ユーノ・スクライア外伝   作:重要大事

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第40話「ブラソ・デレチャ・デ・サルバシオン」

 誰かを傷つけるのはいやだ。

 自分が持って生まれた力が人を傷つけるんじゃないかって思うと、震えが止まらなくなる。

 

 戦闘機人の試作体として生まれた私は――普通の子とは違っていた。

だけど母さんは、私とギン姉を見つけてくれて、自分の子どもとして愛情を注いでくれた。だから今の私はここにいる。

 

 自分の出自なんか関係ない。

 大切なのは力のあり様。そう教えてくれたのは紛れもなく母さんだった。

 

あれから何年経ったかな。

身も心もあの頃よりずっと強くなった。そう思っていた私だけど――

 

私の拳が、強いのはどうしてなのか。

 私の強い拳が、何のためにあるのか。

その意味を、母さん以外に教えてくれる人に――私は巡り合えた。

 

           ≡

 

新暦079年 7月20日

第1管理世界「ミッドチルダ」

ミッドチルダ中央南駐屯地内A73区画

機動六課 ミッドチルダ地上本部

 

昼休み、スバルが食事を終えてロビーに向かうと、鬼太郎がスマートフォンの画面に視線を釘付けにし、何かに熱中していた。

(鬼太郎さん・・・何見てるんだろう?)

彼女は好奇心を抑えきれず、そっと近づいたが、イヤフォンを耳にした鬼太郎は周囲の気配に一切気づかない様子だ。

「あのー、鬼太郎さーん?」

そう声をかけた瞬間――

「おっしゃあああああああ!!!」

「ふぎゃ!!」

突然、鬼太郎が声高らかに叫び、両手を勢いよく振り上げた。スバルはその拳が不意に鼻先を捉え、思わず後方に転倒する。

「いてててて・・・・・・もう~、なんなのー?!」

「って、スバルじゃねーか? なにやってんだよそんなところで?」

ようやくスバルの存在に気づいた鬼太郎が、不思議そうに彼女を見下ろしながら問いかける。

「誰かさんが急に叫ぶからですよー! というか、一体何を見て興奮してるんですか?」

スバルは腫れた鼻を押さえながら鬼太郎に問い返すと、彼はスマホを見せながらボクシングの世界大会を指し示した。

「見ろっ! WBO世界ヘビー級タイトルマッチの決勝戦だ!!」

「あぁ・・・ボクシングって言うんでしたっけ? 地球の格闘スポーツの一種だっていう」

「おうよ!  今回はこの会場での決勝だったが、来月は香港でもビッグマッチがあるんだ。各国の強豪連中がしのぎを削ってる中で、チャドが四年連続で王座を守り抜いたんだっ!! これが興奮せずにいられるかってんだ!!」

スバルも、チャドと呼ばれる男の鋭い眼差しと圧倒的な風格に目を奪われ、次第に興味が湧いてきたようだった。

「へぇー、すごい人なんですねー。私も一度対戦してみたいなー」

「やめとけ、やめとけ。おまえじゃチャドの足元にも及ばねーよ!」

「そんなの、やってみないとわからないじゃないですか! 私だって毎日鍛えるんですから!」

すると、鬼太郎はふっと笑いながら、口元を緩めた。

「言っとくが、チャドはそんじょそこらのボクサーとは訳が違う。ここだけの話、あのオレンジ頭の友人の霊能力者なんだぜ」

「えぇ!? 一護さんの・・・お友達なんですか!?」

スバルは改めて画面越しにチャドの姿を凝視し、うっすらとその貫禄が誰かに似ていることに気づく。

「なるほど・・・だからこんなに強いんですねー。そう言えば、どことなく京楽総隊長さんに顔つきが似てなくもないような・・・・・・」

その時、不意に呼び出しアナウンスが館内に響き渡る。

『隊員呼び出しです。スターズ分隊、スバル・ナカジマ防災士長。部隊長室までお越しください』

 

           *

 

同隊舎 部隊長室

 

「八神部隊長、お呼びでしょうか――あれ?」

呼び出しに応じて部隊長室に入ったスバルの視界に、マリエルとシャリオの二人の姿が映った。

「ごめんな休み時間に」

「待ってたわ、スバル」

「マリーさん・・・それにシャーリーさんも、どうして?」

スバルが疑問を口にすると、はやては柔らかな微笑みを浮かべながら説明を始めた。

「実はな、マリーさんとシャーリーが、スバルのリボルバーナックルに適合する新装備の開発に成功したそうなんや!」

「でね、その実動テストをこれからやろうと思ってるんだけど・・・時間いいかしら?」

マリエルの提案を聞いたスバルの顔に、期待に満ちた喜びが浮かぶ。

「はい!! 全然大丈夫です!! むしろ新装備の実装、私も楽しみです!!」

「オーケー! じゃあ、早速外に出ましょう」

 

           *

 

同隊舎 海上トレーニングスペース

 

外へと出たスバルは、新機構の実動テストに早速臨むことに。フォワードメンバー達が周りに集まり、その行く末を固唾を飲んで見守っていた。

「スバルの新装備って・・・前にギンガさんに渡した試作品を改良したものなんでしたっけ?」

「そうなの。マリーさんったら、すごい頑張ってくれたみたいで・・・・・・スバルがこれから先、もっとたくさんの人を助けられるようにって、《ガーディアン》って名前を付けてくれたの」

「ガーディアン、良い名前ですね」

「まさにスバルさんにピッタリですね!」

期待に胸を弾ませる一同を見渡しながら、マリエルがスバルに声をかける。

「じゃあ、スバル、準備はいいかしら?」

「はい! 私も相棒(マッハキャリバー)も、いつでも大丈夫です!!」

〈Bring it on!(バッチこいです)〉

「それじゃあ・・・・・・はじめるわよ」

「データ採取はお任せあれ!」

シャリオとマリエルがデータ採取の準備を進める中、スバルは呼吸を整え、慎重にガーディアンを起動させようとする。

「いきます――ガーディアン、起動開始!」

〈Standby ready〉

リボルバーナックルに組み込まれたガーディアンが起動を試みると、ベルカ式魔法陣が足元に展開され、魔力が練り上げられていく。しかし、その瞬間――

「あ、あれ?」

突如として、組み上げられていた魔力が供給不足に陥り、リボルバーナックルに不具合が生じる。

「どうしたんだろう? 反応しない?」

スバルが戸惑いを見せたその刹那、ナックル本体に不穏な電気が走り、エネルギーが逆流して彼女の体へと奔流の如く突き抜けた。

「う、うぇ・・・・・・!? うがあああああああああああああ!」

「スバル!」

「ちょちょ、何なのこれー!?」

突然のエネルギー逆流による異常事態に、ティアナや他のフォワードメンバー、そして開発者であるマリエル達も衝撃を隠せない。過負荷がかかったスバルの体からは湯気が立ち上り、ついに意識が薄れるようにその場に倒れ込む。

「スバルっ!!」

「だ、大丈夫ですか!?」

「うぅ・・・・・・なにがどうなってるの・・・・・・?」

周りに介抱されながら全身の痺れに悩まされるスバル。マリエルとシャリオは深い申し訳なさを浮かべ、平謝りに近い態度で声をかけた。

「ごめんなさい、スバル! こんなはずじゃなかったんだけど!」

「完全に失敗ねー、これは」

「あの・・・・・・どうしてこうなったんですか?」

スバルが痛みに顔を引きつらせながら問いかけると、マリエルは苦笑を浮かべつつ端的な説明を始める。

「ガーディアンは元々、スバルの戦闘機人としての力をより引き出しやすくする為のものなんだけど、純粋な魔法と違って非常に制御が難しいの。今のは、戦闘機人としてのスバルが持ってるエネルギーが逆流してしまった結果、身体に過負荷がかかったものね」

スバルは痺れの残る体を、ギンガとティアナの助けを借りてゆっくりと起こした。

「うぅ・・・・・・えっと、どうにかなるんでしょうか?」

不安げに問いかけるスバルに、二人は決意に満ちた笑顔を向ける。

「科学はね、常に失敗の連続よ。今の実験で、何がいけないのかがはっきりとわかったわ!」

「これからラボに戻って、改良に当たるわ! やるわよ、シャーリー! 私達でアニュラス・ジェイドもビックリな新デバイスを作るわよ!!」

「はい、マリーさん!!」

意気揚々とラボに向かう二人の背を見送りながら、スバル達は互いに不安の色を滲ませる。

(大丈夫・・・・・・なのかな?)

スバルは、そんな思いを胸に、次なる装備の行方を案じていた。

 

           *

 

機動六課隊舎 休憩スペース

 

夕方、スバルは今日の出来事を恋次達に話していた。

「そりゃあ、災難だったな」

「まだちょっと痺れが残ってますけどね」

スバルは掌をぐーぱーと動かしながら、説明を続ける。恋次はお茶を啜りながら、ふと思い浮かんだことを口にした。

「しっかし、あの二人も結構涅隊長気質だからなー。なんだって科学者とかメカニックってやつらは、気が触れてる奴が多いんだろうな?」

「あはは・・・・・・気が触れてるとまでは言いませんが、こだわりが強いのは確かかと」

「いっそのこと、その《ガーディアン》・・・だっけ? 何が悪いのか、ユーノさんに見てもらえばいいんじゃ?」と、吉良が率直な意見を口にする。

「ユーノ先生なら、今日を含めた三日間・・・・・・CWに用事があっていないんです。それに――」

 

 

『『ぜったいにユーノ君(先生)の力は借りないんだから!!』』

 

 

「――って、言ってましたし」

それを聞いた恋次達は、一瞬驚きつつもすぐに呆れ顔を浮かべる。

「要するに、店長に負けたくないってわけだね」

「相手は不世出の天才魔工技師、アニュラス・ジェイドであるからな」

「張り合う相手が悪すぎる気もするんだが・・・」

浦太郎、白鳥、恋次は一様に首を振り、勝負の土俵がそもそも違うのではと考えを共有する。

 

ブーッ、ブーッ、ブーッ。

 

その時、休憩のひとときを破るようにアンゴルモア反応を知らせる警報がけたたましく鳴り響いた。全員が即座に緊張を取り戻す。

「アンゴルモアが見つかったようですね」

「ったく・・・・・・。就業時間間近にそりゃねーよな!」

ぶつぶつと文句を零しつつも、恋次達は司令室へと足早に向かう。

 

           *

 

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 総合司令室

 

集まったメンバーに、はやては軽く頭を下げて感謝と謝意を述べる。

「帰宅間近の召集、ほんまにごめんなー」

「気にしないでください、八神部隊長」

「それでアンゴルモアは?」

フェイトが尋ねると、ルキノ達が映像を表示する。中央モニターに映し出されたのは、第17管理外世界の不穏な惑星外観だった。

「なんだか、気味の悪いところだねー」

「“次元の墓場”って感じ」

「ですが、この第17無人世界地表でアンゴルモアの反応があったのは間違いありません。それに・・・微弱ですが生体反応もあります」

吉良と浦太郎の報告に続き、アルトが状況を説明する。

「次元の墓場で生体反応かよ・・・・・・もしかして、幽霊でも住んでんじゃねーのか?」

「だったら、死神としての職務を遂行するまでさ。彷徨う霊魂を導くのは俺らの専売特許だからな」

鬼太郎と恋次が軽口を交わすのを余所に、はやてが指示を出す。

「アンゴルモアの反応が弱いから、見つけ出すのは大変かもしれへん。今いるメンバーでチームを組んで、効率よく探索に当たるように」

「「「「了解!」」」」

 

「「ちょっーと、待ったー!!」」

その時、息を切らせながら司令室に駆け込んできたのはマリエルとシャリオだった。その急な登場に一同が驚き、スバルも思わず声を上げる。

「うわあああ! マリーさん!? シャーリーさんも?」

「は、は、は・・・・・・行くなら、これを持っていきなさい!」

息も絶え絶えにマリエルがジュラルミンケースを開くと、そこには強化された新装備《ガーディアン》が収められていた。

「これって・・・例の《ガーディアン》ですか?」

「ええ、汎用性飛行魔法の理論をヒントに、別の情報端末にガーディアの制御を任せるシステムを設計したわ」

「おっほん! 組み立ては私が担当して、マリーさんが細部の調整を行って、なんとか完成に漕ぎ着けたの!」

「ガーディアン、改め《ガーディアン・セイバー》よ! これでスバルの武装強化は完ぺきって訳!」

「あ、ありがとうございます。大切に使わせてもらいます」

スバルは二人の好意に感謝しつつも、どこか不安げな表情で新装備を受け取った。

「ほんとに大丈夫なのか、アレ?」

「一抹の不安を感じるのは、僕らだけじゃないと思いますけど」

恋次と浦太郎は小声で呟き、二人に聞こえないように顔を見合わせるのだった。

 

           *

 

第17無人世界 衛星軌道上

 

次なるアンゴルモアを追い求め、六課のメンバーは現地軌道上まで到着した。

『間もなく降下ポイントです。前線メンバーは準備をしてお待ちしください』

ルキノのアナウンスを聞き、それぞれが降下準備を整える中、恋次がヴォルフラムから見えたある物に気づく。

「なぁ、ありゃなんだ?」

恋次に問いかけに、フェイトが答える。

「ラブソウルム軌道拘置所です。以前、機人四天王の一人・・・ウーノが収監されていた場所です」

「あれがそうか」

「脱獄騒動が遭った際、収監されていた他の次元犯罪者も便乗して脱走を図ろうとするなど一時は騒然としていたそうですが、四年経った今は落ち着きを取り戻しています」

「ま、二度と脱獄されるようなヘマはしてほしくねーわな」

ヴォルフラムは軌道拘置所を横切り、目的地である降下ポイントに向けて進む。

 

地上に降り立った六課メンバーは、現場指揮官シグナムの号令で探索を開始する。

「これより調査を開始する! 全員帰還時間を厳守せよ!」

「「「「了解!」」」

それぞれが指定エリアに散らばり、恋次も森のように広がる影の中へと足を進める。

「ん!?」

しかし、不意に、冷たく硬質な何かが腕に巻きつくのを感じ、恋次の行く手が阻まれた。見れば、奇妙に光を反射する金属質の糸が、いつの間にか腕に絡みついている。

「な・・・なんだ、こいつは?」

糸を外そうとした瞬間、暗闇の奥から鈍く光る一対の赤い目が現れた。ゆっくりと姿を現したのは、無数の赤い眼を宿し、金属質のクモの下半身と、人間を思わせる異形の上半身を持つ怪物だった。

「コイツ・・・! この世界の生物なのか!?」

怪物は鋭利な鎌状の腕を天に掲げ、暗黒に染まるエネルギーを放つ。

次の瞬間、そのエネルギーは恋次の身体を焼き貫き、全身に麻痺と激痛が走った。

「ぐおおおおおおおおおおおおおお!」

痺れと痛みに苛まれながら、恋次は金属糸でさらに雁字搦めにされていく。糸が彼の身体を覆い、ついには逃げ場もなく絡め取られてしまう。

『フフフ・・・・・・あっけないわねぇ。まぁいいわ。あんたには、私のかわいい子供達の餌になってもらうわ』

そう言いながら、怪物は無数の赤い目を浮かばせた背後の小さな影たち――自らの「子供たち」を従え、恋次をゆっくりと吊るし上げる。その糸が闇の中で鈍く光り、不気味な笑みを浮かべた怪物が低く笑った。

『さぁ、他の仲間も直に“保存食”にしてあげる・・・・・・シャーハハハハハ』

 

一方、集合時間が迫ると他のメンバーが集まり始めた。

「アンゴルモアは見つかったか?」

「いや、まったく」

「こちらも成果なしです」

捜索に手応えを感じられない報告の最中、白鳥が恋次の不在に気づく。

「阿散井隊長はまだ戻っていないであるな」

「ったく、帰還時間も碌に守れねぇのかよ、あいつは」

アギトが呆れたようにぼやくが、浦太郎は真剣な表情で言う。

「仮にも護廷十三隊隊長を務める男がだよ、何の理由もなく規律違反をするとは僕には思えないなー」

「それより・・・こっちから呼びかけているんですが、応答がありません」

ティアナが何度か念話や通信を試みるも、返ってくるのは雑音のみ。

「何かに襲われた可能性もありますね」

「心配です。みんなで探しに行きましょうか?」

「じゃあ、引き続きアンゴルモア探索と恋次さんの捜索を兼ねて、手分けして捜すよ」

 

その頃、金属糸の(まゆ)に閉じ込められた恋次は、必死に脱出を図っていた。

「くっそ・・・・・・! なんなんだよ、こいつは・・・・・・!?」

身体を揺らし、糸を引きちぎろうと力を込めるが、硬質な金属の糸はびくともしない。筋力だけで突破するのは不可能だと悟り、恋次は鬼道の力にすがる。

「破道の三十一、赤火砲!!」

火炎の鬼道を至近距離で放つが、糸に絡みついた炎は内部で爆発し、恋次の顔に返ってきた。

「げっほ、げっほ! ダメだ・・・・・・まるでビクともしね・・・・・・どうすりゃいいんだよ、くそ!?」

途方に暮れながら、一縷の望みを託し、恋次は他の仲間が自分を見つけ出してくれるのを願い、心の中で祈り続けるしかなかった。

 

同じ頃、スターズフォワードのメンバーとアギトの班は、恋次が向かったと思われる方角へと足を進めていた。

「恋次さんが向かったのは確かこっちだったよね」

「アンゴルモアの反応もこのあたりみたいだし」

ティアナが恋次の反応を追跡しながら、ふと周囲に目をやる。その時、アギトが周りに見えた異常な光景に気づいた。

「おい! あれ見ろよ!」

視線の先には、無数の金属質な糸が張り巡らされ、どこまでも続くような蜘蛛の巣が広がっていた。

「なに、あれ!?」

「何かの巣のようね」

「墓場の中の墓場ってところか」

「ひょっとして、恋次さんはあの中にいるんじゃ・・・・・・」

誰もが息を飲む瞬間、突如として金属の糸がどこからともなく伸びてきて、ティアナの足を絡め取った。

「きゃああ!」

「ティア、どうしたの!?」

「なんなのこれ!?」

突然足元に絡みついた不気味な糸にティアナが当惑する。次の瞬間、無数の金属質の糸が束になり、彼女に向かって放たれた。

「スターレンゲホイール!」

咄嗟にアギトが火炎魔法を放ち、飛来する糸を焼き切る。ティアナもすかさずダガーモードで糸を断ち切るが、暗がりからクモ怪人が姿を現し、彼らの行く手を阻む。

「何なの、こいつ・・・?」

「ひょっとして、恋次さんはあいつにやられたんじゃ・・・!?」

「あの生物からアンゴルモア反応・・・! AM-10と思われます!」

アンゴルモアの反応を確認した六課メンバーの間に緊張が走る。AM-10は巣に迷い込んだ彼らを見据え、薄気味悪い笑みを浮かべる。

『シャー・・・・・・のこのこと私の巣に迷い込んでくるなんて・・・・・・これだけあれば、子供達も当面の食い扶持には困りそうもないわ』

不気味に笑みを浮かべながら言葉を発すると同時に、AM-10がスバル達に向けて糸を放つ。

「うおお!?」

今度はアギトの体が金属糸に絡め取られ、AM-10の鎌状の手からエネルギーが流し込まれる。

「ぐああああああ!」

「このっ!」

ティアナが迅速に魔力弾で糸を断ち切り、アギトを救出すると、二人は即座に反撃を開始した。

「クロスファイアー・・・シュート!!」

「さっきのお返しだぁ!!」

魔力弾と火炎が同時にAM-10に命中するも、敵は傷一つ負わない。炎と射撃はその異形には効かないようだった。

「ダメだわ。火炎も射撃も通用しない!」

「だったら・・・打撃で一気に決める!」

スバルは敵を睨みつけ、持参した新装備を手に握りしめる。

「この《ガーディアン・セイバー》の力で!」

リボルバーナックルにガーディアンを装備し、彼女は大きく息を吸い込んだ。

〈Guardian Saver,are you ready?〉

「セットアップ!」

拳を天に突き上げた瞬間、途方もない力がスバルの全身を駆け巡り、強烈な電流が身体中に走る。

「う、うわあああああああああああああああ!」

「スバル!!」

「おい、大丈夫か!?」

「ロングアーチ、こちらライトニング4! スバルさんが!」

キャロからロングアーチに緊急連絡が入り、はやて達も通信越しにスバルの悲鳴と異常なバイタルサインを確認する。

「スバルのバイタルに異常発生!!」

「体内の魔力エネルギー、さらに上昇中!!」

「マリーさん、シャーリー、どういうことなんや!?」

「そんな・・・! リボルバーナックルとガーディアンの相互関係は改善したから、理論上はこんなこと起こらないはずだけど!?」

「だが、現に起こってるじゃねーか!?」

ヴィータの鋭い指摘が響く中、リインがモニターを指さす。

「あ! 見てください、スバルの右腕が・・・!」

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!!」

その瞬間、スバルの右腕にランタン・シールドに似た装備が形成され、それに伴い彼女の瞳は戦闘機人モードの冷たい黄色へと変わった。

「なんなのこの力・・・・・・負ける気がしない・・・・・・!!」

昂揚したスバルは、まるでその力に魅了されたかのように、AM-10に向かって突進する。

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

「ちょ、スバル!!」

「うらああああああああああ!」

〈Core break shot〉

『シャアアアアアア!』

スバルのクリティカルな攻撃がAM-10に命中し、地を揺るがすほどの打撃を与える。

「オラオラオラオラ!!」

しかし、その攻撃にはいつもの冷静さはなく、自らの身も省みない荒々しく狂気じみた力が満ちていた。

「スバルの奴、なんか様子が変だぞ!?」

「ていうかあの子・・・・・・戦闘機人モードで戦ってる?」

「だとしても、あれはちょっと異常です。まるで戦いを愉しんでるように思えてなりません。あれじゃスバルさんも大怪我してしまいます!」

スバルは傷つくことも厭わず、戦いの狂喜に酔いしれるように無茶苦茶な猛攻を続けた。周囲の仲間が制止を試みるも、彼女の耳には届かない。

『シャー・・・! こ、これは効くっしゃー・・・』

「はは!! 最高に気持ちいい!! 次で決めてやる!!」

AM-10は追い詰められ、スバルは最後の一撃を狙う。

しかし、すでにバリアジャケットは損傷し、体もデバイスも過負荷の限界を超えていた。このままではスバルが倒れてしまうと察したアギトが飛び込む。

「やめろー、スバル! やり過ぎだ!」

アギトが視界に入った瞬間、スバルの目に般若が宿る。

「邪魔するなぁぁ――!」

「うわあああああ!」

怒りに突き動かされるようにスバルはアギトを拳で弾き飛ばし、アギトは勢いよく木に叩きつけられる。

「アギト!!」

「しっかり、アギト!」

ティアナ達がすぐさま駆け寄り、傷ついた彼女を支えた。

『シャー・・・・・・ここは一時撤退シャー・・・・・・!』

一瞬の間隙を突き、AM-10は戦場を離脱して逃げ去ろうとする。

「逃がすかよ!!」

スバルはノーヴェを彷彿とする男勝りの荒々しい口調で追いかけようとするが、再び体内でエネルギーが暴走し、ついに彼女の体が限界を迎えた。

「ぐっ・・・・・・ぐああああ・・・・・・」

力尽きたスバルは、気を失い木の上から崩れ落ちるように落下する。

「スバル!!」

皆が慌てて駆け寄ると、スバルはガーディアン使用の反動によりボロボロとなった体で、地面に横たわっていた。

 

           *

 

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・す・・・・・・る・・・・・・

・・・・・・ば・・・・・・

・・・・・・ばる・・・・・・

 

――「・・・・・・ばる・・・・・・スバル・・・・・・!」

しばらくして、呼びかけられた末にスバルがゆっくりと目を開けると、最初に見えたのはティアナの顔だった。

「ティア・・・・・・?」

「よかった、目が覚めたようね」

「あれ? わたし・・・どうしたんだっけ?」

何が起きたのか思い出せずにいるスバルに、周囲が事の次第を説明する。

「ガーディアンを使った後、まるで人が変わったように大暴れしてたんです」

「わたしが・・・? そんな・・・・・・あっ!」

その時、スバルは傷ついたアギトの姿に気づき、動揺する。

「アギト!? その傷・・・・・・まさか・・・・・・!」

「えっと・・・・・・これはだな・・・・・・」

アギトは言葉を失い、気まずそうに顔をそらした。スバルも、彼女の態度から何が起きたのかを察していた。

「そんな・・・・・・じゃあ・・・・・・私がやったの・・・・・・?」

未だに信じられない様子で、自らの震える右手を見つめ、スバルは茫然自失と立ち尽くすばかりだった。

 

           *

 

第1管理世界「ミッドチルダ」

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 総合司令室

 

同じ頃、はやてとクロノがガーディアンの制作者であるマリエルとシャリオに事情聴取を行っていた。

「二人とも。これはどういうことか、きちんと説明してくれるか?」

クロノの厳しい声に、マリエルとシャリオは頭を深々と下げ、悔恨の表情を浮かべる。

「ごめんなさい! 予想に反してこんな結果になるなんて・・・・・・不徳の致すところだわ」

「まさか、戦闘機人のエネルギーを高めることで、スバル自身が好戦的な性格になるなんて思ってもいませんでした!」

弁明の言葉と共に、二人は猛省の意を示す。

「やれやれ。こんな時に店長がいてくれればなー」

鬼太郎が後頭部に腕を回し、ぼやくように言う。クロノは険しい表情で腕を組み、二人を見据えた。

「完成を急いだ結果がこれだ。アニュラス・ジェイドに負けたくないという気持ちは分からなくもないが、それで仲間が傷つく事になっては本末転倒だろう」

「「仰る通りです・・・」」

再び深く頭を垂れるマリエルとシャリオ。はやては溜息を吐き、通信越しにスバルへ指示を伝える。

「とにかくや。スバル、不具合が解決するまでその力は使ったらあかん。無暗に使ってまた暴走して、仲間を傷つける恐れがある」

『はい・・・・・・わかりました』

ガーディアンの使用が引き起こした予想外の結果に加え、上司からの使用制限のダブルパンチに打ちのめされたスバル。仲間を知らぬ間に傷つけてしまったという事実に、彼女の心は重く沈んでいた。

そんな時だった。肩を落とすスバルを見かねたティアナ達フォワードメンバーが、そっと声をかける。

「スバル・・・・・・そう気を落とさないで」

「あれはスバルさんのせいじゃありませんから」

ティアナやキャロの慰めにスバルは微笑むが、その瞳には深い悔しさが宿っていた。

「慰めてくれるのは嬉しいけど・・・・・・知らなかったじゃ済まされないよ。ガーディアンを使いこなせなかったのは私の責任だし、それでアギトを傷つけたのは紛れもない事実・・・・・・結局、私は・・・・・・危うく壊すところだった!!」

スバルは声を絞り出すように言い、涙を堪えきれず肩を震わせた。ティアナ達は、滅多に見られないスバルの落胆ぶりにかける言葉が見つからず、ただ見守るしかなかった。

すると、その時――別動隊から通信が入る。

「スターズ2、ティアナです」

『シグナムだ。向こうでアンゴルモア反応を捕らえた。おそらく、お前達を襲撃したAM-10と見て間違いない。すぐに合流できるか?』

「了解です。直ちに向かいます」

ティアナは通信を切り、気丈に背を向けたままスバルに語りかける。

「AM体が見つかったわ。私達も急ぐわよ」

その言葉にもスバルは反応せず、まだ心の葛藤から抜け出せない様子だった。ティアナは一瞬溜息を吐くが、「全く、あんたって子は・・・・・・」と心中で呟き、やがて覚悟を決めて大きな声で呼びかけた。

「コラ、スバルっ!」

思わず振り向いたスバルに、ティアナは力強く両肩を摑み、真っ直ぐに見つめて言った。

「いつまでも腐ってるんじゃないわよ。あんたらしくもない。あんたがそんなんじゃ、私やみんなの調子が狂うでしょう?」

「ティア・・・・・・」

「あの、スバル。前に私がアグスタでミスショットやらかして落ち込んだときも、あんたがいたから私は腐らずにいられたの。スバルがミスして落ち込んでるなら、私が勇気づけてあげる。だから――今後はがんばってミス取り返そう」

いつもとは違い、自分を真剣に励まし、温かい言葉をかけてくれるティアナの存在に、スバルの心は徐々に癒されていった。彼女の目から大粒の涙が零れ落ち、スバルはそれを拭ってティアナに笑顔で応える。

「・・・・・・うん! ありがとう!」

 

           *

 

その頃、別動隊でAM-10と戦っていたシグナム達は、次第に苦戦を強いられていた。

「紫電一閃!」

シグナムの炎の魔剣がAM-10に迫るが、AM-10は口から放った金属の糸を網状に張り巡らせ、瞬く間に防御の幕を作り上げた。

『シャッシャー! 私を斬ることは不可能っしゃー!』

「くぅ・・・」

『これでも食らうっしゃー!』

AM-10は、歯噛みするシグナムに狙いを定めると、さらに攻撃の糸を繰り出し、彼女の足元を絡め取る。

「なに!?  ・・・・・・があああああああ!」

糸に絡まれるや否や、全身に痺れが走り、シグナムの動きが封じられる。

「待ってて、シグナムさん!」

「我々が救出する!」

浦太郎と白鳥が連携してシグナムを助け出そうとするが、

『そうはさせないっしゃー!』

AM-10は、その動きをすばやく察知し、金属の糸をさらに周囲に張り巡らせる。糸は跳ね返るようにして彼らを絡め取った。

「うぇぇ!?」

「馬鹿な!」

無様に糸に捕えられ、二人もまたその場で動きを封じられてしまう。

「何たることだ・・・!」

「こんな狭い空間じゃ、せっかくの汎用性飛行魔法も形無しです!」

三人がまとめて捕らえられた状況に、AM-10は高笑いをあげながら糸を伝って近づいてくる。

『シャー。ほんと今日は大粒の獲物が揃っているっしゃー。子供たちも大喜びだわ』

「子供たち?!」

その言葉に浦太郎が息を呑むと、背後に控えていた無数の子蜘蛛が蠢きながら集まってきた。迫りくる無数の目に、三人の焦りが一層強まる。

「ぼ、僕は美味しくないんだ! 亀だけに磯臭いんだ! ほら、おっぱいの大きいシグナムさんのところに行くんだ!」

「な・・・・・・貴様っ! 私の胸はこいつに飲ませるものではない! というか、母乳なんぞ出るか!!」

「この低俗な節足動物めが! 貴様ら程度に我の血肉を与えてなるものか!」

絶体絶命の危機が迫る中、アギトの炎が飛来し、三人に飛び掛かろうとした子蜘蛛を次々に焼き尽くした。

『シャー! 私の子供達が!』

 

「遅くなったぜ、シグナム!」

「お待たせして申し訳ありません!」

三人の危機に、アギトらを筆頭とした仲間達が続々と現れ、解放の瞬間を待ちわびたかのように結束する。

「おう! 来たか!」

「早くこれを解いておくれ! 私は虫が嫌いなのだ!」

「スバル、キャロ、行くわよ」

「「うん(はい)!」」

『よくも私の子供達を殺してくれたわね。許さないっしゃー!!』

すると、怒り狂ったAM-10が襲いかかってきた。ティアナ達は即座に応戦し、射撃と火炎で立ち向かうが、

『甘いっしゃー!!』

AM-10は巧みに糸を操り、彼らの動きを封じ込めていく。

「「きゃあああ」」

「ぬああ!?」

「ティア! キャロ! アギト!」

ティアナ、キャロ、アギトの三人が呆気なく糸に絡め取られ、身動きが取れなくなる。スバルは焦りを感じながらも、咄嗟にガーディアンを手に取るが、先ほどの暴走を思い出し、足が竦む。

(あいつに対抗するには、このガーディアンしかない・・・・・・だけど、また暴走したりでもしたら・・・・・・)

「スバル、逃げなさい!」

ティアナが必死に叫ぶと、クモの糸が跳弾し、スバルの元に飛んでくる。

「うわあああ!」

飛んできた攻撃に身体をのけぞらせる。その際、攻撃の一部が手元に当たってスバルの手から弾き飛ばされるガーディアン。

「しまった!」

反射的に体を逸らし、手元のガーディアンが地面に転がり落ちる。焦るスバルの視線の先で、それを拾い上げたのは、応援に駆け付けたユーノだった。ユーノはガーディアンをじっと見つめ、眉を顰める。

「なるほど・・・・・・これがそうか」

「ユーノ先生! 来てくれたんですか!?」

スバルが駆け寄ると、ユーノは冷静に頷き、彼女に説明する。

「連絡を受けて、CWが直接こっちに飛んできたんだ。この場でプログラムの最終調整をする。スバル! 今こそ真のガーディアン・セイバーを使いこなすんだ!」

「え!? でもそれ・・・・・・使って大丈夫なんですか?」

スバルの戸惑いに、ユーノは迅速にガーディアンの設計図を展開し、冷静な目で不具合を見つけ出していく。

「ガーディアンは、戦闘力を底上げする際に人の攻撃本能に強く働きかけているんだ。その結果、使用者を好戦的な性格に変貌させてしまった。ならば、それを抑制すれば・・・・・・本来の力を発揮できる。すなわち、ガーディアン・セイバーは完成する」

ユーノは持参したデータを素早くインプットし、ガーディアン・セイバーの欠陥を修正し始める。その目には一瞬の迷いもなく、確信に満ちていた。

「スバル。僕の知り合いのプロボクサーさんもね、君と同じだったんだよ」

「それって・・・・・・鬼太郎さんが大ファンの、チャドさん?」

スバルが思い当たると、ユーノは静かに肯定し、『茶渡泰虎』から抽出した人格データをインストールする。

「恵まれた体躯と強さを、昔は自分の為に振るっていた。だが、彼の祖父の導きもあって、その人は二度と自分の為に拳を振るう事は無くなった。すべては仲間の為に。大切な者たちをその拳で守る為に振るう。スバル・・・君を見ていると、つくづく茶渡さんと姿が重なる」

「私が・・・・・・チャドさんと・・・・・・?」

思いもよらない言葉に、スバルは驚きと期待が入り交じる中、ユーノはインストールを完了したガーディアンを手渡す。

「よし、できたよ。スバル、今度こそ、みんなを救うんだ!」

「――はい!」

スバルは息を深く吸い込み、気持ちを落ち着かせながら新しいガーディアンを手に取り凝視する。仲間のため、自らの決意が漲っていくのを感じた。

(みんなを救う・・・・・・もう二度と、暴走なんてしない!)

スバルは決然とした表情でガーディアンをリボルバーナックルに装着した。その瞬間、視界が一変し、彼女の意識は暗い世界に引き込まれるのを感じた。

 

 

『ここは・・・・・・?』

見知らぬ暗闇に立ち尽くすスバル。周囲を見渡すと、不意にその前に現れたのは、大柄で落ち着いた風貌をたたえた男、茶渡泰虎だった。

『あなたは・・・・・・! チャドさん・・・・・・!?』

驚くスバルに、茶渡は一言、一言、言葉を噛みしめるように静かに語りかける。

『おまえは強い』

『え』

『おまえは強い。おまえは美しい。おまえは優しい。おまえは、およそ人が神に望む全てのものを持って生れてきたんだ』

自分が信じられないような、どこか畏れをも抱かせるその言葉に、スバルは言葉を失い、茶渡の眼差しを見つめ返した。茶渡は視線を逸らすことなく、さらに告げる。

『だが、違うものは虐げられる。他はどうだが知らないが、少なくともこの世じゃ、そういう仕組みになってる』

その言葉の意味を噛みしめるように、スバルの中にも記憶の影がよぎる。生まれながらに戦闘機人として生きる道を選ばざるを得なかった自分も、何度となく、その理不尽を味わってきた。

『だからこそ、おまえは優しくあらなきゃならない。おまえのその強い拳が、何のためにあるのか――その意味をもう一度思い出せ』

茶渡の姿は、言葉と共に静かに消えてゆく。暗闇に残されたスバルの中で、問いが鮮烈に燃え上がる。

 

――私の拳は、傷つけるためじゃない。

――私の体が頑丈なのは、守るためなんだ。

――みんな、わかってる。

――みんな、みんな、わかってる。

――だから。だから、もう一度だけ。

――私に力を、みんなを守るための力を貸して。

 

その意志を燃やした瞬間、スバルの意識は現実へと帰還し、彼女は拳を突き上げてガーディアンの起動を宣言する。

 

 

「《ガーディアン・セイバー》――セットアップ!!」

〈Awakening〉

刹那、溢れ出すエネルギーが彼女の魔力と戦闘機人としての力を一つに溶かし合い、ガーディアンの形状も巨大なアーム型の武具へと変貌する。その力が全て彼女に備わり、スバルは戦闘機人モードに頼ることなく、真のガーディアンを手にした魔導師として立ち上がる。

「ガーディアン、正常起動に成功!」

「スバルの意識レベルブルー! 完全制御状態です!」

「これが・・・・・・真のガーディアン!」

「戦闘機人モードではなく、魔導師としての意識でコントロールしている!」

司令室で様子を見守っていたはやて達は、胸を撫でおろし、ガーディアン開発者であるマリエルとシャリオは安堵しつつもユーノに役目を譲らざるを得なかったことに悔しさを滲ませる。

「悔しいけど、私達は詰めが甘かったようね・・・・・・結局、最後はユーノ君に頼る結果になってしまったわ」

「ですね・・・・・・これは当分アニュラス・ジェイドに追いつくのは、まだまだ先になりそうですね」

 

「ウィングロード!!」

覚醒したガーディアンを発動させたスバルは、ウィングロードを疾駆し、肥大化した右腕からキャリバーショットを放つ。

「うらああああああ!」

『シャアアー!!』

強烈な一撃がAM-10を直撃し、重々しい音を立てて吹き飛ばす。その隙にユーノが素早く仲間達を救出する。

「大丈夫かい?」

「はい・・・・・・ユーノ先生、あれが・・・・・・」

スバルの姿を見つめるティアナが問いかけると、ユーノは静かに首肯する。

「あれが“本当のガーディアン”だよ」

戦いの主導権を完全に握ったスバルは、瀕死の状態のAM-10に勝負をかける。

「マッハキャリバー! ギアエクセリオン!」

〈ACS Standby〉

ギアエクセリオンが発動し、さらなる力を引き出すべくカートリッジをフルロード。足元に広がるベルカ式魔法陣が、目の前の標的を確実に仕留めようと照準を定める。

「一撃、必倒ォォォ!!」

『や・・・やめるっしゃー!!』

哀れな命乞いも虚しく、スバルの渾身の、世界チャンピョンから引き継がれた意志と想いを秘めた拳が炸裂する。

「ディバイン・・・・・・バスターぁぁぁ!!!」

『しゃあああああああああああああああああああ』

ディバインバスターの激しい閃光がAM-10を貫き、異形の影が消えていく。そして、怪物の体からアンゴルモアが分離し、浄化されながら浮かび上がった。

 

           *

 

第1管理世界「ミッドチルダ」

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎

 

アンゴルモアの回収を終え、メンバー達は帰還後に戦いの記憶を語り合う。

「いやー、あんときはほんと参ったぜ」

「これもスバルのお陰よ」

「そ、そんな! 私はただ、みんなを助けたかった一心で・・・・・・力を与えてくれたのは、このガーディアンだから」

少し照れくさそうに言いながら、スバルは手の中でガーディアンの待機状態を握りしめた。

「そういやあの右腕、すごかったなー。まるでチャドみたいな腕してたぜ!」

「そうなんですか?」

恋次が率直な感想を述べると、スバルは意外そうに目を丸くする。すると、ユーノが少し微笑みながら口を挟んだ。

「ブラソ・デレチャ・デ・サルバシオン――」

「え?」

聞きなれない言葉にスバル達が疑問を浮かべると、AM-10の戦いから得られたガーディアンのデータを整理しながら、ユーノは唱えた言葉の意味を解説する。

「“救いの右腕”という意味さ。まさに、スバルに相応しい力だったよ」

「救いの右腕・・・・・・か」

スバルはその言葉を噛みしめるようにガーディアンを見つめ直し、精神世界で茶渡に言われた言葉が胸に蘇る。

 

『おまえのその強い拳が、何のためにあるのか――』

 

(私の拳は、みんなを守る為にある――――昔も、今も、これからもずっと!)

スバルは心に誓う。これからも仲間を守るために、その拳を振るい続けるのだと。

そして、いつの日か、大切なことを教えてくれた茶渡と直接会える日が来ることを心待ちにしていた。

 

 

 

 

 

 

教えて、ユーノ先生!

 

ユ「今日は茶渡さんについでだ♪」

「本名“茶渡泰虎(さどやすとら)”さん、相性はチャド。現役のプロボクサーにして、世界ヘビー級王者! 彗星の如くボクシング界に現れると、25歳にして、1000試合無敗の記録を作っている」

「そんな彼は、一護さんの中学時代からの同級生で、『巨人の右腕(ブラソ・デレチャ・デ・ヒガンテ)』と『魔人の左腕(ブラソ・イスキエルダ・デル・ディアブロ)』という霊能力を保持している」

 すると、その時――鬼太郎とスバルが二人揃ってユーノに懇願してきた。

鬼「あのー店長、ちょっと便宜を図ってもらえないっすかね~」

ユ「便宜ってなんの?」

ス「チャドさんって、ユーノ先生のご友人ですよね? だから、その・・・・・・チャドさんが出場するボクシングの試合のチケットとかもらえたりしないかなーって?」

ユ「えぇー。急にそんなこと言われてもなー・・・」

鬼「そこを何とか頼みますよ! 俺達どうしても生で見たいっすよ!」

 必死に頭を下げて頼み込むスバルと鬼太郎。ユーノは熟考した末、チャドと連絡を取るため、スマホを操作。直接交渉してみることに。

ユ「あ、どうも茶渡さん。ユーノです、お久しぶりです。実は折り入って頼みが・・・・・・あぁ、そうですか、わかりました」

 電話が終わり、緊張の面持ちで待ち構える二人にユーノは、真顔で暫し見つめてから、満面の笑みを浮かべる。

ユ「喜びなさい。茶渡さんが今度の試合のチケットを、二人分確保してくれるって♪」

ス・鬼「やったー!!」

 二人は大喜びでハイタッチ。念願の試合のチケットを手に入れることができた。

 

 

 

魔導師図鑑ハイパー!

 

 オフシフトのスバルは、都内のスポーツジムに来ていた。

ス「さーてと、まずはどれからやろうかな?」

 すると、彼女の目にパンチングマシンが留まった。

ス「よし! あれからやろ・・・「そこのお嬢さん」

 その時、ゴリゴリのマッチョ体系の男が声をかけてきた。きょとんとするスバルに、男は不敵な笑みを浮かべる。

マッチョ「君みたいな女の子にはあれはまだ早い。手をケガするのはオチだぜ」

 遠回しに馬鹿にされたような気がしたスバル。そこで、一泡吹かせようと笑みを浮かべながらパンチングマシンへ向かう。

マッチョ「嬢ちゃん、悪いことは言わねーからやめとけって! 痛い思いしたくねーなら!」

ス「ご忠告どうも。でも私、こう見えてかなり強いんで!」

 言うと、スバルは構えを取った瞬間に右腕から強烈な一撃を放つ。

ス「うらああああああ!!」

 右ストレートが炸裂した瞬間、パンチングマシンの当て袋は破裂し、さらにはそれを固定する器具自体が吹っ飛ばされ大破。これには周りも驚愕する。

マッチョ「おー・・・・・・ジーザス・・・・・・!」

ス「ね! 言った通りでしょ!」

 マッチョ男もこんな結果になるとは夢にも思わず、開いた口が塞がらなかった。




登場AM体
AM-10
声:雨宮天
クモのような姿をしたアンゴルモアモンスター。
前進が鋼の鎧を身にまとった様に固く、足と目を除く全身が銀色である。本来は群れで生活して、山や木々に巨大で複雑な構造の巣を作る。
アンゴルモアの影響で体格も攻撃性も増し縄張りである「蜘蛛の巣魔窟(デーモンウェブ・ビッツ)」に侵入してきた敵を片っ端から鋼鉄製の糸で搦めとり、子蜘蛛に食べさせる為の糧にしようとした。
防御力は極めて高く、通常の魔力射撃や火炎攻撃が通じにくい一方、打撃系の技が弱点であり、最後はスバルのガーディアン・セイバーの必殺技を受けて倒された。
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