ユーノ・スクライア外伝   作:重要大事

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前回のあらすじ

奇妙な夢を見たユーノは、アンゴルモアの行方を追うべく、地球に酷似した太陽系外惑星「Gliese(グリーゼ)297a」――【Another EARTH】を訪れることとなった。
そこに降り立ったユーノ、なのは、フェイト、はやての四人は、変異を遂げたカニの怪人や巨大な異形生物、さらに知性を宿す新種の蚊の怪物と次々に対峙する。
彼らは幾度も危機に見舞われ、命運が尽きかけた瞬間――ユーノの夢に現れたネコ型ロボット、サムライ・ドラと、彼が指揮する特殊部隊《鋼鉄の絆(アイアンハーツ)》が颯爽と現れた。



第38話「三人娘を恐怖させる魔猫(まびょう)

Another EARTH

日本 北海道 ニセコ町

 

現地時間7月4日。ユーノ達は、凶悪な蚊の怪物・モスキート娘との激戦を終えた直後、自分達の素性――異世界の魔導師であることを既に知っていたサムライ・ドラに、その背景を聞かされる。

ドラの話によれば、彼は二年前に職場を襲った《グノーシス・モデル》と呼ばれる正体不明のロボット事件の調査の為、上司と共にタイムマシンでパラレルワールドの“もう一つのミッドチルダ”へと向かったという。そして、無限書庫司書長であるユーノや、機動六課の面々と共に《ナレッジマネジメント社》の陰謀に巻き込まれ、共闘した過去を語り始めたのである。

「というわけです」

「つまり、あなたは以前別の可能世界であるミッドチルダへと辿り着き、そこでもう一人の僕やなのはたちと出会い、ナレッジマネジメント社なるものの陰謀を打ち砕くため、力を合わせた・・・というわけですか?」

「そうです、そうです! 思えば、あっちの世界ではまぁいろいろありましたよ。ホント大変だったんですから。あ! ちなみに、向こうの世界のユーノさんとなのはですが、事件解決してから結婚しましたよ」

「「けっ、結婚!?」」

 『結婚』という言葉に過剰に反応するユーノとなのはの顔は瞬く間に赤く染まり、蒸気が立ち上がる。

「なんや二人とも。別にそう思われても不思議やないやろう。公認のバカップルやさかい、結婚って言葉ぐらいで狼狽してどうするの?」

「そうだよ。私が言うのもなんだけど、なのはもユーノも今さらだよ」

 ユーノ達の反応とは対照的に、フェイトやはやては冷静そのもの。その態度が二人の恋の進展の遅さを逆に際立たせ、彼らをますます照れさせる。

さらに、ドラも二年前の出来事をしみじみと思い返し、ぽつりと口を開いた。

「今でも忘れられないよ。あの甘ったるい雰囲気・・・・・・あれの所為で、オイラがどれだけ死ぬ思いをしたか知れない」

「兄貴、甘いもの苦手ですからね」

「苦手じゃない。嫌いなんだ。ウンコがついたパフェの次に嫌いだ」

「すみませんドラさん、嫌いの度合いがよくわかりません」

 鼻で荒い息を立てキッパリと、甘いもの嫌いを断言するドラの発言は支離滅裂だったが、はやてはそんな彼をじっと見つめ、不敵な笑みを浮かべていた。

「な、なんだよ・・・オイラの顔に何か付いてるの?」

「いやー、こうして見ると実に精巧に出来てるなー思いまして。まるでアニメのドラえもんの世界に私たちがお邪魔してるみたいな感覚ですわ」

ブチッ・・・・・・。直後、ピキッと空気が張りつめた。

聞くや否や、ドラの怒りが沸騰し、拳を握りしめる。傍にいた幸吉郎と駱太郎が「ヤバい」と顔を引きつらせる中、ユーノ達もその雰囲気にただならぬ恐怖を覚える。そして低い声でドラが尋ねた。

「おいタヌキ娘・・・今、なんつったのかな? オイラの聞き違いじゃないといいんだけど・・・・・・もう一度、ゆっくりと言ってもらえるかな?」

「え? あ、いや、だからその・・・・・・まるでドラえもんの・・・」

「誰がドラえもんじゃ、コノヤロウッッ――!!!!!」

 ゴン――ッ!! 恐る恐る口にするや、ついにはドラの鉄拳がはやての顔面に炸裂する。

「のっぽ――!!!」

 顔の筋肉が一瞬で変形するほどの一撃。はやては鞭のようにしなる鼻血を撒き散らしながら後ろへ倒れ込む。

「は、はやてちゃん!?」

「だだだ、大丈夫はやて!?」

 突然の事態に驚くユーノ達。なのはとフェイトは慌ててはやての元へ駆け寄るが、その整った顔は痛々しく腫れ上がり、ヒヨコがぴよぴよと飛んでいる。なのはとフェイトは激昂し、ドラに抗議する。

「ちょっと、ドラさん!! ひどいですよ!!」

「そうですよ!! 理不尽に女性の顔面をグーで殴るなんてどうかして・・・!!」

「ああん!? あんだとやんのかコラぁぁ!!! 刀で粉みじんにして今晩のおかずの味噌汁の具にするぞゴラァァァ!!!!!!」

 非難された途端に恫喝、いや恐喝だった。

見た目の愛らしさからは想像もつかない極めて苛烈かつ凶悪な性格。口調はヤクザそのものであり、その形相は見る者を一瞬にして怯ませてしまう。

「「「あ、あの・・・その・・・どうも・・・すみませんでした・・・///」」」

かつてこれほどまでに理不尽な言動を浴びせられた事があっただろうか。ドラを非難していた筈が逆に本能的に恐怖を感じ、反抗するという気力そのものを削ぎ落され、最終的に屈服してしまった。

その様子を見かねて、マフラーの男・山中幸吉郎(やまなかこうきちろう)と、鉢巻の男・三遊亭駱太郎(さんゆうていらくたろう)が言って来た。

「悪かなったな嬢ちゃんたち。さっきの言葉はドラにとっての禁句なんだよ」

「痛い目を見たくなかったら、兄貴の前でもう二度とその言葉を口にするな。もし、うっかり口にしたら最後・・・・・・どうなるかは想像に難くないはずだぜ」

「「「は、はい!! 絶対に言いません!!」」」

 三人は金輪際口にしないことを誓い、首を乞われた人形の如く縦に振る。この状況に、冷や汗を浮かべたユーノも、怒りに燃えるドラを一瞥する。

(事実は小説よりも奇なり・・・か。だとしても、何だかとんでもない人達が絡んできちゃったな・・・)

「さて、こんな所でいつまでも立ち話っていうのも何だし、一度本部に戻ってみんなに事情を説明しないとね」

「おう。俺もちょうど腹空いてたしな! 帰って団子でも食うかな!」

「お前は頭の中には団子しかないのかよ」

極楽蜻蛉な駱太郎の発言に、呆れ顔でツッコミを入れる幸吉郎。

「本部・・・ですか・・・?」

その直後、ユーノ達はふと目を瞬かせ、戸惑いの色を見せるのだった。

 

           *

 

ドラ達の手配で、ユーノ達は彼らの職場へと案内されることになった。

ニセコ町から車で一時間半の道のりを経て辿り着いたのは、北海道後志(しりべし)地方の東側に位置する港町――小樽である。

明治時代の末期、国際貿易の拠点として発展し、「北のウォール街」と称される金融街が形成されたこの街は、かつて北海道一の商業都市として経済を支える存在であった。

現在でも市内には、日本の近代建築を象徴する名高い建築家たちの作品が数多く残り、年間七百万人以上の観光客を引き寄せている。

そして、この街には――この世界における重要な拠点が、威風堂々と天を突くように(そび)え立っていた。

 

           ≡

 

午後2時過ぎ――

北海道後志総合振興局 小樽市

 

 幸吉郎が運転する車に乗り、ユーノ達は小樽の景色を車窓から眺めていた。やがて、空に聳え立つ異形の摩天楼が視界を支配し、彼らの目を釘付けにした。

異国情緒あふれる街並みの向こう、沿岸部に鎮座するその巨塔は、宛ら空をも突き抜けんばかりの堂々たる姿を見せていた。

「なんて大きさなの!」

「またどえらいもんが立っとるわ。天まで届くどころか、完全に雲を突き抜けてるやんあれ!」

「ドラさん、ひょっとしてあれがあなた方の本部・・・いえ、職場なんですか?」

 恐る恐るユーノが尋ねると、ドラは満足げに頷き、建物について説明を始めた。

「あれこそが、オイラ達の職場、TBT本部ビルです。まぁ言うなれば、TBTという公権力を誇示する為の巨大な広告塔ってわけ――地上180階、高さ830メートルの超ハイテクビルで、世界一の高さを持つ建物として、ギネスブックにも登録されてます」

「『バベルの塔』にならなきゃいいけどな」

「おい駱太郎、滅多なこと言ってんじゃねぇぞ! あんなのが倒れたら洒落にならねぇだろうが!」

 駱太郎の冗談交じりの言葉を幸吉郎が険しい表情で諌めると、確かに彼の言う通りだと、ユーノ達も苦笑を漏らす。

車は巨大なメインゲートを潜り、しばらく進むと、彼らは降車し、超ハイテク技術が詰まった本部ビルの内部構造を天上から足元まで、隅から隅まで見渡し驚嘆する。

「遠目からでも十分大きかったのに、近くで見るとさらに大きいね」

「ところでドラさん、さっきから言ってるTBT・・・と言うのは何のことですか?」

 フェイトが怪訝そうに尋ねると、ドラは咳払いをし、誇らしげに答えた。

「では、お教えしよう。TBTとは――Time Balansers Teamの略称で、日本語名を『時空調整者団体(じくうちょうせいしゃだんたい)』。ここ北海道小樽市に本部を構え、世界192カ国に支部を展開している。タイムトラベルシステムが発明もたらした時間犯罪を専門に扱い、それを未然に防ぐべく国連直属で設立された組織、それがTBTだよ」

「タイムトラベル技術って! ほんまにそんなものがあるんですか!?」

「嘘吐いてどうなるんだよ。兄貴、あれこれ説明するのも面倒です。まずは、中まで案内してまとめて一遍に話した方がてっとり早いです」

 驚愕でいっぱいのはやて声を、幸吉郎は冷静に遮り、ビルの中へ彼らを案内するようドラに提案する。

「じゃあ早速、中をご案内致しまーす! ここは広いから、はぐれないように気を付けましょう」

 観光客と大差ないユーノたちを案内する為、ドラ達はTBT職員が使っている専用エレベーターへ直接乗り込むのではなく、まずは何も知らない彼らを一般客としてもてなそうと、ビルの中にある作られた商業エリアへと誘導する。

 数々の商業エリアを越えると、地上1階から50階までを続くリニアレールが待機しており、一行は一般来場者と一緒にこれに乗車する。

 乗車後、斜め45度に傾いたリニアレールはゆっくりと出発。ドラは窓から一望できる様々な景色と建物の構造詳細をユーノ達に案内する。

「この吹き抜けのある50階までは、小さい都市がそのまま入ってるようなものだね。30階から50階までには、オリンピックの全種目ができるくらいの競技場が入ってる」

リニアが透明なトンネルを通過する際、駱太郎が指差し、「ほら見てみろ」と言った。

「「「「うわぁー!」」」」

そこには冬季オリンピックを想定した巨大な屋内競技場が広がり、ユーノ達は思わず感嘆の声を上げた。

「これぞ本当の税金のムダ使いってやつさ。庶民の血税を何とも思わない政治屋どものやり口には、ほとほと参っちゃうよねー」

数分後、リニアは地上50階に当たる停留所へ到着。降車後、一行はそこから更に上の階へ上がれる高速エレベーターへと乗り換え、展望デッキを目指す。

階を上がれば上がるだけ、小樽の町並みはおろか、それらを構成する湾頭の輪郭さえくっきりと見えてくる。エレベーターでの移動中、ドラはより詳細な本部ビルの構造について説明する。

「51階から80階がホテル部分ね。で、一旦右側の方に注目して欲しい」

ドラに促されて視線を右に移すと、高所に吊るされた巨大な分銅が目に入った。

「この言わば、心臓部にぶら下がっている巨大な重りが、地上830メートルの超高層ビルを可能にした秘密なんだ! 地震を素早くキャッチするや否や、コンピューターの作動で重りの分銅が動いて、振動を吸収するってわけ」

「なるほど・・・性能設計、制振構造、免震構造というあらゆる点を考慮したハイテクノロジーの結晶と言うことですね。おまけに、小樽と言う独特の景観を壊さないよう建物自体が周囲に溶け込むようにカモフラージュも施されている」

「いやー、考えられとるわ。大したもんやで」

「でだ・・・・・・問題は90階から上。それはそれはチェックが厳しいんだよ。というのも、そこからはTBTの中枢、プライマリーオフィスは、各部隊毎に設けられている。ちなみに、オイラ達のオフィスがあるのは100階。あと他に四人メンバーがいるから、楽しみにしていなよ」

「ま、揃いも揃ってのクセの強い個性派連中だけどな!」

「お前が言うか」

駱太郎の言葉に幸吉郎がすかさずツッコミを入れると、ユーノ達は思わず同じ思いを抱かずにはいられなかった。

((((確かに・・・この三人は個性的だ・・・))))

 そうして、エレベーターが90階に到達すると、厳重なチェックが行われ、それを通過したユーノ達は、晴れてドラ達の職場――TBT本部ビルの中枢へと足を踏み入れることとなった。

 

           *

 

TBT本部 地上100階

 

 専用エレベーターで100階に到着したユーノ達は、ドラに導かれて廊下を進む。やがて彼が立ち止まり、振り返って「はいチューモーク!」と声を上げた。

「ここが、オイラたちの部署!」

 指差した先に掲げられた看板には、『特殊先行部隊“鋼鉄の絆”』と表記されていた。

「特殊先行部隊・・・鋼鉄の絆・・・?」

「あれで“アイアンハーツ”って読むんだよ。他でもない、兄貴が命名した名前だ!」

「今さらだが、よくもこんな厨二臭い名前にしたもんだぜ」

「大きなお世話だよ! いいじゃんかよ、厨二臭い名前の方が活躍しそうじゃんか」

 等と言いながら、自分でつけた部隊名を肯定し、ドラはユーノ達をオフィスへと案内する。

「ういーっす!」

「おう、今戻ったぜ」

「さぁユーノさん、小汚い場所ですがどうぞ」

ドラに案内され、ユーノ達は恐る恐るオフィスへと入室する。

すると、オフィス内から何人かの姿が現れた。福田衣と呼ばれる萌黄色の袈裟を身につけ、茶人帽に似た抹茶色の頭巾を被った翁と、明治時代の警視隊をオマージュした制服に身を包んだ黒い単発の少年、その近くに立つ茜色の和服に蘇芳色の袴、藍色の帯。セミロングほどの桜色の髪を緑の紐で結った美少女までもが集まり、ドラ達を注視する。

「お帰りなさい、お疲れ様です三人とも・・・あら? そちらの方々は?」

「あれ待てよ。おいお前ら、そいつらってひょっとすると・・・」

「おぉ、思い出したぞ! 昨日の珍騒動で長官の命を救い、巨大生物を退けた美女四人組じゃな! そうじゃろ!」

翁が口にした一言は、ユーノの平常心を忽ち掻き乱した。聞いた途端、ユーノはすっかり意気消沈し、その場に崩れ落ちた。

「やっぱり僕って女に見られてたんだ・・・・・・ユーノショックっ!!」

「あぁ、ユーノ君!! しっかりして!! 大丈夫だって、ユーノ君はカッコイイよ! 心配しなくても、その帽子も眼鏡もぜんぶカッコイイよ!」

 慌てたなのはが、ユーノを励まそうと思いつく限りの言葉で褒めちぎるが、まるで暖簾に腕押し。必死のフォローも空しく、ユーノの落胆は深まるばかりであった。

「カッコイイとか、カッコ悪いとか、別に関係ないし・・・別に好きでこんな顔で生まれてきたわけじゃないし・・・・・・・・・もういっそのこと、女として生まれてくれば良かったと思ってるくらいだし!!」

(めんどくさいわ、ユーノくん。チョーめんどくさいわ。どんだけ繊細なんや・・・)

心の中で呟きながら、ユーノのややこしい反応に、はやてとフェイトは苦笑しながらも、この部隊が意外に気さくな雰囲気だと安堵する。

「えっと・・・一時は不安だったけど、なんだか賑やかな所でよかったね」

「ん~、せやけど何やろうな、この妙な胸騒ぎは・・・」

するとその時、はやての不安は現実となった。

「フェイトちゅあ~~~ん♡♡♡」

前触れも無く、いきなり若い男がフェイトの足元に飛び込んできた。

「ひゃ!」

「な、なんや!?」

 同世代くらいの男の奇行に戦く妙齢の二人。

男は、フェイトの足下に着地すると、だらしなかった顔を引き締め、凛とした二枚目の表情でフェイトの左手の甲に軽く手を添え、甘い声で囁いた。

「昨日は助けてくれてありがとう。是非とも君に俺のすべてを以ってお礼をしたい」

「え・・・えっと」

「どうかこの愚かな男に、盗まれてやってもらえませんか? 君の処女を・・・」

 ゴンッ――。

「ごひゅ!!!」

刹那、ドラの刀の柄頭が、男の頭頂部を強烈に叩きつける音が響いた。男は鼻血を吹きながら一発で意識を刈り取られ、昏倒した。

「やれやれ、性懲りもない。あぁ、ごめんごめん、別にこれは気にしなくていいからね。生きてる粗大ゴミだと思ってくれればいいから」

「いや、すみませんが、すごく気になるんですけど・・・」

「ちゅうか粗大ゴミって、ちょっと言い過ぎな気もするんですが・・・」

「いいのいいの! ゴミを気にしても全然おもしろくも何ともないから。さてと、まずは一服してからゆっくり話をしていこうじゃないの。茜ちゃん、とりあえずオイラにコーヒーブラックで。ユーノさん達には紅茶をお願いね」

「はい、畏まりました」

茜と呼ばれた少女は破顔一笑し、ドラの指示通りにコーヒーと紅茶を人数分用意し始め、その間にユーノ達は来賓用のソファーへと移動させられる。

しばらくして、淹れたての紅茶がユーノ達に差し出された。

「どうぞ、お召し上がりくださいませ」

「あ、どうも。いただきます」

「ありがとうございます」

 礼を言って飲んだ紅茶の味わいは格別で、四人は素直に感嘆した。

「うわ~~!! この紅茶すごく美味しい!!」

「ありがとうございます」

 自身が淹れた紅茶を素直な気持ちで賞賛するユーノ達に、茜は屈託のない笑顔を返す。

しかし、その和やかな空気の中で、ドラが真顔で呟いた。

「ん~、この深み・・・・・・まるで動物の死骸のようだね」

聞くや否や、ユーノ達は思わず紅茶を吹き出しそうになりますが、次の瞬間、茜が何食わぬ顔で微笑み返す。

「何せ、今朝挽いたばかりですからね」

彼女の言葉には、動物を轢くこととコーヒー豆を挽くことをかけた、粋な洒落が潜んでいた。おそらく、これが彼らの日常会話なのだろう――ユーノ達はそう理解したものの、そのブラックユーモアの濃さに少しばかり戸惑いを覚えた。機動六課では到底味わえない、異質な会話の味わいに、どこか圧倒されるような感覚を抱かずにはいられなかった。

 やがて、ドラは静かにコーヒーをコースターに置くと、「では、改めて仲間を紹介しよう」と、メンバー全員に視線を向けた。

「じゃあ、ここは順当に、幸吉郎からいこうか」

「はい! TBT特殊先行部隊“鋼鉄の絆(アイアンハーツ)”副隊長、山中幸吉郎(やまなかこうきちろう)だ。兄貴の右腕を務めてる!部隊では主に作戦の段取りを考案している」

「はい、ありがとう。じゃ次はR君、君だよ」

呼びかけられると、ドラから珍妙な故障で呼ばれると共に、団子を頬張る駱太郎が一同に振り向いた。

「三席の三遊亭駱太郎(さんゆうていらくたろう)だぁ。ここじゃ主に突1(*突入班のこと)として常に戦闘の先陣を切っている!」

(三遊亭駱太郎って・・・・・・なんやその落語家みたいた名前・・・・・・)

駱太郎の本名(?)を知った瞬間、はやては心の中で呟いた。その後も個性豊かな鋼鉄の絆(アイアンハーツ)のメンバーが、次々と紹介される。

「拙僧は、四席の龍樹常法(たつきつねのり)じゃ。真言宗の伝法阿闍梨(でんぽうあじゃり)でもある。老い()れと言っても、まだまだ若いもんには負けておらん。どぅははははは!!!」

「俺は、五席の八百万写ノ神(やおよろずうつのかみ)だ。戸籍名は『千葉神太郎(ちばしんたろう)』って言うんだけど、みんな写ノ神って呼んでるから、お前らもそうしてくれ」

朱雀王子茜(すざくおうじあかね)と申します。第六席です。写ノ神君とは夫婦(めおと)なんですよ♪」

「あと、もう一人、七席の螻蛄壌(けらじょう)って言うかなり偏屈な奴がいるけど・・・あいつは組織として群れるのが嫌いだからな。多分どっかに居ると思うけど、気にしないで良いから」

(組織として群れるのが嫌いって、それでいいのかな・・・それで!?)

 仮にも世界規模の組織に属する人間として、当たり前のように自分本位な行動を取る者の存在を、フェイトはかなり疑問に感じた。

「あの~・・・それで、この方は?」

 そんな折、なのはが恐る恐る、床に倒れて気絶したままでいる男を指差して質問した。ドラは男を指して「あぁ、それね」と、まるで物を見る感覚で説明する。

杯昇流(さかずきのぼる)、変な名前でしょ? このTBT本部の長官職に就いてるんだけど、見ての通り威厳なし、駄目人間の変体野郎だから、気をつけてね」

「いやいやいや!! さらっと言ってますけど、それまずいんとちゃうんですか!? 長官いうことは、私らで言う提督か元帥の位ですわ!!」

「だいじょうぶ、だいじょうぶ。この人とオイラは、むかしから家族ぐるみでの付き合いがある。どんな手を使ったところで、オイラに勝てないってことはこの人が一番分かってるから」

 取り繕ったり、体裁を装うということは一切しない。サムライ・ドラという存在は、常に自然体であり、万人に対して平等である。だからと言って、仮にも上司である男に躊躇無く手を出せるドラの神経の図太さには、ユーノ達もただ驚きと呆れの表情を浮かべるばかりだった。

 

その後、ユーノ達は今回の訪問理由と自身の経緯について具さに説明し、ドラの中で抱かれていた認識の違いを一つひとつ埋めていった。

「成程・・・・・・つまり、ユーノさんは、無限書庫司書長を辞めて世界を転々としていたら、あるとき突如死神の力を手に入れ、黒崎一護のもとで修行を積み、《翡翠の魔導死神》として覚醒。その後、次元世界各地に散らばった崩玉の欠片である《アンゴルモア》を回収するためにここへやってきた・・・・・・というわけですね」

「はい、お分かりいただけましたか?」

「まぁ、概ね。これでもオイラと長官は、異世界に足を踏み入れた身ですからね。でも幸吉郎達には、ちょっと話がチンプンカンプンだったかもしれないですけど・・・」

視線を巡らせると、案の定、ドラの言う通り幸吉郎達の表情は迷いに満ち、異世界という概念に思考が彷徨っていた。やがて、はやてが静かに尋ねた。

「それにしても、ドラさん。その格好なんですけど、私の記憶違いじゃなければ、死神さん達とよく似てますね?」

「あぁ、これ? 昔から好きで読んでる漫画に出てきたキャラクターの衣装を参考して作ったものなんだけど・・・・・・そんなに似てるかな?」

「ええ、かなり似てますよ。ていうか、自分で作ったんですねそれ・・・」

はやては、丸みを帯びた手でどうやって細かい裁縫ができるのかと疑問に思ったが、詮索は避けることにした。

するとその時、ふと、フェイトが疑問を口にする。

「あのー、さっきから気にはなっていたんですが、ドラさんはともかくとして・・・幸吉郎さんを見ていると、何だか今どきの人って言う感じがあんまりしないのは気のせいでしょうか・・・?」

フェイトが抱く違和感。杯昇流には現代の人間らしい雰囲気があるのに、幸吉郎達だけは違う。なのはも、はやても、そしてユーノもまた同じ疑念を抱いていた。その問いに応じて、団子を口にする駱太郎が答える。

「嬢ちゃん、いい勘してるぜ。ご明察だ、俺も幸吉郎も、爺さんも、写ノ神も、茜も、そして、ここにはいねぇ壌の野郎も含め全員――過去の世界の人間なんだぜ」

「「「「過去の世界の・・・人間・・・!!」」」」

 頓狂な言葉を耳にするや、彼らは声を上げずにはいられなかった。

「ど、どういうことですかそれ!! まさか過去の世界から、人間を連れてきたんですか!?」

非難の目を向けると共に、なのは達はドラに詰問する。彼はむっつりと口を尖らせ、不貞腐れたように弁明する。

「別にオイラが連れて来たわけじゃないよ。みんなが勝手に付いてきたんだ」

「そんなアホな話!! そもそも過去の世界って、一体いつの時代なんですか!?」

「俺たちが元いたのは1604年・・・現代で言うところの江戸時代初期だ」

「江戸時代から!? いや、しかし、そんな事をしたら時空連続体に歪みが生じ、タイムパラドックスやバタフライ・エフェクトを引き起こして、最悪、時間の秩序そのものが崩壊しかねいのではありませんか!?」

現実離れした事実にユーノは動揺を隠せないが、時空間で生じ得るトラブルを鋭く見抜き、幸吉郎達が現代に普通に存在することの背景を追究する。

「さすがはユーノさんだ。SFの知識はしっかりとお持ちでいらっしゃる。しかしご心配には及びませんよ。なぜなら、幸吉郎たち六人、その全員が“特異点(とくいてん)”なんです」

「特異点、ですか?」

 ユーノ達が小首をかしげると、龍樹が笑みを浮かべながら説明を続ける。

「一部の存在・人物だけが持つ、時間からのあらゆる干渉を受けない特性じゃよ。時の運行に変化が生じても、それによる影響を受けず、最悪の場合自らが本来属する時間が消滅しても、本人だけは消滅を免れる。そして、特異点の存在によって乱れた時間の流れをも修復する・・・・・・噛み砕いて言えば、拙僧達は、どの時間に居て何をしようが命を失わない限りは平気だということじゃ!」

龍樹の説明の後、さらに写ノ神が補足する。

「しかも、その特異点を持つ俺達が偶然か必然か、ドラのもとに集まった。とある時間犯罪者によって歪められようとした歴史を守るために奮闘し、事件に深く関わったことと、特異点としての俺達の特性を見込んだ大長官がTBTへ勧誘した結果、今こうしてチームを組んで働いてるってわけだ」

出逢いからチーム結成に至るまでの一連の流れを簡単に説明されたが、それでもユーノ達は、ある意味でご都合主義な話であるという認識を払拭し切れなかった。

 

           *

 

 人里離れた山間。岩場に巧妙に溶け込むようにして建てられた不気味な縦長の施設。その内部では、ある科学者が誰にも知られることなく、怪しげな研究に没頭していた。

「モスキート娘が敗北しただと?  しかも止めを刺したのがロボット?」

 膨大な資料で埋め尽くされた研究室に籠もり、「進化」の研究に明け暮れる男――クレード・ジーナス。眼鏡をかけたその若々しい風貌は、研究に取り憑かれた眼差しに不気味な輝きを宿している。

「ま、奴も所詮は試作品ということだ」

 その表情には微塵の動揺もなく、むしろこの程度の出来事は初めから想定済みと言わんばかりの余裕が漂っていた。クレードは調査員が持ち帰った戦闘映像を自室の端末にダウンロードし、手負いのモスキート娘に引導を渡したという「魔猫(まびょう)」――サムライ・ドラの姿を注視する。

「なぜドラえもんなんだ?」

『わかりません』

その問いに、部屋の外からまるでクレード自身の声のような音色で応える声が響いた。

「まあいい。これは良いサンプルになりそうだ。無理矢理にでも彼の身体を調べさせてもらおう。使者を送って、彼を招待しろ。我々の“アドバンスハイム”にね」

 

           ◇

 

TBT本部 特殊先行部隊“鋼鉄の絆”オフィス

 

現地時間7月5日、午前8時30分。一夜が明け、いつも通り職場に姿を現した鋼鉄の絆(アイアンハーツ)のメンバーと、彼らに同行する機動六課選抜隊のユーノ達。隊長であるドラは、集まった全員を見渡し、(りん)とした声で語り始めた。

「てなわけで、こっちに滞在している間、ユーノさん達の身柄はこのオイラと鋼鉄の絆(アイアンハーツ)が責任を持って預かります! どーんと大船に乗ったつもりでいてください!」

「あ、ありがとうございます・・・」

「「「よろしくお願いします・・・」」」

昨日から感じていた言い知れぬ不安が、杞憂に終わるかもしれないと思った――だが、それこそが運の尽きだった。

「さてと、それじゃあ・・・・・・茜ちゃん、あれ持ってきて」

「かしこまりました」

 ドラの指示を受け、茜はオフィスを出ていき、わずか一分も経たないうちに戻ってくると、ユーノ達に何かを手渡した。

「はい、こちらどうぞ」

 手渡されたのは迷彩服――あまりに突拍子もない物に、なのは、フェイト、はやて、そしてユーノの四人は思わず顔を見合わせ、絶句した。

「あの・・・・・・」

「これは一体・・・?」

「なんのつもりで?」

目を黒点にしながら尋ねるなのはだったが、そんな様子を見た幸吉郎は、呆れたように言い放つ。

「何のつもりって、勘の鈍い連中だな。てめぇらはこれから俺らと一緒にトレーニングをするんだよ」

「「「「と、トレーニング!?」」」」

 まさに寝耳に水だった。驚愕のあまり声を上げる四人。

「ちょ、待ってください! トレーニングだなんて、事前に何も聞いてないですけど!?」

「そりゃ事前告知してないもん。知らなくて当然だよ。まずはそれに着替えたらオイラ達と一緒に特別訓練場まで移動するから」

「特別訓練場、ですか?」

 嫌な予感がする・・・・・・そして、その予感は容赦なく的中した。自分達がこの後、想像を遥かに超える地獄を味わうことになるとは、この時、夢にも思っていなかった。

 

           *

 

北海道虻田郡 倶知安町 倶知安駐屯地

 

 午前9時49分。総移動距離65キロ、およそ一時間の道のりを経て、ユーノ達が辿り着いたのは、北海道虻田郡倶知安町にある陸上自衛隊の駐屯地だった。連れてこられた場所の異様さに、迷彩服姿のはやてとフェイトは明らかな狼狽を隠せない。

「って、なんでや!! なんで自衛隊の駐屯地なんや!!」

「どういうことですか、一体!?」

 二人の問いかけに、同じく迷彩服に身を包んだ鋼鉄の絆(アイアンハーツ)の面々は苦笑を浮かべつつ、この訓練の意味を淡々と語り始めた。

「ドラは個人的に陸上自衛隊とのコネクションがあるんだよ。年に数回行われるレンジャー訓練に半ば強引に参加させられるんだが・・・これが正直きつくてな」

「きついなんてもんじゃない、地獄だよ」

「あいつは『魔猫(まびょう)』っていう仇名があるんだけど、ここじゃ『鬼ドラ』って呼ばれて、若い自衛官からも恐れられてるんだ」

「魔猫・・・・・・それに鬼ドラって?!」

 どちらも身震いせずにはいられない二つ名である。だが、これはまだ序章に過ぎなかった。ユーノ達はこの後、サムライ・ドラの苛烈な本性と真の恐怖を、骨の髄まで味わうこととなる。

 

「全員集合っ!!!」

午前10時、甲高い号令が駐屯地に響き渡った。

前方には迷彩服姿のドラが仁王立ちしていたが、昨日見せていた和やかな面影は影を潜め、眼光には鋭い気迫が宿っていた。

号令に応じ、幸吉郎、駱太郎、龍樹、写ノ神、茜、そしてユーノ達も大声を張り上げ、全速力でドラのもとへ駆け寄る。

「しっかりしろ! さっさと並べ!」

 地獄の一日は、点呼から始まる。

正規の管理局員ではないユーノを除くなのは達は、今まで自分達が受けて来た訓練の常識など全く通用しない、未知の世界を身を以って体験することとなる。

「気をつけ! 番号!」

「1!」「2!」「3!」「4!」「5!」

 幸吉郎を筆頭に、鋼鉄の絆(アイアンハーツ)のメンバーが順に番号を発するが、場の雰囲気に当惑していたなのはは反応がおろそかになり、番号を言い損ねてしまう。

と、その瞬間、ドラの眼が鋭く光る。

「おい、そこっ!!」

「は、はい!!」

 恫喝され、思わず硬直するなのは。フェイトとはやてが心配そうに見守る中、ドラはなのはの前に立ち、冷酷な声で叱責を浴びせた。

「なんで番号が途切れんだよ!」

「あ、えっと・・・すみません・・・」

「5の次はなんだよ!! 6って幼稚園児でも分かるだろうが!!」

「す、すみませんっ・・・!」

「謝るんじゃなくて番号を言え!! お前の番号は何だぁ!!」

「6ですっ!」

「声が小さい!!」

「6ですっ!!」

初っ端からのミスで、目の敵にされてしまったなのは。武装隊でもそれなりの訓練を受けてきたつもりだったが、今回体験するのは次元が違う苛烈さだ。なのはの心には、じわじわと「鬼ドラ」の恐怖が刻み込まれていく。

「オイラをからかってるんじゃないだろうな、一等空尉殿? 向こうじゃどんだけ偉い戦技教官か知らないが、ここではオイラが教官でルールブックだ! 異論は認めないからな、わかったのかなコノヤロウ!!」

「わかりました!!」

「返事が違う! この訓練では、返事はすべて『レンジャー』と言え! 統制事項はすべて『レンジャー』だ! わかったか!!」

「レンジャー!!」

「それじゃあもう一度点呼だ! 気をつけ! はい番号!」

「1!」「2!」「3!」「4!」「5!」「6!」「7!」「8!」「9!」

「よーし。全員揃ってるな。そんじゃあ、本格的なレンジャー訓練を開始する。全員、地獄を楽しむ準備はいいか!?」

「「「「「「レンジャー!」」」」」」

「地獄を楽しむ」との不吉な言葉に、ユーノ達は思わず呆然としたが、返事を遅らせたことで、早速ドラの目に留まってしまう。

「魔導師組!! 返事はどうした!?」

「「「「れ、レンジャー!」」」」

 焦りながら応じるも、時既に遅し。ドラの視線が冷たく光る。

「腑抜けどもが。鋼鉄の絆(アイアンハーツ)、全員前に出ろ!」

「「「「「レンジャー!」」」」」

 一人のミスは全員のミス。レンジャー訓練では連帯責任によって、チーム全員が屈辱的な罰を受ける。魔導師組の失態のために、関係のない鋼鉄の絆(アイアンハーツ)のメンバーも巻き添えを食う。

「頭を地面に付けろ!」

「「「「「レンジャー!」」」」」

 鋼鉄の絆(アイアンハーツ)のメンバーは芝生の上に頭頂部を押し付け、耐え難い体勢のまま静止する。ユーノ達は、自分達の些細な過ちで彼らに迷惑をかけてしまった罪悪感に苛まれた。

「いいか? 一人のミスは全員のミスだ。たかが点呼ひとつ真面にできないだけで、こいつらがこんなに迷惑を被るんだってことを理解したか?」

「あ、はい・・・」

「はいじゃない!! 返事はすべて『レンジャー』だって言ってんだろうが!!」

「「「「レンジャー!!!」」」」

「魔導師組、全員腕立て伏せ用意!」

 たかが点呼、されど点呼。その甘い認識に対して、容赦ない罰が与えられる。

「腕立て伏せ100回! できなきゃいつまでも同じことをやらせる! わかったか!!」

「「「「レンジャー!!」」」」

「始め!!」

容赦なく始まる過酷な試練。四人がそれぞれで腕立て伏せを完遂するまでの間、鋼鉄の絆(アイアンハーツ)の罰則は継続される。

身体強化の魔法はここでは一切禁止。生身の肉体を酷使するこの訓練は、ユーノを除く女性陣の体力を徹底的に奪っていく。

(こ、こんなの聞いてないよ~!)

(本局の武装隊でもこんなに厳しい人は見たことがないよ!)

(あかん! 普段デスクワークばっかりやから、腕がへしおれそうや・・・・・・!)

(耐えるんだ! ここは堪えるしかないんだ!)

 そして、この地獄の一日がまだ始まったばかりであることに、彼らはまだ気づいていなかった――。

 

           *

 

 陸上自衛隊の訓練の中でも、最も過酷かつ非情なもの――それがレンジャー訓練である。

レンジャー(自衛隊レンジャー)は陸上自衛隊の最高峰であり、有事の際には敵地への侵入や制圧といった特殊任務を遂行するため、苛烈な鍛錬が求められる。自衛隊全体のわずか8パーセントしかいない選ばれし精鋭隊員達だ。なのは達戦技教導隊が空戦における精鋭であるとすれば、レンジャーこそ陸戦における最強のエリート集団である。

命の危険すら伴うこの訓練に、容赦なく挑むことを強いられたユーノ達。彼らがここで体験する地獄の如き試練とは、一体どのようなものなのだろうか・・・・・・。

 

           ≡

 

駐屯地内 第1演習場

 

午前10時35分――点呼が終わるや否や、既に精神も肉体も疲弊し始めている魔導師達に、容赦なき試練が始まった。

「これより体力向上運動として、(かが)み跳躍を実施する!」

「「「「「「「「「レンジャー!」」」」」」」」

最初の訓練は『屈み跳躍』。重さ3.5キロの銃を肩に担ぎ、15センチ以上の跳躍を繰り返す訓練である。

「屈み跳躍、用意! 始め!」

 笛の音の合図で、全員が一斉に屈み跳躍を開始する。

 大声で数をカウントしつつ、重りを載せたまま左右交互に跳躍運動を繰り返す。一見簡単そうに見える訓練だが、見た目以上に想像を絶する負荷を使用者に与える。

全員に支給される陸上自衛隊員が実際に使っている自動小銃。銃のずっしりとした重みが手に食い込む。魔導師デバイスと異なり、慣性コントロールも効かぬ無骨な銃器が彼らの体力を蝕む。跳躍は見た目以上に体を痛めつけ、負荷が一瞬で蓄積していく。

「八神、飛んでねえじゃねえか!」

「レンジャー!」

五分が過ぎたころ、はやてが早くも遅れ始める。指揮官兼部隊長と言う立場上、机上業務が多い彼女の体は、日頃の訓練不足を露呈していく。そんな彼女に鬼ドラが容赦なく詰め寄った。

「八神さっきから飛んでねぇぞ!」

「レンジャー・・・!」

 声は出せても体が言うことを利かない。すると鬼ドラは、跳躍出来ない彼女の背中に回り込み、

「やれって言ってんだろうが!」

「痛い!」

背後から鋭く蹴られ、はやては芝生の上に倒れ込むが、痛みに耐えながら立ち上がる。

「他はきちんとやってんだろうがよ、やれよ!」

「れ、レンジャー!」

教官の過剰とも言える扱き。だがそれはレンジャー訓練では当たり前のことなのである。

苦しい表情を浮かべ、必死に訓練を続けるはやて。休むことは許されない。ドラの叫びが終始飛び交い、なのはとフェイトも必死に応じる。

「フラフラしてんじゃねぇテスタロッサ! 高町! 跳躍が小さい!」

「「レンジャー!」」

 

 永遠とも思えた時間は、およそ十五分を経過したところで終了し、次の訓練へと移行する。

「次は胴回し、これを実施する!」

「「「「「「「「「レンジャー!」」」」」」」」

続いての訓練は『胴回し』。仰向けの姿勢で両足を垂直にあげ、左右に足をふり、腹筋に負荷をかける訓練である。

「胴回し、用意・・・はじめ!」

 九人全員が芝生の上に仰向けとなり、足を左右に振り分けて腹筋を酷使する。

すると、ここにきてなのは達の体力は著しく消耗し、足を振るごとに体力が急速に削がれていく。呼吸すら辛くなる中、動きを止める者が出るたび、鬼ドラの冷徹な怒号が響き渡った。

「何休んでんだよこらぁ! やれって言ってるのが聞こえねぇか!!」

「いだだだだだだ!!!」

 しかし休むなどということは言語道断。どんなに辛くても、鬼ドラは決して許さない。怠け者には容赦ない鬼畜の制裁が待っていた。

「ここだ! ここ!!」

「あああああああああああ!!!」

無理にでも動きを続けさせられ、激痛に耐えながら進む訓練。

(みんな、がんばるんだ! 今の僕にはただ祈ることしかできないけど、みんななら、きっとこの難局を乗り越えられると信じてる!)

なのは達の苦悶の叫びが辺りに響く。ユーノは痛みに耐えながら、気丈に、幼馴染達の無事を祈るかたわら、必死に訓練に食らいついていた。

 

           *

 

 屋内での壮絶な基礎体力訓練が終了してもなお、レンジャー訓練は終わりを迎えない。

次なる訓練のため、ユーノ達は、駐屯地の一角に設けられた屋内施設へと移動する。そこで、さらに過酷な試練が待ち受けていた。

 

           ≡

 

駐屯地内 屋内施設・訓練道場

 

10時52分、鬼ドラの号令が響く。

「これより、徒手格闘訓練の一環として『キックミットインターバル』を実施する!」

徒手格闘訓練の一つであるキックミットインターバル――これは前蹴り、回し蹴りを三十秒ごとに左右の足で蹴り続ける過酷な訓練である。

「始め!」

 号令と共に、ジャージに着替えたメンバーが一斉にミット打ちを開始。しかし、なのは、フェイト、はやての三人はキックの威力も速度も著しく遅かった。

「遅い遅い遅い! そこの三人娘、もっともっと速く出来ねぇのか!」

「「「レンジャー・・・!」」」

足を交互にミットへと打ち込む。三十秒間隔で続く回し蹴りは、先の屈み跳躍と胴回しで既に疲弊した脚に更なる負荷をかけ、筋肉を容赦なく痛めつけていく。

やがて十分が経過した頃には、なのは達の足はもう上がらなくなっていた。

「やめぇ!」

ここで鬼ドラは、消耗の激しい彼女達に鋼鉄の絆(アイアンハーツ)、第六席の茜のキックを体感させることにした。

「茜ちゃん、遠慮しないでいいから思いっきり蹴ってやんな!」

「レンジャー!」

恐る恐るミットを持って身構えるフェイトに、茜が鋭い視線を向ける。周囲の不安が高まる中、茜は気合いを込めて蹴撃を放つ。

「はっ!」

 バチン――。

「痛っ!」

 想像を上回る鋭い威力にフェイトはバランスを崩して倒れ込んだ。

「うわああ!」

「あぶしっ!」

なのはもはやても同じように吹き飛ばされ、唯一ユーノだけが茜の一撃をまともに受け止めることができた。

すると、はやてが震える声で鬼ドラに恐る恐る疑問を投げかける。

「ど・・・ドラさん・・・・・・私ら空戦魔導師には、こんな徒手空拳訓練は、あんま意味ないような気がするんですが・・・」

「口答えをするんじゃねぇ!! ここではオイラがルールブックだと言った筈だ!! そのオイラに逆らったどうなるか、思い報せてやる!!」

「「「ひいいいいいい!!!!!!」」」

 不用意な一言が鬼ドラの逆鱗に触れ、後悔と恐怖で三人は竦み上がる。

この後、彼女達はまさに生気を絞り尽くされるほどに鍛え抜かれ、鬼ドラの厳しさを徹底的に叩き込まれることになった。

 

           *

 

午後1時48分――

小樽市 築港前マンション

 

レンジャー訓練を終えたユーノ達は昼食を取り、小樽市内のTBT本部近くにあるマンションを訪れた。

インターフォンを押すと、細身で眼鏡をかけた黒人男性がにこやかに迎えてくれる。

「よう来たなー。注文の品できてるぞー!」

男の名はハリー・ブロック。TBT本部第四分隊生物科学捜査班に所属し、鋼鉄の絆(アイアンハーツ)の強力な支援者の一人である。休日にも関わらず、ドラの依頼を受けて即席で作成した「DR粒子」探知装置が今ここに完成していた。

「お?」

 来客をリビングに招き入れる際、ハリーはユーノ達の様子に気がついた。先の厳しい訓練の影響で、彼らはひどく草臥れており、特になのは、フェイト、はやての三人はまるで歩く屍のようだった。

「なぁなぁ・・・ここへ来る前、何があったんだ?」

「いえ、ちょっとした訓練に参加してもらっていたのですが・・・」

「ユーノ以外はなんつーか、頼りないっつーかな」

 正直、鋼鉄の絆(アイアンハーツ)メンバーも、わずかに気まずさを覚えたのだった。

リビングで一行が集まる中、ハリーは徹夜で作り上げたアンゴルモア探査装置――通称『DR粒子探知機』を提示し、使用方法を説明し始めた。

「この『DR粒子探知機』・・・またの名を『ハリーブロックSP』は、大気中のナノメートルサイズのDR粒子を素早く感知する。これでアンゴルモアの怪物がどこに行っても、この小型レーダーで発見できる。今までのセンサーやレーダーみたいに見逃すことはもうないと言っていいでだろう!」

「すごいですね、ハリーさん」

「いやぁ、見かけによらずエラいもん作るんですね。私は正直、期待なんかこれっぽっちもしてませんでした」

「関西弁の嬢ちゃん・・・かわいい顔の割にきっつい冗談だな」

 はやての無邪気な毒舌に、ハリーは少しショックを受けつつも、探知機を起動する。

「ともあれ、これでようやくアンゴルモアに近づくチャンスを得られたってわけだ。試しに起動してみるかな」

 ドラが慎重にスイッチを押すと、装置のランプが強く光り、ピコピコという音が鳴り始めた。

「お、なんか・・・反応してるっぽいぞ」

 さらにランプの光が増し、警告音が大きくなる中、ハリーが顔を青ざめさせる。

「あぁ、こりゃマズイ!!」

「マズいって、何が?」

「センサーはモンスターが近くにいるときに強く反応を示すように作られている。俺が言いたいことがわかるか!?」

そのとき、フェイトのデバイスであるバルディッシュのセンサーが反応した。

〈Fast approach reaction...come it.(高速接近反応・・・来ます)〉

――バリン!!

刹那。天井が破られ、何者かが奇声を上げて飛び込んできた。

「ケーッケケ!! 俺の名はっ――!!!」

脳髄がむき出しのカマキリの怪人が名乗りを上げようとするも、

「え」

 矢先、駱太郎の正拳がその頭を粉砕。脳髄はおろか、首ごと吹っ飛ばされた。

「俺の団子台無しにすんじゃねぇよ!!」

 どうやら、団子を食べ損なったことに怒りを覚えたらしい。怪人もつくづく間が悪い時に突入してしまった。

 同時刻、外では別の怪人達が物音を聞きつけていた。なめくじ姿の怪人・ナメクジャラスと、腹巻を巻いたカエルの怪人・カエル男が、部屋を見上げていた。

「ねぇ・・・」

「あ?」

「なんか先陣切ったカマキュリーがやられたみたい。オデのテレパシーが届かん」

「え・・・アイツ、結構強い方じゃなかったっけ?」

 

「外にも二体いる。ここは私が」

状況を察知したフェイトはすぐさま防護服を纏い、破壊された天井から外へ飛び出すも、

「え!?」

すでに事態は終わっていた。

「まったく、近頃の敵ときたら・・・・・・」

二体の怪人は、いつの間にか外へ出ていたドラによって、頭から地面に埋められていたのだ。

「ん? どうしたフェイト、物々しい雰囲気で?」

「あ、いえ、何でもないです」

 フェイトは、魔猫と呼ばれるドラの規格外の強さの一端を垣間見た気がした。そして本能が告げる――並の者では、この化け物には決して勝てないということを。

「そもそも、どうして何かって言うとすぐに住宅を壊すんだ?」

 と、常日頃から抱える悪役の行動について愚痴を漏らしていたが・・・・・・その次の瞬間。

ゴンッ――。

「ん?」

地面から伸びた獣の手が、ドラの脚部を摑み、強い力で引っ張り体ごと地面の中へと沈み込ませた。

「おお!?」

 ドラは頭から下が完全に地面の中に埋没した。

「兄貴!」

「今助けにいきます!」

「あ、だいじょぶだいじょぶ。なんていうかな・・・土筆(つくし)になった気分だ」

幸吉郎とユーノが救援に向かおうとするが、ドラは全く不安そうな様子はなく、むしろこの状況にさえ心地良さを感じているようだった。

『高エネルギー反応有リ・・・』

 背後から無機質な片言の声が聞こえたと共に、巨大な爆音が響く。振り返ると、土煙の中から鋼鉄の鎧に包まれた巨大な敵が立ち塞がっていた。

「な、なんや!?」

「サイボーグ・・・か・・・?」

『ターゲットハオ前タチデハナイ』

「え、なに? 見えないんだけど!?」

『ジャマダ』

 ドラの知らぬ間に、戦いが始まろうとしていた。サイボーグの剛腕が振り下ろされると同時に、左右や後方へと回避したユーノ達は、敵の能力を推測しながらそれぞれが反撃を試みる。

「うらああああああ!!!」

 襲撃によって好物をダメにされた恨みを募らせ、駱太郎が渾身の一撃を拳に込めて放つ。しかし、敵の鎧は相当に頑丈で、多少の皹が入るだけだった。

 すかさず駱太郎に向かって反撃するサイボーグ。駱太郎は真正面からその剛腕を受け止め、その隙を突いて、なのはが直射砲撃魔法で狙い撃つ。

〈Divine Buster〉

「シュゥゥ――ト!!!」

 ドン──という豪快な衝撃音を上げたが、サイボーグという構造上、砲撃では致命傷には至らなかった。

「硬い・・・」

「見た目通りのタフだな」

「ねぇ、さっきから一体なにがどうなってるのか教えてよー」

 身動きが取れないがために戦況を把握できないドラだったが、不意に大きな影が覆いかぶさり、甲高い笑い声が聞こえた。

「はははは!」

頭上を見上げると、ライオンの顔と筋骨隆々とした人間の肉体を持つ怪人が立っている。

「手も足も出ないとはまさにこのことだな。よくやったグランドドラゴン!」

言われると、地面の下からライオン怪人を支援するモグラ型怪人が顔を出した。ご丁寧に体には漢字で「土竜」と彫られている。

「暴れられるのも面倒だしな」

「ドラさん!」

『余所見ヲスルトハ・・・イイ度胸ダ』

 注意を逸らしたユーノ目掛けてサイボーグの猛威が向かってくる。咄嗟に晩翠を解放したユーノは、飛んでくる剛腕を刃で逸らしつつ懐に接近し、空いている左掌から強烈な一撃を放つ。

「破道の六十三、雷吼炮(らいこうほう)!!」

雷を帯びたエネルギー弾を至近距離で浴びせることに成功。凄まじい威力による爆発で地面は粉々に砕けたが、それでもサイボーグは生き延び、しぶとく攻撃を続ける。

『フン!』

 炎が引火した拳撃を回避し距離を取ったユーノと、その周りに集まったなのは達を見据え、サイボーグは静かに名を告げた。

『俺ハ、「アドバンスハイム」ノ英知ノ結晶、アーマードゴリラ。オ前タチノ攻撃ナド効カヌ』

「『アドバンスハイム』だと? それが兄貴に何の用だ」

『オ前タチニハ関係ナイ事ダ。ソシテ、刃向ッタ者ハ必ズ消スノが我ラノ決マリ』

 額に一筋の汗を流しながら、アーマードゴリラの巨大な影に対峙するユーノ達。

『オ前タチハ破壊セネバナラヌ』

 再び振り下ろされる剛腕。地面を抉り取る強烈な一撃を躱し、ユーノは晩翠を構え言霊を唱える。

晩翠血河漂(ばんすいけっかひょう)

 詠唱と同時に、晩翠の刀身から漏れ出る血の如く赤くドロドロとした液体。一滴が地面に落ちると、アスファルトの表面が焼け焦げる。ユーノは斬撃を放ち、アーマードゴリラの両足を灼熱で焼き切った。

『グオオオオオ』

 両足を奪われ、アーマードゴリラは体勢を崩すが、なおも抗おうとする。

『マダダ・・・』

 しかし両足を奪われながらも懸命に抗おうとする。

するとアーマードゴリラの頭上に二つの影が現れる。見上げると、ライオットブレードを携えたフェイトと業物の刀『狼雲(ろううん)』を掲げた幸吉郎が迫っていた。

「「はあああああ(つらああああ)」」

 二つの刃がアーマードゴリラの唯一の武器である剛腕を斬り落とす。これで実質上、アーマードゴリラの攻撃手段はすべて奪われた。

『コンナ事ガ・・・アリ得ン』

「そうかよ」

 刹那、懐から響いたのは駱太郎の声。凛とした目つきで睨み付ける駱太郎は、アーマードゴリラの顔を守っているマスクへ向け、アッパーカットを炸裂させる。

万砕拳(ばんさいけん)・・・玉砕(ぎょくさい)!!」

 圧倒的な破壊力を秘めた拳が的中し、アーマードゴリラの顔面を覆っていたマスクは落雁の如く粉々に砕け散った。

「グアアアアアアア」

 顎への一撃が決め手となり、アーマードゴリラは戦闘不能となった。

 すぐになのはとはやてが拘束魔法を発動し、身柄を確保する。幸吉郎は狼雲の切っ先をアーマードゴリラに突き付け、厳しく尋問する。

「質問に答えるか、このまま消えるか選べ」

「消エルノハオ前達ダ。愚カ者共メ。我ノ実力ハアドバンスハイムデハナンバー3。ソノ程度デハ今モ来テイルナンバー2ノ獣王(じゅうおう)ニハ勝テヌ。破壊サレルガイイ」

「それコイツじゃない?」

 言いながら、ドラが戦いで倒した獣王と呼ばれる怪人の死骸から採取した目玉部分を見せつける。

「・・・だそうだ」

 沈黙するアーマードゴリラ。しばしシリアスな雰囲気を取り繕っていたが、忽ち態度を一変させる。

「あの、すいません。全部話しますんで、勘弁してください!」

「なんだお前? さっきまで片言だったじゃねぇーか」

「すいません、雰囲気出して格好つけてました」

 

 

 

 

 

 

用語解説

※ 阿闍梨=密教で、弟子たちの規範となり法を教授する師匠の意

 

 

 

教えて、ユーノ先生!

 

ユ「今日も鋼鉄の絆(アイアンハーツ)のメンバーとイメージ声優の紹介だよ♪」

「第四席に収まる龍樹常法さんには、阿笠博士などを担当する重鎮・・・緒方賢一さん」

龍「でぅははははは!!! まだまだ若いもんには負けんわい!!」

ユ「写ノ神さんと茜さんは、同じ教育テレビの料理番組で競演した、青山桐子さんとおみむらまゆこさん」

写「良いのか、そんなはっきり言って?」

茜「えっと・・・多分大丈夫ですよ・・・」

ユ「そして、未だ登場していない第七席の螻蛄壌さんの声は、二枚目から三枚目など幅広く演じられる甘い声が魅力の近藤隆さん」

螻「君たち、群れてるね・・・咬み・・・いや、虫の息にするよ」

ド「今確実に『咬み殺すよ』って言いかけたよね?」

ユ「言いかけましたね」

螻「言ってない。気のせいだよ」

 

 

 

魔導師図鑑ハイパー!

 

ユーノ達が留守の間、事務仕事を担当している鬼太郎・浦太郎のもとへ、ギンガが箱詰めの郵便物を抱えてやってきた。

ギ「郵便物が届きました。はい、どうぞ!」

 ギンガは、数枚の葉書を鬼太郎へと手渡した。

鬼「おいギンガ、残りは?」

ギ「あ、残りは白鳥さん宛てです。殆ど尸魂界(ソウル・ソサエティ)の女性死神の方からのようですね・・・」

浦「白鳥さん、性格はアレだけど、貴族でお金持ちでしょ? 向こうじゃ結構な人気者らしいよ」

鬼「けっ! 何であんな鳥がモテるのかが全く分かんねぇよ!」

ギ「そ・・・そうですよね! 鬼太郎さんの方が良いところいっぱいありますもんね!!」

鬼「例えば?」

浦・ギ「「・・・・・・・・・」」

 問われるも、二人は沈黙を決め込んだ。

鬼「ねぇのかよぉ――!!!」

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