ユーノ・スクライア外伝   作:重要大事

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ユ「チルクイト編は部屋を明るくして――画面から離れてみてくれ給え!」
恋「いや何言ってんのおまえ? 誰に言ってんだよそれ!?」



第43話「音速を超えた先へ」

前回のあらすじ

 

第84管理世界「チルクイト」にて、次元世界最大級のバイクレーストーナメント【FBT】が開幕した。

アンゴルモア回収の任務を負った機動六課からは、阿散井恋次、ティアナ・ランスター、エリオ・モンディアルの三人が出場を決意。彼らは厳しい特訓を乗り越え、大会前日までに特注の愛車を自在に操れるまでに成長した。

そして迎えた本番――。会場は熱気と興奮に包まれ、150名ものレーサー達がスタートラインに立つ中、最有力候補のフォーミュラー・ジャックバーンや、バイカーギャング《ヘルズ・スカベンジャーズ》の首領ラショウが、その危険な存在感を放つ。

一斉にスタートを切ったレーサー達。恋次は妨害工作を仕掛けてきたラショウの手下を撃退するも、優勝候補のフォーミュラーに先を越される。彼の挑発を受けた恋次は、「勝利」と「仲間達の期待」を胸にアクセルを開け、猛追を開始するのだった――。

 

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新歴079年 8月3日

第84管理世界「チルクイト」

ミュートアーバン スクリューサーキット

 

恋次が猛スピードでコースを駆け抜ける一方、ティアナもアクセルを開けてペースを上げていた。その巧みなドライビングテクニックが光り、エリオと共に首位を目指して加速していく。

「ここで負けたら、何のためにレースに出場したか分かったものじゃないわよ!!」

ティアナの強気な宣言に、隣を走るエリオも応える。

「はい! 僕たちで首位を独占しましょう!!」

実況席からは選手達の熱い走りに呼応するかのように、実況アナウンサーの興奮した声が響く。

『さぁ!!! 各車一斉にスタートです!! 選手たちは最初のチェックポイント【エアーズパーク】に向います!!』

〈Next check point is Airs Park!〉

 最初のチェックポイントであるエアーズパーク――そこは、地球のエアーズロックを彷彿とさせる巨大な岩場と切り立った崖が続き、ほとんどが砂利道という過酷なコースだった。

三人はユーノが改造を施したバイクの性能をフルに活かし、標準装備された赤青黄のボタンのうち青いボタンを起動させる。すると、走行中のタイヤが瞬時に変化し、オフロードバイクのように不整地での衝撃を吸収する仕様に切り替わる。そのままの勢いで、三人は首位を狙い続けた。

『おっと!! ゼッケン9番崩壊、クラッシュだぁぁ!!』

 実況席から悲鳴のような声が上がる中、一台の巨大なトライクが猛威を振るっていた。車体もタイヤも超重量級、三つの車輪を持つそのマシンは、対抗車両を次々とクラッシュさせながら前方を駆け抜けていく。ハンドルを握るのは、《ヘルズ・スカベンジャーズ》の首領ラショウだった。

「ぬははははははははは!!!! どいつもこいつもぶっ壊すぜ!!!!」

 破壊と暴走を続けるラショウとは対照的に、正統派レーサーであるフォーミュラー・ジャックバーンは冷静そのものだった。彼は自らの愛車の性能に絶対的な自信を抱き、余裕の表情でアクセルを操っている。

「今日も我が愛車【ブラッシャベリア】――調子は最高だな!」

華麗にカーブを抜けながら進むフォーミュラーの姿は、まさに王者の風格そのものだった。

 

『えー、中継カメラよりただ今のレース順位を発表します!』

 実況席から順位の速報が流れると、観客席の大画面には激戦の様子が映し出された。

恋次、ティアナ、エリオ――三人は、それぞれのテクニックを駆使して並み居る強豪レーサー達を次々と追い抜いていく。そして気がつけば、彼ら三人が見事に首位を独占していた。

「やった!! ティアナ達が首位独占だよ!!」

観覧席やピットで待機していた六課メンバーから歓声が上がる。なのはの声には喜びが溢れていた。

「凄いわ、三人とも!!」

ギンガも目を輝かせながらモニターを見つめ、拳を握り締めている。

「よーし! そのまま独走だ!」

吉良も応援に熱が入り、笑みを浮かべながら観覧席に声を響かせる。その声は、六課メンバーの総意そのものだった。

一丸となって応援する彼らの姿に、観客席の周囲も感化され、エリオ達の奮闘に惜しみない拍手と声援を送っていた。

 

エアーズパークの岩場を颯爽と駆け抜けながら、恋次は先頭を走るエリオと後方のティアナの姿を確認する。その状況に気を良くした恋次は、鼻を高くして得意げに口を開いた。

「へっへー。ちょっとカッコつけ過ぎたか!! このまま行きゃマジで優勝も目じゃねーぜ!!」

すると、恋次の軽口に、エリオが冷静に釘を刺す。

「油断は禁物ですよ、恋次さん!」

さらにティアナも無線越しにたしなめた。

「そうですよ。まだ始まったばかりです。くれぐれも勇み足にならないでください」

「へっ。わかってるってーの!」

恋次が軽く受け流したその瞬間、実況席から熱の籠ったアナウンスが響く。

『先頭争いは激しいデッドヒート!! 【サンダーエスパーダ】か、【ヴィーナスクロス】か、それとも【俺、参上!号】か!?』

「ちょっと待てぇぇ――!!!」

刹那。実況から飛び出した奇妙奇天烈な名前に、恋次は盛大に驚愕し、思わず大声を上げる。

「俺、参上!号」――まさか自分のバイクにそんな名前が付けられているとは思いもよらなかった恋次は、即座に無線で犯人を問い詰めた。

『おい鬼太郎!! テメーだろうクソダサい名前付けたのは!! 何だ“俺、参上!号”って!?』

すると、無線越しに聞こえてきたのは、鬼太郎の悪びれない声だった。

「ヘッヘー、サイコーにカッコイイ名前だろうが恋次! 俺に感謝しろよな!!」

 開き直った鬼太郎の態度に、恋次は露骨に不機嫌になり、あろうことかアクセルを緩めた。わざとスピードを落として後続のレーサーに抜かされていく。

「てっ、コラー!!! なに追い抜かれてんだよ!!」

 鬼太郎の怒号が無線越しに飛ぶが、恋次は意に介さずアクセルを戻す気配もない。その様子を見ていた六課のメンバーは、心中で苦笑を漏らしつつも恋次に同情を覚えていた。

 

『さぁ!! 第一チェックポイントを一位で通過するのは、果たしてどのバイクだ!?』

 恋次達の目の前に、第一のチェックポイントが見えてきた。目標を目前に控え、全員がアクセルを一気に開ける。

「第一ポイント接近中・・・・・・第一ポイント通過!」

 恋次、ティアナ、エリオが次々にチェックポイントを通過すると、後続のバイク達も次々とポイントを抜けていく。だが、その数は既に半分以下――最初のカーブや崖でクラッシュした台数がいかに多いかを物語っていた。

『全車、第一ポイントを通過! 選手達は一斉にウォーターシャワーを潜るないしは飛び越えて、巨大植物園へ向います!!』

〈Ok!Here we go Biology Park!!〉

次なる第二チェックポイントは巨大植物園【バイオロジーパーク】。そこはバイオテクノロジーで品種改良された巨大な観賞用草花や、食用の野菜が育つ一大アミューズメントパークのような場所だった。

「あれがウォーターシャワーか・・・よし! いっちょやるか!!」

目の前には植物園へと続く滝のようなウォーターシャワーが立ちはだかる。恋次達は迷うことなく、バイクに搭載されたホバーモードを起動した。

エンジン音が一段と高まり、バイクは宙へと舞い上がる。水飛沫(みずしぶき)が光を反射し、さながら虹の架け橋を潜るようにウォーターシャワーを飛び越えていく。

その先に広がるのは圧巻の光景――巨木や巨大な花々が生い茂る緑の楽園。鬱蒼(うっそう)としたジャングルの中に突入したレーサー達は、次なるチェックポイントを目指し爆走を続ける。

『さぁ!! そろそろ第二チェックポイントが近付いてきた!!』

 植物園の密林地帯は走行が極めて困難なコースだった。多くのレーサー達が障害物に苦戦する中、巨大トライク【レックスインフェルノ】を駆るラショウだけはその様子が違った。

「ぶはははははははははははははははははは!!」

 ラショウは超重量の車体と重装甲を活かし、目の前の木々を薙ぎ倒しながら強引にコースを突き進む。巨木が次々と倒れる中、ラショウは眼前のレーサー達にも容赦なく体当たりを仕掛けた。

『おっとー!! ゼッケン8番【ライディーン】クラッシュ!! 続いて【ゴロウ】もクラッシュ!!』

実況席から悲鳴混じりの報告が飛ぶ。ラショウのトライクに吹き飛ばされたバイクが次々とコースを外れていく。

「はっはははははははははは!!! 全員オレさまの養分となりやがれってんだ!!」

荒々しい笑い声が密林に響き渡り、ラショウの恐怖支配が次々にバイクをクラッシュさせていった。

 

『こちら、第二チェックポイントです! そろそろ先頭が・・・・・・来ましたぁ!!!』

 観客が固唾を飲む中、先頭を切って現れたのは正統派レーサー、フォーミュラーが操る愛車【ブラッシャベリア】。その滑らかな走りは圧倒的な安定感を誇り、見る者すべてを惹きつけていた。

彼に続く形で、50台を下回った生き残りのバイク達がチェックポイントを通過。観客席からは熱狂的な歓声が響き渡る。

『さぁ!! 選手達は一同スカイスクレーパーゾーンに向います!! 激しいデッドヒートの中、現在のところ・・・・・・1位は【ブラッシュベリア】! 2位は【サンダーエスパーダ】! 3位は【レックスインフェルノ】! 4位【ヴィーナスクロス】! 5位【ステルス】! 6位【俺、参上!号】の順です!!』

 中継カメラが映し出す順位に、六課のメンバーは固唾を飲んで画面を見つめていた。

「今のところ、エリオがフォーミュラーとデットヒートを繰り広げているな・・・・・・」

「ティアさんも恋次さんもいい感じです!」

「三人とも、がんばってー!!」

熱の籠った応援が次々に飛ぶ一方、はやては周囲を見渡しながらふと眉を顰めた。

「あれ、おっかしーな? ユーノくんったらさっきから姿が無いけど・・・・・・どこ行ったんやろう?」

「トイレにしては長すぎるし、どうしたんだろうね」

 その言葉に、浦太郎は数日前に交わしたユーノとのやりとりを思い出していた。

 

――その『保険』の有無については・・・・・・浦太郎の想像に任せるよ――

 

「さては・・・・・・――」

 浦太郎は確信にも似た一つの推測を導き出した。しかし、それを口にすることはなかった。ただ、少し苦笑を浮かべながら周囲に呼びかけた。

「ま、そのうち戻ってくるって。今はレース観戦に集中しようよ♪」

あえて沈黙を守ることが、彼なりのユーノへの信頼の表現だった。それを察したのか、他のメンバーも深く詮索することなく、目の前のトーナメントに視線を戻した。

その時、鬼太郎が画面に映るあるバイクに目を留め、不満げに口を開いた。

「それにしても、あの5位の【ステルス】ってバイク見てみろよ。パッとしねーデザインだぜ!」

確かに、鬼太郎の言うように【ステルス】は他の派手なバイク達に比べ、あまりにも地味だった。色彩もデザインもどこか無機質で、観客席の一部からは失望とも取れるブーイングが漏れ始めていた。

「・・・・・・だけど、何か妙な気が・・・・・・」

なのはが目を細め、スクリーンに映る【ステルス】の姿をじっと見つめる。その背後で浦太郎もまた、心の中で別の確信を静かに抱いていた。

『さぁ、次はスカイスクレーパーゾーンだ! 波乱の展開が待っています!!』

巨大な高層ビル群を駆け抜ける次のエリアに進む中、緊張感はますます高まっていった――。

 

           *

 

同時刻――

FBT専用コース 第三チェックポイント・スカイスクレーパーゾーン

 

 レースは中盤に差し掛かり、恋次達は第三チェックポイントである【スカイスクレーパーゾーン】へと突入した。

その名の通り、超高層ビル群が密集する鉤心闘角(こうしんとうかく)の地域で、目に映るのは空を突くような摩天楼ばかり。見上げれば圧倒されるような景観が広がっている。

『さあ、各マシンは一斉に第三チェックポイント・・・・・・スカイスクレーパーゾーンへと向っています!! このスカイスクレーパーゾーンでは低速運転が義務付けられています!!』

 主要幹線道路を低速で進む恋次は、周囲のビル群に圧倒されつつ不満を漏らした。

「ビルばっかだな・・・・・・あんましこういうゴチャゴチャした処は好きになれないぜ・・・・・・」

ティアナも低速運転に苦戦している様子でぼやく。

「低速運転って結構大変なのよね。エンジンは痛むし、コントロールも難しいし」

「あぁ・・・なんか走ってるって気がしないなー」

エリオもまた、速度を落とさざるを得ない状況にもどかしさゆえの苛立ちを隠せない様子だった。

 

『さぁ、こちらは第三チェックポイント!! 果たして一位通過をするのはどのバイクだ!?』

多くのレーサーがルールに従い、低速でバイクを走らせる中――その静寂を破るように悪意に満ちた笑みが轟いた。

「へへへ・・・・・・抜くぞぉぉぉぉ!!!」

刹那。ヘルズ・スカベンジャーズ首領・ラショウが、規定速度を無視して急加速を仕掛ける。周囲のバイクに容赦なく体当たりし、次々とクラッシュさせながら強引に前へと進む。

『おっと!!! 次から次へとクラッシュだぁ!!!』

 その異常な光景を目の当たりにしたフォーミュラーは、眉を顰めながらも冷静にラショウを睨みつけた。

「馬鹿な――高速運転禁止ゾーンだぞ!?」

しかし、ラショウは挑発的な笑みを浮かべ、トライク【レックスインフェルノ】のハンドルを握り締める。

「こいつがオレさまの低速運転なのさ!!」

 語気強く言うと、ラショウはフォーミュラーの愛車【ブラッシャベリア】に体当たりを仕掛ける。鉄と鉄がぶつかり合う不快な音が響き渡るが、フォーミュラーはそれでも動じない。華麗なハンドル捌きで体勢を立て直すと、ラショウを睨み返した。

「やるな、フォーミュラー!!」

「貴様如きにやられはせん!」

ラショウの猛威とフォーミュラーの冷静さが火花を散らす中、後続ではエリオ、恋次、ティアナが息を合わせて加速を始めていた。

 

『来ました!!! 首位はレックスインフェルノです!!』

 首位をフォーミュラーから奪い取ったラショウは、更に加速して差を広げようとしていた。

『さぁ、選手達はスカイスクレーパーゾーンを後に・・・・・・本トーナメントの難所のひとつ、地雷がいっぱいの【ランドマインエリア】に向います!!』

地雷原へ突入する直前、恋次、エリオ、ティアナは、デッドヒートを繰り広げる首位二人の背中を射抜くような鋭い視線を送りつつ、無線で綿密な連携を図った。

「二人とも、打ち合わせどおり一旦ピットインするぞ!」

『『了解(です)!』』

 三人は予定通り、ピットへと駆け込んだ。そこでは六課のメンバーが整然とした態勢で迎え撃つように待機していた。

「あっ! 来ましたよ!!」

スバルの掛け声が響くと同時に、各員が一斉に動き出す。

恋次達がバイクを停めると、長距離走行で疲弊したパーツの交換とエネルギー補給が迅速に行われた。

「急いで4番のパーツを頼むで!! シグナムはタイヤの交換を!!」

「はいっ!」

キャロは冷たい水を手に、トーナメント最年少として参加していたエリオへと駆け寄る。

「エリオ君、冷たいお水どうぞ♪」

「ありがとう、キャロ! ちょうど喉が渇いていたんだ!」

エリオはその水を一気に飲み干し、タオルで汗を拭いながら、整備中の愛車を鋭い目で見据えた。

その隣では、スバルとギンガがティアナの【ヴィーナスクロス】に潜む不調を発見していた。

「ティア、エンジンの調子があんまし良くないみたい。ちょっと時間かかるけど、待っててくれる!?」

「分かったわ。ギンガさん、交換にかかる時間は?」

「およそ三分ってところかしら? 出来る限り急ぐから!」

 ナカジマ姉妹によるエンジン交換が行われる一方で、恋次とエリオのバイクは万全の状態へと整えられていく。

「よし! これで完璧っと! 何時でも発進可能だよエリオ」

「こっちもオーケーだ! ティアナ、俺達は先に行くぜ!」

「了解です! 私も直ぐに追いつきますから!」

「んじゃ、三人揃って首位を独占できるよう願うぜ!!」

 恋次はゴーグルを掛け直し、愛車の轟音と共に地雷原へと飛び出した。エリオもまた【サンダーエスパーダ】を巧みに操り、その後を追うように加速する。

 二人がピットを経って数分後――ようやくエンジン交換を済ませたスバルとギンガは、顔中泥だらけにしながらその旨をティアナに伝える。

「お待たせティア、終わったよ!!」

「いつでも全力で発進できる状態にしといたわ!!」

「スバル、ギンガさん・・・ほんとにありがとう!」

ティアナは深く息を吸い、整備の済んだ【ヴィーナスクロス】に跨がると、エンジン音の僅かな震えにも耳を澄ませた。異常のないことを確認すると、ヘルメットを被り直し、意気揚々とアクセルを捻る。

「さあ――行くわよ!!」

勢いよくピットを飛び出すティアナの背を見送り、スバルが声を張り上げる。

「ティアー!! がんばってね!!」

「任せておきなさい!」

その声を背負い、ティアナは疾風となって走り去った。その姿を目で追いながら、六課のメンバーは彼女と先を急ぐ恋次とエリオの勝利を心から祈りつつ、次なる激戦の幕開けを静かに待った。

 

『レースもいよいよ佳境に突入しました!! 栄冠のトロフィーと莫大な優勝賞金を手に入れるのは、果たしてどの選手か!?』

フラストレーション・マルタの実況は、高揚感をこれでもかと掻き立てる。その熱は、観客達の喚声と相まってまさに狂騒の渦と化していた。そして、いまや最後の50人に絞られた選手達が、命運を分ける難所【ランドマインエリア】へと突入する。

『さぁ、いよいよレーサー泣かせの難所――ランドマインエリアに突入です!!』

 これまでの劫火と試練を潜り抜けた者達も、ここに来て表情を硬く引き締めざるを得ない。三者三様に張り詰めた空気を纏いながら、エリオと恋次は冷ややかな衝撃を覚えつつ――後方から轟くエンジン音に振り向いた。

「遅くなりました!」

「ティアさんっ! 待ってましたよ」

「よし、これで三人揃ったな。ここは一気に突っ切るぞ!」

並び立った三人は次の瞬間、爆風と轟音の中に身を投じた。地面に仕掛けられた地雷が火を噴き、地響きを立てながら容赦なく牙を剥く。

『あーっと!! またしても吹っ飛んだ!! やはり恐怖のランドマインエリア、ここまで生き残ったレーサーを情け無用に弾き飛ばしていく!!』

 爆炎と爆音が一面を覆い尽くす。耳を劈く爆音がひっきりなしに鼓膜へ伝わる中、無慈悲にもレーサー達の車体を爆発の渦へと呑み込んでいく。

 恋次達のバイクは、ユーノの手による強化バリアを纏っているとはいえ、地雷の凶暴な衝撃を完全に遮断できるわけではなかった。

「ぐっ!! バリア張ってるつーのに、ここまでの衝撃かよ!?」

「さすがに・・・キツイですね・・・!!」

「何とかここを突破すれば、ゴールは間近です・・・っ!」

しかし――その刹那。

「ぐああああ!」

無慈悲な衝突音と共に、エリオのバイクが大きく揺れた。背後から激突を加えたのは、次元世界の闇に君臨するヘルズ・スカベンジャーズのヘッド――ラショウ。

その巨漢が操るトライク【レックスインフェルノ】が、圧倒的な質量と破壊力をもってエリオの進路を奪う。

「どうした、どうした! 後が(つか)えてるぞ!!」

「「エリオっ!!」」

 二人の叫びも虚しく、ラショウは破壊衝動に満ちた笑みを浮かべ、さらにマシンを押し付けるように加速させた。

「この!! やめろ・・・!! ぐっ!!」

「ハハハハハハ! なかなか度胸があるじゃねーか、小僧の癖によ!! だがこれで終わりだ!! レックス・・・アタックッッ!!」

 ラショウの声が轟き、次の瞬間――凶暴な体当たりがエリオの【サンダーエスパーダ】を弾き飛ばした。

「のあああああああ!!!!!!」

エリオのバイクは制御を失い、軌道を大きく外れて地雷の中心部へと突っ込む。火柱のような爆発が立ち上がり、彼の姿は爆煙に呑まれた。

「「エリオッッ!!!」」

地平に響く絶叫。だが、レースは止まらない。恋次とティアナは苦渋に満ちた表情を浮かべ、なおも前を睨みつける。

目の前には、勝利への執念を露わにしたラショウの背中。

「ハハハハハハハハハ!! どんなことをしてでも勝てばいいのさ、勝てば!!」

勝利のみを至上とする彼の嘲笑が、二人の耳を切り裂く。

「くっそ・・・! エリオ、すまねぇ!」

「あの子の為にもぜったいに勝ってみせましょう!」

「おうよ!!」

散ってしまった仲間の想いを背負い、二人は無情な地雷原をさらに加速し突き抜ける。

 

一方、遥か彼方――地雷の爆炎に吹き飛ばされたエリオは、冷たい地面に横たわっていた。

マシンの残骸が周囲に散らばり、彼の身体には深い切り傷や青紫に腫れた箇所が目立つ。焦点を失いかけた瞳でぼんやりと空を見つめ、微かに震える声で二人の名を呟いた。

「うぅ・・・・・・恋次さん・・・・・・ティアさん・・・・・・」

その時、不意に静かに近づくエンジン音が聞こえた。微かに残る意識の中で、彼は薄れゆく視界に映る一台のバイクを見つめた。

ひっそりとした異質な佇まいを持つそのバイク――名は【ステルス】。操縦者がバイクから降り立ち、ゆっくりとエリオへ歩み寄る。

「あ・・・・・・あなたは・・・・・・・・・」

視界が揺らぎ、操縦者の輪郭がぼんやりと映る。エリオを見下ろしながら静かに佇む操縦者。その姿から静かな威圧感が漂う中、掠れた声は虚空に消え、エリオの意識はついに途切れた。

 

『こちら、ランドマインの出口です! このあと選手達はシャインロードを駆け抜け、最後の関門・ダイダロスブリッジに飛び込むわけですが、さぁ・・・トップは? 来ました!!!』

 爆炎の試練を潜り抜け、ランドマインエリアの出口から飛び出したのは――フォーミュラーとラショウ。

二つの巨影が並び立ち、激しく火花を散らしながら一騎打ちを繰り広げる。

「フォーミュラー! やはりオレ達の一騎打ちのようだな!!」

「優勝するのは私だ、ラショウ!」

 その背後から――恋次とティアナが、地雷の試練を耐え抜き、なおも執念の炎を燃やし続けて現れる。

「まだ俺達も負けてねーぞ!!!」

「エリオのためにも、ここで止まるわけにはいかないわ!」

仲間の想いを胸に、二人はトップを目指してなおもアクセルを踏み込む。その決意は、遥か遠くで意識を失ったエリオのためでもあった。

同時に、ランドマインエリアはその猛威によって他のレーサー達を容赦なく飲み込み、ついに通過者はこの4台に絞られた。多くのレーサーが地雷の爆発によりマシンを大破させ、一部は燃料切れやエンジントラブルによる停止を余儀なくされていた。

 

「優勝賞金はオレさまのものだぁ!!」

 最終コーナーが目前に迫る中、ラショウは鋭い獣の如き眼光で前方を睨みつけ、フォーミュラーを追い越そうとトライクの限界までアクセルを踏み込んでいた。しかし――。

「ち! エネルギー切れか! こいつは大喰らいだからな」

無情にも、愛車の駆動音が途絶える。その巨体に満載されたエネルギーが、飽くなき暴走の果てに尽き果てたのだ。ラショウの眉間に僅かな苛立ちが走るが、次の瞬間には即座に冷徹な判断が下される。

「キットマシン、来てるか!?」

『は! ラショウ様!』

 部下の声が無線越しに弾けると、ラショウは忌々しげにハンドルを切り、コースを離脱。移動式ピットへと急行する。

「よ~し、シグナルオン! マーク!」

「ランデブー完了!」

 ラショウのトライクがピットに滑り込むや否や、待機していた部下達が慌ただしく動き出す。作業の合間、ラショウは傍らに置かれていた最高級の骨付き肉を鷲掴みにし、貪るように頬張る。

焦りも迷いも感じさせぬその姿は、猛獣の王たる風格すら漂わせていた。

「急げ、一分で済ませろ! エンジンは1番! 装備は4番に換装しろ!」

だが、その指示に手下達は一瞬動揺する。息を呑み、戸惑いの色を隠せない声で問い返す。

「ラショウ様! 4番は禁止装備ですが!?」

ラショウは僅かに目を細めた。冷ややかな光を宿した瞳が部下を射抜くと、手にした肉を噛み千切り、語気強く言い放つ。

「構わねぇ!! ダイダロスブリッジには中継カメラは入らねーからな!」

部下達はその一言に怯むことなく、即座に作業へと戻る。轟音と共にエンジンが交換され、トライクは新たな装備を得て牙を研ぎ澄まし始める。

 ラショウの唇には不敵な笑みが浮かんだ。彼の瞳に映るのは、ただ一つ――栄冠の座に立つ己の姿のみ。

(待ってろ、フォーミュラー!)

次元世界にその名を轟かせるバイカーギャングの首魁として、敗北は許されない。ラショウは自らの名誉に懸け、最後の戦場へと疾走する準備を整えた。

 

           *

 

『現在、ランドマインエリアですがほとんどのマシンが大破しリタイアしたと思われますが・・・・・・』

 実況の声が微かな驚愕を帯びる。残骸と化したバイク、無惨に立ち尽くすレーサー達――その悲壮な光景がカメラに映し出される中、不意に場がざわめき立った。

『おーっと!! これはどういうことか!? まだ一台爆走するバイクがあるぞぉ!! なんだあのスピードは!?』

 爆炎を裂くように現れた一台のバイク。轟音と共に、地雷の罠すら意に介さぬ速さで疾走するその姿は、観客達の視線を一気に釘付けにした。

「あのバイクなんだよ!?」

「どういう仕組みで走ってるんだ!」

 口々に飛び交う困惑と興奮の声。だが、爆発と煙の中、確かなシルエットが出口へと飛び出す。その正体は、誰も予想し得なかったダークホース“ステルス”だった。

「来ました、【ステルス】です!! ここにきて凄まじい追い上げを見せるこのバイクのポテンシャルの高さには、ワタクシも脱帽いたします!!』

 実況席のフラストレーション・マルタが感嘆の声を上げる中、観客の熱狂は天井知らずに膨れ上がる。予想だにしなかった展開が彼らを狂乱へと導いていた。

だが、バイクの操縦者――“ステルス”のライダーは、ただ静かに、心の中でひとり呟いた。

(頃合いだな・・・・・・ここまでくれば隠す必要も無い)

次の瞬間、ステルスの車体が突如として光を放ち始めた。その光は、静寂を切り裂くように眩く輝き、冴えない見た目のその機体を――洗練された姿へと生まれ変わらせる。

黒とエメラルドグリーンが見事に調和したボディが現れ、疾駆するバイクは研ぎ澄まされた刃のような威容を誇った。その背に跨るライダーが持つ風に靡く金糸の長髪、どこか優雅さすら漂わせる姿が、全ての観衆を黙らせる。

『なんと!! 【ステルス】の姿が大きく変わったぞ!!! 誰なんだ、あのイカしたバイクを操る謎の人物は!?』

カメラがその姿を捉えた瞬間、観覧席から一斉に驚愕の声が上がった。

「ゆ・・・ユーノ君!?」

「ほんまや、ユーノくんやないか!!」

「いないと思ったら、レースにちゃっかり参加してるし!!」

「マジかよ!?」

驚きに目を見開くなのは、呆気に取られるはやて、他の六課メンバーも茫然とモニターを凝視する。その中心に映し出されているのは、誰あろう――ユーノ・スクライア。

 今の今まで姿を見せず、どこにいるのかと皆が首を傾げていた彼が、レースのダークホースとして舞台に現れていたのだ。ただ一人、この展開を予見していた浦太郎を除いて。

「やっぱり。店長ってば、最初から自分自身を『保険』に用意していたんですね」

 浦太郎の表情には驚きの色はなく、むしろ確信と敬意が滲んでいた。策を練り、万全の準備を怠らないその姿勢に、彼は改めてユーノの真価を見せつけられる。

 一方、レース場では――ユーノは一切の動揺も誇示もなく、静かにアクセルを回し続けた。その瞳には鋭い決意と、強い責任感が宿っている。

「目立つのはあまり好きじゃないんだけど、エリオの為にも僕が必ず――」

風を切り裂く音が彼の言葉を後押しする。静謐なる策士――ユーノ・スクライアは今、嵐の如き疾走で勝利への道を切り拓こうとしていた。

 

『さぁ、レースもいよいよ終盤です!! トップでダイダロスブリッジに飛び込むのは果たして誰か!? ゴールでチャッカーフラッグを最初に受けるのは一体誰なのでしょうか!?』

 実況の声が熱狂の渦に油を注ぐかのように響く中、フォーミュラーの後を追う恋次とティアナの目に、ついにその姿が飛び込んできた。

巨大な橋の途切れたレーン、名を【ダイダロスブリッジ】――その長さはおよそ2000メートル。眼下には惑星の重力圏へと続く、すべてを呑み込むかのような暗黒の虚空が広がっている。

「ついに来たか!」

「恋次さん、用意はいいですか? 行きますよ!」

 二人の声には、緊張と決意が混ざり合う。恋次は汗を拭う暇もなく、強く拳を握りしめた。

「こちらも一気に駆け抜けるぞ!」

 前方では、先頭を守り続けるフォーミュラーが加速し、大橋の虚無へと果敢に挑もうとしている。

「「マキシマムブースター、イグニィッション!!」」

 二人はタイミングを見極め、ハンドル中央の赤いボタンを同時に叩いた。

直後、バイクが咆哮する猛獣のように唸り声を上げ、加速と共に安全装置が解除される。解き放たれたエネルギーが、尋常ならざる推進力を生み出し、二人を重力の束縛から解き放った。

「「おおおおおおおおおおおおおおお!!」」

 空を裂く凄まじい勢いで飛び越える二台のバイク。その下には広がる無限の闇――惑星の重力圏が、深淵の口を開けて彼らを待ち受けていた。

 だが、首位を守り続けるフォーミュラーの背中はなおも遠い。

「ぐぅ・・・・・・あと少し!! あと少しで追いつけるのに!!」

「くそォォ!!! 負けられねえ!!」

 全身にのしかかる重力加速のGが、鋼の意志を持った彼らの身体を締め付ける。呼吸すらままならぬ中、恋次とティアナは限界を超えた集中力でバイクを操る。だが、その「あと一歩」が、まるで永遠の距離のように彼らを苛んだ。

「どうやら勝利の女神は私に微笑んでくれたか・・・」

すると、その時だった。

「ん? 急速接近、ラショウのレックスインフェルノか!?」

フォーミュラーが驚愕する中、さらに彼らの背後から風を裂くように一台のバイクが飛び出した。恋次とティアナを追い越し、さらにはフォーミュラーの守る首位すら奪い去る。

「あれは・・・ユーノ先生っ!」

「あいつ、レースに参加してたのかよ!?」

二人の目に映ったのは、黒とエメラルドグリーンに輝くバイク――【グリーンラベル】とそのハンドルを握るユーノ・スクライアの姿。誰にも気づかれることなくレースに参加していたユーノが、ここに来て一気にトップに躍り出たのだ。

フォーミュラーの目に、ユーノの姿が映る。だが、その瞳には勝負師の炎が宿り、口元には不敵な笑みが浮かぶ。

「――成程。こいつは予想外だった。だが負けるものか、こちらもスーパーチャージャー全開だ!」

 彼の言葉と共に、マシン【ブラッシャベリア】はさらに加速――しようとした、その瞬間。

 ――ガガガガガガ!

「ん!? 何だ!! 操縦不能だ・・・!!」

――ガガガガガガ!

エンジンの異常音が鳴り響き、フォーミュラーのバイクが軌道を乱す。突如として発生したマシントラブル。

「くぅぅ・・・・・・緊急脱出ッ!!」

 彼は瞬時に判断し、バイクから脱出する。

次の刹那、爆発音と共に【ブラッシャベリア】が閃光を放ちながら空中で砕け散った。パラシュートで降下しながら、フォーミュラーの目は信じられない光景を捉える。

「あれは!!」

「何だありゃ!」

「まさか・・・ラショウの!?」

恋次とティアナもまた、彼と同じものを目撃していた。それは二本の巨大なドリルを搭載し、常軌を逸した姿に改造されたトライク【レックスインフェルノ】だった。

【レックスインフェルノ】を操るのは、ヘルズ・スカベンジャーズの首領ラショウ。機体は不気味に唸りを上げ、まさに橋の先端で牙を剥く怪物のように存在感を放つ。

「ラショウめ!! 卑怯な!!」

フォーミュラーは悔しさを噛みしめ、吹き飛ばされた愛車を見つめながら怒りに拳を握る。そして、遥か先を疾走するユーノの姿を見つめ、心からの警告を送る。

「気をつけろよ、ステルス!!」

橋の終端に待ち構える最後の決戦――勝利の行方を握るのは、果たして正々堂々と走る者か、それとも邪悪な手を使う者か。ユーノ、ラショウ、恋次、ティアナ――彼らの運命が、ついに交錯しようとしていた。

 

 ラショウの脅威がすぐそこまで迫りくる中、暫定1位を守るユーノは、風を切り裂きながらゴールへ向けて独走を続ける。

だが、彼の胸中には一抹の不安が重く垂れ込めていた。

(このままトップでゴールすれば、アンゴルモアを回収できる。しかし、本当にそう上手くいくのか・・・・・・)

その不安を断ち切るように、不吉な金属音が背後から轟く。鋭く、冷たく、まるで獲物を捕らえる野獣の唸り声。

「な!?」

 ユーノは反射的に振り返る。その目に飛び込んだのは、悪意の象徴とも言える――ラショウのトライク【レックスインフェルノ】。

凶悪な武装が鈍い輝きを放ちながら、迫り来る獲物を仕留めようとしている。

「ははは!!!」

「ラショウ! 禁止装甲を施したのか!?」

不敵な笑みを浮かべたラショウが、まるで勝利を確信したかのように吠えた。

「ふふ・・・・・・食らえぇぇ!!」

ラショウの動きと連動し、トライクの先端に取り付けられた巨大なドリルが唸りを上げる。鋭利な螺旋が一気にユーノへと迫り――

「ストレートドリルッッ!!!」

 瞬間、グリーンラベルに展開された魔力バリアが鋭く削られ、ユーノの表情が険しく歪む。

「ぐっ!!」

 だが、ラショウの攻撃はこれで終わりではなかった。もう一方のドリルが不気味に回転し、放物線を描くような軌道で迫り来る。

「スパイラルドリルッッ!!!」

 左右から迫る二本のドリル。回避はほぼ不可能、魔力防壁すらも崩壊寸前。だが、ユーノはギリギリまで冷静に状況を見極めていた。

「やめろー!! こいつッ!!」

「ははははははははははは!!!! いや、すまねーな!!! 手が滑ってお前のバイクの方にいっちまったぜ!!!」

悪意に満ちた嘲笑が、ユーノの耳に突き刺さる。だが彼は動じない。眉間に皺を寄せ、静かに赤いボタンへ指を添えた。

「くっ・・・・・・あまり調子に乗るなよ!」

そして、ラショウは勝ち誇ったかのように叫ぶ。

「はははははははは!!!! 全く運の良い奴だぜ!!!! だが、それも終わりだ!!! ツインドリルクラッシャー!!!!」

 怒号と共に二本のドリルが同時に放たれる。逃げ場はない――だがその瞬間。

「今だ!」

ユーノは口元を不敵に緩め、赤いボタンを押す。

「ブースト、ファイアーぁぁ!!」

ユーノの声が天地を震わせるように響いた。グリーンラベルに搭載された安全装置が解除され、封じられていた全エネルギーが解放される。

回転する魔力のフィールドが展開され、空間すら歪ませる勢いでラショウのドリルを弾き飛ばす。

「ぬぉ!?」

 ラショウの目が見開かれる。回避の判断が一瞬遅れ――レックスインフェルノのエンジンが引火。轟音と共に火柱が立ち上り、ラショウの雄叫びが爆炎に飲み込まれる。

「おああああああああああああ!!!!!!!!!」

 火炎の中、ラショウの野望は砕け散った。その瞬間を目撃した恋次とティアナは歓喜の声を上げる。

「よっしゃ!! やったぜユーノの奴!!」

「さすがですね。恋次さん、私達も行きましょう!!」

「おう!!!」

 ユーノの後に続く形で、二人は最後の難関を突破すべくアクセルを全開にする。疾風となった三台のバイクが、ついにゴールへの直線に飛び込んだ。

 

           *

 

 多くの観客、大会関係者、そして運営スタッフが息を詰めて見守る中――いよいよ、過酷な試練を乗り越えたレーサー達が帰還の瞬間を迎えようとしていた。

『さぁ、長く過酷なFBTも間もなく終わりの時です。果たしてトップのレーサーは誰だ!? おっと見えてきました!!!』

実況フラストレーション・マルタの声が最高潮に達する。彼が叫び上げたそのバイクの名は――

『来ました!! 【ステルス】です!!! 華麗なる変身と世紀の大逆転の末に今、第1位でゴールインッッ!!』

 稲妻の如き瞬速でゴールラインを突き抜けたのは、ユーノの駆る愛車――グリーンラベル。ランドマインエリアからの追い上げ、そしてラショウを打ち負かすという劇的な展開を成し遂げた彼の姿に、会場全体が歓喜と驚愕の渦に飲まれた。

「やったあああ!!!!」

「店長の優勝だぜ!!」

 観覧席の六課メンバーが誰よりも大きな歓声を上げる。彼らの声が、会場の歓喜の奔流に混じりながら、確かな絆の音色となって響き渡る。

『続きまして、第2位【俺、参上!号】!! 第3位【ヴィーナスクロス】がゴールッ!!』

 力尽きた表情ながら、恋次とティアナも見事にゴールへと辿り着いた。ヘルメットを脱ぎ捨てると、ユーノと共に互いにその健闘を称え合い、固く握手を交わす。

「二人とも、よく無事で」

「ったく。俺が優勝するはずだったのによ・・・おいしいところ持っていきやがって」

「おめでとうございますユーノ先生! あ、そうだ・・・・・・エリオは?」

 ラショウの妨害によって倒れた仲間の事が、ティアナの口から零れ出る。ユーノはそれに対し、柔らかな笑みを浮かべて静かに応える。

「心配ないよ。ランドマインエリアで直ぐにエリオの救助に向かった。応急処置をした後、その場で病院へ搬送してもらったよ」

 彼の言葉に、ティアナと恋次も安堵の息を漏らす。

「ユーノ君!!!!」

 その時、弾けるような声と共に、なのはがユーノの胸へと飛び込んできた。

「うわあああ!? なのは!」

 ユーノの首にしっかりと手を回し、人目も憚らず彼を抱きしめるなのは。その表情は、心からの喜びに輝いていた。

「やったね、ユーノ君!! 優勝だよ!! 急にいなくなるから心配してたのに、損しちゃった♪」

「ごめん、黙っていなくなったのは悪かったよ」

 少しばかり照れたようにしながらも、ユーノは優しく彼女を抱きとめる。そんな二人の姿を目にして、他のメンバーも次々と三人の下へ集まってきた。

「ティアもよくガンバったね!! すごかったよ!!」

「まっ、当然でしょうね!」

スバルはティアナの肩を叩き、笑顔でその健闘を称える。ティアナも少し照れたようにしながらも、どこか満足げに微笑む。

「すごくカッコよかったですよ、恋次さん!」

「まさに、男の中の男ですぞ!!」

「はははははは!! 見たか、これが俺の実力だ!!」

 はやてや金太郎に褒め称えられ、恋次は誇らしげに胸を張り、豪快に笑い飛ばす。

 そこへ、トーナメント優勝候補でありながらもリタイアを余儀なくされたフォーミュラーが姿を見せた。

「見事だったよ、ステルス。私の完敗だ」

「いえいえ、とんでもないですよ。僕らも貴方と戦えたことを誇りに思います」

 互いの健闘を称え、ユーノとフォーミュラーは固く握手を交わす。その握手は、激戦を潜り抜けた者同士にしか分かり得ない――純粋な敬意と友情の証だった。

 

『さぁ! 優勝者であるユーノ・スクライア選手に、トーナメントのトロフィーと優勝賞金が贈られます!!』

 表彰台の中央に立つユーノ。大勢の視線を浴びる中、彼は堂々と優勝杯を受け取る。そのトロフィーには、禍々しさすら秘めた宝玉――アンゴルモアが不気味に輝いていた。

「素晴らしい活躍おめでとう!」

「ありがとうございます」

 だが、その瞬間。背筋を逆撫でするような、ただならぬ殺気が辺りを包み込んだ。

「!!」

 刹那、ユーノは反射的にバリアを展開――直後、鋭い銃弾が空を切り、音を置き去りにして舞い飛んだ。バリアに守られた観客や大会主催者は、突如の襲撃に悲鳴を上げ、逃げ惑う。

「なはははははははははっは!! 賞金はこのオレがいただくぜ!!」

 高笑いを上げて姿を現したのは、ヘルズ・スカベンジャーズの首領ラショウ。手下達は銃器を手にし、完全武装で観客を威嚇する。

「ラショウ!! おのれ、どこまで卑怯な!!」

「みなさん、ここは私達に任せて直ぐに安全な所へ避難してください!」

指揮を取るはやてが、群衆を誘導しながら機動六課は即座にラショウ一味の制圧へと動き出す。

「無駄な抵抗はやめろ。貴様らは袋の鼠だ」

「今すぐに武装を解除して投稿しなさい。トーナメントが終わった以上、治外法権は適用されない」

 シグナムとフェイトが鋭く睨みつけるが、ラショウは血走った眼で狂ったように笑い飛ばす。

「はっ! お高く留まりやがって管理局の公僕が! 俺らは泣く子も黙るヘルズ・スカベンジャーズ! 誰よりも気高く、自由なバイカーギャングなんだよ!! さぁ、大人しく賞金をよこせええええ!!」

その瞬間、ユーノの手にした優勝杯が突如として光を放つ。

「なんだと!?」

金色に煌めく光が放たれ――

「な、なんだ!? ただの宝石じゃなかったのか!?」

主催者が顔色を変え、動揺の声を上げた。何も知らない観客達もざわつき始める。

まるで意志を持つかのように、アンゴルモアの宝玉がひとりでに宙を舞う。そして、漆黒のオーラが渦を巻きながら、まるで触手のようにラショウの胸元へと吸い込まれていく。

ラショウの心の奥底にある欲望が、アンゴルモアを引き寄せたのかもしれない――彼の手に渡った瞬間、それは目覚めるように反応した。

「ぐっ・・・・・・!! うおおおおお!?」

 激しい光の奔流がラショウを包み、周囲の空気が一変する。重く、禍々しく、まるで古代の災厄が甦ったかのような異様な雰囲気が広がる。

 その時、ラショウの胸元で淡い光を放っていたアンゴルモアの宝玉が、漆黒の渦を伴い彼の身体へと溶け込むように消えた。あたかもそれは、彼の心に潜む欲望を糧に力を解き放つ儀式のようだった。

「なんだ、この感覚は!? 力が――溢れてくる・・・・・・!!」

 そして次の瞬間、ラショウの姿は崩れ、巨大なティラノサウルスの姿を模したアンゴルモアモンスター、【AM-12】へと変貌した。

『ははははは!!! 何だか知らねーが、力が漲りやがる!! 踏み潰してやるぜ!!!』

 その巨体が地面を踏み鳴らすたび、大地が揺れ、振動が空気を裂く。観客席の一部が崩れ始め、周囲の建物にもヒビが入る。災厄そのものの姿に、観客たちは悲鳴を上げながら逃げ惑った。

「AM体になりやがった!!」

「そんなバカな!?」

突如として現れた災厄に、六課の面々は息を呑む。古代の王者の如き威圧感、暴虐の塊がその場を蹂躙する。

「うりゃああああああああ!!」

「でやああああああ!!」

スバルと浦太郎が機先を制して攻撃を仕掛けるが、AM-12はその巨体に似合わぬ素早さで二人の背後へと回り込む。

「うぇ!?」

(はや)い!!」

 次の瞬間、振り下ろされた尾が大地を叩き割り、二人を弾き飛ばす。

『残念だったな! 図体がデカいからって鈍いと思ったら大間違いだ!!』

 巨体に似合わぬ素早い動きで翻弄するAM-12は、勝ち誇ったように高笑いを響かせる。その不気味な笑声は、六課メンバーの焦燥をさらに煽った。

「この・・・ハーケンセイバー!!」

「アクセルシューター・アトランダムシフト!! ファイア!!」

フェイトのハーケンセイバーが唸りを上げ、なのはの射撃が鋭い軌道を描いて放たれる。しかし、鱗状の皮膚を持つAM-12はその圧倒的な防御力で全てを弾き返した。爆発音と共に衝撃波が辺りを揺らすが、その巨体は微動だにしない。

「くっ、固い・・・・・・!」

「魔法が通りづらい!?」

苛立ちを押し殺すフェイトとなのは。往年のエースである二人が放つ魔法攻撃――その一撃ですら、AM-12の鱗には爪痕一つ残せない。

「咆えろ、蛇尾丸!!!」

「我が音色の前にひれ伏せ!!」

状況を打破すべく、恋次と白鳥が斬魄刀を振り抜く。蛇尾丸が地を裂き、白鳥の音撃が震動を伴って響き渡るが、刃も音波もAM-12の鱗に阻まれたまま砕け散る。

『はっ! テメーらのへなちょこな攻撃なんざ、オレさまに効くかよ!! 次はこっちの番だぜ!!』

 嘲笑うかのように、AM-12の眼が不気味に光る。その双眸が次なる標的を見定めた――六課随一の火力を誇るエース・オブ・エース、高町なのは。

『喰らえええええええええ!!!』

その刹那、AM-12の巨躯が動いた。口元が裂け、鋭い爪を生やした腕を振り上げる。その爪先に宿る圧倒的な破壊力が、なのはへと振り下ろされた。

 

 ドン――!!

 地面が激しく揺れ、轟音が響き渡る。しかし、その爪がなのはに届くことはなかった。

「・・・・・・!?」

目の前には、魔法陣の光を放つラウンドシールドが展開されていた。そして、その盾を張ったのは――

「ユーノ君!!」

なのはが目を見開くと、彼女の前に立つユーノの姿があった。微動だにせず、盾を展開し続ける彼の表情には、確固たる決意が宿っていた。

「僕が見ている前でなのはを標的にするとはいい度胸だ。ラショウ・・・・・・いやAM-12、お前にはきついお灸を据えてやる」

ユーノの声が低く鋭く響き渡る。それまで荒れ狂っていたAM-12の巨体も、一瞬、息を呑むかのように静止した。その視線は、敵意と殺意を帯びながらも、どこか底知れぬ不安の色を滲ませていた。

 そんなAM-12を見据えながら、ユーノはゆっくりと懐から“ある物”を取り出す。それは、戦場には似つかわしくない――スプレー缶状の何か。

(さて、この魔法(チカラ)がどれほどのものか。試してみるにはちょうどいい機会だ)

心の中でそう呟き、ユーノは口元にわずかな笑みを浮かべた。

『あ? おいテメー、そんなもので何の真似のつもりだぁ!?』

AM-12は、自分を侮るかのようなユーノの行動に苛立ちを募らせる。その巨体を震わせ、今にも襲いかかろうと爪を振り上げた。しかし、ユーノは相手の威嚇に動じず、静かに相手を見据えた。

「真似じゃない。立派な魔法だよ。ただし、お前が生まれてから初めて遭遇する魔法だけどね」

 その声には、静かだが揺るぎない自信が滲んでいた。

次の瞬間、ユーノはスプレーを勢いよく噴射し始めた。霧のように散布された塗料が宙に広がり、漂う粒子が空間の中で滑らかに動き始める。彼の手の動きに応じて、塗料は幾何学的な模様を描き、徐々に形を成していく。それは、まるで空気の中に刻まれた魔法陣そのものだった。

解除番号(リリースコード)0575、解錠(アンロック)!」

 模様が完成した瞬間、塗料が鋭い光を放ち始めた。その動きは生き物のように滑らかで、魔力の波動が周囲の空気を軋ませる。空間全体が震える中、ユーノの表情には微塵の迷いも見られなかった。

「出でよ! 『大喰らいの影(ハンガーシャドウ)』!!!」

その掛け声と共に、魔法陣が炸裂する。そこから現れたのは――鋭い牙を剥き出しにした、黒い獣だった。

『な、なんだコイツぁ!!?』

 AM-12の叫びは、怯えと動揺に満ちていた。黒き獣は獲物を狙う猛禽の如く疾駆し、次の瞬間には、その鋭い牙をAM-12の左腕に食らいつかせていた。

『ぐあああああああ!!! 腕がぁあああああ!!』

力任せに振り払おうとするAM-12の巨体。その左腕は、黒き獣の一撃で無残にも千切れ飛んだ。

「あれって・・・召喚魔法?」

「ですが、あんな召喚魔法は見た事がありません!」

 驚愕の表情を浮かべる六課メンバー達。しかし、ユーノは動じることなく、ほんの僅かに口元を緩めると力強く声を張り上げた。

「さぁみんな! 今がチャンスだよ!」

その号令に、全員の士気が一気に跳ね上がる。ユーノが作り出した“反撃の一手”を無駄にするわけにはいかない。

「俺の必殺技、パート2!!」

「コメットフリーゲン!!」

「紫電・・・一閃!!」

 鬼太郎の斬撃が文字通り火を噴き、ヴィータの鉄球が雷鳴のように迸り、シグナムの剣閃が鋭い軌道を描いた。

『ぐああああああああああああああああああ!!!』

 怒涛の攻撃がAM-12の巨体を容赦なく撃ち抜く。その力の奔流に、AM-12は堪えきれず絶叫を上げ、全身が崩壊を始めた。

そして――爆発。

 吹き飛ぶ光の欠片と共に、アンゴルモアの瘴気が拡散し、元の姿となったラショウが地面に倒れ込んだ。

 

           *

 

 ユーノ達がチルクイトでアンゴルモアの回収とヘルズ・スカベンジャーズの討伐に成功した頃、ミッドチルダと相反する魂魄が住まう世界・・・――尸魂界(ソウル・ソサエティ)では、ある動きが起ころうとしていた。

 

           ≡

 

尸魂界(ソウル・ソサエティ)

瀞霊廷(せいれいてい) 一番隊 隊首室

 

瀞霊廷の中心、古来より堅牢を誇り続けた一番隊隊舎最奥の部屋――隊首室。その静謐(せいひつ)な空間は、時の流れすら封じられたかのように、物音一つなく張り詰めていた。

中央に鎮座するのは総隊長・京楽春水。その静寂を切り裂くかのように、廊下を一歩一歩踏みしめる音が響く。隊首室の扉が音もなく開かれ、一人の死神が姿を現した。

「御呼びでしょうか、京楽隊長」

膝を折り、頭を垂れる一人の女性死神。彼女の纏う漆黒の死覇装が、柔らかな光に照らされてなお、凛とした気品を放つ。

 京楽は穏やかな笑みを浮かべつつ、笠を軽く手で押さえる。その瞳はいつもの飄々とした色合いを残しつつも、鋭く光る覇気を帯びていた。

「急な呼び出しですまないねー。君の元にも情報は伝わっているとは思うけど、先日異世界【ミッドチルダ】にいる翡翠の魔導死神こと、ユーノ・スクライアクンと話し合った結果・・・・・・隊長格死神をもう一人現地に派遣することとなった。君はこの後すぐ現地で滞在中の阿散井恋次三番隊隊長らと合流してもらう」

話を聞き、女性死神の瞳に一瞬の驚きと緊張を宿す。

「はっ、仰せのままに!」

簡潔ながらも、力強いその返答に、京楽は満足げに頷く。

「向こうでも君の活躍に期待してるよ・・・――十三番隊・朽木(くちき)ルキア副隊長」

 

 

 

 

 

 

参照・参考文献

原作:久保帯人 『BURN THE WICH Ⅰ』 (集英社・2020)

 

 

 

ユーノのなんでも教室!

 

前回同様、某子供向け教育番組のマリオネットを思わせる造形のユーノ・スクライア人形が出て来るとコーナーが始まった。

ユ「やぁ、今日のユーノ・スクライア外伝はおもしろかったかな? やっぱり最後が主人公が大活躍してこその物語だと思うよね。ふふふ・・・・・・おっといけない、これ以上手前味噌だとまたやっかみを受けそうだから自重しとこうっと」

「今日は『ヘルズ・スカベンジャー』について勉強するよ。次元世界で最も有名なバイカーギャング集団、それがヘルズ・スカベンジャーズだ」

「次元世界のあちこちで暴走行為を行うだけならまだしも、資金調達の手段として主にレースチケットの転売や非ライセンス商品販売、時には強盗・殺人・誘拐だって厭わない凶悪極まりない連中だ」

「そんな組織を束ねる男が本編にも登場したラショウだ。性格は凶暴かつ凶悪。その一方で三度の飯よりバイクが好きだと公言する生粋のバイク野郎だ。ちなみに、彼がバイク好きになったのは小学生の時に買ってもらった子供用バイクに乗ってからだという。誰しもかわいい時期があったんだなー・・・・・・というわけで、今日はこの辺でおひらき。それじゃ、ごきげんよう♪」

 

 

 

魔導師図鑑ハイパー!

 

FBTも無事終了し、アンゴルモア回収に成功したその日の夜――仕事を終えたはやてが帰路に就こうと隊舎の廊下を歩いていた。

は「さて、無事にアンゴルモアも回収できたことやし・・・・・・帰って冷蔵庫でキンキンに冷やしたビールでぐいっと一杯やな♪」

 と、意気揚々と晩酌の事を考えていたそのとき。

 不意に背後から何かが接近したと思えば、素早くはやての口元を押さえつけて来た。

は「え、誰!? グゲェエエエエエ・・・」

?「悪党だよ」

 どこかで聞き覚えのある声だったが、はやての意識は朦朧とし、そのまま気を失った。

 やがて意識を取り戻した彼女が目を開けると――そこは薄暗くて奥行きも然程広くない小さな空間にいた。

は「うぅぅ・・・・・・なんや一体? 何があったんや?」

 状況が呑み込めない中、はやてが体を起こそうとした時だった。

は「っ!?」

体の倦怠感を覚え身の回りを確かめる。いつの間にか両手両足を魔力錠によって拘束され、身動きが取れない状態となっていた。

は「魔力錠!? なんやこれ!? これじゃ逃げられへん、一体誰がこんな事を!?」

?「ようやくお目覚めのようだな」

 その時だった。聞き覚えのある声が目の前から聞こえて来た。おもむろに視線を向ければ、悪魔染みた笑みを浮かべながら仁王立ちをする阿散井恋次がいた。

は「恋次・・・さん!?」

恋「ようこそ俺の仕返し部屋へ」

は「仕返し部屋って・・・何の冗談なんですか!? これも全部恋次の仕業なんですか!? 目的は何ですか!?」

 明らかに普通じゃない恋次の行動に動揺を隠し切れないはやて。恐怖に慄く彼女を見下ろしながら、恋次は悪党面を浮かべ自らの目的を語る。

恋「決まってんだろ。俺の気持ちをガン無視してバイクトーナメントに出場させた罰を受けてもらうんだ!」

 そう――無事にFBTが終了したタイミングで、恋次ははやてに仕返しを企てたのだ。

恋「ちなみに、既に一人は裁きを受けて天に召されたがな」

 そう口にすると、恋次は別件で仕返し対象とされ、見るも無残な姿となった男・桃谷鬼太郎の成れの果ての姿を見せつける。

 変わり果てた鬼太郎の姿を目の当たりにするや、はやては全身から冷や汗を流し、震える声で訴える。

は「こ、こんなの正気じゃあらへん! 確かにあれは少々強引やったと思いますけど・・・・・・仕方がなかったんや!!」

恋「言うに事欠いてまだそんな言い訳が通用する気でいるのか? おまえにはたっぷりと仕返しをしないとな・・・・・・死神舐めるんじゃねーぞチビダヌキ!!」

は「い、いやあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

八神はやて、23歳。

彼女は死神・阿散井恋次の手によって、心身ともに削ぎ落とされるのであった。

 

 

 

 

 

 




登場人物
フォーミュラー・ジャクバーン
声:野田圭一
FBTの優勝候補の一人で、バイクレーサー会のカリスマ。幾多の次元世界で開かれるバイクトーナメントで優勝してる凄腕のバイクレーサー。容姿端麗でファンからも人気が高い。また、常に正々堂々とした勝負を好み、勝負においては全力全開で挑んでくる。搭乗マシンはシアンカラーをベースとした「ブラッシャベリア」。
ラショウ
声:武内駿輔
次元世界で最も有名なバイカーギャング「ヘルズ・スカベンジャーズ」の首領。時空管理局からは指名手配されているが、資金調達の為に治外法権が適用されているFBTには姿を見せる。
フォーミュラーとは違い、勝つためには手段を選ばない冷酷且つ残忍な性格で、レースで敵を破壊したり、禁止装甲を施し、ユーノを苦しめるも、逆にユーノの策にはまりリタイアとなるが優勝賞金を強奪せんと部下たちを率いて表彰式を強襲した際、アンゴルモアの力によってAM-12と化す。搭乗マシンは重装甲を施したトライク「レックスインフェルノ」。
・AM-12
ヘルズ・スカベンジャーズ首領のラショウとアンゴルモアが融合して誕生したアンゴルモアモンスター。
巨大な恐竜の様な姿をしており、その体格に見合ったパワフルで強力な攻撃を繰り出す一方、動きも機敏である。体の表面は鱗状の皮膚で覆われており、通常の魔法攻撃が効きづらいだけでなく、死神の斬魄刀も通しにくい頑丈なものとなっている。
変身直後は自身の能力で六課メンバーからアドバンテージを得ていたが、ユーノが使った「大喰らいの影」を受けて左腕を食い千切られた事で形勢逆転。最後は六課メンバーの一斉攻撃を受けて倒された。
フラストレーション・マルタ
声:飛田展男
常にハイテンションな実況担当。FBTを始め、次元世界のあらゆるレース大会に現れる謎の男。
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