじゃないか」

「ご心配には泳ぎませんドクター。私とクアットロがこの身を以って行う例の計画―――間もなく準備が整います」

「あとは、あの脳筋ばかりの機動六課に気付かれないように事を運ぶのみですわー」

「では・・・この“空の戦士ファイ”が奴らの目を欺く囮となりましょう」

「いいえ。直接動くには些か拙速よ」

 最早後が無い。だからこそトーレもクアットロも本気の意思表示を見せる必要がある、そう感じているのは何も二人だけではない。

 しかし一方で、相手に悟られないよう慎重に動く必要があった。ウーノはファイの軽はずみな言動を諌めるとともにスカリエッティへ進言する。

「私に考えがあります。ドクター、最後の幼生虚(ラーバ・ホロウ)を使わせていただきます。よろしいですね?」

「―――よかろう。ウーノ、君のアイディアを信用するとしよう」

「ありがとうございます」

 主人からの許しを得、植物の根や茎状のものが複雑に絡まりあった場所で静かに息を潜めていた、ただ一匹だけの幼生虚(ラーバ・ホロウ)を手に取るウーノ。

 直後―――スカリエッティは白衣を翻し、忠実な手駒としての機人四天王を見ながら声高らかに演説する。

「機人四天王諸君、いよいよ君達の能力を発揮する時が来たんだ! 我々が望む我々の為の世界。自由な世界」

 

「今度こそ襲い掛かって奪い取ろうじゃないか。素晴らしい我々の夢を・・・―――!!」

 

           ≒

 

新暦076年 6月3日

第97管理外世界「地球」

東京都 松前町 スクライア商店

 

「『のび()という生き方』・・・深い本だと思わない。野比のび太という勉強ダメ・運動ダメ・ひ弱な男の子の生き方を例にあげて、現代人が忘れがちな無理をしない、頑張らないっていう生き方を説いてるの・・・なんだかね、これ読んでると心が浄化されてくるんだ。あたしここまで胸打たれたのは久しぶりだよ!」

「そんな深い文章なのかよソレ? つーか、わざわざユーノん家に来てまで読むもんじゃねーと思うぞ俺は・・・」

 スクライア商店地下に設けられた地下訓練場にて、妙な本の内容で感傷に浸る織姫を横目に、一護が半ば呆れながら諌める。

 そんな二人の目の前で、激しい轟音と衝撃が絶えず引っ切り無しに鳴り響く。

 来るべき戦いに向けて修練に励む護廷十三隊一番隊第三席、魔導死神の白鳥礼二。

 彼専属のトレーナーとして力を振るうのはスクライア商店店主で、翡翠の魔導死神のユーノ・スクライアである。

「ふぎゃあああああああああ!!!」

 悲鳴にも似た・・・いや、明らかな悲鳴を発する白鳥が一護達の目の前を横切った。

 岩場に激突し、満身創痍な白鳥を一瞥。それを容赦なく叩きつぶした斬魄刀を肩に乗せたユーノへ視線を向ける。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 ユーノは真顔を崩さず、白鳥を凝視。

 体ごと岩に体がめり込まれた白鳥が自力で出てきたのを見計らい、ユーノはふぅと嘆息を吐く。

「・・・ダメじゃないですか白鳥さん。今の攻撃であなた何度死に欠けています? 当ててあげましょうか? 54回です」

「そんなものイチイチ・・・カウントするなど、相変わらず悪趣味な男よ・・・・・・!」

「ひっどいなー。貴重な時間を割いて修行に付き合ってるのはどこの誰だと思ってるんですか? 少しはトレーナーの気持ちも汲んでもっと気合を入れてもらわないと困ります」

「だ、誰がトレーナーであるとぬかしおった!! 私は主を一度たりともトレーナーと思った事は無いわ!! ゴールデンベアーも然りだ!!」

 体はボロボロながら、プライドだけは常に一級品。ゆえに性質が悪い。

 白鳥の性格を知っているからこそ、一護達も苦笑や溜息の回数が自然と増えていく。

「だいだいお主は加減がおかしい!! さっきの一撃と言い、私を本気で殺すつもりであったではないか!!」

「あたり前じゃないですか。僕、白鳥さんを一生懸命死地に追い込んでるところなんですから。追い込んで、追い込んで、ギリギリまで追い込んで・・・・・・ヤバいところまででやめるのが修行ってもんですよ♪ ねっ! 一護さん!!」

「いやそこで俺に振るなよ・・・・・・あれか? ひょっとしておまえ、修行時代のこと結構根に持ってたりするのか?」

「そう言えば・・・むかし、あなたがユーノさんにしてた修行も今の白鳥さんみたいに過激だったもんねー」

「師といい弟子といい、血は争えねーな」

 コンの言い放った言葉が一護の胸に鋭く突き刺さった。

 ユーノのスパルタ染みた修行は、嘗て一護から受けた修行を彷彿とさせるものだった。その一護もまた、浦原喜助から苛烈極まる修行を受けていた為、どうしても野暮ったく、弟子相手に加減ができず常に全力で戦っていた。

 今となってはそれが少々誤った方法だったと、一護は深い反省の色を示す。

 本来、温厚である筈のユーノの性格がサディスティックなものに変化したのは、他でもなく自分の影響だという事に、もう少し早く気づき深慮すべきだった。

 

           *

 

第1管理世界「ミッドチルダ」

ミッドチルダ中央南駐屯地内A73区画

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 海上トレーニングスペース

 

 スカリエッティ一派との戦いに備えていたのはユーノ達だけではない。

 機動六課前線メンバーも各々の力を磨くため、個人スキルの練度を高める特訓に明け暮れていた。

「それじゃあ、次いくよエリオ」

「はい! お願いします浦太郎さん!」

 エリオ・モンディアルの専属コーチとして、同じガードウィングがポジションで槍使いの亀井浦太郎が大抜擢。教導官免許を持つ敏腕振りが如何なく発揮される。

「僕に釣られないようにね。いくよ、フィッシャーマン」

〈All right〉

 いつもの軽薄さを封印し、真剣な眼差しでエリオを見据えた浦太郎は、自己加速術式で間合いを一気に詰めると、十八番の槍術魔法―――ソニックスピアを披露。

 変幻自在。千変万化する高速槍術に防戦一方ながら、エリオは何とか攻撃を見極めんと必死になって食らいつく。

「くっ・・・やっぱり、(はや)い!!」

「ダメダメ。そんなチンタラと防御してたら。スピードに圧し負けちゃうよ」

 淡白に指摘し、更に槍撃の速度を上げてエリオを攻撃。速さと力による二重奏で狡猾の亀は若き槍騎士を追い詰める。

「のあああああああああああああ!」

 浦太郎の言葉通り、力に圧し負けて後方数メートルまで飛ばされるエリオ。

「まだだよ」

 こんなもので終わるはずが無い―――そう宣言し、浦太郎は天高く翳したフィッシャーマンの先端に渦巻く水流を固めたものを弾丸の如く放出。

「しまっ―――!」

 情け容赦なくエリオ目掛けて攻撃。往年の実力の違い如何なく見せつける。

 

「次、いくぞ。ティアナ、用意はいいか?」

「お願いしますクロノ提督!」

 執務官ティアナ・ランスターの相手を務める魔導師の名はクロノ・ハラオウン。

 本局次元航行部隊提督にして執務官資格持ちの生粋のエリート魔導師。所帯を持ち、前線に出る機会こそ殆どなくなったとは言え、一線級の魔導師としての腕は未だ健在。その実力を見込んだティアナが率先して模擬戦の相手をしてほしいと申し入れがあった時は些か驚いた。

 だが、彼としても思うところがあった。昨今の事情からいつ魔導虚(ホロウロギア)と戦う事があってもいいように、自分の腕が鈍らないうちに実戦の感覚を取り戻した方がいいと心境を述懐。二つ返事でティアナの誘いを受けた。

「シュゥゥゥ―――トぉ!!」

 若い血潮を滾らせるティアナの精密射撃魔法の嵐。

 クロノは飛んでくる橙色の閃光を十数年にかけて磨き上げた洞察力と観察眼でしかと見極め、間隙を突くなり即座に反撃へと転じる。

〈Stinger Snipe〉

「ショット!」

 魔力光弾(スティンガー)をコントロール、一発の射撃で複数の対象を殲滅する誘導制御型射撃魔法・スティンガースナイプ。

 発射後、光弾は術者クロノを中心に逃げるティアナを目標として、複雑な螺旋軌道を描きながら攻撃する。

「どこまで逃げ切れるかな?」

 単純な魔力量で言えば、ティアナの方が有利だ。しかし、魔法の練度で言えばクロノの方が圧倒的に勝っている。

 逃げても逃げても執拗に迫る誘導弾に苦慮し、ティアナは物影に隠れ機会を伺う。

(やっぱりクロノ提督の射程にいるのは危険だわ・・・・・・なのはさんが苦手とするのも頷けるわね)

 テリトリーに侵入すれば即刻ジ・エンド。

 クロノ程の相手となれば闇雲に攻撃しても撃墜させる事はまず不可能。ゆえに、ここは頭を使って対抗策を練るしかない。

(やはりティアナは僕と似ているな。そう簡単に手の内を明かそうとしない慎重さ・・・それに併せ持つしたたかに戦略を組み立てる冷静さ・・・)

 フッ・・・。と、嬉しそうに鼻先で笑うクロノ。

 次の瞬間、物影から出て来たティアナ目掛けてブレイズキャノンを発射する。

 だが、着弾と同時にティアナの体は瞬時に消滅。それが囮として仕掛けたティアナの幻術である事を見破り―――

「はあああああああああああああ」

 本命のティアナがその隙を突いて、背後から《クロスミラージュ・ダガーモード》で攻めてくる事は容易に予想が付いた。

「甘いな」

 刹那、事前に仕掛けていた拘束魔法・ディレイドバインドで特定空間に進入したティアナを対象に発動させ、捕縛した・・・―――筈だった。

「!」

 次の瞬間、捕えたティアナの体が再び消滅。これもまた彼女の作り出した囮に過ぎなかった。

 フェイクシルエットを用いた二重陽動でクロノの意表を突くことに見事成功。

 ティアナは、彼を狙い撃てる場所を確保するとともに砲撃の構えを取り―――十分に魔力を蓄えたその瞬間、なのは直伝の巨大砲撃を叩き込む。

「スターライト・・・・・・ブレイカーぁぁぁ!!!」

 橙色に染まった巨大な魔力が遠方よりクロノ目掛けて降り注ぐ。

 完全にしてやられたか・・・・・・内心そう思いながらも、その表情はどこか誇らしげであり、同時に清々しいとさえ感じていた。

 

「うりゃああああああああああああ」

 クロスレンジの爆発力が最大の武器であるスバル・ナカジマ防災士長が放つ必殺技・振動拳。

 姉であるギンガ・ナカジマが固唾を飲んで見守る中、ナカジマ姉妹の専属コーチを仰せ遣った熊谷金太郎は、仁王立ちでその拳を鉄壁の肉体で受け止める。

 硬化魔法が全身隈なくコーティングされた金太郎の体は、振動拳の威力を表面で殺すばかりか、スバルの気力すらも削ぎ落とすようだった。

「くぅぅぅぅぅ・・・・・・」

 険しい表情で拳を突き立てるスバル。だが、それも些か限界だった。

 あまりにも固すぎた。なのはの防御を砕いた振動拳も、金太郎の前では形無しだった。スバルは一旦後退するとギンガにその脅威を如実に知らせる。

「ギン姉・・・あれを破るのは至難の業だよ。スピナーがギシギシって悲鳴をあげてるみたいだった!」

「つまり、正攻法じゃ金太郎さんを倒すのは不可能ってことね」

 泰然自若。それでいて終始余裕にさえ思える大男が醸し出すもの。歴戦の勇士だけが持つ事を許された『貫禄』だった。

 金太郎は対峙したナカジマ姉妹に目を向けると、手持ちのアックスオーガを突き付け、低く圧の籠った声色で宣言する。

「どんな手を使ってでも構いません。この私を屈服させたくば、あなた方の力のすべてを出してくるのです。私は逃げも隠れもしません。そのすべてを全力で受け止め、そして全力で叩き伏せるまでです」

 絶対的な強者からの布告に、スバルとギンガは額の汗を浮かばせた。

 

「フリード、ブラストフレア! ファイア!!」

「俺の必殺技、パート2!」

 稀少な竜召喚術に長けたキャロ・ル・ルシエとその使役竜フリードリヒ。

 一人と一匹を相手に自称スクライア商店特攻役・桃谷鬼太郎が得意の炎熱攻撃で真正面から立ち向かう。

 フリードの火炎を自身の斬魄刀の炎で掻き消すや、鬼太郎は臆する事無く前に出る。

「錬鉄召喚・・・アルケミックチェーン!」

 迎え討つため、キャロはピンク色のミッド式魔法陣を複数鬼太郎の周囲に展開。陣の中心より無機物の鎖を複数召喚した。

「しゃらくせええええ!!」

 一時鎖に絡め取られるも、鬼太郎は霊圧を高めた直後、全身を縛り付ける鎖という鎖を全てを引き千切り破壊した。

「こいつでしまいだ・・・」

 束縛から逃れ、標的のキャロとフリード目掛けて斬魄刀を振り下ろそうとした途端―――悲劇は起こった。

 

「のあああああああああああ!!!」

 刹那、鬼太郎目掛けて何処からともなく桜色の直射砲撃が飛んできた。射線上にたまたま立っていた鬼太郎はその砲撃の餌食となった。

「鬼太郎さん、だいじょうぶですか?!」

 慌ててキャロがフリードとともに鬼太郎の元へ向かう。

 見れば砲撃を受けた鬼太郎の衣服はボロボロとなっており、自慢の髪の毛はアフロヘアに変わっていた。

「コラァァ、テメーら!! 人様の戦いに横槍入れるんじゃねーよ!」

 怒号を頭上にいる者達へと発する鬼太郎。

 キャロが視線を向ければ、狒狒王蛇尾丸の力を解放した阿散井恋次が、限定解除状態かつARカートリッジを使用するなのはが戦闘の最中だった。

「おいそこ、怒鳴ってんじゃねーよ! 俺は横槍なんて入れた覚えはねー。非難するならこの砲撃魔王にしろ!」

「砲撃魔王じゃないですよ! 仕方ないじゃないですか。私もレイジングハートもまだこのカートリッジの感触に完全に慣れてないんです。今のはちょっと加減が上手くいかなかっただけですよ」

 自分には非はない。不可抗力だったと弁明するなのはだが、鬼太郎は自分諸共全てを飲み込んだ挙句、訓練場を大きく抉りとったその砲撃を厳しく糾弾した。

「バカヤロウ!! ちょっととは言えねーだろ!! これを見て“ちょっと”って言えるおまえの神経がわからねー!!」

「なのはさん・・・・・・夢中になりすぎて、わたしやフリードまでとばっちりを受けるはさすがに嫌ですからね」

「あぁ! キャロまで私を非難するつもりなの!? ひどーい! 手塩にかけて育てた教え子からそんな風に思われるだなんてぇ―――!!」

 非難などではない。事実、なのはの力は強大で危険なのである。

 その事をもう少し本人が自覚して欲しいと、恋次達は切に祈るばかりであった。

 

           *

 

第97管理外世界「地球」

東京都 松前町 スクライア商店

 

 午後12時半―――。

 白鳥との修行に一段落つける事にし、ユーノは一護達が用意した昼食を摂る事にした。

「いただきまぁ―――す!! あん!! あぶっ!!」

 午前9時からぶっ通しの3時間。失った魔力と霊力を補給すべく、白鳥は人一倍のプライドをこのときばかりはかなぐり捨て、食べることだけに集中。織姫が用意した重箱弁当を次から次へと平らげ貪り食らう。

 呆れんばかりの食いっぷりだと思いつつ、織姫はユーノにこれまでの修行の成果について率直な所感を求めた。

「それで、どうなんですかユーノさん。白鳥さんの修行は?」

「ご覧の通りです。決して芳しいとは思えません。こう言っちゃなんですけど、白鳥さんってそれなりに卒なくこなせるんですけど、所謂器用貧乏でして。魔法の力も死神の力もいまひとつ決定打に欠けるんですよねー」

(クッソ~~~~~~・・・言いたい放題ぬかしおって!)

 ユーノから向けられる辛辣だが事実でもあるバッシングに屈辱感を抱く。すると横から一護が白鳥に更なる追い打ちをかけた。

「おまえも変に片意地張るところある奴だからなー。でも才能ないんじゃ、もういっそのことあきらめて女の拗ね齧って生きてみたらどうだ?」

「やかましいぞ黒崎氏!! 修行にすら参加していないそなたにそんな風になじられる筋合いはないぞ!!」

「何言ってんだよ参加してんだろうが。お前が戦ってる時にガンバレって声かけてやったじゃねーか」

「それは参加しているとは言わぬわ!! いつ声援など送った!? そんな実体のない連帯感を持っていいのは中学生までだ!!」

「気にすんなよ白鳥。一護のいうことなんかイチイチ耳貸すんじゃねー。んな暇があったら真面目に修行に励めよな」

「ぬいぐるみの貴様にあーだこーだ言われたくない!! 少し黙っておれ!!」

「バカにすんなよな! オレさまだってな、やるときゃやる男だ! その気になりゃ一護にぎゃふんと言わせる事なんて目じゃねーぜ!」

「ほう・・・そうなのか。んじゃその言葉通りぎゃふんと言わせてもらおうか?」

 あからさまにコンから受けた安い挑発に乗った一護は、理不尽なまでの暴力で中身の綿が口から飛び出る事も厭わずコンの体を激しく痛めつけるのだった。

 喧騒としながらも平穏な日常―――誰もがそれを望んでおり、多くの人間が恒久の平和を信じている。

 だが、ユーノは知っていた。この平和とそれを享受する世界を壊そうとする巨大な悪意が、間もなく大規模な動きを画策している事を。

(・・・一カ月で白鳥さんの魔力コントロールと死神としての能力値の上昇はそれなりに見込めたけど、やっぱりこればっかしは時間をかけないとどうにもならないか・・・この数か月に渡る戦いでスカリエッティの手元にある幼生虚(ラーバ・ホロウ)はおそらく既に底をついただろう・・・となると、奴らが事を仕掛けるとすれば・・・)

 青天を思わせる天井に施されたペイントを仰ぎ見、ユーノは眉間に皺を深く寄せながら焦りを募らせる。

 

(・・・少し・・・急がないといけないな―――・・・)

 

           ◇

 

6月6日―――

第1管理世界「ミッドチルダ」

首都クラナガン 東名高速ハイウェー

 

 仮初の安穏に包まれたミッドチルダ地上。

 本日、St(ザンクト).ヒルデ魔法学院初等科4学年は課外授業のため、シャトルバスに乗って管理局地上本部へと向かっていた。

「わあぁー! すっごぉぉぉーい!!!」

 ヴィヴィオはバスの中より覗き見る地上本部の圧倒的なスケールを前に、子供らしい頬の緩んだ表情を浮かべ興奮を覚える。

「はーい、みなさん。いいですか? 今から団体行動ですからね。ちゃんと先生に付いてくるんですよー」

 担任教師ノアが児童全員に注意を呼びかける。ヴィヴィオを含め素直な児童達は「はーい!」と、元気よく肯定の返事をした。

 

 数分後―――。

 課外授業の目的地・管理局地上本部へ到着したヴィヴィオ達一行は、間近で見る地上本部を仰ぎ見る。

 まるで天をも貫かんとばかりに伸びる楼閣。巨大なスカイスクレーパーは現代の富と権力の象徴を示しており、バウラなどは終始目を輝かせていた。

「やっぱデッケーな! 地上本部は!!」

「どうやって作ったのかな?」

「想像もつかないよー」

 これほど巨大な建物がどのような手法で作られたのか、コロナとリオは純粋な疑問を抱きながらも楽しそうに振る舞った。

 しばらくして、ヴィヴィオがバスの中から降りてじっくり地上本部を見ようとした折、妙な胸騒ぎを感じた。

(っ! 何だろう、この感覚・・・・・・なにかイヤな予感がする・・・・・・)

 周りに漂う空気よりヒシヒシと伝わる違和感。その正体が何か辺りをきょろきょろするヴィヴィオだったが、これを不審に思ったミツオが怪訝そうに問いかけた。

「どうしたんだいヴィヴィオ? さっきから変な顔してさ?」

「え? あっ、ごめんごめん! なんだかわたし・・・ちょっとだけバスに酔っちゃったみたい! ほんとそれだけだから!」

 そう言って咄嗟に誤魔化すヴィヴィオだが、内心言い知れぬ不安でいっぱいだった。

 

 St(ザンクト).ヒルデ魔法学院初等科4学年の児童全員は、局員に案内され、建物の中の様子を見学する。

 現在、高速エレベーターで地上400メートルを誇る展望台を目指していた。

「すごーい! ミッドの街が一望できるよー!」

「ボクなんかこの前パパと一緒に地上本部タワー23個分はある次元世界一高い山にヘリで昇ったんだぜ! いやぁ~、あそこから見る景色はまさに絶景だったな!!」

「でもそれって別にミツオがすごいわけじゃないだろ。パパが金持ちってだけだろ?」

「う、うるさいなバウラは!! なんでそう余計な事ばっかり言うのかな!!」

 折角鼻をうんと高くして自慢をしていたというのに、横からバウラに口を入れられ出鼻をくじかれるのは実に面白くなかった。

 不機嫌そうにバウラを恫喝するミツオを横目に、ヴィヴィオ達女子三人は揃って苦笑を浮かべた。

 

 しばらくして、展望台へ到着したヴィヴィオ達。

 コロナはひどく怯えた様子で窓ガラスの外を全く見ようとせず、見かねたリオが強引に見させようとする。

「ほーら、目を開けなよコロナ! このぐらいの高さなんて、別に大したことないって!」

「いやだ! この際だから言うけど、わたしは高所恐怖症なんだって!!」

 一方、何の気ない会話で盛り上がる二人を余所に、ヴィヴィオは窓の外を呆然と見ながらここへ着いた当初に感じた、あの疑惧(ぎぐ)について一人思案に暮れる。

(気のせいだったのかな・・・・・・あの胸騒ぎ?)

「なんだヴィヴィオ? 元気ないじゃん!?」

 すると、いつもの明るさに影を落とすヴィヴィオの様子が気になったバウラが声をかけて来た。

「もしかして・・・ウンコしたいのか?」

「違うよ!! バウラは女の子になんてこと聞くの!!」

 あまりにデリカシーの欠片も無い質問を向けられ、ヴィヴィオも思わず声を荒らげた。

 だが、これによってヴィヴィオは一人抱えていた言い知れぬ不安を払拭しようという意を固める事ができたのだ。

(うん、そうだよね・・・きっと気のせいだよね・・・・・・・・・)

 

           *

 

ミッドチルダ某所 セントラルレールウェイ車両基地

 

 中央環状線を担うレールウェイ車体が所狭しと並ぶ車両基地。それを腕組みをしながら天上より見下ろす機人四天王トーレ。

「フン・・・いつ見ても下らぬ光景だな。さて、早速使わせてもらうぞ。終着駅の無い無限の旅へ出かけるとしよう」

 言うと、トーレは目を紫色に光らせ周囲の機械を意のままに操る特殊な電波を発生させた。

 それに伴い、基地に停泊していたレールウェイ全てのコンピューターを完全制御。遠隔操作で手中へと収める。

 

           *

 

首都クラナガン 東名高速ハイウェイ

 

 環状ハイウェイで起こる交通渋滞は日常茶飯事。

 機人四天王クアットロは周囲の車が排出するガスの匂いを嗅ぐたび、妙な興奮を覚え終始上機嫌な様子だった。

「う~~~ん・・・ああ~~ん、この排気ガスの麗しき香り。心和ますエンジン音♪ たまらないですわ~~~♪ さぁ、みんな・・・踊りましょう♪ このクアットロと一緒に。ほぉ~ら・・・・・・発車オーライ♪」

 トーレ同様、クアットロもまた瞳を紫色に光らせ、周囲の機械を意のままに操る特殊な電波を発生させる。

 車と言う車を渡りながら屋根を踏み越え、クアットロはハイウェイに集まったすべての車を対象とした大規模術式を作りあげていった。

 

           *

 

ミッドチルダ西部 臨海第2空港

 

 地上本部航空基地とも隣接した臨海空港に降り立つ一機の戦闘機。

 ミッドチルダ中央政府が国土防衛の要として、第3世界「ヴァイゼン」にあるヴァイゼン連合戦闘群より導入した超音速戦闘機―――それに狙いを定めた、機人四天王ファイは口元を緩める。

「超音速戦闘機HAサーフェイスFか・・・地上人にしては上出来だな。この青い空にもよく似合う」

 天空の太陽を一瞥したファイ。

 直後、自分の前に現れた格好の餌を奪うべく行動を開始する。

「離陸開始―――!」

 

           *

 

首都クラナガン セントラルレールウェイ駅構内

 

「何だあれ!?」

「こっちに向って来たぞ!」

 とある駅に停車するレールウェイに向って、猛スピードで走行してくる不気味な光を帯びたレールウェイ群。

「逃げろぉぉぉ!」

 身の危険を感じ、車両及び駅構内から避難する人々。

 

 ドォーン!!

 

 激しい衝撃でぶつかるレールウェイとレールウェイ。

 衝突した直後、強引に前の車両押し進めながらレールウェイは暴走を始めた。

 

           *

 

ミッドチルダ地上 時空管理局地上本部

 

 街で起こった異変はヴィヴィオ達にも確りと伝わった。

 展望台から見える街の異様で不気味な光景。ハイウェイから天に向かって垂直に伸びる紫帯びた光の柱に人々の目は釘づけだった。

「すっげぇぇ!! 何だよありゃ!?」

「オーロラかなっ? それとも虹?」

 オーロラや虹だと思う者が多い中、ヴィヴィオは直ぐに気付いた。

 今、自分達が見ているものがそんなかわいい自然現象などではない事を―――もっと恐ろしい物である事を確信した。

(いったいなんなんのあれ・・・!? よくわからないけど、たしかなのはひとつ・・・・・・すごくイヤな予感がするってことだけ・・・)

 次々と光柱の数は増えていった。

 クアットロによって遠隔操作された車両一台一台から伸びる柱は次第にクラナガンを巨大な円形ドームで覆い始める。

 

「局員の指示に従ってください! みなさん、落ち着いて下さい!」

「こちらは特別展望台へのエレベーターです! 下りのエレベーターは下の階からです! ここからは降りられません!」 

 街の異変を見て生命の危機を察した人々はパニックに陥り、我先にと建物からの脱出を図る。局員は冷静さを失った一般市民の対処にてんてこ舞いだった。

St(ザンクト).ヒルデ魔法学院の児童、早く集まってください!!」

 人混みにもみくちゃにされかけるも、何とかこの事をなのは達に伝えるべくヴィヴィオはセイクリッドハートで連絡を試みる。

(とにかく・・・早くママ達に連絡しないと!)

 しかしそのとき、セイクリッドハートが困った顔を浮かべた。

 愛機の表情を見た瞬間、ヴィヴィオは思わず「え!?」と、声を漏らした。

(通信電波って・・・!? じゃあ、やっぱりこれはスカリエッティの仕業なの? それとも戦闘機人!?)

 

『エレベーターは現在動きません! 地上へは階段をご利用ください! エレベーターは動きません!!』

 突如建物に向かって根を張って伸びて来た謎の奇怪な植物によって、地上本部はその機能を完全に停止した。

 地上へと続く階段へ集まり脱出を試みようとする人々。

 しかし、そんな彼らを待ち受けるのは意思を持った植物。不気味に蠢く生命体の触手が逃げようとする者達を次々と絡め取ってゆく。

「あ・・・あ・・・み、みなさん!! 早く展望台へ戻ってくださぁ―――い!!」

 嘗てない恐怖に怯えながらノアが生徒を退避させようとする。

 ヴィヴィオは目の前で見た、うねうねとする植物とそれが醸し出す独特の雰囲気からその正体が何なのかを悟った。

(これって・・・!! 幼生虚(ラーバ・ホロウ)プラントだぁ!!)

 

「―――さて、妹達も準備が整ったことだし・・・私も動くとするわ」

 白昼のミッドチルダ都心を揺るがす大パニック。

 海上方面で混乱に陥った街の様子を一人モニターで確認したウーノは、次のなる段階へ作戦を実行に移すべく自らも動き出す。

 見れば眼下に潮を吹くマッコウクジラが映った。

 ちょうどいい素体だと思い、彼女はおもむろにクジラへと近づいた。

「あなたのような大人しい子は私との相性もいいはず。ドクターと私達の夢の為に、その身を委ねなさい・・・―――」

 言うと、マッコウクジラを素体に体内に宿した『(ホロウ)化因子』を用いてウーノは自らを魔導虚(ホロウロギア)化させるのだった。

 

           *

 

 首都クラナガンで発生した紫色の光は数時間で首都全体を丸ごとドームのようにすっぽりと包み込んでしまった。

 一千万都民はドームの中へと閉じ込められ、囚われの身となった。

 

           ≡

 

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 総合司令室

 

 街の様子をリアルタイムで見ていた機動六課メンバーは、全員でこの非常事態に対処すべく緊急対策会議を開いていた。

「諸君、非常事態が起きた! あの巨大な光のドームの中には、一千万都民が閉じ込められている。地上・空中・地下・・・外部からは完全に遮断されてしまった」

「くそー! スカリエッティの野郎ッ!! メノスの時といい、ムチャクチャなことしやがって!!」

「大変です!! 今日はヴィヴィオ達の学年は課外授業で地上本部に行ってることがわかりました!」

「つまりは、あの中に閉じ込められてるってことかよ」

「強力なジャミングで内部との連絡は全て途絶えてます!」

「レギオン粒子の反応も全く感知されていません」

「ヴィヴィオ・・・・・・こんなときに私は・・・・・・!」

 頭を抱えて事態の深刻さを痛感する六課メンバー。

 やがて、眉間に皺を寄せながら部隊長・八神はやてははっきりと断言する。

「―――今回は、機動六課始まって以来の総力戦になることは間違いない。その為に、前線隊長・フォワード部隊・死神の皆さん・それに管制官から技術スタッフにも集まってもろうた。現在の状況、そしてこれからの作戦を遂行するにに当たって、不備の無いよう全員心しておくんや」

「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」

 

「八神部隊長! ヴァイス陸曹長が持ち帰った映像を出します!」

 コンソールを叩き、シャリオはヴァイスがヘリに乗って撮影してきた映像をメインスクリーンへと表示する。

 全員がモニターを注視する中、ミッドチルダ政府保有の無人偵察機が光のドームに向って近付こうとする様が見て取れた。

「政府の偵察機のようですね」

「問題はこの後だね」

 浦太郎が懸念を持って口にした次の瞬間―――

 光のドームへ近づいた数機の偵察機は空から降って来た超高速で動く黒い物体の攻撃を受け、爆発を生じるとともに一瞬で破壊された。

「何だぁ!?」

「フライトカメラからの伝送ビデオをコマ送りにして解析してみます!」

 映像をコマ送りにしながら、アルトは解析を急いだ。

 およそ数十秒のコマ送りで見えた飛翔する巨大な影。それが起こしたと思しき衝撃波を伴った激しい動き。

 やがて、明朗に解析された結果が画面へと映し出された。

「解析したところ、極めて強い衝撃波を放つ飛行態と思われます。どうやら、ヴァイゼン連合軍保有の超音速戦闘機と融合した魔導虚(ホロウロギア)らしきもののようですが・・・・・・しかし、やはりレギオン反応は見受けられませんでした」

魔導虚(ホロウロギア)じゃないとすると、一体何なんなの?」

「ルキノ、もっと詳しく分かるか?」

「拡大してみます」

 クロノからの要求に答え、ルキノは映像を更に引き伸ばしす。

 モニターに映し出された謎の飛行隊を二倍、三倍と徐々に拡大していった先―――そこに映し出された意外すぎる者の正体にフェイトは目を見開いた。

「!」

 紛れも無くそれは以前彼女が直接対決した機人四天王の一人、ファイの姿を模った物だったのだ。

「機人四天王ファイ!!」

「ふむ・・・どうやら今回は、機人四天王が直接手を下してるようだね」

「今まで人類の前に現れては魔導虚(ホロウロギア)化を続けてきた戦闘機人が、ついに自ら動き出すとは!」

「忘れもしねーぜ・・・ナンバーズの4番、クアットロ! 魔力駆動炉ザックームに現れてあたしらを煽ってきやがった!」

 ヴィータはほんの数か月前の出来事―――魔力駆動炉ザックームでの邂逅を思い返し、終始自分達を見下したかのような態度を取っていたクアットロの顔が頭にちらついて仕方なかった。

「奴らめ・・・自分達が高度な生機融合体とでも思っているのか?」

「正直それはわからん。だが、今回は機人四天王自らが手を下すだけでなく、他の機械とも融合して巨大魔導虚(ホロウロギア)化をも果たしている」

「中央政府の戦闘機も融合されてしまっていますからね。迂闊に近付くこともできません」

「機人四天王全員が直接戦闘に参加してきたということは容易ならない事態です!」

「みなさん、地上部隊の魔導戦車部隊が、あの光のドームに接近したときの様子です!」

 リインの声かけで早速その映像を見てみる事に。

 暫し映像を注視していた折、光のドームへ向った戦車部隊がことごとくして、光のドームに巻き上げられ、無残に崩壊していくという光景が目に焼き付いた。

「おいおいどういう事だぁ!?」

 わけがわからず鬼太郎は思わず声をあげる。

「成程ね。高エネルギー粒子の複雑な動きが付近の空気を押し上げ、さらには構造体の分子結合を崩壊させているのよ」

 映像を見て即座に物理法則を見出すマリエル。

 彼女は、光のドームを構成する重力に逆らって物体を押し上げようとする粒子の動きから、便宜上“コントラフォール”―――と、命名した。

「このエネルギーバリアは三つの層から成りなってます。解析した結果、構造はこの通りです!」

 コントラフォールを構成する三つの層の構造を表す詳細な画像。それを見るや、全員は目を見開き唖然とした。

 シャリオ達は驚愕の余り言葉すら失いかけている全員を気に掛けるとともに、層ひとつひとつを構成する要素を説明する。

「第一層は、非常に強力な超電磁バリアです」

「迂闊に近づけば電子機器はもちろん、デバイスの制御は元より、術者自身も黒焦げだな」

「二層目は、濃縮酸素を蓄えた防御膜です」

「濃縮酸素!?」

「ということは・・・先輩とは相性最悪ってわけだ。そんなものに引火しやすい炎攻撃なんかぶつけたらその瞬間、大爆発だよ!」

「そして、三層目ですが・・・極めて高密度に圧縮されたエネルギー融合体です。スペクトル分析によると、その表面温度は6000度に達しています!」

「6000度って!!」

「シャーリー、あの中のヴィヴィオたちは無事なの!?」

 真っ先に娘の安否を気遣い声を荒らげるなのは。

「コントラフォール内部は極めて常温に近い状態ですので心配は無いのですが・・・ひとつ懸念があります」

「懸念?」

「これだけ膨大なエネルギーと、それに大勢の人間を確保する必要がある状況・・・・・・今までの経験から察するに、その答えはひとつしかないわ」

「まさか・・・・・・!」

 マリエルから全員へと向けられた危惧。

 勘の鋭い浦太郎が逸早く彼女の言わんとしている事を察し、続けざまに吉良も気付いた様子で重い口を開いた。

「あの中で幼生虚(ラーバ・ホロウ)プラントが作らているということか・・・」

 ぞっとするような話に全員は背筋を凍らせ顔を強張らせる。

「一千万都民を魔導虚(ホロウロギア)化する気か!?」

「それだけは何としても、絶対に阻止せなあかん!」

 決して許されざる機人四天王による前代未聞の暴挙―――いや、大量虐殺をも視野に入れた人畜非道な行いをゆめゆめ看過する事は許されない。

 敵の計画を防ぎ、捕われた都民を必ず救い出すという決意を各々が一段と強く持ったのを見計らい、シャリオの口から作戦が通達された。

「では作戦を説明します―――金太郎さん、八神部隊長、ヴィータ副隊長でこのコントラフォールを攻略します。第一層は、金太郎さんの集束魔法『スイング・オブ・ハデス』の超振動で電磁エネルギーを消滅させます。第二層は、八神部隊長のデアボリック・エミッションで空間ごと穴を空けて、第三層は、ヴィータ副隊長の新リミットブレイクで突破口を開きます。シグナム副隊長とザフィーラには空の戦闘機人を引き離す囮になってもらいます」

「「わかった(心得た)」」

「フォワード陣と浦太郎さん、鬼太郎さんには、海洋生物と融合した戦闘機人の気を逸らしてもらいます」

「「「「「「はい!」」」」」

「オーケー。引き受けたよ」

「おーし! いっちょやってやるぜ!」

「しかし、いずれの場合も高エネルギー体の一部を数十秒間しか消滅させられません」

「数十秒で作戦を遂行しろってか?」

「バリアの穴が完全に閉じてしまう前に、なのはさんとフェイトさん、恋次さんには内部に突入してもらいます」

「うん、わかった。やるしかないようだね。必ずヴィヴィオ達を助けてみせるよ!」

 すると、不意に金太郎が浦太郎と鬼太郎へ近づきある物を手渡した。

「お前達。これを受け取るのだ」

「あ?」

「なにこれ?」

 渡された物を凝視する二人。

 それは手のひらサイズに収まるくらいの、どこにでも売っていそうな「お守り」にしか見えない巾着袋だった。

「店長から何かあった時のための()()だと言伝をあずかっている。大事に持っていろ」

 

「分析の結果、コントラフォールのエネルギーレベルが最も低いミッドG地区近辺を突入場所とするのが最適ね」

 マリエルは解析結果から導き出された最善の進入路を見出した。

「おーし・・・・・・一千万都民の生命は、私ら時空管理局にかかっとるさかい! ほんなら行こうか。機動六課前線部隊、全員出撃やッ!!」

「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」

 

           *

 

第97管理外世界「地球」

東京都 松前町 スクライア商店

 

「まずいぞユーノッ!! このままじゃ本当にスカンク野郎の思う壺だぜ!! どうすんだよいったい!?」

 スクライア商店に集まった一護達は、ミッドチルダ最大の危機をモニターで静観していたが、居ても立っても居られないとばかりコンは声を荒らげる。

「ユーノ・・・」

「ユーノさん・・・」

 一護や織姫が静かにユーノへ問いかける。

「・・・―――来たるべきXデーがとうとう来たんです。最早一刻の猶予も無い。今ここで動かなきゃ一生後悔する」

 そう言うと、ユーノは満を持した様子で重い腰を上げ、一護達を前にひとつの重大な決断を下した。

「スカリエッティの思う通りにさせるわけにはいかない。一護さん、織姫さん、コンさん、白鳥さん。僕と一緒に来てもらえませんか?」

 その言葉が向けられる瞬間をこれでもかとばかり待ちわびていた。

 一護は織姫とともに喜々とした笑みを交わし合い、コンもコンで不敵な笑みを浮かべ、白鳥は気乗りこそしないものの覚悟を決めた様子でふぅと息を漏らす。

「ったくよう。ずいぶんと待たせてくれるじゃねえかバカ弟子が!」

「みんなで力をあわせて戦いましょう。ユーノさん」

「オレさまの腕が鳴るぜぇ~~~!!」

「やれやれ・・・・・・面倒事に巻き込まれるのは好きではないのだがな」

 おもむろに立ち上がり、ユーノと目線を合わせる一護達。

 ユーノはミッドチルダへ渡る事に一切の躊躇いを抱いていない様子の彼らを見てとても心強いと思う事ができた。

「では、現地到着後の流れを説明します。一護さんと白鳥さんはミッドへ到着したらまず機動六課メンバーと合流し、プラントの破壊と戦闘機人の迎撃を行ってください。織姫さんは負傷した人達の治癒を。僕はヴァイゼンで少々準備があります」

「おい白鳥、この一カ月の修行の所為か・・・ちゃんと出してもらわないと困るぜー」

 若干の不安を抱いた一護がおもむろに尋ねると、白鳥はいつになく自信に満ちた表情を浮かべた。

「まったく・・・いったい私を誰だと思ってそのような言葉を口にするか。私こそ、一番隊第三席にして期待の星、いずれは尸魂界(ソウル・ソサエティ)に必ずやその名を残す事を霊王様より許しを乞うた白鳥礼二であるぞ!」

「さっすが白鳥さん。根拠も無くよくそんな自信と妄言が言えますね♪」

「妄言言うな!!」

「・・・・・・でも、その自信が今は必要です。あなた失くして魔導虚(ホロウロギア)根絶はあり得ない」

 しんみりとした声を発したユーノは、一か月の間で白鳥が修行でどれほどの成果を出せるか、内心不安でいっぱいながらも彼の潜在能力を信じ全てを託す事にした。

 

「よーし! んじゃ行くぜ・・・・・・死神代行組、ミッドチルダへ出陣だ!!」

 

           *

 

第1管理世界「ミッドチルダ」

首都クラナガン コントラフォール外部

 

 コントラフォール内部へと閉じ込められた一千万都民救出へと向けて行動を開始した機動六課前線メンバー。

 なのははフェイト達とともに、ミッドチルダ中心部で不気味な光を放ちながら空へと粒子を押し上げる光のドームに向って飛び続ける。

(待っててね・・・ヴィヴィオ。必ず私が助けるから!)

 と、飛行を続けていた折―――真正面より飛来してきた音速戦闘機と融合して魔導虚(ホロウロギア)化したファイ・ニルヴァーナを目撃する。

「来た!」

「あれは私達に任せろ。ゆくぞ、アギト!」

「おっしゃー!」

 率先して囮役を買って出たシグナムはアギトとユニゾンすると、ニルヴァーナの巨体に一切の恐れを抱かず剣を振るう。

「破道の三十一、赤火砲!」

「破道の三十三、蒼火墜!」

 そのシグナムを援護する為、地上からは恋次と吉良も鬼道で攻撃を加える。

「ぼやぼやしてんじゃねー金太郎! さっさとなんちゃらハデスとやらを使え!」

「畏まりました。それでは参りますぞ―――」

 地上に根を張るように強く足下を踏ん張る金太郎。

 大きく構えたアックスオーガの刃は金色色の魔力光によって目映い光を放ち、いっぱいに溜めこんだその力を一気に前方目掛けて放つ。

「スイング・オブ・ハデス+―――!!!」

 スイング・オブ・ハデスの欠点である「チャージ時間の長さ」の解消を敢えて無視し、逆にチャージ時間を延ばすことで威力の大幅アップを狙った大破壊魔法。結果的に、威力の大幅アップに加え、技そのものに結界機能の完全破壊機能が付加される。

 その攻撃力はまさに超軼絶塵(ちょういつぜつじん)。他のどの魔導師や騎士にも並ぶ者はなかった。

 コントラフォール第一層を構成する超電磁バリアのエネルギーはスイング・オブ・ハデスの力によって消滅した。

『コントラフォール第一層貫通! 復元まで時間がありません!』

 ドドーン! ドカーン!

 そのとき、突如として地面の下から撃ち出される砲撃の嵐が金太郎や地上で戦う恋次達へと襲い掛かった。

「地下から砲撃か!?」

 

『ははははははははははははは!!! 管理局の犬共め、私達の力を思い知るがいい!!!』

 地下の仄暗い水脈に潜み砲撃を仕掛ける敵の正体は、海洋生物と融合して魔導虚(ホロウロギア)化したウーノ・カストラであった。

 マッコウクジラとナガスクジラ科のヒゲクジラを合わせた感じの姿で、多数の回転式砲台と両舷から伸びる巨大なアームを備えた異形の怪物と化し、身も心も人である事を放棄した彼女は最早無敵になった感覚だった。

「邪魔はさせないよ! 先輩、みんないくよ!」

「よっしゃー!」

「「「「「はい!」」」」」

 ちょうど現場へ到着した浦太郎達は、各自デバイスと斬魄刀を用いた攻撃でカストラの注意を引く。

「へっ! オメーの相手は俺達だ。ここで決着をつけようぜ!」

『望むところよ。今こそ、あなた方に止めを刺してあげるわ・・・』

 

「詠唱完了!! リイン、準備はええか!?」

〈いつでもいけます!〉

 シュベルトクロツを天に掲げ、魔力を最大限まで絞り上げたはやては、コントラフォール第二層を破壊する為の広域空間魔法を発動した。

「遠き地にて、闇に沈め―――デアボリック・エミッションッ!!!」

 球形状に形作られた純粋魔力の塊。バリア発生阻害能力を持った魔力攻撃を受けた途端、第二層に穴が空く。

『第二層貫通! しかし、もう時間が!』

「ヴィータ、あとは頼むでー!」

「おう! あたしの出番だぁぁ―――!!」

 血気盛んに控えていたヴィータがコントラフォールに向かって飛んで行く。

「そうはさせん!!」

「いけない! ヴィータ!」

 ニルヴァーナがヴィータを狙っている様を見て危機感を募らせた吉良だったが、次の瞬間―――

 カキンッ! 鋭い金属音を響き渡らせ、アギトとユニゾンしたシグナムが燃え滾るレヴァンティンの刃で、ザフィーラも自らの体でニルヴァーナの進路を防いだのだった。

「邪魔はさせぬ!」

「今のうちだ!」

「シグナム、ザフィーラもわりー! 恩に着るぜ!」

 烈火の将とそれを支える盾の守護獣の粋な心遣いに感謝するヴィータ。

「ぶっつけ本番になるがやるっきゃねー・・・・・・翡翠の魔導死神、オメーの力を信じてやるよ!」

 そう言うとヴィータは、数日前―――翡翠の魔導死神から送られてきた次世代型カートリッジシステムをグラーフアイゼンに装填する。

「IPカートリッジ装填! グラーフアイゼン、フォルムフュンフテ!」

〈Blinzenform〉

 刹那、ギガントフォルムと基調とした第五形態《グラーフアイゼン・ブリッツェンフォルム》へと変化した。

 

『IPカートリッジ』

 

 正式名称「イノベーション・プライム・リファイニング・カートリッジ」。

 アニュラス・ジェイドによって作り出されたARカートリッジを更に改良し、より安全で汎用性を重視した次世代カートリッジシステムである。

 

「ぶち抜けぇええええええええええええ!!!!!」

 技の発動時、目映いばかり金色に発光するヴィータの体。これはカートリッジに内蔵されている「マギオン自動スキーム」と、「マギオン自動反応炉」のエネルギーが術者を保護のために展開する特殊なエネルギーコーティングによるものだった。

 ハンマーヘッドを高速で叩きつけた瞬間、重力波が形成され、その中に割断ウェーブが作り出され、対象を光速にまで強制的に加速させることで光子に変換、消滅させるだけの強大なネルギーが作り出された。

 その効果により、高エネルギーを有した第三層が光の粒子となって消滅。その瞬間に中へと続く突入口が確保された。

『第三層貫通! 今ですなのはさん、フェイトさん、恋次さん、コントラフォール内に突入してください!』

「「「了解(おう)!」」」

 

 層が破壊されたと同時にコントラフォール内部へ突入するなのは、フェイト、恋次。

 突入直後、想像を遥かに超える光景が三人の瞳に映った。

「なっ!?」

「これは!」

「うそ・・・でしょ・・・!?」

 クラナガンという街がまるまる異常に隆起した何も見えない大地の山。自然界では決して拝めないものがそこにはあった。

「急ごう、なのは、恋次さん!」

 反りたった大地を突っ切るように空高くへと舞い上がる三人。

 そして、頂きに辿り着いたとき―――既に首都全域にかけて無数の幼生虚(ラーバ・ホロウ)プラントが覆いつくされたこの世の地獄と化していた。

「「「これはッ!」」」

 

 

 

 

 

 

参照・参考文献

原作:久保帯人 『BLEACH 11、26巻』 (集英社・2003、2007)

 

 

 

 

 

 

教えて、ユーノ先生!

 

ユ「今回は・・・―――」

 と、紹介を挟もうとした矢先。突然の襲撃を受ける。

ユ「のああ!! ウソでしょー!!」

 機人四天王ウーノによる妨害を受け、ユーノは強制的に退場させられる。

ウ「今日は私が機人四天王による魔導虚(ホロウロギア)化ついて説明をするわ」

 そう言って本日、作中で見られた機人四天王による魔導虚(ホロウロギア)化について説明し始めた。

「私達は体内に『(ホロウ)化因子』と呼ばれる三重螺旋状の特殊な遺伝子情報を持っていて、幼生虚(ラーバ・ホロウ)を使わずとも、魔導虚(ホロウロギア)化する事が可能なの。しかもドクター自らが施した融合プログラムによって生物は元より、機械との融合すらも可能よ」

「そして、この力を使ってファイが戦闘機と融合したニルヴァーナ。私がクジラと融合したのがカストラと言うわけ」

ユ「どうでもいいけど、人のコーナーを勝手に乗っ取るのはいい加減止めてくれるかな!!」

 自分のコーナーに対する執念は人一倍強いユーノなのであった。

 

 

 

魔導師図鑑ハイパー!

 

一「よーし、ミッドチルダに行くぞー・・・って、何してんだよテメー!?」

 ミッドチルダ行きが決まった直後、一護は信じられない光景に目を疑った。

 呑気な事に白鳥はミッドチルダへ着ていく服を入念にチェックし始めたのだった。

白「身嗜みは大事である。いついかなる時も男子たるもの、恥ずかしくない格好で死ねるようにと言うのが我が家の家訓でな」

一「んなこと言ってる場合か!! この非常時にお前って奴は・・・・・・って、オメーラも何やってんだよ!!」

 ふと周りを見れば、一護の周りで織姫は化粧を整え、コンはユーノが作った義骸の着心地を確かめるように体を機敏に動かし、ユーノもユーノで在庫表の管理をしていた。

織「いやー、だってさ。知らない土地に行くわけだし、ひとまず周りから変に見られたくないっていうか!」

コ「向こうでオレさまの力を見せつけて、美人な魔導師のお姉さんを虜にしてやるんだ!!」

ユ「しばらくは店を空けなくちゃいけないわけですからね。今のうちにこういう細かいことはやっておかないとならないんですよ♪」

一「おまえら・・・・・・そろいもそろって呑気すぎるだろうがぁぁ―――!!!」

 切実なる一護の叫びがスクライア商店に響き渡った。




次回予告

ユ「君達に、最新情報を公開しよう。」
「ついに、人類存亡を賭けた大都市決戦が始まった!」
「音速の対決:フェイトVSファイ! 地下水脈の死闘:フォワードメンバー・浦太郎・鬼太郎VSウーノ! フルパワーの激突:ヴィータ・シグナム・吉良・金太郎VSトーレ・クアットロ!」
「ユーノ・スクライア外伝 NEXT、『激突!機人四天王』」。次回も、この小説にファイナルフュージョン承認!」
一「『白鳥礼二』―――これが勝利のカギだ!」
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