ユーノ・スクライア外伝   作:重要大事

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第23話「白の爪牙、黒の月牙」

 それは、何十年前の事だっただろうか。

 

 時空管理局内部において、権力者同士の派閥争いが今以上に激しい時期があった。

 派閥争いに負けた者達は、様々な不当な罪を着せられ―――『処刑』され、時として魔導生物にいたぶり殺される運命が待っていた。

 魔導生物に勝てる力を持った者達の場合、魔法の存在しない辺境の世界に追放される事もあったという。

 

 俺の一族も、本来ならば、そうした追放刑を受けていたのかもしれない。

 

 十数代前に、空戦と魔法に優れた一族として、その力のみで確固たる地位を手に入れた俺達“空の一族”だったが―――地位に安寧した一族は堕落し、次第に空戦技術や魔法の力も薄れていった。

 高い力を持つ武闘派の魔導師一族として恐れられていたのも遠い昔。やがて魔法の力すらろくに使えなくなった一族の『力』自体を恐れる者は誰もいなくなっていた。

 だが、俺の一族は、力と引き替えに、過去に手にした遺産を元手に不動産業や金貸しとしての事業を興し、多額の賄賂を積んで管理局高官へと昇りつめ、権力者としての地位は頑として護り続けたのである。

 『力』の代わりに、一族の『財力』に怖れをなす人々。

 その恐れを利用し、一族の人間達は更に事業を拡大し、ますますその力を蓄えた。

 魔導師の矜持を忘れ、他人を蹴落として金を稼ぐ事に勤しむ日々。

 まだ幼い少年だった俺は、それが自然な事だと思っていた。自分が何を成さずとも世界は回り、両親が使う様々な権利が、やがて自分にも巡ってくるのだと。

 だが、俺には、兄が一人存在した。

 彼だけは、そうした一族とは異なる気質を持ち―――優しく、そして一族の名に誇りを持っていた。

 過去に一族が打ち立てた武勲の話を俺に何度も繰り返し、一緒に時空管理局の魔導師を目指そうという兄が、俺は少し疎ましかった。

 危険な敵と闘わずとも、自分達の代わりに誰かがやってくれるだろうに、何故彼はわざわざ自分から魔導師になろうとするのだろう。しかも、こちらまで巻き込んで。

 そんな事を直接訴えた俺に、兄は言った。

 ―――「お金はいつか無くなってしまうかもしれないが、誇りは無くならない」

 ―――「おまえは、俺よりもずっと強い力がある」

 ―――「だから、シエロはきっと、強い魔導師になれるさ」

 ―――「ご先祖様みたいに、強くて立派な魔導師に」

 

 兄はそんな事を言いながら、俺に笑いかける。

 金汚くなる一族の中で、兄だけが異質であり、清廉たろうとしていた。

 俺は、そんな清廉さを自分にも求めてくる兄が嫌いだったが―――兄の笑顔だけは、家族の誰よりも好きだった。

 その笑顔が見続けられるなら、魔導師とやらになってやってもいいかもしれない。

 幼い俺は、そんな生意気な夢を抱き、見よう見まねで魔法の扱いを学んでいく。

 ―――「しょうがないな。僕も魔導師になってやるから、兄さんは足手纏いならないでよ」

 強がる弟に、兄は優しく微笑んだ。

 ―――「シエロなら、ご先祖様よりも強くなって、みんなの模範になれるさ」

 兄の微笑みが心に刻みこまれ、魔導の杖を振るうのもおぼつかない年頃の少年は、幼いなりに更に努力を続けていった。

 兄が望むような、誰よりも強く、高潔な魔導師になろうと。

 

 しかし、その努力は水泡に帰す事になった。

 

 一族の財を狙った複数の管理局員が結託し、時空管理局に対する反乱という罪をでっちあげたのだ。

 魔導師として純粋な力を失い、鍛錬を怠っていた一族の面々はあっさりと捕えられ―――魔法学院に通っていた兄もすぐに捕縛された。

 無論、俺も例外ではなく―――裁判の結果、一族郎党の処刑が決まった。

 

 処刑にもいろいろな形があった。一族を待ち受けていたのは、違法研究施設での人体実験だった。

 当時、管理局上層部で秘かに進められていた『恐るべき支配者計画』という狂気染みた実験に一族の多くが巻き込まれ、そして死んでいった。

 謎の投薬やらガスやらを体に注入された事で拒絶反応を起こし死んでいく者。魔導生物と闘い敗れ去っていく者。金勘定ばかりやっていた一族が生き残れるはずもなく、いよいよ残されたのが俺と兄の二人だけになった時―――何故か、二人同時に牢の中へと連れこまれた。

 手錠と足枷が外され、俺達強大にはそれぞれ魔導師の杖が手渡される。

 まさかこれで兄と殺し合えと言われるのではないかと思い、俺は全身を凍らせた。

 実際、局員達からは、最後に残った兄弟を殺し合わせて賭けをしようという案も出ていたのだが―――魔法学院の優秀な生徒と、杖もろくに持てないような少年では賭けにならぬと却下されたのだ。

 その代わりとなる『余興』の内容を、執行人の男が穴の上で高らかに唄う。

 ―――「かつて英雄と呼ばれた空の一族には、既に我々が(たっと)ぶべき力は残されておらず、継続させるに値せぬ血筋と、ここに実証致しましょうぞ」

 ―――「空の一族の血の結集にして最後の血脈でもある二人の兄弟。二人がかりでも魔導生物一匹滅する事ができず、怠惰な日々を送った己の祖先を呪いながら死んでいく様こそが、空の一族の力が没落した証明に他なりませぬ! とくと()()()あれ!」

 何を言っているのか、俺には理解できなかった。

 執行人の男も、一族を嵌めた管理局の一員。

 この場に味方などおらず、奸賊の(むれ)の下卑た笑みが、俺と兄を見下ろしていた。

 笑いながら、見物人の管理局員達が一族を、自分達兄弟を罵る言葉を吐きかける。

 裁判の時も、散々『醜く汚れた一族』と糾弾され、実際に、一族が行ってきた後ろ暗い悪事も公開された。

 ―――違う。

 ―――兄さんは、兄さんだけは違うんだ。

 ―――気づけよ、気づいてくれよ、兄さんだけは違うって、なんで解らないんだ。

 金絡みの汚濁に塗れた一族の中で、兄だけは清廉潔白だった。それを弟である俺は誰よりも知っている。だが、当時の俺にはそれを弁舌で否定する力も、兄を武によって助け出す力も無い。

 しかし―――絶望に満ちた顔をして震える俺に、兄は振り向き、笑った。

 ―――「大丈夫だ、シエロ」

 ―――「俺が、絶対ここから出してやる」

 次の瞬間、兄は顔から笑みを消し、真剣な表情で穴の上の執行官に問い質した。

 ―――「なれば、私達が魔導生物を打ち斃せば、一族に祖先と同じ力が宿り続けるという証となりましょうぞ!」

 ―――「貴殿の述べた『継続するに値する血脈』たる証を立てたその暁には、何卒我らの延命を聞き入れられたし!」

 頭上からの嘲笑を全て跳ね返し、黙らせる程の―――強い言葉だった。

 執行人の男はしばし沈黙した後、『よかろう。魔導生物を滅ぼした暁には、我々が直接、三提督に助命を進言しよう』と、表情を消して呟いた。

 

 

 結果として―――兄は、よく健闘したと言ってよいだろう。

 俺の眼に映るのは、身体に無数の傷を負った巨大な魔導生物。

 そして、そんな魔導生物の大顎に腹を咥えられ、身体をくの字に折り曲げる兄の姿だった。

 助けに行こうと魔導師の杖を握ろうとするが、恐怖に全身に(から)め捕られる。

 そんな俺の方を、まだ息のある兄が振り向いた。

 見ないでくれ、と、俺は心の中で叫ぶ。

 魔導師になると兄と約束したのに。

 強い魔導師になれると期待されたのに。

 足一つ動かせない自分を、どうか見ないでくれと俺は泣きながら首を振った。

 しかし、残酷な兄は、俺の顔を見て、また笑った。

 いつもと同じような笑みで、俺を一言も責める事なく―――

 ―――「強い魔導師になれよ、シエロ」

 と、ただそれだけ呟いた後、両手で力無く印を組みつつ、口元で何かを詠唱した。

 

 次の瞬間、兄の身体と魔導生物の顔面が激しい業火に包まれる。

 

 俺の絶叫は喉の奥で潰れ、声にすらならなかった。

 兄は、自分が本来扱えぬ砲撃魔法を詠唱する事で暴発させ、自らの身体ごと魔導生物を破裂させたのである。

 暴発の威力は凄まじく―――兄の身体も、魔導生物の上半身も消し飛び―――俺の脳裏に、最後の微笑みだけが焼きつけられた。

 

 どれだけの時間が過ぎたのだろうか。

 長い長い絶叫が終わり―――脳髄が、ようやく人としての思考回路を取り戻した。

 だが、膝を落とした俺は、兄の死を受け入れる事ができず、ただ、考える。

 ―――嘘だ。こんなのは嘘だ。

 ―――兄さんが死んで、僕だけが生き残る筈がない。

 ―――兄さんだけは、汚れてなかった。綺麗なままだった。

 ―――なんでだよ。なんで僕じゃなくて、兄さんが・・・・・・

 そんな事を考える少年に、現実は残酷な言葉を突きつけた。

 

 ―――「最後に残った少年が、泣くのを止め、闘う事を決意したようだ。賞賛を!」

 進行役の男の言葉の意味が理解できない。

 魔導生物はそこで半身を失って死にかけている。

 闘うとはなんの事だ? 魔導生物との闘いは終わった筈だ。もっとも自分の望まない形で。

 そんな俺の疑念と、生存への希望を打ち砕く形で、執行役の男が笑いながら告げた。

 ―――「さあ、()()()()()()を穴に放て!」

 

 俺は、その時どんな顔をしたのか、自分でも解らない。

 ただ、こちらを指さして笑う観客達の笑顔だけが目に映る。

 一族郎党、使用人に到るまでの342名を処刑した後でもなお、偽りの罪を一族の名に被せた局員達は、飽きたらずに(わら)い続けている。

 絶望した自分を笑う局員達の顔は、俺に一つの事実を押しつけた。

 兄は、()()()()をしたのだと。

 命をかけて俺を護ろうとした兄の笑顔は、全ては、局員達の無駄な余興の一つとして消費されたに過ぎないのであると。

 

 新しく穴に連れこまれた巨大魔導生物の牙が、呆けた俺の顔に迫り―――

 その瞬間、俺の中で何かが千切れる音がした。

 

 

 ―――「おい、あの小僧はどうなった?」 ―――「あの魔導生物が顔を上げんから、解らんな」

 ―――「いないぞ」 ―――「一口で食われちまったらしい」

 ―――「なんだ、つまらん」 ―――「悲鳴はどうした!」

 数分後―――局員達は、姿を消した少年が魔導生物に食われたものと判断した。

 呆気ない幕切れだと、局員の一人が肩を落とした瞬間―――

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ―――「え? あ?」

 穴の中に二本の腕が無造作に落ち、何事かと見上げた魔導生物の顔が見える。

 だが、その口元には少年の返り血一つ見られない。

 両腕を失った局員は、自分の身に何が起こっているのかも理解できぬまま、バランスを崩して穴へと落ち、絶叫を響かせながら魔導生物に食われた。

 悲鳴が局員達の間に広がり、我先にと見物席から逃げだそうとする局員達。

 だが、足が動かない。

 見ると、自分達の足に、鎖状のバインドがまるで生き物のように絡みついているではないか。

 執行人は何が起こっているのか解らず、デバイスを起動して周囲を見る。

 穴の底近く。壁の一部に穴が空いており、その穴の淵が生き物のように蠢いているという事にだ。

 更に周りを見渡し―――動けずに悲鳴をあげている局員達の側に、喚きも騒ぎもしていない少年が一人で立っている事に気がついた。

 執行人は、その少年が先刻まで穴の底で泣いていた一族の人間だと気づき、慌てて杖を構え、殺傷設定の魔法を発動せんとしたが―――

 呪文を紡ぐ声の代わりに出てきたのは、舌を切り裂く刃だった。

 

 そして、局員達にとって、懺悔と後悔の時間が訪れる。

 短くとも永い苦しみと痛み、果てしない絶望を味わいながら―――

 彼らは、決して最後まで許される事はなかった。

 

 

 施設を脱出した俺は、両手で顔を覆いながら、一人思う。

 考えつくあらゆる方法で見物人の局員達を殺し尽くしたが―――心に救いは訪れない。

 復讐は何も生まないと昔読んだ小説本に書かれていたが、あれは真実だったのだ。

 あんなに殺したのに、あんなに苦しめたのに、全ては無駄な行為だった。

 もしかしたら、あの局員達の中に、一人は自分達を笑わなかった者がいたかもしれない。なんとか救う手はないかと考える局員がいたかもしれない。そう思うと心が痛むが、心を痛めたところで誰も生き返りはしない。兄が帰ってくる筈もない。

 ―――僕は、どうすれば、どうすればいいんだ。

 全てを失った俺は、引き換えに手に入れた一つの力と、『強い魔導師になれ』という兄の言葉だけを手に、次元世界を彷徨った。

 

 数十年後、ジェイル・スカリエッティに出会うその日まで―――

 俺は、己の存在を隠しながら、ただひたすら世界を彷徨い続けた。

 心の内から湧き上がる、手に入れた力の忌々しい嗤い声を聞きながら、戦士として己自身の魂の安寧を求めて。

 

           ≒

 

新暦079年 6月6日

第1管理世界「ミッドチルダ」

ミッドチルダ地下数十メートル 旧坑道跡

 

「!」

 長い夢から覚めたとき、仄暗い坑道でファイは一人(うずくま)っていた。

 ポツン、ポツン、と―――錆びたパイプから漏れ出る水滴が一滴、また一滴と降ってくる。ファイは疲労困憊の体を見つめながら自重し呟いた。

「・・・・・・惨めだな。寸でのところで分離していなければ死んでいたところだ。いや、こんな姿になってまで生き永らえた時点で既に死んだようなものか・・・・・・」

 

 ふと、脳裏に浮かび上がるビジョン。

 二年前―――戦士としての死に場所を求めて世界を放浪としていた男・シエロは、狂気の科学者ジェイル・スカリエッティと運命的な出会いを果たした。

 ―――「殺すなら殺せ・・・・・・!」

 -――「自ら戦う事を放棄するとは。それでも君は戦士なのかい?」

 ―――「だが、俺達の一族は滅んだ」

 ―――「しかし、君自身はまだ負けてはいないさ」

 ―――「私に付いて来給え。君が戦士として生き、戦士として死にたいのなら」

 

 ―――俺は・・・・・・。

 ―――俺は・・・・・・。

 ―――そう・・・俺は・・・俺は戦士・・・・・・。

 

「戦士として生き、戦士として死にたいのなら・・・・・・」

 ボロボロの体に鞭打ち、力を振り絞っておもむろに立ち上がる。

「まだ・・・・・・まだ俺の戦いは終わってはいない・・・・・・・・・!」

 死ぬならこんな穴倉の中ではなく、かつて祖先や亡き兄が、そして自らも愛したあの大空の上で死のう―――ファイはそう心に誓いを立てた。

 

           *

 

 戦闘機人―――機人四天王によって、首都クラナガンは幼生虚(ラーバ・ホロウ)プラントと化した。

 一千万都民・魔導虚(ホロウロギア)化を阻止すべく立ち向かう、我らが機動六課最強魔導師&死神軍団。

 

 四天王を倒すも、自らも傷つき次々と倒れる魔導師達の目の前で、ついにプラントは完成し、今まさに人類は地上最悪の瞬間を迎えようとしていた。

 

           ≡

 

首都クラナガン 幼生虚(ラーバ・ホロウ)プラント区画・中心部

 

 首都全域で完成された無数の幼生虚(ラーバ・ホロウ)

 しかし、人類にはたった一つの希望が残されていた。

 死神でありながら魔導の力に目覚めたその男は、一カ月に渡って翡翠の魔導死神の手解きを受け、その力を高めるに至った。

 その魔導死神の名は、白鳥礼二。またの名を【白翼(はくよく)の魔導死神】と言う。

「ふははははははははは。光臨、満を持して!」

 甲高い笑いをあげ、中空に佇む彼は幼生虚(ラーバ・ホロウ)によって滅びを迎えつつあるクラナガンの街を見下ろした。

(この一カ月で私がどれほど力を磨き上げたか、その真価が問われている)

 

 ―――「白鳥さん。あなたは高飛車な性格がたまに傷ですが、元々才能のある方なんです。自信を持っていいですからね」

 ―――「向こうに着いたらおもっきり暴れてください。伊達に僕が直接指導したわけじゃないんです。死神の力も魔法も、格段にレベルアップしてるって事を金太郎達に見せてあげましょう!」

 

「・・・やれやれ。私もつくづく惑乱し焼きが回ったものだ。由緒と伝統を誇る白鳥家の跡取りが、よもや駄菓子屋の店主などという落伍者に師事し、太鼓判を押されるなどあってはんらぬことなのだ」

 そう言いながらも、内心ではユーノに深い感謝を抱いていた。

 やがて、白鳥は腰に帯びた斬魄刀を抜き放ち、真の力を引き出す解号を唱える。

 

「―――天地(てんち)にて音色(ねいろ)弾奏(だんそう)させよ、『琴線斬(きんせんざん)』」

 

 解号を唱えた白鳥の斬魄刀は、エレキギターを彷彿とさせる形状へと大きく様変わりした。

 本来の力を解放した斬魄刀を握りしめ、白鳥は最高潮に達したテンションで、愛刀が奏でる特殊な音色をクラナガン中に響き渡らせる。

「琴線斬 第八章 四十二節 『破滅の円舞曲(ワルツ)』!!」

 直後―――白鳥は琴線斬の弦を弾き、特殊な音色を奏で始めた。

 音色はクラナガン全域まで広がり、誕生したばかりの幼生虚(ラーバ・ホロウ)は音色を聞いた途端―――突如として活動を停止、仮面に亀裂が入った矢先、血を噴き出し次々と死んでいく。

 

 その様子を機動六課隊舎で見ていたクロノ達は驚きを隠せなかった。

「超高密度の魔力及び霊力エネルギーの発生を確認!!」

幼生虚(ラーバ・ホロウ)プラント、首都全域で死滅していきます!!」

「何がどうなっているの!?」

「わかりません。ただ・・・・・・神はまだ僕達を見捨てていなかったという事は間違いありません」

 確信を持ったように口にしたクロノは、額に一筋の汗を浮かべながら、モニター越しに次々と死んでいく幼生虚(ラーバ・ホロウ)を凝視する。

 

 また、織姫による治癒を受けていた吉良達も、空の上でハイテンションに演奏を行っている白鳥の様子を眺めていた。

「あれが白鳥くんの斬魄刀・・・・・・!」

「素晴らしい演奏ですぞ白鳥殿。私がすこーし目を離している隙に、なんともご立派になられておりますぞ・・・・・・!!」

「・・・織姫とやら、あれがあの死神の能力(チカラ)か?」

「はい。これが白鳥礼二さんの真の力なんです」

 ザフィーラからの問いに答えた織姫は、気持ちよく弦を弾いて力のすべてを音波に乗せて放ち続ける白鳥を仰ぎ見ながら、数日前の記憶を遡及する。

 

           ≒

 

第97管理外世界「地球」

東京都 松前町 スクライア商店

 

 戦闘機人による首都制圧が行われる三日前―――。

 黒崎一護と織姫は、スクライア商店でユーノから白鳥礼二の能力について話を聞かされていた。

 そこで彼らは、魔導死神・白鳥礼二が持つ特異なスキル、彼の持つ斬魄刀『琴線斬』のある重大な秘密を知ったのだった。

「白鳥の能力が魔導虚(ホロウロギア)殲滅の鍵、だと!?」

「どういう事ですか?」

 二人に問い質された直後、ユーノは白鳥の能力値を事細かく分析した膨大なデータをモニターに表示しながら、勝ち誇ったかのような笑みを浮かべ呟いた。

「―――白鳥さんの真の力は、魔力と霊力を組合わせて奏でる事ができる“特殊音波攻撃”なんです。元々彼の持つ斬魄刀『琴線斬』は、霊圧を調整してその音圧を利用した衝撃波を飛ばす事ができるんですが・・・・・・白鳥さんはこれまで自身の斬魄刀の力を三分の一程度しか引き出せていなかったんです。しかも琴線斬の音色によって起こる特殊音波は、扱いを間違えれば周囲に多大な影響を及ぼすばかりか、町の一つや二つ滅ぼすほどの膨大なパワーを秘めているんです」

「つまり・・・現世に来てから今に至るまで、白鳥は制御しているつもりで、その実()()()()()()()()()()()()って事か?」

「しかも魔力コントトールもほとんどできないまま?」

 些か信じ難い話だとも思ったが、ユーノの態度から察するにどうやら全て事実であるようだと、二人は理解する。

「今の今迄が奇跡みたいなものだったんです。あの人は見よう見まねで僕の技を盗んだりと、中途半端に器用なところがあります。でも、いつまでもその中途半端を放っておくわけにはいかなかった。そんな時に白鳥さんが自分から修行を申し出てくれた。だから僕と金太郎とであの人を徹底的に鍛え直す事にしたんです」

 説明をしつつ、ユーノはこの一カ月の間にまとめ上げた白鳥の修行記録を映像で表示。

 一護達が見たのは、昼夜問わず行われた極めてハードな体力向上トレーニングと、魔力運用の鍛錬、そして斬魄刀『琴線斬』を用いたユーノや金太郎との戦闘訓練の一部始終を映したものだった。

「当時、魔導死神として僕が一護さんの元で修行を行っていたときのプログラムをベースとして、白鳥さんの基本スペックと魔導死神としての能力を最大限に向上させるべく力を注いできました。要となる『琴線斬』の真の力を引き出してもらう為に、あの人が持つポテンシャルに賭けた感はありましたが・・・・・・どうにか物になりそうです」

「そうまでしてあいつの能力(チカラ)を『切り札』とするお前の狙いってのは?」

 問いかける一護を見ながら、ユーノは不敵に笑みを浮かべ、おもむろに答える。

「白鳥さんの『琴線斬』の真の能力を用いて、幼生虚(ラーバ・ホロウ)プラントを完全破壊することです」

「完全破壊・・・!?」

「はい―――琴線斬には『音色辞書(ねいろじしょ)』と呼ばれる霊圧音波を保存するメモリーみたいなものが存在します。そこに保存されている音波ひとつひとつは、対象物の霊子組成レベルまで入り込み、その固有振動に同調させて破壊します。つまり、敵の霊子構造さえ把握していれば、理論上この攻撃で破壊できないものはありません。白鳥さんには二週間前から僕が組んだ幼生虚(ラーバ・ホロウ)プラントのみを破壊目標とする新たな楽曲を覚えてもらっています。この力が完成すれば、僕達は機人四天王と魔導虚(ホロウロギア)に勝てます―――」

 と、雄弁に語りかけるユーノ。

 一護と織姫は誇らしげに語る彼を我が子を思うかのような眼差しで見つめ、彼を何よりも栄誉に感じるのだった。

 

           ≒

 

第1管理世界「ミッドチルダ」

首都クラナガン 幼生虚(ラーバ・ホロウ)プラント区画・中心部

 

「・・・これが、彼の能力(チカラ)・・・!」

 他の物質を一切傷つけず、幼生虚(ラーバ・ホロウ)プラントのみを破壊する白鳥の演奏を聞いていた吉良達は、改めてその力の凄さを実感する。

「いったいなんなんだよありゃ・・・!?」

「確かあの人、前に地球で私たちを魔導虚(ホロウロギア)から助けてくれた白鳥さんや・・・!」

 はやて達も突如として現れた死神が演奏する曲に思わず魅了されていた。

 やがて、白鳥は全ての幼生虚(ラーバ・ホロウ)プラントの破壊を霊圧で察知し、その瞬間をもってパフォーマンスを終了する。

「発信終了―――我が音色の前にひれ伏すがいい!」

 

「レギオン粒子反応完全消失!」

「奇跡だわー!! すべての幼生虚(ラーバ・ホロウ)プラントが完全に破壊されました!!」

 喜々として報告するシャリオ。

 事の成り行きをモニター越しに眺めていたクロノとリンディは一瞬呆気にとられたものの、直ぐに表情を和らげ安堵の溜め息をついた。

「ほんとうに良かったわ・・・」

「僕達は、人類は救われたんです―――」

 

 白鳥の活躍によって数千もの幼生虚(ラーバ・ホロウ)が一度に沈黙した。

 恋次となのはは奇跡的な偉業を成し遂げた白鳥を遠目から観察しながら、互いに口角を緩めあう。

「終わったようだな・・・」

「はい。それにしても、白鳥さんって一体何者なんでしょうか?」

 空の上でエレキギターの形状に変化した愛刀を掲げながら、ガッツポーズをとる白鳥を見ながら、なのはは彼への疑問を募らせる。

 思えばなのはにとって初めて見た死神は他ならぬ白鳥礼二だった。そして、彼との接触を機に恋次達と出会い、翡翠の魔導死神と出会った。

(この事件が片付いたら・・・・・・白鳥さんにユーノ君のことを聞こう。絶対にあの人はユーノ君が生きてる事を知ってるはずだ!)

 師であり最愛の人である者の有力な手がかりを白鳥が持っていると確信する。

 なのはは魔導虚(ホロウロギア)事件が終息した暁、彼が知り得るユーノ・スクライアの情報を何としても聞きだし、あわよくばその再会を強く望んでいた。

 

『機動六課前線メンバー各員、それと死神と民間協力と勇士の皆さん。こちら部隊長の八神はやです。ギリギリのところではあったけど、どうにか最悪の事態は回避できました。私は六課の部隊長として、そんなみんなを誇りに思います』

 紙一重だった戦闘から辛くも生き延びた前線メンバー全員への慰労の言葉をかけるはやての放送を各地で見守る者達。

『えー、疲労困憊のところ申し訳ないんやけども・・・私たちにはまだやるべき事が山積しています。これより、各地で被災した都民の救助支援を開始します』

 魔導虚(ホロウロギア)を殲滅する事だけが任務ではない。

 大規模な被害を被ったクラナガンで暮らす人々を安全なところまで避難し、温かい食事と寝床を提供する―――それが時空管理局員である自分達の仕事だと、はやては皆に言い聞かせた。

 

「LS級次元航行艦船ヴォルフラム、発進します!!」

 被災したクラナガンへ向けて飛びだった機動六課の移動要塞【ヴォルフラム】が大空を高く舞う。機人四天王との激闘を制した六課メンバーと、被災した人々の回収を目的にその積載能力が発揮される。

「スターズ1、ヴィヴィオ達の救出は?」

 問いかけるクロノに、なのははと恋次がモニター越しに答える。

『こちらスターズ1、たった今、地上本部展望台に到着。ヴィヴィオ達を保護しました』

『全員どこも怪我してねーぞ!』

 モニター画面にヴィヴィオ達以下地上本部に取り残されていたSt(ザンクト).ヒルデ魔法学院の児童と教師、その他の一般人の救出を確認する。

 無事な人々の姿をこの目で確かめ、クロノもようやく肩の荷が下りたらしく、深く溜息を着くとその場に腰を下ろす。

 それを見たリンディはくすくすくと笑い、おもむろに近づき声をかける。

「少し、安心したかしら?」

「とりあえず一先ずは。これからやるべき事はまだまだ多いですが、人々が無事である事が何よりも救いです」

「そうね―――・・・」

 息子の言葉に共感したリンディはおもむろにモニター画面の方へ振り返り、機人四天王が倒されてなお隆起し続けたままのクラナガンの状況を改めて確認する。

「それにしても・・・何故あの隆起現象は収まらないのかしら?」

「確かに、四天王は敗れ幼生虚(ラーバ・ホロウ)も一匹残らず駆逐されたはず・・・・・・だとしたら何なの。この胸のざわつきは?」

 マリエルは先ほどから妙な悪寒を抱いてならなかった。第六感が頻りに大音声で警告を発しており、額からはそれを如実に表すかのように汗が止まらなかった。

「ヴォルフラム、クラナガン接触! 都民及びスターズ2、ライトニング1、ライトニング2、吉良さん以下勇士達の移送を開始します!」

 

 我らが機動六課と、機人四天王の決戦はこうして決着の時を迎えた。

 だが、それが恐怖と戦慄に満ちた最終決戦決戦の序章に過ぎない事を、人類はただ一人の例外を除いて未だ知る由も無かった。

 

           *

 

時空管理局 ミッドチルダ首都地上本部 展望フロア

 

「ヴィヴィオ~~~!!」

 地上本部で無事ヴィヴィオを救出したなのはは、公衆の面前である事も憚らず愛娘を固く抱擁。その頬をすりすりと擦り付ける。

 これにはヴィヴィオもかなり気恥ずかしそうに、周囲の目を気にしながら頬を紅潮させていた。

「ま、ママ・・・嬉しいけど恥ずかしいよッ///」

「良かった・・・ヴィヴィオが無事で、ほんとうに良かったよ」

 余程ヴィヴィオの事が心配だったのか、なのはは嬉しさのあまり顔中涙でぐっしょりだった。

 感動の対面を果たす二人の様子を見守り、恋次はふと遠い故郷で暮らす自分の家族について想いを馳せる。

 脳裏の思い浮かぶ生涯を共に歩むことを誓った伴侶と、その間には幼い娘。

 彼女達は果たしてなのはのように自分の帰りを温かく出迎えてくれるのだろうか。などと言う淡い期待を胸にしつつ、ふと恋次が気になったのは全くの別のものだった。

 展望台の隅の方で悲壮感を漂わせ、蹲っている白いマント姿のコスプレイヤー。

 恋次は顔をやや引き攣らせると、おもむろにそのコスプレイヤーに近づき声をかける。

「コン・・・なんでてめーがここにいるんだよ?」

 すると、恋次に声を掛けられた義骸姿の改造魂魄(モッド・ソウル)・コンは涙ながらに呟いた。

「ぐぅぅ・・・せっかくカッコよく登場したと思ったのによ・・・・・・どいつもこいつも不審者呼ばわりしやがって///」

「その格好で不審者扱いされねーと思ったのかよ? つーかその衣装って十年くらい前に浦原さん家で見たことあるな。よくそんな年代もんのスーツ出してきたな」

「これでも新規仕様で石田の奴に仕立ててもらったんだよ・・・!! チクショー・・・オレとしたことが完全に人選をミスっちまった~~~!!」

 何がしたかったんだこいつは・・・。恋次は心の中で呆れ返るしかなかった。

「・・・お前がここにいるって事は、やっぱ吉良達の近くで感じた霊圧は井上のか。となると一護の奴も近くに―――・・・」

 

 ゴゴゴゴゴゴゴ!!!  ゴゴゴゴゴゴゴ!!!

 

「「「「「「うわああああああああ」」」」」」

 突如、地面が大きく揺れ始めた。展望台にいたなのは達は周章狼狽する。

「なに!?」

「どうなってやがるんだぁ!!」

 地鳴りを上げながら、地上本部は徐々に地に沈み始める。

「みんな、早くヴォルフラムに避難するよ!」

 急いで脱出を果たし、なのはと恋次はヴォルフラムへヴィヴィオ達を誘導した。

 

 機動六課のメインモニターで度肝を抜く光景を目の当たりにしていたリンディは、険しい顔でクロノへ問いかける。

「クロノ・・・覚えているかしら? 4年前の事件を―――」

「忘れる筈がありません。我々人類にとっての悪夢は・・・()()()()()()()()()()()()()()

「あのとき、軌道拘置所を脱獄したスカリエッティは、管理局の必死の追跡を免れ何処(いずこ)かへと消え失せた」

「スカリエッティ!?」

「まさか・・・!」

 誰もが一瞬で理解した。異常隆起現象が終息しないのも、突如として地上本部が沈下し始めたのも、この一連の事件の根幹に潜む人物―――ジェイル・スカリエッティが深く関与している事に。

「ヴォルフラムより急報です!」

『スターズ1からロングアーチへ! 恋次さんが・・・!』

 血相を変えて一報を知らせるなのはの声に耳を傾け、モニター画面を凝視する六課首脳陣。

 いつの間にかヴォルフラムから抜け出し、独断での行動を開始した恋次の姿が映し出された。

 恋次はプラント化した際に破壊された瓦礫と瓦礫の間を飛び越えて、地盤が沈下し始めた地上本部に向かって走り出した。

『ちょ・・・恋次さん!! いったい何してるんですか?!』

『何をしているんだ阿散井くん、君もすぐに治療を受けんないと!!』

 状況をヴォルフラムから窺っていたはやてや吉良も思わず感情的に声を荒らげ恋次の帰還を促すが、二人の制止を一切無視して恋次はひたすら進み続ける。

 一度瓦礫の上で立ち止まり、恋次は今の自分や現在の状況を確認しているであろう全員に力強く告げる。

「感じるんだよ。この事件の黒幕が・・・・・・スカリエッティがこの街の地下深くにいるんだ! 俺は生憎と一度も奴の顔を拝んだ事はねーが、これまで散々たくさんの・・・・・・それこそ無関係な連中をひでー目に遭わせてきたんだ。俺は絶対に奴を許さねえ」

 死神として、一人の男として、幾度となく自分達を始め多くの者を巻き込み、悪しざまに傷つけて来た狂気の科学者がのらりくらりと安寧と息を潜めているかと思うと、考えただけで虫唾が走る。

 必ずやこの手でスカリエッティを見つけて捕まえる―――胸中の強い決意を熱く滾らせ、恋次は地下に通じる坑道を移動し、スカリエッティの元へと急いだ。

(待ってろよ、スカリエッティ・・・!!)

 

           *

 

時空管理局 ミッドチルダ首都地上本部 地下数十メートル

 

 陥没した地上本部跡地―――。

 そこの地下数百メートルに存在する広大な空間。阿散井恋次は自身の第六感を信じ、最深部を目指し歩み続けた。

 歩き続けるうち、恋次の眼前に広がる異様な光景。【生体ポッド】と呼ばれる人間や生き物などを長期間に渡り特殊な溶液に浸し保存するための装置が壁一面にずらりと並び、中には魔導虚(ホロウロギア)・プーカの素体となった幼い子供までもが陳列されていた。

「・・・・・・気味の悪りーところだ。どうやらユーノ(アイツ)の言う通り、スカリエッティは正真正銘トチ狂った人間らしい」

 改めてスカリエッティという男に関する悪評を口にした直後―――前方からコツコツ、と、足音を立てて近寄ってくる気配を感じ取った。

「!」

 異様な狂気に体が瞬時に反応した恋次は目を見開き、眼前からゆっくりと近づいてくる者に対し刮目する。

「ふふふ・・・ついに此処まで来たようだね。死後の世界より現れし死を司る神・・・―――死神、阿散井恋次くん」

 狂気を全面に顔に出した不気味な笑みを浮かべながら、さも当たり前の如く恋次の名を口にするマッドサイエンティスト―――ジェイル・スカリエッティ。

 恋次は男がスカリエッティ本人だと直感的に悟ると、驚きの表情を見せつつも腰の刀に手を掛ける。

「てめえがスカリエッティか? とうとう見つけたぜ。これまでの一連の魔導虚(ホロウロギア)事件、よくも無関係な人間まで苦しめてくれたな・・・!」

「ふふふ・・・それは心外だよ。私の研究は人を苦しめる為のものではない。むしろその逆だよ。人間を苦難と苦痛から解放し、その上に新たな世界を構築する。魔導虚(ホロウロギア)化は生物がより高次な存在へと上り詰める為に必要な儀式なのだ」

「その“儀式”とやらのせいで、今まで死んでいった奴らが何人いたと思っていやがる!? てめえの独りよがりも大概にしやがれ!」

「大いなる技術の進化には多少の犠牲は避けては通れない事だよ。この世界には価値あるものと無価値なものが少なからず玉石混合としている。高次な存在に進化できるのは選ばればごく一部であればいい。価値の無い無駄な命など生かしておいたところで何も生み出さないではないか?」

 自身の研究は人々を救うと豪語した一方で、それを享受できる者は極少数であればいいという矛盾した見解を述べるスカリエッティを見ながら、恋次は沸々と湧き上がる激しい憤りに思考が支配される。

 気付いたとき、斬魄刀を抜き放ったと思えば、ふてぶてしく笑うスカリエッティ目掛けて蛇尾丸を伸ばしていた。

「この・・・カス野郎がぁぁぁ!!!!」

 血走った両の眼で標的をしかと捕える。

 これほど苛ついたのはいつ以来だろう・・・―――少なくとも、恋次はジェイル・スカリエッティという男を生理的に受け付ける事ができなかった。

 

 カキンッ―――!

 

「なっ―――!?」

 伸びた蛇尾丸の刃がスカリエッティを直撃しそうになったところ、何者かの干渉によって刃の軌道を変えられた。

呆気にとられる恋次を見ながら、無傷のスカリエッティは終始口元を緩める。

「ふふふ・・・―――君が戦うのは私じゃない。彼だ(・・)

 直後、恋次の前に姿を現した一人の戦士。その戦士を見るや、恋次はあり得ないという心境で表情を歪ませる。

「てめーは・・・!!」

 些か信じられずにいた。まるで幽霊でも見ているかのような感覚に陥る恋次の正面に立ち尽くすのは、満身創痍ながら五体満足で立ち塞がる機人四天王の一人―――ファイだった。

「機人四天王ファイ! 生きていやがったのか!?」

「あの程度で死ぬ俺ではない・・・―――」

 フェイトとの戦いでてっきり斃されたとばかり思っていた敵が生きていた。その事実に終始驚きかえる恋次とは裏腹に、ファイは鋭い眼光で凝視しながら、冷たい殺意を醸し出す。

「ドクター。この者の始末は私が。あなたは先に脱出を―――」

「ふむ。ではお言葉に甘えさせえもらうとするよ」

 恋次の相手をファイに一任し、スカリエッティは踵を返して施設の奥へ向かって悠々と歩き始めた。

「ま・・・・・・・・・待て! てめえ!!」

 堂々と背を向け逃げおおせようとする気満々のスカリッティを逃がすのは極めて癪に障る話だった。

 咄嗟に蛇尾丸の刃節を伸ばして敵前逃亡を決め込むスカリッティを捕えようとするが、案の定ファイによる妨害を受けた。

「貴様の相手はこの俺だ、死神」

「そこをどけ! てめえに構ってる暇はねえ!」

「貴様達はよく戦った。機人四天王も最早俺一人を残すのみ。倒してみるがいい・・・このファイを。それがこの先に続く地獄への通行許可証(パスポート)だ!」

 力強く宣言した途端、ファイの足下に浮かび戦闘機人特有の魔法陣を模した白色のテンプレート。

「IS発動―――【ダイダロスウイング】」

 自身に備わる戦闘機人特有の先天固有技能を口にするや、ファイの背中に生える身の丈に匹敵する巨大な翼。

 ダイダロスウイング、またの名を『英雄王の翼』は空戦技術に特化した魔導師の一族であったファイの個性に合わせてスカリエッティが調整した力―――膨大なエネルギーを翼の形に凝縮する事で極めて高い機動力を手に入れる。

「ゆくぞ!!」

 大きく広げた翼で宙を舞い、ファイは恋次に対し高速で突っ込む。

 目にも止まらぬ速さで接近してきたファイの体当たり攻撃を、恋次は辛うじて躱したが、表情からは余裕が消えていた。

 無理も無かった。ファイのインヒューレントスキルはトーレが持つ高速機動術【ライドインパルス】の数十倍の速度を出せる。あまつさえ、その威力もSSランクの空戦魔導師に匹敵する。

 ファイは恋次の霊圧知覚が感知し切れない速さで動き回る。

 痛み切った体に鞭打ち瞬歩で必死に付いていこうと顔色を歪める恋次をじわじわと甚振り、終始スピードで圧倒する。

「ぐっは!」

 背中に走る鋭い痛み。恋次は高高度から踵落としを食らわせたファイの一撃を受け、地面に叩きつけられる。

「どうした死神? そんなスピードでは俺には勝てんぞ」

 上から恋次を見下ろし、あからさまに挑発をしてくるファイ。

 恋次は傷ついた体を起こすと、険しい表情を浮かべ、一気に霊圧を高めてから奥の手である戦術を使おうとする。

「くっ・・・・・・卍か・・・!!」

「させぬ」

 即座に恋次の間合へ入り込むや、ファイは恋次が卍解を発動する隙も与えぬ高速移動を駆使した攻撃で徹底的にその肉体を甚振った。

「のあああ!! がっ・・・!!」

 四方八方から繰り出される白い爪牙。恋次の皮膚を切り裂き、骨を砕き、惨い苦痛を僅かな時間に何十回と与え続ける。

 血反吐を吐き捨て地に這いつくばる恋次。

 しかし、彼はこの戦いを諦めてはいない。それが証拠に手に持った斬魄刀は指先一本一本に到るまで固く握り締められ離れようとしない。

 希望を捨てず抗い続ける恋次の姿を見ながら、ファイは苦い顔を浮かべ問い質す。

「貴様・・・・・・なぜまだ立ち上がる? なぜその刀を捨てぬ? これほどの実力差を味わいながらまだそんな()で俺を見る?」

「うるせーよ・・・・・・俺は・・・・・・まだ・・・負ける訳にはいかねえんだ・・・・・・!!」

「ふん、世迷言を。貴様には最早希望など残ってはいない。そこにあるのは暗く閉ざされた絶望のみ。ならば貴様は何故戦っている?」

 同じ戦士として戦う理由について問い掛ける。

 すると、ファイからの問いを受けた恋次は口角を釣り上げ、受けた質問に対しおもむろに答える。

「バカ野郎が・・・! 何故戦ってるだぁ? そんなもん決まってる・・・・・・勝たなきゃならねーから戦ってるんだよ、俺たちはな・・・!!」

 今迄も、そしてこれからずっとそうやって戦い続けてきた。

 幾星霜を経ても決して変わる事の無い強い信念を胸に抱き、阿散井恋次は様々な戦場で戦い続けてきた。

 恋次の回答を聞いたファイは、そうか・・・と、口にすると暫し沈黙。

 直後、右手に魔力を押し固めて生成された長剣『フェザーブレード』を装備し、前方で膝を突いて満足に体を動かす事の出来ない恋次へ刃を突き立てる。

「戦士としての貴様の覚悟、しかと見届けた。敬意を称し、我が渾身の一撃をもって葬り去ってやろうぞ」

 同じ戦士として立場こそ違えど、どこか通じる者を感じ取ったファイは、満身創意の恋次を見ながら突きつけた刀身をゆっくりと上に掲げる。

 一方、死地が目の前に迫っているにもかかわらず、恋次はこれまでに受けたダメージの所為で意識が朦朧としていた。

(くそ・・・・・・体が動かねえ・・・・・・おまけに今までの戦いのツケで霊力もほとんどすっかからになっていやがる・・・・・・俺は・・・・・・何も護れずに・・・・・・こいつにやれちまうのかよ!? チキショウ・・・・・・俺は・・・・・・俺は・・・・・・・・・・・・!!)

 意思に反して動かない身体。目前に迫った凶刃を仰ぎ見る気力すら削ぎ落とされた自身の底意を思い知り恋次は悲嘆する。

「幕引きだ――――――」

 フェザーブレードの刀身が恋次の脳天目掛けて勢いよく振り下ろされようとした、次の瞬間―――。

 

 ドンッ! という豪快な衝撃音が聞こえた途端、青白い巨大な霊圧の塊がファイと恋次の間を駆け抜けた。

「な・・・・・・!?」

 咄嗟に斬撃を躱し退避するファイは青白いものが通り過ぎた痕を見て吃驚した。

 触れた瞬間より地面を深く抉り取ったそれは常軌を逸した破壊力で、微かだが湯気さえも上がっていた。

「・・・なんだ・・・今のは・・・?」

「この霊圧・・・まさか・・・!!」

 独特の斬撃痕とそれが物語る破壊力、周囲から感じとった身に覚えのある霊圧―――恋次はファイとは違う意味で驚愕の表情を浮かべる。

 と、そのとき―――斬撃が飛んできた方角から土煙に姿を隠しながら歩み寄ってくる一人の物影の姿を捕えた。

 

「・・・よォ。どうしたよしゃがみ込んで。ずいぶん苦戦してるじゃねえか」

 身の丈を超える大刀を肩に担ぎながら、派手なオレンジ色の頭髪を持つ死神は満身創痍の恋次を見て率直に思った事を呟き、やがてほくそ笑む。

「助けに来てやったぜ。恋次!」

 恋次は目の前から現れたその死神の正体を十年前から嫌と言うほどよく知っていた。

 伝説の死神代行・黒崎一護・・・―――恋次の記憶、さらには尸魂界(ソウル・ソサエティ)の歴史において決して忘れられる事のない偉大な英雄の名である。

「・・・一護・・・なのか・・・!?」

「何者だ、貴様は?」

 突然現れた敵を凝視するファイが一護にその素姓を問い質す。

「黒崎一護。空座町で町医者をやってる死神代行だ。よろしく!!」

 力強く自己紹介をする一護から漂う漲る自信。ファイは一目見て目の前の男が圧倒的な力を持つ強者である事を悟った。

「一護・・・おまえどうして・・・!?」

 本来ならばここに居るはずの無い男が目の前にいる事に疑念を抱いた恋次は、一護を見ながら挙動不審がちに此処へ来た理由を尋ねる。

「あいつがようやく腹を括ったんだよ。俺や織姫にも手伝って欲しいって。で、いざ来てみたらお前の霊圧が弱ってるもんだからよ、探してみたらついこんなところまで来ちまった。案外元気そうじゃねーか」

「・・・バカヤロウが・・・これのどこが元気そうなんだよ・・・」

「しゃべれるだけの元気はあるだろうが。医者要らずが一番だぜ。それより、こいつの相手は俺が引き受ける。今のお前じゃこいつのスピードとパワーには追いつけねーだろうからな」

 そう言っておもむろに前に出た一護は、恋次を護るようにファイと対峙。右肩に担いだ斬月を構える。

「・・・・・・前におまえ言ったよな」

 不意に神妙な面持ちで呟いた一護は、恋次を一瞥したのち、ゆっくりと語り出す。

「―――この先ずっと俺が死ぬまで俺が進めなくなった時は俺を背負ってでも進んでやるって。だったら俺も同じだよ。お前が進めなくなった時は俺がお前を背負ってでも進んでやるよ。今も、これから先もお前が死ぬまでずっとだ」

「一護・・・・・・」

 十年前の霊王護神大戦で、ユーハバッハに敗北を喫し戦いを諦めかけた一護に恋次自身が語りかけた言葉だった。その言葉は再び一護の心を奮い起こし、ユーハバッハとの激闘を制するのに一役買った。

 その時の言葉が今、一護から向けられた。十年と言う一つの節目であり、同時に長い年月を経て紡がれた絆は今も健在だった。

「二度は言わねーぞ。つーか、こんな恥ずいセリフ二度も言いたくねえからな」

 背中越しに語った直後、一護は斬月を目の前に突き出すように構え直す。

 やがて、全身から青白い霊圧が一気に溢れ出すや、一護は大切な仲間を守る為の能力(チカラ)を顕現させる。

「卍 解――――――」

 刹那、一護の周りに吹き荒れる凄まじい赤黒い霊圧の渦。

 圧倒的な霊圧に思わずたじろぐファイだったが、しばらくして渦の中から一護の姿が視えて来た。

「っ!」

 力を解放した一護の身なりの変化にファイは目を見開いた。

 黒いロングコートに似た独特の死覇装を身に纏い、手にはすべてが漆黒で普通の日本刀より少し長く、卍型の鍔を持ち、柄頭に途切れた鎖がつい斬魄刀を持っていた。

 この力こそ、一護が大切な仲間を護る為に手に入れた力の終着点。斬魄刀戦術の奥義であるその卍解の名は―――。

 

「『天鎖斬月(てんさざんげつ)』―――!!」

 

「何だそれは・・・そんな小さなものが貴様の卍解だと・・・? ただの斬魄刀ではないか?」

「・・・いつぞや白哉のにも言われたっけな、そのセリフ。これだから見てくれで判断するヤツは嫌になるぜ。だったら試してやるか? こいつの力をその身をもって―――」

 言った直後、一護の姿がファイの視界から一瞬にして消失した。

「!!」

 気付いたとき、ファイの反射神経が追いつかぬ間に一護は背後へと回りこんでいた。

(・・・迅いッ!!!)

「ほおおおおおおおおお」

 両手持ちした天鎖斬月の刃先から繰り出す超高密度に圧縮された斬撃―――月牙天衝は始解時とは異なり赤黒い霊圧を纏い、破壊力も比べ物にならない。

 辛うじて直撃コースから抜け出したファイは一旦空に上がったものの、威力のすべてを免れることは出来ず、身体には無数の傷が浮かび上がる。

「ちっ!」

 厄介な能力だと思いつつ、スピードに絶対の自信を持つファイは一護へと接近し、固有武装・フェザーブレードを駆使した空中機動戦を繰り広げる。

「遅せえー!!!」

 しかし、一護の研ぎ澄まされた霊圧知覚はファイの攻撃を回避するばかりか、逆にファイの機動力をも凌ぐほどだった。

弧月斬(こげつざん)!!」

 通常の斬撃から空中へ打ち上げ、更にそこから超速移動を駆使した連続モーションで斬撃により相手を拘束して大ダメージを与える『天衝乱舞(てんしょうらんぶ)』のコンボへと繋げる。

「のあああああああ!!!!」

 苦しみに耐えかね絶叫するファイ。

 終始ファイを圧倒し続けた一護は止めの一撃として、空中より狙いを定め、天鎖斬月を大きく振りかぶる。

「地の底まで落ちやがれ! ―――月牙天衝!!!!」

 全身全霊の力を込めた漆黒の月牙。極めて濃密で強大な霊圧の塊はファイの頭上より隕石の如き圧を伴い降ってきた。

「のああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

 並みの死神ですら真面に受ければ致命傷は避けられない一護の必殺技が見事に直撃。黒き斬撃に呑みこまれたファイは悲鳴をあげながら地の底へと落ちていった。

 

 地の底で巨大な爆発が起こった。巻き起こる爆発の規模は凄まじく、ファイの姿を目視で確認することは不可能だった。

 圧倒的な力を持ってファイを制した一護はゆっくりと地上へ足を下ろす。

 恋次は勝利しながらも晴れ晴れとしているのはおろか、内心複雑な心境であろう一護の横顔を一瞥し、おもむろに問いかける。

「・・・()ったのか?」

「手加減はしてねえ。だがこれで死んだとも思えねー」

 

 ブーッ! ブーッ! ブーッ!

 

「「!!」」

 次の瞬間、地下アジトの至るところで警報ベルが鳴り響いた。

 サイレンの音に緊迫する一護と恋次。やがて、モニターが映し出され、猟奇的な笑みを浮かべるスカリエッティが言葉を投げかけて来た。

『いやー。死神の諸君、御機嫌よう』

「スカリエッティ!!」

『お取り込み中済まないが、この施設は間もなく廃棄処分される事になっている。あと5分もしないうちに爆発する。しかし残念なことに、地上へと通じる脱出口は全て封鎖されてしまった。最早君達に助かる道は無い』

「何だと!?」

「てめえ!! どこにいやがる!! 今すぐ出てきやがれ!!」

『生憎私にはやるべき事が山積している。君達のような興味深い素体を実験体に出来なかったことは少々残念だが、これもまた致し方ないことだ。さようなら・・・―――心弱き者達よ。汝らの招き寄せた恐怖を篤と味わうがいい。ふははははは!!!』

 どこまでも気の狂った甲高い笑みを見せつけたスカリッティとの交信が途絶。モニターには何も映らなくなった。

 映像が途切れた直後より、地下アジトに仕掛けられた起爆装置が次々と作動。誘爆を伴い地下空洞一帯で激しい揺れが起こる。

 崩落を始める天井。立っている事さえままならぬほど激しい爆発に、一護と恋次は焦りを露わにする。

「ヤベーな・・・崩れが始まりやがった!」

「くそ! 俺が来たところも塞がれちまってる!! どうすりゃいいんだよ!?」

 絶体絶命の窮地。

 途方に明け暮れる二人だったが、そのとき―――あまりにも予想外の出来事が起こった。

 唐突に、二人の足元に浮かび上がった白い魔法陣。気がつくと、目の前で体の一部を失いながらも強制転移魔法を発動させたファイが立っていた。

「ファイ!!」

「おまえ、一体何のつもりだよ!?」

 ファイは一護の話の無視して爆発の被害を受けぬよう二人にシールド魔法を施しながら転移先を選んでいた。

 やがて、最早風前の灯と化した命のファイが二人に最期の言葉を掛ける。

「俺は・・・戦士として居場所を求め・・・戦士として死ねる場所を求めていた・・・だが阿散井恋次・・・そして黒崎一護・・・貴様達のお陰で、俺は大切なことを思い出させてた・・・礼を言う・・・」

 

 ―――そう・・・俺は・・・。

 ―――俺は・・・。

 

 清々しいまでの笑み。そこに不満や後悔などは一切ない。

 ファイは戦士としての矜持と生き様を思い出させてくれた二人に笑いかけると、自らは進んで爆発の中へと身を投じた。

「ファイィィィィィィ!!!!!!」

 恋次の叫びが爆発の中で木霊する。

 次の瞬間、二人に対して掛けられたファイの強制転移魔法が発動し、恋次と一護は地下アジトの外へと飛ばされた。

 大規模な爆発によって、陥没した空洞から発生する巨大な光柱。

 その光の柱の中心から飛び出てきた赤い炎の如くエネルギーを纏った火の鳥と化したファイの魂は、自分が愛した空に向かって天高く飛翔した。

 

 ―――空はいい・・・。

 ―――空はいいぞ・・・。

 ―――死ぬときは・・・やはり空の上だ・・・。

 

 ファイの転移魔法によって、間一髪の窮地を脱した一護達。

 しかし、恋次は地面に手を叩きつけながら自分達を生かして散って行った敵への遣る瀬無い気持ちで胸が苦しくなった。

「くっ・・・・・・・・・ファイ・・・・・・バカヤロウが!!」

「戦闘機人って奴は人間の皮を被った機械みたいな連中とばかり思っていたけど、あいつみたいに人間臭い奴もいたんだな・・・―――」

 

 ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・ッ。

 突然、事態は一変した。またしても強い地鳴りをあげながら隆起したクラナガンの地の底から何かがゆっくりと浮上を開始した。

 それと同時に、嘗てない膨大なエネルギー反応を観測した。

「巨大な物体が地上本部跡地から出現します!!」

 陥没した大地の底より多量の土煙を巻き上げながらその姿を顕現させる物体を目の当たりにした瞬間、なのは達は驚愕の余り絶句する。

「あれは・・・なんなの!!?」

「この異常な霊圧と魔力反応はなんだ!?」

 

 

 

 見るものすべてに戦慄を与える恐怖の大魔王がついに光臨した。

 魔王の出現によって隆起したクラナガンの大地は、ゆっくりと空へと浮上。

 今、人類と地上最大最強の魔導虚(ホロウロギア)による最終決戦が始まろうとしていた―――・・・。

 

 

 

 

 

 

参照・参考文献

原作:久保帯人 『BLEACH 10、20、74巻』 (集英社・2003、2005、2016)

原作:久保帯人 著者:成田良悟『BLEACH Spirits Are Forever With You I・Ⅱ』(集英社・2012)

 

 

 

 

 

 

教えて、ユーノ先生!

 

ユ「今日は、ISについてね♪」

「インヒューレットスキル―――先天固有技能と称されるこの力は、戦闘機人が用いる特殊能力のことだ。魔力とは異なるエネルギー運用法が用いられており、厳密に言えば魔法関連のスキルではない」

「今回ファイが用いたIS『ダイダロスウイング』は、翼型に形成されたエネルギーを用いて超高速で滑空する能力だ。手持ちの武器『フェザーブレード』は非常に強力で、一護さんが駆けつけていなかったら恋次さんも危ういところだった」

恋「べ、別に一護が駆けつけなくてもあれぐらいの窮地くらい切り抜けられたっつーの!」

 と、宣う恋次。それを聞いた一護はおもしろく思わなかった。

一「ほう・・・そうなのか。せっかく人が善意で助けに来てやったのにそんな言い方されるとは思わなかったぜ。前言撤回だ!! 金輪際オメーに何か有っても俺はゼッテーに助けたりしねーからな覚悟しておけ!!」

恋「上等だ!! 誰がてめーなんぞに助けられるかよ!!」

つまらぬ意地を張りあう似た物同士。

 顔を合わせれば絶えず子供のように喧嘩を勃発させる二人の関係性を見ていたユーノは、ふと自分とクロノを重ね合わせる。

ユ「なんだかなー。お二人を見ていると脳裏を過りますよ・・・・・・今ごろクロノの奴、あの世でどうしてるんだろうー」

一・恋「いやまだ死んでねーだろう! 勝手に殺すなよ!」

 口を揃えてユーノの発言に勢いよくツッコミを入れる二人であった。

 

 

 

魔導師図鑑ハイパー!

 

 ミッドチルダへと降り立った白翼の魔導死神・白鳥礼二。

 すべての幼生虚(ラーバ・ホロウ)を滅ぼす強大な力を目の当たりにした彼は、一か月前とは比べ物にならない完成度を手に入れた己の力と自身の成長度合いを自画自賛する。

白「たった一カ月でこれだけの力を手に入れるとは・・・・・・ふふふ。やはり私は選ばれた男であるようだ。私こそが霊王様より神託を受けし不世出の死神なのだぁ!!」

 自惚れ、勘違いも甚だしいこの男―――どこまでも素であるから性質が悪い。

白「ミッドチルダの市民よ!! 私が来たからにはもう安心しろ。魔導虚(ホロウロギア)はこの私が一匹残らず駆逐する!! そして必ずやこの地に恒久の平和を取り戻して見せる!! この白鳥礼二に全てを委ねるのだぁぁ!!」

 と、言った矢先―――地底から魔神の如く遥か巨大な魔導虚(ホロウロギア)が出現。

 そのあまりの大きさを目の当たりにした途端、白鳥は恐怖の余り腰を抜かす。

白「ヒイイイイいい!!!! く、来るなぁぁぁ!!! 私はまだ死にたくない!!! 頼むッ!!! 見逃してくれぇぇぇ―――!!!」

 先ほどまでの自信はどこへ消えたのやら。

 感情の起伏が激しく情緒不安、プライドが高いようで変なところは小市民的。ありとあらゆる意味で面倒な白鳥礼二の運命はいかに・・・・・・!?




次回予告

ユ「君達に、最新情報を公開しよう。」
「史上最強最大の魔導虚(ホロウロギア)・ジャガンノートを倒せ!!」
「ついに、発動承認が下ったリンカーエクストリーマーは、運命の片道切符なのか? 魔導虚(ホロウロギア)との戦いに終止符が打たれようとする中、僕は・・・・・・」
「ユーノ・スクライア外伝 NEXT、『遅れてきた賢者』」。次回も、この小説にファイナルフュージョン承認!」
コン「『リンカーエクストリーマー』―――こいつが勝利のカギだぜ!」
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