ユーノ・スクライア外伝   作:重要大事

25 / 50
な「行き場の無い寂しさと、理不尽な痛み。そんなのが嫌いで、認められなくて、私はこの道を選んだ。だけど、私は結局自分のことしか見えてなくて・・・いちばん大切な人の気持ちをちっとも理解していなかった・・・」
「どんなに辛く寂しいとき、私の背中はいつも暖かかった。ユーノ君は生涯ただひとりの魔法の先生で、一番愛する人・・・・・・・・・だから・・・わたしは・・・わたしは・・・」
「ユーノ・スクライア外伝・・・・・・――――――始まります」



第25話「涙」

 もの凄い爆音の後、どこからとも無くやってきたその人・翡翠の魔導死神さん。

 彼と最初に出遭ったあの時から、ずっと心の中で感じていた奇妙な違和感。それに不思議な安堵感。

 どこか懐かしいとさえ感じていた。もしかしたら、彼がユーノ君なんじゃないかと思ったりもした。

 でもそれは私の勘違いでしかない―――そう思っていた。

 

 ―――「無事で良かった」

 ―――「よくがんばったね、なのは」

 ―――「4年ぶりだね・・・・・・おそくなってごめん」

 

 一瞬、幻聴かとも思った・・・。見間違いかとも思った・・・。

 だけど、それは幻聴でも無くて、見間違う必要なんて最初から無くて、すぐに答えは私の目の前に現れた。

 次元世界最強の魔導死神の正体は―――――――――・・・・・・・・・

 

           ≡

 

新暦079年 6月7日

第1管理世界「ミッドチルダ」

首都クラナガン ミッドチルダ首都地上本部跡地

 

 なのはの深層心理に木霊する和らいだ声色。

 金糸に染まった長い髪は透き通るようで、容姿は初見で女性と錯覚してしまうほど美しかった。

 四年前、突如として消息を絶った幼馴染であり魔法の師。なのは自身が最も焦がれた存在―――ユーノ・スクライアがそこにいた。

 

「・・・・・・・・・ゆ・・・・・・・・・ユーノ・・・・・・・・・君・・・!?」

 

 夢か幻かと思い、思わず目の前で立ち尽くすユーノの名を口にしながら、なのはは本人かどうかを確認する。

「・・・ほ・・・本当に・・・本当にユーノ君なの・・・!?」

 動揺を隠し切れないなのはは甲高い声をあげて問い質す。

 世界はいつだってこんな筈じゃない事ばかり起こる―――良くも悪くもこの言葉は的を射たものだった。

 あれほど自分や友人達が如何なる手段を使っても探し出せなかった人物が―――翡翠の魔導死神として常に側にいたなど到底容認し難い話だった。

 なのはだけじゃない。フェイトにはやて、クロノにヴォルケンリッター達も灯台下暗しなこの数か月間の出来事を振り返りながら驚きの余り言葉を失った。

 やがて、リアクションに困惑する愛弟子やその他大勢の様子を鑑みた末―――ユーノ本人は頬を緩める。

「どれだけ君が疑ったところで、僕はユーノ・スクライアだよ。それ以上でもそれ以下でもない」

 そう言うと、ユーノは一度前方の敵であるジャガンノートへ視線を向ける。

 ジャガンノートは強力な鬼道の一撃を受けた反動からもうじき体を起き上がらせようとしていた。

「・・・後で話すよ。みんな訊きたい事は山程あるだろうけど・・・全部まとめてちゃんと話すさ。あいつを斃したあとでね」

 声色を低くしたユーノはパチンと、指を鳴らした。

 刹那、リンカーエクストリーマーの影響で動けないなのは達全員を覆うドーム型の魔法結界が発動した。

「これは・・・!?」

 以前になのははこれと同じものの効果を受けたことがある。

 防御と肉体・魔力の回復を同時に行う結界を生み出す、魔法ランクA+の高位結界魔法【ラウンドガーダー・エクステンド】―――闇の書事件でヴィータに襲撃された折、救出に来たユーノが施したものだ。

 だがあの時とは比べ物にならないほど魔法の精度は向上している。

 何よりユーノは高度な魔法の発動時に詠唱すら唱えていない。トリガーとなったのはフィンガースナップだけである。

「リンカーエクストリーマーの副作用で真面に体を動かせないだろうから。みんなは少しその中で体を休めておくといいよ」

 背中越しに語りかけ、ユーノは一歩前に出ると、瓦礫を跨いでジャガンノートの元へ向かおうとする。

「ま、待てユーノ!!」

 すると、ユーノを制止する一人の男の声。

 振り返れば、リンカーエクストリーマーの影響で一時的に老けた顔つきとなった悪友・クロノが必死そうに手を伸ばしてきた。

「ユーノ・・・君は正気なのか? 分かっているのか!? いくら今の君でもあの魔導虚(ホロウロギア)を倒すのは不可能だ・・・!!」

 クロノは心底ユーノの身を案じていた。四年振りに再会した悪友が敵の手にかかって死ぬ様を見たくないという気持ちから来る言葉に嘘偽りは無かった。

 だが、ユーノはその言葉をあまり好意的に受け取らなかった。むしろ不快に思ったらしく、嘆息を吐いてから言い返した。

「・・・やれやれ。ずいぶんと保守的と言うか臆病なセリフを吐くんだな、クロノ・ハラオウン。忠告か警告のつもりだろうけど今の僕からすれば単なる侮辱でしかない。よく知らない相手を表面的な情報のみで判断することもそうだし、知ったうえでも他人が人を判断する事は間違っている。無理かどうかを決めるのは自分だけだ」

「!?」

 聞いた途端、クロノの凝り固まった思考は一気に瓦解する。

 目の前のユーノを()()()()()()()()()()()()()()()()と同一視するあまり彼は大事な事を見落としていた。

 現在の彼が翡翠の魔導死神である事を―――。自分がいつの間にか勝手な判断と偏見のもとにユーノ自身を見下していた事を―――。

 言葉を失うクロノを一瞥したユーノはやや強張った表情を緩めると、魔導死神としての道を歩む切っ掛けともなった尊敬する師・一護へと視線を向ける。

「そういうわけです。師匠、ここは大船に乗ったつもりで任せてもらえますか?」

「任せるもなにも・・・この状況で真面に戦えるヤツはお前しかいねーだろう。やるならきっちり最後までやり遂げろ。お前はもう胸を張って誰かを護れる力を手に入れたんだからな―――」

 一途に弟子の力を信じ、後押しする言葉にユーノは深く感慨する。

 改めて、この人に出会えた良かった・・・。そう心の中で呟くとともに、今度こそジャガンノートとの決着をつけるべく、瞬歩で敵の元に向かった。

「ユーノ君・・・・・・・・・・・・」

 未だに信じられない状況に思考が追いつかないなのは。

 見かねた恋次が横から「奴のことなら心配いらねーよ」と、口を挟んだ。

「あいつは胡散臭いし、人を小馬鹿にするのがムカつくが、ただひとつ―――強いって事は間違いねー。俺はユーノがあんなデカブツに負ける姿なんて考えられねーよ」

「恋次さん・・・・・・・・・」

 自分の知らないところで、ユーノと恋次が深く関わりあっていた事を今になって知ったなのはは、どこか寂しくもあり、羨ましくもあった。

 だが、今はそうした羨望や寂寥の念を抱くよりも自分達を護る為にジャガンノートに向かって行ったユーノの勝利を一途に信じる事にした。

(ユーノ君・・・・・・・・・死なないで・・・・・・・・・・・・・・・!!)

 

『フウウ~~~~~~~~~~~(いて)えぇ~~~~~~~~~~~~~痛えぇぞクソがァ~~~~~~~~~~・・・許さねえ・・・許さねえぞ・・・よくもオレっちを吹っ飛ばしやがったな!! ぶっ殺してやるぞクソ虫が!!!』

 砲撃によるダメージを受けたジャガンノートはおもむろに巨体を起き上がらせ、眼下に佇むユーノを凄まじい剣幕で睨み付ける。

『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!』

 山鳴りのような咆哮をあげた途端、霊圧と魔力の波導が周囲に拡散。

 結界内にいたなのは達にも影響を及ぼす濃厚な波導だが、ジャガンノートと最も距離の近いユーノ自身はまるで動じていない。それどころか、余裕綽々とばかり不敵に笑みを浮かべていた。

「・・・やれやれ。随分と頭に血が上っていらっしゃることで」

『このモヤシが!!! 全力でかかってこい。ぶちのめしてやる!!!』

 それを聞いた途端、ユーノは鼻で笑いながら手持ちの仕込み杖をおもむろに引き抜いた。しかし斬魄刀の解号を唱える事は無かった。

『あァ!? おいおまえ・・・何のつもりだ?』

 ユーノの手持ちの剣が斬魄刀であると理解していたジャガンノートは怒りを孕んだ顔で目の前の敵の奇行を問い質す。

「僕はウサギを追いかけるのに全力を出す愚かな獣とは違う。()()()()()()に全力を出すまでも無いからね」

 明確なまでの挑発的言動だった。

 ユーノの言葉を聞くや、ブチッ―――と、神経を逆撫でされたジャガンノートの頭の血管が切れる音がした。

『ほざけぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!』

 甲高い声を発した直後、ユーノの立ち位置目掛けて渾身の拳を振り下ろす。

『喰らいやがれえッ!!!』

「ユーノ君、逃げてッ!!!」

 振り下ろされた拳は激しい衝撃と轟音、凄まじい量の土煙を発生させ―――なのは達の視界からユーノの姿を一瞬で隠した。

 結界の中でユーノの身を案じ声を荒らげたなのはだったが、煙が晴れた途端、それが杞憂であった事を思い知った。

『・・・な・・・!?』

 ジャガンノートは目の前で起きている現実に目を背けたくなった。

 敵を殺す為に全力で振り下ろしたはずの拳が、か細い一本の刀身の切っ先で容易く受け止められていた。

 ユーノは右片手でジャガンノートの拳を受け止め、その場を一歩たりとも動いていない。

「う・・・ウソでしょ・・・・・・!」

「止めてる・・・・・・あの一撃をあんな細い剣で止めてる・・・・・・!!」

「いったい何をしたんやユーノくん!?」

 予想に反する出来事に思考が追いつかない六課メンバー。それはジャガンノートも同じであった。

『く・・・・・・くそがあっ!!』

 こんな馬鹿な話があってたまるか―――そう言わんばかりに拳を剣から放した途端、轟く声をあげ、両の手を用いた霊圧を押し固めた拳撃の嵐を繰り出す。

『オラッ、オラッ、オラッ、オラッ!!!』

 自暴自棄になったが如く闇雲に拳を振り下ろす魔王。

 対するユーノは泰然自若。襲い掛かる巨大な拳のひとつひとつを解放前の剣で的確にいなしながら攻撃の隙を窺い、一振りでジャガンノートの外皮を深く斬りつける。

『ぐあああああ!!! いてー!! ・・・・・・何しやがるんだゴミがぁぁ!!!』

 歴然とした戦闘能力の差が浮き彫りになり、余計に腹立たしかった。

 右拳を大きく掲げ、今まで以上に強烈な一撃を振り下ろした次の瞬間―――視界に映るユーノは口元を緩めると、手持ちの剣を軽く撫でる様に振った。

「―――っ!!」

 刹那、振り上げたジャガンノートの右腕が一瞬のうちに斬り落とされた。

 今し方起きている信じ難い事象を前に思考が停止するジャガンノート。この男は何をしたのか? という思考に至るまでに自らの腕は綺麗に輪切りにされ、ドシンという衝撃音を伴い落下する。

「・・・やれやれ。なんと凶暴な力だろう。そんな力をいくら振りかざしたところで僕に傷を負わす事はできないよ。人や獣でもないケダモノの力に屈するほど僕は甘くないんだ」

 一言一言から感じる言い知れぬ重圧。ジャガンノートの本能はユーノの背後に自分以上に凶悪な力の権化を見出した。

「さてと・・・どうやら()()()は終わったらしいね。なら、今度は僕のお遊戯に付き合ってくれるかい?」

 剣を右腕の脇に挟むと、ユーノはジャガンノートに左手を突き出し魔法を発動させた。

「ストラグルバインド×10」

 ジャガンノートの周囲に展開される総合計十個のミッド式魔法陣。

 魔法陣の中心より出現した強化魔法を無効化させ相手を拘束するバインドが巨体であるジャガンノートの体を複雑に搦め捕る。

『なっ・・・!! 何だコリャ!!??』

 全身に巻き付き吸い付く翡翠色のバインドにもがきながら必死で拘束を解こうとするが、その行為は無意味でしかなかった。

 元来結界魔導師であるユーノのバインドは仲間内でも最強クラス。翡翠の魔導死神として修行に明け暮れ、精度を高めた術の前ではどんな力技も徒労に終わる。

 ユーノは拘束され思考がパニックに陥る敵を前に、更なる追い打ちをかけんと四年の間に身に付けた死神の術―――鬼道を思う存分発揮する。

「縛道の六十一 “六杖光牢(りくじょうこうろう)”」

 六つの帯状の光がジャガンノートの胴を囲うように突き刺さる。

「縛道の六十三 “鎖条鎖縛(さじょうさばく)”!!」

 太い鎖が蛇のようにジャガンノートの巨体に巻きつきより強く体の自由を奪う。

「縛道の七十九 “九曜縛(くようしばり)”!!」

 さらにジャガンノートの周り縦方向に八つ、胸に一つの黒い鬼道の玉のようなものを出し縛りつける。奇しくも玉の位置は剣術の基本である9つの斬撃の箇所を的確に捕えたものだった。

「縛道の九十九 “(きん)”!!」

 極め付け―――詠唱破棄にも関わらず、ユーノは対象をベルトと(びょう)によって拘束する最高位縛道を易々と使用した。

『のああああああああああああああああ』

 怒涛の魔法と上級鬼道による連続技で身体の動きを完全に封じ込められ、ジャガンノートは体制を崩しその場に豪快に倒れた。

「ストラグルバインドで封じた後に、恋次さん達が使う鬼道をあれだけ連発して顔色ひとつ変えないなんて・・・・・・」

「スクライアのヤツ・・・・・・常軌を逸しているぞ!」

 短時間に使用された高度な術式の数々。これだけの技を使いながら疲労はおろか汗一つ掻いていないユーノを前に機動六課メンバーは愕然とする。

 すると、ユーノは動くに動けないジャガンノートを暫し見つめ、やがて目を閉じる。

 彼はゆっくりと口を開き、人差し指を天に翳すと―――愚鈍なる魔王を迎撃するに必要な詠唱を開始した。

 

          「(にじ)み出す混濁(こんだく)の紋章 不遜なる狂気の器」

 

 詠唱を聞いて、恋次と吉良の二人は吃驚した顔で互いを見合う。

「おい吉良。あの野郎、まさかとは思うが・・・・・・あれをやるつもりか!?」

「間違いない。あの詠唱は、黒棺(くろひつぎ)だよ!」

 

                                                           「湧きあがり・否定し (しび)れ・瞬き 眠りを(さまた)げる」

                                                                           「千手(せんじゅ)(はて)

 

 次の瞬間、呪言を聞いていた吉良が異常に気づき声をあげる。

「ちょっと待て、何か妙だ!」

 

                                                 「届かざる闇の御手 映らざる天の射手」

                                                   「光を落とす道 火種を(あお)る風」

                                                     「(つど)いて惑うな 我が指を見よ」

 

 詠唱。

 それは単なる鬼道の詠唱の筈だったのだが―――

 いつの間にか、ユーノはひとつの詠唱の中に、別の鬼道の詠唱を割り込ませていた。

 黒棺の詠唱とは別に、いつの間にか九十一番の上級鬼道の詠唱を続けざまに唱えるという高等技法を披露しているではないか。

(こいつ、まさか・・・・・・。)

(九十番台の二重詠唱(にじゅうえいしょう)だと・・・!? まさか・・・・・・上級鬼道でそんなことが出きるというのか?)

 鬼道には言霊の詠唱に関する技術がいくつかあり、言霊の詠唱を省略して鬼道を放つ「詠唱破棄」や、二種類の鬼道の詠唱を並行して行うことで、鬼道の連発を可能とする「二重詠唱」と呼ばれる技術が存在する。

 このうち二重詠唱は鬼道衆の熟練者ならともかく一死神では扱いが非常に難しい高等技術であるが―――ユーノはそれを何の気なく行っていた。

 

 ―――  ―――「爬行(はこう)する鉄の王女」  「絶えず自壊する泥の人形」

    ―――  ―――「光弾(こうだん)八身(はっしん)九条(くじょう)(てん)(けい)疾宝(しっぽう)大輪(たいりん)・灰色の砲塔(ほうとう)

       ―――  ―――「結合せよ 反発せよ 地に満ち己の無力を知れ」

          ―――  ―――「弓引く彼方(かなた) 皓皓(こうこう)として消ゆ」

 

 そして、機動六課メンバーは、知る事になる。

 どのような経緯や事情があるにせよ―――

 『翡翠の魔導死神』の名を手にしたユーノには、確かに大きな力があるのだと。

 道理を無視できる程の、圧倒的な『強さ』が目の前に存在するのだと。

 

「―――破道の九十 『黒棺(くろひつぎ)』」

 黒い直方体状の重力の奔流で対象を囲い、圧砕する九十番の黒棺がジャガンノートの巨体を丸ごと呑む。

「破道の九十一 ―――・・・『千手皓天汰炮(せんじゅこうてんたいほう)』」

 続けざま、術者の背後から長細めの三角形の光の矢が無数に降り注ぎ敵を迎撃する九十一番の千手皓天汰炮が怒涛の如く襲い掛かる。

 言うならば、デアボリック・エミッションの上からスターライトブレイカーをぶつけられるような感触だろう。

 つい先ほどまでの光景を彷彿とさせる凄まじい爆轟と、それによって辺り一帯が爆雲で立ちこめる。

 一人の人間によってもたらされるものだと到底思えない常軌を逸した光景に、誰もが呆気にとられる。

「・・・・・・・・・・・・・・・す・・・凄い・・・」

「これが・・・翡翠の魔導死神・・・元無限書庫司書長のユーノ・スクライアさんの力・・・?」

「強さも何もかも・・・まるで・・・別人みたい・・・・・・これが・・・私の知ってるユーノ君・・・・・・なの・・・!?」

 歳月は人を変える―――という言葉はあるが、あまりにも変わり過ぎていた。

 たった四年でユーノ・スクライアは驚異的な進化を遂げていた。久しぶりに帰って来たと思えば、自分達の知らない境地を見出したばかりか、人間を超越した戦闘能力を如何なく発揮して見せた。

 浦島太郎になった気分だった。置いてけぼりを食らうなのは達を余所に、ユーノは彼女達へは終始背を向けたまま、眼前の敵だけを見据えている。

 しばらくして、爆風が収まり隠れていたものが露わとなる。

 強力な攻撃を食らい、拘束から逃れたジャガンノートは全身を黒く焦がしながらも自力で立ち上がってくる。

 途端、ユーノに対する強い憤りを見せた。

『クソ・・・クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソ・・・・・・!!!!!!!! クソガァァァ!!!!!!!!!!』

 大山鳴動する怒号。

 奔逸絶塵(ほんいつぜつじん)な大技をその身に受けていながら尚這い上がるジャガンノートの並外れた生命力に一同は騒然とする。

「あ・・・あれだけの破壊力を持った大技を喰らっても、まだ立ち上がるのか!?」

「信じられん耐久力だ・・・・・・!」

 ザフィーラも脱帽を通り越して呆れさえ感じ始める中、ユーノはやや険しい表情でジャガンノートを仰ぎ見る。

 敵は目を血走らせ、今にも自分を嬲り殺すという強烈な殺意をぶつけてくる。

 溜息を吐き―――ユーノは「仕方がないな・・・。」と、一言口にし、封印状態の斬魄刀を突き出し、おもむろに唱える。

「激昂せよ・・・・・・『晩翠』」

 解号によって直刀状に変化するユーノの斬魄刀。

 真の姿が披露された瞬間、ジャガンノートは最高潮に達した憤怒の感情を赤裸々に顔に出すとともに、怒声を轟かせる。

『・・・殺す・・・! ぶっ・・・殺す!!!』

 大顎を広げるや、口腔内に急速に蓄えられる高濃度の霊子エネルギー。

 紅く色づくそれを一目見るや、機動六課メンバーは目を見開き危機感を募らせる。

虚閃(セロ)だ!!」

「ユーノ君ッ!!!」

 

 刹那―――至近距離によるジャガンノートの虚閃(セロ)が標的ユーノ・スクライアを呑みこんだ。その威力は絶大で、彼が身に纏っていた外套は大空へ舞いながら吹き飛んだ。

『・・・ヘヘ・・・ざまあみやがれ・・・粉々だぜ・・・オレっちの虚閃(セロ)をこの距離で躱せる・・・ワケ・・・』

 そう思いながら土煙を見つめていた折、ジャガンノートの網膜にくっきりと姿形を保つ信じ難い影が映る。

『・・・が・・・!?』

 舞い上がった土煙がひと通り晴れた先にいたのは―――浦原喜助をオマージュした羽織と作務衣、帽子という日常の出で立ちへと変化したユーノの姿。

 衝撃による突風で帽子が飛ばされないよう軽くクラウン部分を押さえ、左手には愛刀・晩翠をジャガンノートに突き付けていた。

『な・・・何だてめえ・・・何しやがった・・・!? どうやって虚閃(セロ)を・・・』

 ジャガンノートは理解出来なかった。至近距離で放った虚閃(セロ)の射線上にいながら、五体満足―――それも無傷のままでいられるユーノの状況を。

 動揺するジャガンノートに不敵に笑いかけ、ユーノはおもむろに口にする。

「見ての通りさ。弾くと二次災害を誘発する可能性があるからね。同じようなものぶつけて相殺させてもらったよ」

『何だと・・・!!』

「信じられないなら、ひとつ見せてあげようか?」

 利き手に持ち替えた晩翠を構え、狙いをジャガンノートに絞り込み、刀身に蓄えた霊圧と魔力を一気に解き放つ。

「輝け―――晩翠」

 刀が振られると同時に地面を真っ直ぐ伝う翡翠の斬撃。斬撃は大地を深く抉りながら射線上に立つ巨大な魔導虚(ホロウロギア)の中心部へと斬り込まれた。

『ぐああああああああああああああああああああああ』

 爆発を伴う破壊力抜群の斬撃が命中し―――ジャガンノートの巨体は反動でひっくり返り、大地は幾度となく凄まじい衝撃音を発生させる。

 最早この状況でユーノが不利であると考える者は一人たりともいなかった。

 不利どころか、終始ジャガンノートを明瞭なる実力差でもってねじ伏せ、絶対的な強者であるという事実を周囲にまざまざと見せつける。

 昔からユーノを知る者も、新しく彼を知る者も、誰もが声を詰まらせる。これだけ一方的な戦いは早々滅多な事では見られない。

 やがて、翡翠斬をその身に受けたジャガンノートが体を起こした。

 これまでに蓄積されたダメージゆえに既に超速再生能力はほとんど役に立たなかった。満身創痍で倒されるのも時間の問題と思われる中―――ジャガンノートは終始納得がいかなかった。

『ぐっ・・・くそ・・・・・・・!! 何故だ・・・何故オレっちがこんなクソ虫一匹に・・・!! あらゆる魔導虚(ホロウロギア)の戦闘データを蓄積させた最強の魔導虚(ホロウロギア)なんだ!! なのになんでなんだよぉ―――!!!!』

 スカリエッティによって生み出された瞬間より、自らが最強の存在であるという自負を持ち続けてきたジャガンノートは憤りとともに戦慄を抱く。

 すべてを超越した自らの力すらも凌駕する驚異的な生命体が眼前に存在し、今なお悠然と立ち尽くし、絶対的な強者たる雰囲気を醸し出していることに―――

「いい機会だ。何故君が僕に勝てないのかって分析を3つしてあげようか」

 思考が『恐怖』に支配されている眼前の敵を凝視していたユーノは口角をあげると、一歩一歩前に向かって進み始め―――ジャガンノートに対しおもむろに語りかける。

「1つ、リンカーエクストリーマーを使ったなのは達の必死の攻撃を受けた君自身の能力が大幅に低下したから。2つ、君の相手がこの僕、翡翠の魔導死神だったから。そして3つ―――」

 言った瞬間、ユーノの姿が視界から消えた。

 刹那にジャガンノートの背後に回り込んだ後、ユーノは一際低い声色で最も重要な3つ目の理由を口にする。

 

「君が僕の目の前で一番大切なモノを壊そうとしたからだ」

 

 次の瞬間―――ジャガンノートの周囲に描かれた円陣から神々しい光が漏れ出る。

『く・・・くそおおおおおおおおおおおおおおおお』

 断末魔の悲鳴を前もって口にするジャガンノート。

 光は瞬く間に対象物を翡翠の円柱の結界内へと閉じ込め、雲を劈いた瞬間―――内部で大爆発を引き起こす。

深緑月華(しんりょくげっか)―――円柱の結界内に閉じ込めた相手ごと内部爆発を引き起こし消滅させる・・・・・・魔導虚(ホロウロギア)よ、その命を天に還すことだ」

 大規模な爆発が収まり、結界内に閉じ込められたジャガンノートの体は木端微塵。肉片となって砕け散った。

 周囲には無惨な姿となった四肢や上半身が散らばり、それらは先ほどの様な復元能力は発揮されず、やがて肉片は霊子分解を起こして空へ昇っていった。

 今ここに―――史上最大規模の魔導虚(ホロウロギア)の完全消滅が確認された。

 他を寄せ付けない絶大なる戦闘力を惜しげも無く発揮したユーノの戦い振りを終始傍観していたなのはを始めとする幼馴染一同、ヴォルケンリッター、フォワード陣、さらには恋次と吉良は絶句する。

「た・・・倒し・・・た・・・!?」

「あのユーノが・・・・・・たった一人で魔導虚(ホロウロギア)を・・・!?」

「なんちゅう規格外や・・・・・・・・・!!」

「ユーノ君・・・・・・」

 四年振りに再会した幼馴染は最早なのはの知っているユーノとはかけ離れた別の存在に思えてならなかった。

 なのはの網膜が焼き付けるユーノの後姿はとても大きく、とても遠くに佇んでいた。

 しばらくして、ユーノは静かに晩翠を元の仕込み杖の形状に戻してから、瞬歩でなのは達の元へ戻ってきた。

「・・・・・・――――――」

 沈黙を保ったままユーノは一歩、また一歩となのは達の元へ歩み寄ってくる。

 なのはは急に不安になり、彼の顔色を窺いながら恐る恐る声をかける。

「・・・ゆ、ユーノ君・・・」

「大丈夫かい? なのは・・・」

 すると、真っ先にユーノは和らいだ表情でなのはの身を案じ声をかけた。

 彼が発した言葉を聞いた瞬間、先ほどまで感じた言い知れぬ不安が嘘の様に消え去り―――なのはは心の底から安堵する。

(よかった・・・・・・いろいろ変わっちゃったけど・・・・・・間違いない・・・・・・昔のままの・・・・・・私の知ってるユーノ君だ・・・・・・・・・!!)

 外見や能力の変化こそ著しいものの、性根の部分は四年前に失踪した時と全く変わっていないとわかっただけでも嬉しかった。

 なのはは改めて確信した。ユーノ・スクライアが自分のもとに四年越しに帰って来たのだという事を――――――

 

                                                    ――――――――――――『いやー、実に素晴らしい演目を見せてもらったよ』

 

「!」

 瞬間、クリアな声がユーノやこの場にいる全員の耳に響き渡った。

 その声の響く場所が空の上だと気づき、ユーノが意識を向けると、巨大な顔の立体映像を作り出したスカリエッティは静かに語り始めた。

『まさか私が造り上げたジャガンノートが倒されるとはね。しかもそれに止めを刺した翡翠の魔導死神の正体が、君だったとは意外だよ。元無限書庫司書長ユーノ・スクライア―――』

「スカリエッティ!!」

「あの野郎、いけしゃあしゃあと出てきやがって!!」

 地下アジトから行方を眩ませたスカリエッティのあからさま過ぎる挑発にフェイトや、怒りの沸点が低くなった恋次は発憤する。

 対するユーノは平静を装い、自分自身に興味の対象を示しているスカリエッティを見上げながら、言葉を紡ぐ。

「・・・・・・お初にお目にかかるよ。ジェイル・スカリエッティ。随分と世界をひっちゃかめっちゃかにしてもらったものだね。さすがは“無限の欲望(アンリミテッド・デザイア)”と称される事はある次元世界最悪の大罪人だよ」

 軽侮の念を一つ一つ言葉に表し、ユーノは明確に話し相手を悪罵する。

『ふふふ・・・世界は神秘と叡智で満ちているよ。ただ、この世界にはあまりにも不出来なモノが多すぎる。本当に価値ある者は雀の涙ほどで良いのだよ。そう―――君や私のような才能ある者こそが世界を席巻するに相応しい!! そう思わないか、ユーノ・スクライア!!』

 スカリエッティは若くして才能を発揮し、無限書庫司書長として広く世の中に知られていたユーノの類稀なる能力を高く評価した人物の一人だった。彼なりにユーノは自分のライバルに成り得る者、あるいは自分の頭脳を超えられる可能性を持つ者と信じて疑わなかった。

 ゆえに彼はユーノを仲間に引き入れたかった。彼と組めば己の欲望は満たされ、次なる欲望を見出せる―――そう信じて。

「お生憎。僕はお前の世迷言に共感なんて出来ないよ。況してお前と同族扱いされるなんて御免だね。反吐が出る」

『ふふふ・・・顔に似合わず汚い言葉を使うとは意外だね。しかし実に惜しいよ・・・・・・君程の頭脳がありながら何故動こうとしない? 君も聞いたはずだよ。彼らからのメッセージを―――世界の意志の声を!!』

 世界の意志―――というワードが飛び出た直後、ユーノは一瞬眉を顰めたのち、眼鏡の位置を微調整する。

「・・・そうか。お前も僕と同じ“プローブ”として選ばれたのか。だとしたら、なおさら僕はお前の凶行を野放しにはできない。お前の目的はなんだ?  魔導虚(ホロウロギア)を造った先にお前は何を求める?」

 単刀直入にスカリエッティの最終目的について問い質す。

 全員が固唾を飲んで彼らの会話の行方を静観していた折、スカリエッティは口元を緩め喜々としてユーノに語った。

『私はね―――戦闘機人や魔導虚(ホロウロギア)などという陳腐な夢にこだわるつもりはない。無限大よりもさらに大きく膨れ上がった私の欲望をもって世界の在り方を変えてみせる。いわば、“欲望による世界の破壊と再生”さ!!』

「破壊と再生とは・・・大きく出たものだね。もしかしてお前って中二病患者? それともなろう小説かライトノベルを読み過ぎて頭がおかしくなったか?」

 一言一句に渡りスカリエッティの言葉を悉く否定し、悪しざまに罵倒。やがて、ユーノは手持ちの杖からおもむろに刀を引き抜いた。

「・・・ひとつだけ言わせてもらう。首を洗って待ってろ。お前の野望は僕が必ず打ち砕く。そしてお前に必ず罪の報いを受けさせる。翡翠の魔導死神を敵に回した事を心の底から後悔する日を楽しみにしているよ」

 警告を発した直後、刀身を掲げ―――スカリエッティの顔を模った立体映像を一刀両断。ユーノは敵との通信を自らの剣で断ち切った。

 ユーノ・スクライアとジェイル・スカリエッティ。

 真正の天才と異形の天才―――しかして、両者は決して相容れぬ存在。言わば反物質同士である。

 二人の間で交わされたほんの数分間のやり取りにただならぬものを見出したなのは達は終始言葉を詰まらせる。

 

 と、そのとき―――なのは達は頭上を飛び交う見慣れない一隻の次元船を目撃した。

「あれは・・・・・・!」

 ヴォルフラムとは明らかに形状が異なるそれは、パッと見電気工具の道具箱のような独特のフォルムをしており、外装には世界屈指の魔導機器メーカー『カレドヴルフ・テクニクス社』のロゴマークがデザインされていた。

「来たか。予想よりも随分早かったな」

 困惑する機動六課メンバーを余所に、あらかじめ彼らの到着を知っていたユーノは予定時刻よりも早く到着した彼らの仕事振りの高さを内心称賛したくなる。

『こちらウシヤマ。プロフェッサー、無事ですかい?』

 無線通信で聞こえてきたウシヤマの声を聞き、ユーノは自分の身を案じてくれた彼の心遣いに感謝しつつ朗らかに返事をする。

『ええ。僕は問題ありません。ウシヤマさんこそ準備の程は?』

「こっちはいつでもOKです」

「付近の建造物崩壊の可能性あります!」

「おっと。そいつはヤベーな。よーし・・・万能力作修復艦『ウルカヌス』、展開! メカニシャンズ全機発進!! 首都圏再生作業開始だぁ!!」

 ウシヤマの掛け声を合図に、艦内では慌ただしく準備が始まった。

 機動六課メンバーがしばしその船―――ウルカヌスを凝視していると、船の天面にある巨大なハッチが展開。チェスト型の工具箱を彷彿とさせる機内にはぎっしりと工具用品を模した形のロボットが数千機格納されていた。

 やがて、一体のロボットが飛び出したのを皮切りに数千のロボット達が一斉に格納庫を発って大空を舞う。

「あのロボットは?」

「ザ・メカニシャンズ―――あらゆる物体の損傷を瞬時に修復する事の出来る空前絶後のミラクルツール部隊さ」

 鼻高く説明したユーノは、この日の為に長い時間をかけて制作してきたハイパーツール部隊の働き振りを静観。

 メカニシャンズは破損した建物の残骸から瓦礫と化した物に至るまでを余すことなく利用し、それを元の形に即時再生・修復する様はなのは達の想像を絶する光景だった。

 機人四天王とジャガンノートによって見るも無残に壊れた街がものの数分と立たないうちに見る見る再生され―――ここにクラナガンは息を吹き返すのだった。

 

           ◇

 

 スカリエッティの脱獄から始まった今回の一連の事件―――『魔導虚(ホロウロギア)事件』は、こうして幕を閉じました。

 翡翠の魔導死神の正体がユーノ君だったことは、今にして思えばすごく理にかなっていたと思う胸中、私や機動六課のみんな、恋次さん達死神さん方もユーノ君によって命を救われました。

 今回だけのことじゃない。今迄だってずっと、私たちは翡翠の魔導死神として活動を続けてきたユーノ君によってずっと守られてきた。

 破壊されたクラナガンも奇跡のような出来事を経て、ほぼ元通りに修復された。街には再び束の間の平穏が取り戻された。

 そして、私が目を覚ましたのは最後の魔導虚(ホロウロギア)・ジャガンノートがユーノ君の手で倒された一週間後のことだった――――――・・・・・・。

 

           ≡

 

6月14日―――

次元空間 時空管理局本局 医療施設

 

「・・・・・・・・・ん・・・」

「あっ、気がついたー!」

 リンカーエクストリーマーの副作用によって長い時間眠っていたなのはが意識を取り戻した時、真っ先に娘のヴィヴィオの喜々とした顔が網膜に焼き付いた。

「ヴィヴィオ・・・・・・? ここは・・・・・・?」

「本局の医療施設だよ。あれからママもみんなもずーっと眠ってたんだよ。あ、ちなみに六課メンバーで最初に起きたのはなのはママで、死神さん達は2日前に目を覚ましたよ」

 寝ている間の説明をヴィヴィオにざっくり聞かされたなのはは、腰の痛みを覚えながらゆっくりとベッドから体を起こす。

 近くに手鏡があったので自分の顔を見てみた。

 驚いた事に、リンカーエクストリーマー使用後に酷く爛れて皺の寄った肌は元通りになっており、以前の自分となんら遜色無さそうだった。

 吃驚する母を見ながらヴィヴィオは屈託なく笑いかけ、さらに言葉を紡ぐ。

「ママが眠っている間、ずっとユーノさんが看病してたんだよ。ほぼ片時も離さずって感じだった」

「! そうだ・・・・・・・・・ユーノ君は!? ユーノ君はどこに!?」

 

           *

 

同施設内 エントランスロビー

 

「まさかあなたが翡翠の魔導死神で、天才魔工技師アニュラス・ジェイドの正体だったとわね―――」

 リンディはつくづく面を食らっていた。目の前で湯呑片手に番茶を啜る優男こそ、次元世界最強の戦士にして、これまで数々の画期的な発明を作り出してきた天才エンジニアの正体だった事に今の今まで気づかなかったのだ。

 可能性が全くゼロだったという事ではなかった。だがしかし、かねてからある既存の価値観が可能性を低く見積もっていたのだ。

 リンディを始め、マリエルやシャリオ達も正直戸惑っていた。

 ユーノは内心まぁそうなるよな・・・と、ごく自然な流れだと思いつつ茶を啜るのをやめ―――改めてリンディ達と向き合いおもむろに語りかける。

「今まで黙っていて本当にすみませんでした。個人的にあなた方との直接的な接触はなるたけ避けたかったんです」

「しかし流石に金太郎さんや浦太郎さん達の上司だったなんて思わなかったわ。それも駄菓子屋だったなんて・・・完全に予想外よ」

「彼らはユーノ先生の個人的な戦力・・・―――と考えるべきなんでしょうか?」

 シャリオからの率直な問いかけに、ユーノは柔らかい笑みを浮かべる。

「戦力だなんてとんでもない。僕は戦力なんて一人たりとも持った覚えはない。金太郎も浦太郎も、鬼太郎も含めて僕の大切な家族だよ」

 それを聞いて当人達は非常に誇らしげな気持ちだった。出会った頃から一人の人間として扱い、どんな時でも自分達を見捨てない彼の心意気こそ彼に仕えているという最大の誇りだと再認識する。

 そんな折、二日前にリンカーエクストリーマーの副作用から回復したばかりの恋次が未だ目を覚まさないなのは達の事を気に掛けた。

「つーか。なのは達はまだ起きねーのか?」

「おめーや俺らと違ってあいつらは普通の人間だぞ。ユーノがあんとき、リンカーエクストリーマーの副作用を抑えてくれていなかったら、今ごろ俺らも含めて後遺症で自力で歩く事も出来なかったんだ」

 隣で聞いていた一護が補足説明をする。

 やがて、リンディはふうー・・・と、溜息を吐いて心を落ち着かせ―――目の前のユーノに真摯に問いかける。

「ユーノ君。これからの事もそうだし、ひとまずあなたの身に何があったのか教えてもらえないかしら?」

「それを教えるのは、彼女ときちんと向き合ってからにしてもらえますか」

 

 ―――――――――「ユーノ君!!」

 

 ちょうど都合の良いタイミングで、ユーノが今一番向き合わなければならない女性の声が聞こえてきた。

 全員が声のする方へ視線を向ければ、ヴィヴィオに心配されながら寝間着姿のままやや息をあげるなのはが立っていた。

「ユーノ君! あの・・・・・・!」

 どうやらまたユーノが一人でいなくなっているのではないかと焦っていたようだ。

 彼女の気持ちを容易に察する事ができたユーノは穏やかな表情を浮かべると、なのはの元へ歩み寄りながら、いつもと同じ調子で彼女の()を見て言葉を返す。

「どうしたんだい? 僕がまたいなくなると思ったのかい?」

「あぁいやその・・・・・・・・・帰って・・・来てたんだよ・・・・・・」

「うん。帰ってきたよ」

 面と向き合って話をしている二人の会話はどこかぎこちない。周りに居合わせた者達は二人の会話の様子を静観する。

「4年ぶりかな・・・ちゃんと会って話すのって・・・?」

「そうだね・・・・・・」

 静かに相槌を打った直後―――

 ユーノはその場に膝を突いて帽子を脱ぎ、なのはに向って深々と頭を下げた。

「4年間ずっと連絡もしないまま、勝手にいなくなってご心配をおかけして本当に・・・申し訳ございませんでした・・・!」

 この行動に誰もが目を見開き驚愕する。

 確かに、誰にも何も告げずにいなくなったという非はある。だがそれ以上にユーノはなのは達の命を救い、ミッドチルダに平穏を取り戻した魔導虚(ホロウロギア)事件最大の功労者なのだ。

 だからこそ、こうして土下座をする理由が解らなかった。それ以前に、なのははこんな展開を望んでいたわけでなかった。

 いたたまれなかった。ユーノの謝罪を聞いて暫くの間を置いてから、なのはは悲痛に顔を歪めながらゆっくりと口を開く。

「・・・やめてよ。どうしてユーノ君が謝らないとならないの? そうやっていつも私には謝ることしかしないで、どうして昔みたいに笑ってくれないの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「ユーノ君、悪いことなんて何もしてないよ。気持ちの在り処はともかく、私やみんなも、ユーノ君が助けてくれなかったら死んでいたんだよ。この世界だってどうなっていたかわからない。感謝こそすれど非難するなんてぜったいに間違ってる。だから・・・謝らないでよ。むしろ、それは私が言うべきことなんだから・・・」

「えっ」

 なのはの口から発せられる言葉に一瞬耳を疑うユーノ。

 次の瞬間、驚いたユーノが顔を上げるなり目の前で―――なのはは膝を落として自分に向けて深々と頭を下げ、声を殺して謝罪の言葉を口にする。

「本当に・・・ごめんなさい・・・!!」

 なのはの行動を固唾を飲んで見つめる一護、恋次、ヴィヴィオ、その他多数。

 しかし、ユーノは想定していなかったなのはの行動に終始戸惑った様子で、どうリアクションをしていいのか解らなかった。

「なんでだよ・・・なんでなのはが謝らないといけないのさ!? 勝手に何も言わずに君の前からいなくなったのは他でもない、この僕だ!! 非難こそされど謝られるなんて・・・・・・!? どうしてなのはが謝る必要があるのさ?!」

 ユーノには謝罪するなのはの意図が全く理解できなかった。

「そんなの決まってるよ・・・・・・」

 困惑しがちに理由を問い質すと、なのはからまたしてもユーノの予想には無かった反応と言葉が返ってきた。

「私がユーノ君の気持ちを何ひとつ分かっていなかったからに決まってるよ・・・」

 双眸からこれでもかと溢れる涙。涙腺が崩壊した彼女の顔はぐしゃぐしゃで、ユーノはこんなに惜しげも無く泣いた彼女を見るのは久しぶりだった。

「わたしさ・・・・・・ほんとダメな弟子だよね。師匠の気持ちひとつ理解できないんだもん・・・・・・ユーノ君はずっと一人で私が自分の空を飛んでいけるようにってずっと私を支えてくれていた・・・それなのに私は・・・そんなユーノ君に恩返しどころか、ずっと甘えたままで・・・ユーノ君自身の気持ちも考えずにいた・・・それが悔しくて・・・!!」

「なのは・・・・・・。」

「ずっと一人で寂しい思いをしてるんじゃないかとか、私のこと恨んでるじゃないかって・・・これっぽっちも考えようとしなかった・・・」

「違うッ!! 僕はなのはを恨んだことなんか一度も無い!!! そりゃ確かに、孤独は感じたことはあった・・・だけど僕の命を救ってくれた恩人を恨むような感情はこれっぽっちも抱いたことは無い!!」

「じゃあ、どうして何も言わずいなくなったりしたの!?」

「そ・・・それは・・・・・・」

 上手く説明できなかった。途端に口籠るユーノの反応ほど素直なものはなかった。

 なのはは論理的に言葉で表現する事に長けたユーノがいつまで経っても何も言ってこようとしない様を見て、おもむろに口にする。

「わたしが・・・・・・私がユーノ君を蔑ろにしなければこんな事にはならなかった。私が馬鹿じゃなかったら、ユーノ君が孤独を感じる事もなかった! あのとき私が堕ちなければ、ユーノ君が苦しむ事はなかった!!」

「!!!」

 なのはは確かに自らの口で言った。あのとき、自分達の心の距離を決定的に隔ててしまった墜落事故の話を―――。

 絶対に自分自身で語る筈のなかった話を贖罪とばかり口にするなのはに終始唖然とするユーノ。

 無論、ユーノだけではない。なのはの事故についてを知るリンディら既存の六課メンバーの多くもある種勇気のある行動に驚愕を露わにする。

「あの事故以来、ユーノ君は私に距離を取ってしまった。私に笑いかけるときはいつだって作り笑いで、それがとても辛くて、淋しくて・・・・・・自業自得だって事はわかってても私はユーノ君の笑顔を取り戻したかった・・・・・・・・・だけどうまくいかないどころか・・・・・・ユーノ君の方から離れていった・・・・・・」

 嗚咽(おえつ)しながら必死に声を絞り出す彼女の双眸からポロポロと零れ落ちる涙。涙。涙・・・・・・それを見る度ユーノの胸は強く締め付けられる。

「わたしね・・・ユーノ君がいなくなってからの4年間・・・ほんとうに辛くて、苦しかった・・・・・・仕事や子育てに精を出したり、仲の良い友だちと一緒にいても・・・心にぽっかり空いたユーノ君へのこの気持ちは・・・ちっとも埋まらなかった・・・それでようやくわかったんだ。私は犯罪的に鈍いんだなって。こんなんじゃユーノ君だって愛想尽かしちゃっても無理ないやって」

「え・・・・・・」

「あなたの辛さも孤独も、もっともっと理解すべきだったのに・・・私はユーノ君と違って不器用で・・・意固地で・・・独りよがりだった・・・初めて魔法を使ったのは他でもなくユーノ君を助けたかったからのに・・・いつの間にかユーノ君を苦しめていた・・・悲しい目に遭わせていた・・・この手の魔法は・・・理不尽な痛みや悲しい想いを撃ち抜くためのものだったはずなのに・・・わたしは・・・・・・わたしは・・・・・・!!!」

 これまでの自分の行動ひとつひとつを振り返り、神に向かって懺悔するかのようになのはは次々と謝罪の言葉を口にし続けた。

「いちばん大切な人一人救えないくせに・・・何が“エース・オブ・エース”なんだろう・・・思い上がりも甚だしいよ・・・・・・私はユーノ君がいてくれたから空で戦えた・・・たとえ道は違っても見えない絆で繋がっていられたから・・・・・・些細なことでもユーノ君と一緒ならすごく幸せだった・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

 なのはの独白をじっと静かに聞き続けるユーノ。その胸を締め付ける力は次第に強まり、遣る瀬無い気持ちに駆られる。

「ねぇ、ユーノ君は覚えてるかな? 子どもの頃に言った私の言葉・・・」

 言われた瞬間、ユーノの脳裏に甦る遠い昔の記憶―――。

 

 ―――「ユーノくん、いつもわたしと一緒にいてくれて守っててくれたよね」

 ―――「だから戦えるんだよ。背中がいつもあったかいから」

 

 9歳のとき、ジュエルシードを発端として起こった『PT事件』。

 なのはと一緒に「時の庭園」にて突入した砌、駆動炉の封印時なのはが語りかけてくれた優しい言葉が鮮明に思い浮かぶ。

「あの言葉にはね、大前提があるんだよ・・・・・・私にとって背中を預けられる唯一のパートナーはずっとユーノ君だけだから・・・・・・」

「っ!」

 瞬間、ユーノは目を見開き絶句する。

 聞き違いかと思った。自分は遠の昔になのはにとって“良きパートナー”であることを諦め、その役目をフェイトに譲り渡したつもりだった。

 墜落事故以来、意固地にもなのはとの間に見えない壁を築き上げ、無限書庫で彼女の動静を見守ることを決め込んだ。

 それなのになのははそんな臆病な自分を今でも“背中を預けられる唯一のパートナー”と呼んでくれた事が嬉しくて、気恥ずかしくて、とても心苦しかった。

「・・・・・・私はもっと、これからもずっとユーノ君と一緒にいたい・・・もっと一緒に笑っていたい・・・・・・あれからずっと怖くて怖くて仕方なかった・・・!! 大切な人が急に居なくなって・・・初めてその重さに気付かされた・・・!! 自分の手の届かない遠いところへいってしまった時の辛さも寂しさも嫌ってくらい思い知った!! 寂しい想いが嫌いで、そんな想いを誰にもさせたくなかったのに・・・結局最後は自分にしっぺ返しを食らう始末・・・背中から感じなくなった暖かさも、ユーノ君の声を聞けない寂しさも、私にとっては何よりも怖かった・・・!! 空を飛んでいる時だって、また落ちゃんじゃないかって不安が飛ぶたびに大きくなっていった・・・!! みんなと一緒に時間を過ごして、ヴィヴィオと笑いあっていたって・・・それでも・・・一人になったら不安に負けて何度も声を上げて泣いた・・・!」

「なのは・・・・・・・・・君の気持ちは痛いほどわかったよ・・・・・・・・・だけどそれでも僕には君の傍にいる資格なんてないんだ・・・・・君を護ることもできない僕に何ができるって・・・・・・!」

「護ってくれてたよ!!!」

 自己否定するユーノの言葉に、間髪入れずなのはは怒りと悲しみを孕んだ声で声を荒らげる。

「ずっとずっと護ってくれたんだよ・・・・・・!! プラスターのときも、私が夢の中に閉じ込められたときも、ずっとずっとユーノ君は護っててくれた・・・・・!! あなた以上に私を護ってくれた人はいないよ!! 私だけじゃない、スバルやみんなの事も護ってくれたんだよ・・・!! だから・・・・・・そんな風に自分を卑下しないで・・・・・・淋しいこと言わないで・・・・・・」

 むせび泣きながら心の内を曝け出すなのはは、これ以上ユーノを失いたくないという気持ちを前面に出し―――彼の胸の中に顔を沈める。

「おねがいだから・・・・・・もういなくなったりしないで・・・・・・わたしを一人にしないでよ・・・・・・・・・!!」

 子どもの様に泣きながら訴えかけるなのはを見た瞬間、ユーノはあまりの状況に驚愕と衝撃で何も言葉では言い表せなかった。

 できることはひとつ。自分の胸の中で寂しさと悲しさでいっぱいの世界で一番大切な幼馴染を優しく抱擁する事だった。

 

【挿絵表示】

 

「ごめんねなのは・・・・・・そして、ありがとう。まさか君にそこまで辛い思いをさせていただなんて気づいてあげられなかった・・・・・・」

「わたしの方こそ今まで気づかなくてごめんね・・・・・・ひとりで勝手なことばかり言って・・・・・・こんなこと今さら言うのもおかしいとは思うんだけど・・・・・・ユーノ君・・・・・・最後にこれだけはちゃんと聞いて欲しいんだ・・・・・・」

「うん・・・話してごらん・・・・・・」

 双眸から溢れるなのはの涙をユーノは綺麗に拭い去った。

 充血した瞳でなのはは透き通ったユーノの瞳を捕え、やや頬を赤らめながらユーノへの長年の想いを打ち明ける。

「ずっとずっと・・・これから先もずっと・・・・・・わたし、高町なのはは―――・・・世界中の誰よりもユーノ・スクライアを・・・・・・愛してます・・・・・・」

 ついに、四年越しとなる想いの丈をユーノにぶつけることに成功した。

 まさかの告白劇に面を食らうギャラリーが騒然とする中、告白を受けたユーノはやや驚きながら、勇気を持って自分に想いの丈をぶつけたなのはに穏やかに笑いかける。

「・・・まさか君の口から先に言われるとは思わなかったよ。でも嬉しいよ・・・・・・なのはも僕と同じ気持ちだったなんて」

「え」

 思わず耳を疑うなのはだったが、次の瞬間―――

 一度黙り込んだ末、ユーノは口元を緩めてからおもむろに口にする。

「僕、ユーノ・スクライアも同じです。この世界に生きている限り、世界中の誰よりも高町なのはを愛してます――――――この魂に誓って」

 本当なら自分から言うべき事を先になのはに言われた事を男として情けないと思いつつも、ちょうどいいタイミングだと思った。

 ユーノはなのはと面と向き合い―――ずっと伝えられなかった十数年分の想いを素直にぶつけることができた。

 ユーノの嘘偽りの無い言葉を聞いた瞬間、なのはは余りの嬉しさに感情が抑え切れなくなった。そして溢れ出るのは歓喜の涙。

「・・・・・・ありがとう・・・ユーノくん・・・・・・・・・///」

 厚く抱擁するユーノの胸の中に顔をうずめ、なのはは自然と彼の背中に両腕を回しながら、ようやく二人の間にできた蟠りが消え去ったのだと実感した。

 これほど嬉しい思いに浸るのは初めてのことだった。今迄の寂しさがまるで嘘のように、なのはの心に空いた孔は急速に埋まり始めた。

「ありがとう!! 本当にありがとう!! そして・・・お帰りなさいユーノ君・・・!!」

「うん・・・・・・ただいま・・・なのは。もう放さない」

「わたしも放さないよ。これからはずっとずっと一緒にいて」

 

「ああ・・・・・・もう君の前から一人でいなくなったりなんかしない。約束だ」

 

 

 

 

 

 

参照・参考文献

原作:久保帯人 『BLEACH 21、22、27、30、34、46、48巻』 (集英社・2006、2007、2008、2010)

原作:久保帯人 著者:成田良悟『BLEACH Spirits Are Forever With You I・Ⅱ』(集英社・2012)

 

 

 

 

 

 

教えて、ユーノ先生!

 

ユ「今日はいろんな高速移動技についてだ♪」

「死神の『瞬歩』。フェイトやエリオの『ソニックムーブ』。なのはの『フラッシュムーブ』。あと浦太郎や金太郎の『自己加速術式』」

「それから破面(アランカル)や一部の魔導虚(ホロウロギア)が用いる『響転(ソニード)』など色々あるけど・・・つまる話、どれも同じようなものだけどね」

 という率直な意見を呟くと、フェイトがソニックムーブでユーノの前に現れた。

フェ「うんうん。ソニックムーブが一番いいし速い!」

 自身の十八番であるソニックムーブこそが一番と信じているフェイト。そんな彼女にユーノはふとした疑問を呈する。

ユ「そういえばフェイトの場合、移動するとき髪の毛が長いのは邪魔なんじゃないの?」

フェ「移動しても崩れないようにしてるから問題ないよ」

 破顔一笑した彼女は、それを実演する為にユーノの前で自慢のソニックムーブを披露し始める。

フェ「は! は! は! は!」

 直後、ユーノはフェイトの利き脚を杖で引っ掛けてみた。

フェ「きゃあああ!!!」

 引っ掛けられた際に、バランスを崩し顔面を強打する。

ユ「足元も気にしないとダメだよ」

フェ「ゆーの・・・・・・ひどいよ~~~///」

 

 

 

魔導師図鑑ハイパー!

 

 互いの気持ちを確かめ合い、和解したユーノとなのは。

 二人のやり取りを見ていた多くの者は感動の余りもらい泣きをし、この男も涙腺が崩壊していた。

恋「くぅぅ~~~・・・まったく、最近の若い奴はうらやましいぜチキショウ~~~!!」

一「おい恋次、お前まさか泣いてんのか?」

恋「泣いてねーよ!! 目にごまが入っていてーんだよ!!」

 相当に無理な誤魔化し方だと思いつつも、一護達はあまり積極的にツッコミを入れる気が起きなかった。

 二人の愛のある姿に触発され、恋次はおもむろに伝令神機を取り出し、尸魂界(ソウル・ソサエティ)にいる一人の女性に連絡をする。

 プルル・・・。ブツン・・・。

 電話が通じた瞬間、恋次は思いの丈をありのままの言葉にして電話の向こう側の者へ赤裸々に伝える。

恋「ルキアぁ!! 俺はお前を愛してるぞ!! 何十年、何百年、いや何千年経っても俺はお前を愛してる―――!!!!」

?『そうか・・・・・・貴様はそう言う目で私を見ていたのか?』

 受話器のスピーカーから聞こえてきたのは女ではなく男の声だった。

 しかも、喋り方や声色に至るまで恋次はその声の主をよく知っていた。まさかと思い液晶画面を見ると、発進相手は『朽木白哉(くちきびゃくや)』と表示されていた。

恋「ままままままままままさか・・・・・・///」

 よりにもよって護廷十三隊六番隊長。かつての上司であり、結婚相手の義理の兄に当たる人物に間違って電話をかけてしまったのだ。

白『次に(けい)とあった時は楽しみにしているぞ、恋次―――』

 ブツッ・・・。ツー・・・。ツー・・・。

 意味深長な言葉を残し、白哉との電話は切れてしまった。

 言葉を失い頭が真っ白となる恋次を見かねて、吉良と一護は呆れ顔で語りかける。

吉「阿散井くん、完全に詰んだね」

一「帰ったら義兄(白哉)のきっついお仕置きが待ってるぜ」

恋「いやだぁ―――!!! 帰りたくねぇ――――――!!!」




次回予告

な「魔導虚(ホロウロギア)事件は終わりを告げた。だけど、アンゴルモアを巡るスカリエッティとの戦いは単なる序章にしか過ぎなかった」
一「今明かされる古代遺物(ロストロギア)・アンゴルモアの真実とは!?」
ユ「次回、ユーノ・スクライア外伝・・・『試練への門口』。魔導虚(ホロウロギア)篇、堂々完結!!」






登場魔導虚
ジャガンノート
声:小野大輔
スカリエッティがこれまで倒されたすべての魔導虚のデータを蓄積させ造り出した魔導虚。
巨大な塔と巨人が融合したような姿で、背中には巨大な翼を生やした顔は単眼の生物的なものを連想させる仮面を持ち、異様に長く伸びた両腕には十二支を模った仮面のようなものが付いている。
第24話では、手当たり次第に取り込んだ周囲の機械物質を加えて自身の身体を形成、首都中の電力や魔力エネルギーを体内に蓄積してクラナガンの大地ごと次元空間への逃走を図り、それを阻止しようとする機動六課前線メンバーと激戦を繰り広げた。凄まじい攻撃力と防御力を発揮し、リンカーエクストリーマーを使用しないなのは達の攻撃を全て跳ねつけた。一度は肉片にされ撃破されたかに見えたが、しぶとく復活を果たして動けないなのは達に虚閃を放とうとするも、援護に来たユーノに歴然とした力の差を見せ付けられ、最期は深緑月華をその身に受け、バラバラとなったのち超速再生をする余力も残さず完全消滅を果たす。
虚閃や虚弾のような破面が用いる他、腕の一振りから衝撃波を放つ「ソニックブーム」で敵を一度に吹き飛ばす。また、無数のガラス片にアルミニウムを瞬間蒸着させたのち、宙に舞い上げたこれらを反射板としてレーザーを複雑に反射させ、弾道予測不能の攻撃を繰り出す「魔王の審判(サタンズ・レフリー)」。全身から放つ大量のレギオン粒子を撒き散らし生物を死に至らしめる「レギオン・レーゲン」で、機動六課目メンバーの機能停止を図った。クラナガン中のあらゆるエネルギーを転用しているため、その出力は機動六課メンバー全員を軽く上回る。
名前の由来は、ヒンドゥー教のヴィシュヌ神の八番目の化身であるクリシュナの異名「ジャガンナート (Jagannāth)」から。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。