ユーノ・スクライア外伝   作:重要大事

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第47話「彼方なる強さ」

新歴079年 8月11日

第244観測指定世界

 

機動六課は散らばったアンゴルモアの回収を使命とし、広大な異世界を捜索していた。その先鋒を務めたのはエリオ、キャロ、鬼太郎の三人。彼らはアンゴルモアの影響で暴走するAM-15、巨大オオトカゲ・ギガントバジリスクとの対峙を余儀なくされる。

戦場は岩山に囲まれた灼熱の溶岩地帯。大地は熱風で焼かれ、砂塵が舞い踊る。足元の岩肌は毒液で溶け落ち、不規則な起伏を形成している。硫黄の臭いが空気を満たし、その苛烈な環境が三人の体力を蝕んでいく。

ギガントバジリスクは、あらゆるものを溶解する猛毒の体液を吐き出し、見た者を瞬時に石化させる光線を繰り出す。その巨体が揺れるたび、岩盤が震え、溶岩が裂け目から滲み出る。三人は巧みに身を翻しながら、連携を図った。

「でやあああああ!」

エリオはルフトメッサーを手に、鋭い突きを繰り出した。その刃はギガントバジリスクの横腹を掠め、鱗の一部を削ぎ落とすに留まる。裂けた傷口からは毒液が滴り、地面をじゅっと溶かして黒煙を上げた。エリオの額には汗が滲み、息を整えつつ再び構えを取る。

激昂したギガントバジリスクは長大な舌を振り(かざ)し、反撃を試みる。空を裂くその音と共に、舌先がエリオへ迫る。彼はストラーダの矛先で受け止めたが、凄まじい衝撃が腕を襲い、地面に足を取られそうになる。

「フリード、ブラストレイ! ファイア!」

キャロがフリードの力を借り、炎の弾丸を放つ。火炎弾はギガントバジリスクの顔面をかすめ、焼け焦げた皮膚から異臭が立ち昇る。痛みに舌を引っ込めた怪物は、一瞬の隙を生じた。

「おらあああああ!」

すかさず、鬼太郎が烈火を伴う剣閃で上空から斬りかかる。その鋭さはギガントバジリスクの舌を裂き、鮮血が岩肌を染めた。

「キャロ! こいつの動きを止めてくれ!」

「はい!」

鬼太郎の指示を受け、キャロは神器【氷龍帝の権杖(フュージョンライズ・ジェーズル)】を起動させる。ペンダントの待機状態から放たれたその力は、先のキラム戦で彼女が得た新たな力を解放するものであった。

「いくよ、フリード! エカテリーナ! 竜魂融合!!」

呼応するように現れた合体飛竜ハイメ。その翼が巻き起こした風は戦場を駆け巡り、熱気を払うと共に、凍てつく冷気でギガントバジリスクの動きを封じた。

「ハイメ、フロストブレス!」

冷気が溶岩地帯をも凍てつかせ、戦場の様相を一変させる。その隙をついて、鬼太郎とエリオが同時に動き出した。

「俺の必殺技・・・パート2´!」

「一閃必中!!」

〈Messerangriff〉

炎を帯びた剣閃と雷撃を宿した突撃が交錯し、ギガントバジリスクを貫く。断末魔の咆哮と共に、その巨体は崩れ落ち、やがて素体のトカゲへと還元される。その瞬間、アンゴルモアが空中に放出された。

 

「へっ。ざっとこんなもんだぜ」

鬼太郎が烈火を肩に担ぎながら、不敵な笑みを浮かべる。

「お疲れ様です、鬼太郎さん。エリオ君もお疲れ様」

キャロが静かに声を掛けると、エリオも小さく頷きながら「キャロもお疲れ」と、返事を返す。

「それにしても、この短い時間ですっかり自分の力にしてるね」

エリオの視線が、新たに手にした【氷龍帝の権杖(フュージョンライズ・ジェーズル)】と、そこから生み出された飛竜ハイメに向けられる。その目には尊敬と羨望の色が宿っていた。

「私はこの子の力を借りているだけだよ。どんな形でも、エカテリーナとこうして戦えることが私は嬉しいんだ」

キャロは柔らかな笑みを浮かべながら、権杖を両手で握りしめる。その背後では、ハイメが静かに佇み、周囲の熱気を断ち切るように冷気を漂わせていた。

その後、エリオは、機動六課へ任務の進捗を報告する。

「ライトニング3から機動六課司令室へ。AM-15の沈黙を確認。アンゴルモアの回収を行い次第、直ちに帰還します」

『こちら司令室。了解や。ま、今回の相手が前回のキラムや魔導虚(ホロウロギア)とかに比べればずいぶんと楽だったみたいで何よりや』

と、はやての弾んだ声が通信越しに聞こえる。

「まったくだぜ。あんまり弱っちーと、準備運動にすらならねーぜ」

物足りない様子で鬼太郎が気楽に言い放つが、キャロがすぐさまそれを(たしな)める。

「鬼太郎さん、そんなこと言うものじゃないですよ。何も無いのに越したことありません」

しかし、その穏やかなやり取りが束の間の平穏を与えるかに思えた矢先、キャロのデバイスが鋭い警告音を発する。

「ッ! 高エネルギー反応! ものすごい早さでこっちに向かってます!」

キャロの叫びが空気を引き締める。

次の瞬間、三人の元へ飛来したのは凄まじい衝撃波。その土煙の中から現れたのは、黄金甲冑に身を包んだ不気味な怪人だった。

『ふふふ・・・』

エコーが掛かったような異様な笑い声が静寂を切り裂く。

「なんだ・・・あいつは?」

鬼太郎が烈火を構えつつ問いかける。

「この敵意・・・それに殺気・・・ただ者じゃありません」

エリオが直感的に察したその危険な気配に、体が硬直する。

司令室の映像越しにその姿を目撃したなのはとヴィータも、一瞬で顔を強張らせる。

「おいなのは、あいつは!!」

「うん、間違いないよ。あの時の・・・・・・!」

なのはの声に焦燥が滲む。ユーノもまた、過去に何度か相対した経験から敵の正体を即座に看破し、切迫した声で警告を発する。

「三人とも! そいつは危険だ! 今すぐ戦線離脱するんだ!」

『しかしユーノ先生! まだアンゴルモアが!』

「そんなものより君たちの命の方が大切だ!! 命令だ早くしろ!!」

いつになく張り詰めたユーノの声が通信越しに響き、ただ事ではない状況を物語る。鬼太郎は瞬時にその危機感を察し、二人に冷静な判断を促した。

「店長がああ言ってるときはマジだ。こいつは俺が引き付けるから、お前らは先に行け」

「鬼太郎さん!」

「そんな・・・おひとりでは危険ですよ!?」

キャロが心配を隠せず声を上げるが、鬼太郎はあえて軽口を叩きながら、自身の覚悟を示す。

「心配すんじゃねぇ。お前らとは鍛え方が違うんだ」

明らかに強がりと分かるその笑みにも、年長者として鬼太郎の揺るぎない意志が滲み出ていた。エリオとキャロもその覚悟を尊重し、やむを得ず離脱を決断する。

「キャロ」

「うん。わかった」

それを蔑ろにするほど、二人も薄情ではない。キャロは、ハイメに指示を送る。

「ハイメ。行って」

《ああ。わかった》

ハイメがその巨体を軽々と持ち上げ、空中へ舞い上がる。灼熱の地上から遠ざかりながら、エリオとキャロは鬼太郎の姿を振り返るが、彼は烈火を構えたまま微動だにしなかった。

鬼太郎は一息吐くと、目の前の黄金甲冑の怪人に向き直り、愛刀を振りかざした。

『おや。あなた一人では少々役不足ではないないでしょうか?』

挑発とも取れる怪人の低い声が耳を刺す。

「そうかよ。けどよ、そういう科白は・・・・・・」

刹那、烈火が燃え上がり、鬼太郎は力強く振りかぶった。

「こいつを喰らってから言うことだぜ!!」

刀身から解き放たれた火炎が奔流となり、爆炎が瞬く間に戦場を包み込む。辺りは瞬時に火の海と化し、焦熱地獄の如き熱気が全てを飲み込む中、鬼太郎は怪人の隙を突いて瞬歩で駆け抜ける。

「脱兎の如くッ!!」

全力で逃走を図り、アンゴルモアを奪取する鬼太郎。その背後では、怪人が悠然と炎の中に佇んでいた。

『時間稼ぎのつもりでしょうが・・・・・・私には通用しません』

怪人の言葉は静かだが、その底知れぬ力を感じさせる。

 

「へっへー。どうだ、俺の超ファインプレーは!」

鬼太郎は烈火を肩に担ぎ、我ながら最善の策だったと自賛しながら瞬歩で移動を続けた。その姿勢には、漲る自信と安堵が混じり合っていた。

やがて、瞬歩で移動し続けること数分。前方を飛ぶハイメに追いついた。

「おーい! お前らー! 俺だー!」

「あ、鬼太郎さん!」

「だいじょうぶでしたか?」

ハイメの背中に乗りながら地上を進むエリオとキャロが、鬼太郎の声に振り返る。その顔には心配の色が浮かんでいる。

「この通りだ! アンゴルモアもこの手にあるぜ!」

鬼太郎は誇らしげに封印用のケースを掲げて見せた。しかし、その瞬間、上空に異変が起きる。

「な・・・んだ・・・・・・!?」

暗雲が急速に渦巻き、不吉な気配が辺りを包む。

次の瞬間――稲妻が轟音と共に鬼太郎の頭上へと直撃する。

「ぐああああああああ!」

「「鬼太郎さん!!」」

電撃をまともに受けた鬼太郎は全身から湯気を上げ、その場に崩れ落ちた。ケースに収められていたアンゴルモアが転がり出る。

「キャロ!!」

「ハイメ、戻って!」

キャロが鋭く叫ぶと、ハイメは翼を翻し急旋回。瞬時に地上へ降下し、負傷した鬼太郎とアンゴルモアの回収を目指した。

「鬼太郎さん!!」

エリオは鬼太郎に駆け寄り、彼を抱え起こす。

「しっかりしてください!」

エリオの声が切迫した響きを帯びる。

「きゃああ!」

だがその時、突如としてキャロの悲鳴が耳を裂いた。

振り返ったエリオの目に飛び込んできたのは、黄金甲冑を纏った怪人がキャロを鷲掴みにし、彼女の手からアンゴルモアを強引に奪おうとしている光景だった。

『それを大人しくこちらへ引き渡して頂きましょうか』

口調は丁寧だが、低く冷酷な声が場を支配する。

「キャロ!!」

エリオが叫ぶも、キャロは苦しげに顔を歪めながら、それでも必死に声を振り絞った。

「う・・・・・・エリオく・・・ん、逃げてぇぇ!!」

彼女の声は、必死にパートナーを守ろうとする覚悟そのものだった。

《貴様ぁぁ!! キャロから離れろぉぉ!!》

その瞬間、ハイメがキャロの窮地を察し、冷気を纏った翼を大きく広げた。鋭い冷気の塊が怪人に向かって解き放たれる。しかし、怪人は瞬間移動でその攻撃を易々と回避。冷気はただ周囲の地面を凍結させるに留まった。

《思ったよりも(はや)いな・・・・・・だが、これで終わりと思うなよ!》

ハイメは再び翼を振り翳し、冷気の奔流を怪人の移動先へと放つ。凍てつく空間が逃げ場を奪うかに思われたが、怪人は不敵な笑みを浮かべるかのような雰囲気を醸し出し、その場全体に目に見えない圧力を放ち始めた。

空間が歪み、ハイメの冷気は霧散していく。その圧力は単なる重力ではない――見る者の心を直接締め付けるかのような威圧感が辺りを覆っていた。

《な・・・・・・なんだ、この力は・・・・・・!》

ハイメが僅かに後退する。怪人の甲冑が光を吸い込むように不気味に輝き始めたのだ。さらに、怪人は手を掲げると、周囲の空間から何かを吸い取る異常な現象を引き起こした。

一瞬の隙を突き、ハイメは再度冷気を放つ。しかし、その攻撃も甲冑に触れた途端に霧散し、力を失った。

《バカな・・・・・・私の力が、封じられるだと!?》

到底信じ難い事態にハイメの声が驚愕に震える。

その刹那、怪人の背後に突然炎の球体が出現する。それは怪人の意志に呼応するかのように膨張し、周囲の空間を歪ませるほどの熱を放ち始めた。

『終わりです』

怪人が淡々と言葉を紡ぐ中、圧倒的なエネルギーが具現化し、灼熱の塊がハイメを襲う。

《これ以上は無理か・・・・・・!》

ハイメは翼を広げ、冷気のバリアを全力で展開する。その冷気は炎を押し返そうとするが、火球はそれを貫き、激しい爆発音と共に彼を直撃する。

《ぐあああ・・・・・・おの・・・れ・・・》

火球は単なる熱エネルギーではなく、ハイメの力そのものを蝕む性質を帯びていた。それにより、ハイメは融合が強制的に解除され、フリードの姿へと戻り気絶してしまう。

「フリード!! 貴様よくも!!」

怒りを滾らせたエリオが、烈火の如き勢いで黄金甲冑の怪人へと接近する。

〈Sonic move〉

エリオの動きは音速を超え、怪人の眼前に迫る。しかし、怪人はその攻撃を右手の甲で容易く受け止めた。

「な・・・・・・!」

『若いとは血気盛んという事だ。しかし、時に愚直さは冷静な判断を鈍らせる』

怪人の冷笑が響くと同時に、周囲に砂嵐が巻き起こる。その圧倒的な力によってエリオは後方へ吹き飛ばされ、大地に叩きつけられる。

「ぐあああああああ!」

砂嵐の一撃を受けたエリオは、その場で動けなくなる。

「エリオ・・・くん・・・!」

キャロが必死に呼びかけるが、怪人は彼女に冷酷な視線を向ける。

『これでプレイヤーの数は二人です。さて、あなたにもそろそろこのゲームから退場してもらいましょうか』

怪人はキャロの顔を鷲掴みにし、彼女の手から希望の力を無理やり引き剥がそうとする。

「う、うああああああああ!」

『アンゴルモアはただの力ではありません。それを利用することで、新たな秩序が生まれるのです。あなた方には到底理解できないでしょうがね・・・・・・』

怪人は冷たく嗤い、その声音には無慈悲な嘲りが滲んでいた。キャロの手から希望の力を引き抜きながら、さらに続ける。

『これもその一環――全ては新たな世界の礎となる。だからこそ、無駄に抗う必要はありませんよ』

「きゃ・・・ろ・・・・・・」

辛うじて意識を保っているエリオは、悲鳴を上げるキャロを助けようと震える手を伸ばす。しかし、その手は空を切り、力尽きた彼はついに意識を失う。

キャロもまた、希望の力を完全に奪われ、疲弊しきった体が地面へ崩れ落ちた。黄金甲冑の怪人は満足げにアンゴルモアを手中に収めると、再び嗤う。その声は戦いを無意味だと断じる冷酷な響きを帯びていた。

『これにてゲームオーバーです。私としてはもう少し歯応えある敵と戦いたかったのですが、些か残念です』

悪しざまに三人を罵る言葉を残し、目的を果たした怪人はその場を後にした。

 

           *

 

次元空間 時空管理局本局 医療施設

 

黄金甲冑の怪人に敗北した三人は、ユーノ達に回収され、本局の医療施設へと運ばれた。キャロは深い眠りにつき、シャマルが真剣な面持ちで治療にあたっている。

その傍にはライトニング部隊の隊長であるフェイト、軽傷で済んだエリオ、そして鬼太郎が立っていた。

「シャマル先生・・・・・・キャロは・・・」

おもむろにエリオが口を開く。その不安げな声に、シャマルは厳しい表情で答えた。

「精神力がとても弱まってるわ。前回、なのはちゃんが受けた攻撃と同じ症状ね」

シャマルはなのはが過去に受けた精神攻撃のデータと照らし合わせながら説明を続ける。

「じゃあ直ぐに治るんだよな!」

鬼太郎が力強く問うが、シャマルの表情はさらに険しくなる。

「それが・・・そうでもないのよ」

「あの、それってどういうことですか?」

フェイトが一抹の不安を押し隠せず、シャマルに問いかけた。シャマルは深い眠りに就いているキャロの顔を一瞥し、溜息を吐く。

「キャロの状態は、物理的な傷以上に精神的なダメージが大きいの。原理は不明だけど、あの黄金甲冑の怪人が使った精神攻撃は、“希望の力”を根こそぎ奪うものよ。希望の力を失ったことで、キャロの心は譬えるなら光の届かない海底にいるようなものね」

シャマルは苦々しげに語りながらキャロを見つめる。その表情には医者としての無力感が滲み出ていた。

「なのはちゃんの場合は、精神的に成熟している分、回復が早かったし、ユーノ君という精神的支えがすぐ傍にいたのも大きかった。でも、キャロの場合は違う。まだ14歳の彼女には、それを補うだけの内的な強さがまだ育ちきっていないの。だからこそ、回復には時間がかかるわ」

キャロのベッド脇に置かれたケリュケイオンもまた光を失い、彼女の心情をそのまま映し出しているかのようだった。

「じゃあ、キャロはこのまま目を覚まさないってことも?」

その問いにフェイトとエリオは愕然とする。シャマルは一段と険しい表情で答えた。

「私にもまだわからないわ。とにかく、今は最善を尽くすわ。幸いユーノ君が別ルートで治療法の解明に乗り出してる。彼の叡智と情報網を信じましょう」

シャマルの言葉には、医者としての悔しさとユーノへの期待が入り混じっていた。その場の空気が重く沈む中、エリオは項垂れたまま部屋を出て行く。

「エリオ・・・」

フェイトが心配そうに彼の背を追うが、鬼太郎が肩に手を置いて首を振った。

「今は・・・・・・そっとしといてやれ」

「鬼太郎さん・・・・・・」

「アイツは、アイツなりに責任を感じてんだ。ずっと一緒に戦って来た大事なパートナーを守れなかったんだからな」

 

暗い廊下――エリオは拳を握りしめたまま歩き続け、やがて壁に拳をドンと叩きつける。その音が廊下に響き渡る。

(僕のせいだ・・・・・・僕がもっと強かったら・・・・・・キャロは・・・・・・!)

悔し涙が彼の頬を伝う。その脳裏には、屈託のないキャロの笑顔が浮かんでいた。

これまでにも敗北の味を知っていたエリオだが、それはあくまで“勝てなかった”という悔しさに過ぎない。しかし、今回ばかりは違った――。

命を奪われるかもしれないという恐怖。そして、大切なパートナーを守れなかったという絶望。それが心の奥底に鋭い棘のように突き刺さり、どれだけ振り払おうとしても消えることはなかった。

 

           ◇

 

第1管理世界「ミッドチルダ」

ミッドチルダ中央南駐屯地内A73区画

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 小会議室

 

一夜が明け、機動六課の各隊長が定例会議のため一堂に会する。小会議室には、緊張感の漂う空気が張り詰めていた。

「この正体不明の黄金甲冑の怪人・・・・・・高町隊長とヴィータ副隊長を捕らえ、今回はエリオ達を襲撃したのち、アンゴルモアを奪取した。さて・・・・・・どえらい事になってしもうた」

腕を組みながら渋い表情で話すはやて。その言葉に、なのは、フェイト、シグナムは険しい表情を浮かべる。一方、ヴィータは苛立ちを抑えきれず、机を強く叩いた。

「ほんで、スクライアアドバイザー。敵の目星はついたんか?」

「確証はまだ持てていないが、敵の正体は【ドーパント】と呼ばれる怪人だと推測できる」

「ドーパント?」

なのはが聞き慣れない単語に首を傾げる。ユーノは手元の端末を操作し、昨日中に収集した映像資料を投影した。

映像には、USB型の特殊なアイテムが映し出されている。ユーノはその道具について説明を始めた。

「『ガイアメモリ』と呼ばれる道具を用いることで、人間を様々な能力を持った怪人に変貌させる途轍もなく危険な力だ。最近、裏世界で急速に流通し始めてる。厄介な代物さ・・・下手な古代遺物(ロストロギア)よりもよっぽどタチが悪い」

「そんな危険な力なんだ」

一堂が真剣な表情で資料を見つめる中、ユーノはさらに映像を切り替える。金色を基調とした特殊なガイアメモリが表示され、その名と特性が説明された。

「ガイアメモリの中でも特に黄金の装飾を施されたメモリは、通称『ゴールドメモリ』と呼ばれる。これは毒性が強い一方で、他を圧倒するだけの強大な力を齎す。あの黄金甲冑の怪人は十中八九ゴールドメモリを使用しているとみて間違いない」

「そんな奴にどうやって対抗すりゃいいんだよ。第一、そいつがアンゴルモアを奪ってどうしようっていうんだ?」

苛立ちを隠せないヴィータが声を荒げる。その指摘は、誰もが抱いていた疑問を代弁していた。

「情報が少な過ぎるから敵の目的まではわからない。ただ、ガイアメモリを使って人を傷つけるような相手が善良な目的で使用するとは到底考えられないね」

「違いあらへん」

はやても深く同意の意を示す。その言葉に場の空気はさらに重苦しく沈んでいった。

 

その頃、エリオは未だ目覚めぬキャロの回復を祈りつつ、隊舎の裏で木刀を振り続けていた。額からは汗が滴り、呼吸は乱れている。それでも彼は一心不乱に鍛錬を続けた。振り下ろすたびに、木刀が風を切る音だけが静寂を切り裂く。

「それぐらいにしたらどうだ?」

不意にかけられた声に、エリオはハッとして振り返る。視界の先には恋次の姿があった。

「恋次さん」

エリオが名を呼ぶと、恋次は腕を組みながら一歩前に出る。その瞳には、エリオの疲弊を気遣う色が滲んでいた。

「無理をしても意味がないぞエリオ」

いつになく隊長らしい台詞を口にしながらも、その声にはどこか柔らかさがあった。

「仰る通りです」

エリオは静かに答えるが、その目は燃え続ける意志を宿し、まだやれるという気持ちを雄弁に語っていた。それを見た恋次は、思わず溜息を吐く。

「ったく、本当にそう思っているなら同じ科白を何度も言わせんなって」

「すみません」

エリオは深々と頭を下げた。恋次はその姿を一瞬見つめた後、おもむろに斬魄刀を鞘から抜き放つ。

「どうだ? 一つ剣を交えてみないか?」

「え・・・恋次さんが稽古をつけていただけるんですか?」

驚きと期待、そして僅かな不安がエリオの心に浮かぶ。普段の訓練でも手加減のない彼らの指導だが、個人的な訓練、それも百戦錬磨の死神長から直々に指導を受けるなど想像だにしなかった。

エリオの戸惑いをよそに、恋次は口元を僅かに緩めて言葉を続けた。

「稽古じゃねぇ。剣を交えるだけだ。そこから何かを掴み取るかどうかはお前次第だ」

その言葉はまるで試練の宣告であり、同時にエリオの覚悟を試すような挑発でもあった。

 

やがて、双方が戦う準備を整える。恋次は解放前の刀を肩に乗せ、対面するエリオの姿をじっと見つめた。その手にはストラーダが握られている。

「さぁ。実戦だと思ってどこからでもかかって来い」

恋次が挑発的に呼びかける中、エリオはストラーダを構えた。しかし、その額からは汗が滲み、どこか緊張した様子が伺える。シグナムやフェイトとの本気の模擬戦では感じたことのない独特の圧力が、恋次から放たれていた。死神としての凄み、霊圧、そして戦士としての厳然たる存在感がエリオの五感に訴えかけ、彼を膠着させていた。

「来ないのか? ならこっちから行くぞ!」

恋次が肩に乗せた斬魄刀を下ろした瞬間、まるで雷のような速度で踏み込む。そのスピードに目を見張る間もなく、恋次は唐竹割りを仕掛けた。

(はや)い・・・!)

エリオは驚愕しながらもストラーダを掲げ、なんとかその刃を受け止める。しかし、受け止めた瞬間に恋次の斬撃の重さが全身にのしかかる。恋次よりも体格の小さなエリオは、歯を食いしばりながら耐えるものの、恋次の一撃はそれだけでは終わらなかった。隙を突いて、彼はエリオのがら空きの下半身に強烈な蹴りを叩き込む。

「ぐぁ・・・」

エリオは苦痛に顔を歪めながらも、恋次を睨む。その様子に恋次は冷静に注意を促した。

「剣しか持ってないからってそこに注意を向けすぎるのはマズいぞ。今のみたいに蹴られたりするからな」

「はい・・・!」

額から汗が滴り落ちる中、不覚を取ったエリオだったが、力強く立ち上がる。その姿に恋次は思わず笑みを浮かべる。

「ほう、並みの死神ならあれで終わってたところだがな」

「僕は強くならなければならないのです。大切な人を守るために!」

その言葉を受けた恋次は、剣を両手で構え、エリオの攻撃を正面から受ける構えを取った。

「来い、エリオ!」

「でやああああああああ!」

エリオは勢いよく踏み込み、ストラーダを振り下ろす。しかし、恋次はそれを軽々といなし、エリオの体勢を崩した。その隙を見逃さず、恋次は再び剣を両手で振り下ろす。

咄嗟にエリオはストラーダで受け止めるが、先ほどとは違い、全体重を乗せた恋次の一撃は圧倒的な威力だった。

「残念だぜ。さっきと同じ結果に終わっちまうとは」

同じ轍を踏むエリオに恋次が落胆の声を漏らしながら、再び下半身に蹴りを叩き込もうとしたその瞬間――

「ストラーダ!!」

〈Thunder Barrier〉

エリオは全身に電気を纏う防御魔法「サンダーバリア」を展開。恋次の蹴りを電撃で弾き返した。

「狙ったのか!」

「はい!」

恋次が面食らう中、エリオは得意げな表情を浮かべ、地面を強く蹴って空高く跳躍した。

〈Thunder Slash〉

「でやああああああああ!」

ストラーダの先端が激しく火花を散らし、蓄えたエネルギーを解き放つ準備を整える。エリオは渾身の力を込め、一太刀を恋次に振り下ろした。

恋次は不敵な笑みを浮かべると、振り下ろされた一撃を受け止め、力技でエリオを薙ぎ払った。

「見事だったぜ。次からは多少本気で行くからな」

「お願いします! うおおおおおおおおおおおおおお!」

こうして、恋次とエリオによる剣と槍の激しい戦闘がしばらく続いた。

 

しばらくして、戦闘が終わった。結果はエリオの完敗だった。

キャリアの違いもさることながら、死神と騎士では強さのベクトルそのものが異なりすぎる。エリオもまた、普段の恋次との気さくな関係から、彼をどこか侮っていた節があった。しかし、今日という日はその慢心を完膚なきまでに叩きのめされた。

「ハァ、ハァ、ハァ・・・」

息を荒げ、地面に仰向けに倒れるエリオ。その姿を恋次は剣を足元に突き刺した状態で見下ろしている。

「どうだ? へし折ったりヒビが入ったりしないように剣を振るったつもりだが?」

「打ち身程度・・・です。支障はありません・・・」

ゼイゼイと息を吐きながらも答えるエリオに、恋次は片眉を上げて笑みを浮かべた。

「ま。俺なんかよりなのはの方がえげつねーもんな!」

「あははは・・・・・・」

エリオは苦笑いを浮かべながらも、正直なところどちらも「えげつない」と思っていた。体中に走る痛みを堪えながら、ゆっくりと体を起こす。

「やはりすごいですね。なんで・・・」

「なんでそんなに強いかっていう質問には上手く答える自信はねーな。俺は単に戦士としての才能を持っていただけだからな」

「戦士としての才能・・・」

その言葉に、エリオは思わず耳を傾ける。

「だが、エリオには向いているな。俺みたいな戦い方が」

「そう・・・なんですか?」

「あぁ。正規の訓練を受けた奴はどうしても一つの武器で戦うことに集中しちまうが、それが良い事とは俺は思わねぇ。武器を攻撃手段の一つでしかないと割り切って、手足までも使った戦闘方法こそ実戦で役に立つはずだ。まぁ、泥臭い野良犬向きの戦法ってやつだな。品行方正な騎士様には邪道に思えるかもしれねーが」

「そんなことありません! とても勉強になります。今日はありがとうございました、恋次さん」

泥だらけの顔でエリオは頭を深く垂れた。恋次は剣を持ち直しながら、エリオの戦いぶりについて言葉を紡ぐ。

「あの上段からの攻撃はなかなか良かったぞ。ただ、あそこからどうするかまで考えておいた方がいいな」

「はい! そうします!」

エリオは目を輝かせて答える。その姿に、恋次は微笑を浮かべながら彼を見送る。エリオが泥を落としに寮へ戻っていく背中を見届けた後、恋次はおもむろに声を上げた。

「こそこそしてねーで出て来いよ」

すると、陰で様子を見ていた吉良が姿を現し、ゆっくりと恋次に近づく。

「珍しいね。君が個人稽古なんて」

「稽古じゃねーよ。少し歯応えのあるやつと戦ってみたくなっただけだ」

「で、成長の見込みはあるかい?」

吉良が静かに尋ねると、恋次は渋い表情を浮かべて率直な答えを返す。

「ないな。アイツがどんなに努力しようと戦士としての才能はない。俺や一護みたいにはなれねぇ。そもそもここにいる連中はどいつもこいつも戦い方が小奇麗すぎるんだよ」

「無理もない。彼らは根っからの戦士ではない。人命救助を最優先とする国家公務員みたいなものだ。敵を制圧するにしても、魔法には非殺傷性設定があるからね」

「それな。俺らには到底理解できねーシステムだぜ」

恋次は苦笑しながらも、どこか腑に落ちない様子を見せる。(ホロウ)との戦いを生き抜いてきた彼にとって、「傷つけない制圧」を旨とする管理局の方針は異質であり、未だに馴染めないものだった。

しかし、そんな恋次の口から、意外な言葉が漏れる。

「だがよ吉良。才能による限界はあっても経験による限界はねぇ」

その言葉に吉良は目を丸くし、すぐに笑みを浮かべた。

「君もずいぶんと優しい性格になったものだね」

「バーカ。俺は昔から慈悲深いんだよ。エリオなら、きっかけさえありゃ一皮剝ける。俺はそう思うぜ」

 

恋次との訓練を終え、泥だらけの顔を軽く拭いながら寮から隊舎へ戻る途中、エリオは心中で決意を固めていた。

(強くなるんだ・・・今日よりもっと、昨日よりずっと・・・・・・必ず強くなって見せる。その為にも僕は――)

脳裏には、キャロの屈託のない笑顔が浮かぶ。その笑顔を守るため、どんなに苦しい鍛錬も乗り越える覚悟を新たにする。そんな彼の視線の先に現れたのは、ユーノだった。

「ユーノ先生・・・・・・」

目の前の憧れの人物に気づき、エリオの歩みが止まる。ユーノは何かを考え込むように立ち尽くし、煙管らしきものを加え、静かに煙を吹かしていた。その光景は普段の柔和な彼とは違う、一種の渋さを感じさせるものだった。

エリオは拳を握りしめ、意を決して駆け寄る。

「ユーノ先生!」

「ん?」

呼びかけに気づいたユーノが振り返り、穏やかな笑みを浮かべる。

「やぁエリオ」

「お疲れ様です。あの・・・タバコお吸いになるんですか?」

エリオは意外そうな表情を浮かべながら問いかける。ユーノが喫煙者であるとは到底想像できず、ややショックを受けている様子だ。

「あぁ、これはタバコじゃないよ。煙が出るレロレロキャンディさ」

言うと、ユーノは加えていたキャンディを取り出して見せる。その答えに、エリオはぽかんとした表情を浮かべた。

「いやー、ハードボイルド映画じゃ渋い男はみんなタバコ吸ってるでしょ? でもどうにもあの臭いが苦手でね。なのはにも『タバコ臭いユーノ君は嫌い』とは言われたくないからね。カッコつけたくて煙管だけ持ってるんだよねー♪」

「はぁ・・・・・・そう・・・なんですね」

エリオは、分かったような分からないような微妙な心境で頷いたが、ユーノが喫煙者でないことに少し安心している様子だった。

「じゃあ僕はそろそろ仕事に戻るね。エリオもあまり無理しないでね」

似非一服を終え、ユーノが立ち去ろうとしたその時、エリオは慌てて声を上げた。

「待ってください! もしよろしければ僕を鍛えてもらえないでしょうか?」

聞いた瞬間、ユーノは振り返り、少し驚いた表情を浮かべる。

「どういう意味だい?」

「僕はより強くなれるよう研鑽を積んでいるのですが、行き詰っていまして。だからこそユーノ先生がお持ちの素晴らしい戦闘技術を少しでも教えてもらえればと思って。お願いしています!」

エリオは深々と頭を下げ、真剣な瞳でユーノを見つめた。ユーノは少し考えた後、口を開く。

「じゃあエリオ。少し両手を見せてもらえるかな」

「はい」

エリオが両手を差し出すと、ユーノはじっと観察する。硬く厚い胼胝(たこ)が刻まれた手に、彼は微笑みを浮かべた。

華奢(きゃしゃ)な体に反して厚く硬い・・・騎士の良い手をしている」

「いえ、僕なんて騎士の端くれ程度でしかありません」

「謙遜しなくてもよいと思うけどね。じゃあ次にデバイスを見せてくれるかな?」

エリオの愛機ストラーダを手に取り、ユーノはまるで鑑定士のような目で細かく見つめる。

「ふむ・・・・・・最後にメンテに出したのは三日前ってところかな? それに斬魄刀とやり合ったあともある。この霊圧は・・・恋次さんかい?」

「どうしてそれを!?」

デバイスの状態から正確に状況を言い当てられ、エリオは驚愕する。

「これでも“アニュラス・ジェイド”という二つ名を持ってるからね。あまり愛機を酷使させない方がいい。いくつか凹みが出来てる」

「これは‥‥‥お恥ずかしいところをお見せしました!」

ユーノからの忠告を受け、エリオは気恥ずかしさを抱きながら、ストラーダを返却される。

「なるほど。君の考えてることは大体わかった気がする。戦士にとって手や武器はその人物を映す鏡だ。君はとても紳士的で好感が持てる。フェイトが大切にする理由がよくわかるよ」

「ありがとうございます!」

「じゃあ質問させてもらうね。どうして君は強くなりたいのかな?」

ユーノは穏やかな口調で問いかけつつ、まっすぐにエリオの瞳を見つめた。その視線は柔らかくも鋭く、真意を探るような深みがある。

「エリオはさっき僕に訓練をしてほしいと言った。なのはの教え子である君は元より信頼はできると評価しているけど、力を求める理由を知りたいんだ」

「それは・・・」

問いを受けたエリオは、一瞬戸惑ったように言葉を詰まらせる。だが、やがて彼の脳裏にはキャロの無垢な笑顔が浮かんだ。頬が薄く染まり、気恥ずかしそうに答える。

「男ですから」

「ほう・・・」

その答えにユーノは僅かに目を細め、口角を上げた。その表情には、どこか自身と重ね合わせるような親近感がにじむ。

「今の答えでどのような稽古をつけるか決めたよ」

「ありがとうございま――」

礼を述べかけたエリオだったが、ユーノが静かに手を差し出して制した。

「ただ最初に謝っておきたいんだが、君には一護さんや恋次さんと違って戦士としての才能がない。はっきり言おう。死ぬかもしれない」

「・・・・・・っ!」

その言葉にエリオは息を飲んだ。恋次にも同じことを言われたばかりの耳に重く響く。ユーノは先ほどの柔和な表情を消し、覚悟を試すかのように肝の据わった視線をエリオに向ける。

「もっとも――」

短く切り出すと、ユーノは続けた。

「それはエリオの心次第だ。もしエリオに大切なものがあるならば大丈夫だと思ってる」

ユーノの言葉を受け、エリオの表情に決意が宿る。

「もちろんです。お願いします」

「死なない自信があると?」

エリオは無言で首を横に振った。だが、言葉の代わりに、その眼差しは彼の覚悟を雄弁に物語っていた。

「ふむ・・・わかった」

ユーノはエリオの意志を尊重し、短く頷いた。その背後で、物陰から二人のやり取りを見守っていた恋次が口元を歪める。

「こりゃまた・・・・・・とんでもねー事になりそうだな」

そう呟く恋次の目は、興味深そうに輝いていた。

 

           *

 

次元空間 時空管理局本局 医療施設

 

静寂の支配する一室。その中で、深い眠りに囚われていたキャロの瞼がゆっくりと震え始めた。

「・・・・・・ん・・・」

小さな呻き声と共に、長い夢から目覚めるように彼女の瞳が開かれる。その瞬間、抑えきれない安堵の声が弾けた。

「キャロ!」

フェイトの声が部屋の中に響き渡り、彼女の顔には歓喜と安堵が()()ぜになった感情が浮かんでいる。

「気が付いたのね」

なのは、はやて、シャマルもまたその光景に息を呑み、それぞれの心に宿していた不安が溶け去るのを感じた。

「フェイトさん・・・シャマル先生・・・みなさん・・・」

意識がまだ朦朧としたキャロは、周囲の顔ぶれを確かめるように見渡しながら、ゆっくりと体を起こそうとする。その動きに、フェイトは胸に押し込めていた感情を堪えきれず、キャロをそっと抱きしめた。

「ほんとうによかった。ほんとうに・・・・・・よかった・・・・・・」

フェイトの震える声に、彼女の瞳から溢れる涙がキャロの肩に滴る。

「フェイトさん・・・・・・ごめんなさい。心配かけて」

キャロは申し訳なさそうに微笑みながらも、そっとフェイトを抱き返す。その小さな仕草には、言葉では表せない感謝と信頼が滲み出ていた。

病室の隅でその様子を見守るなのは、はやて、シャマルも互いに視線を交わし、ほっとしたように微笑み合う。その微笑みは、幾度もの苦境を共に乗り越えてきた絆を物語っていた。

 

やがて、廊下に出た三人は、ゆっくりと歩きながら口を開いた。

「良かったね。フェイトちゃん」

なのはの優しい声に、フェイトは深く頷きながら答える。

「あのままもう二度とキャロが目を覚まさないんじゃかって・・・考えて気が気じゃなかった。治療法を見つけてくれたユーノには感謝してもし切れないよ」

「早ければ数日で退院できそうとも言ってたし。とりあえず、一安心やな」

温かな空気が廊下に漂う中、突如として通信音が響いた。

 

ピピピ・・・。

なのはとフェイトのデバイスが音を発し、二人は思わず顔を見合わせる。

「六課から? なんだろ・・・」

疑念を抱きつつモニターを展開すると、そこには血相を変えたヴィータの姿が映し出されていた。その険しい表情は、これから何か重大な事態が起こることを告げていた。

『三人とも、大変なことになってるんだ!!』

「どないしたんやヴィータ、そんな血相変えて?」

『説明は後ですっから! とにかく超特急で戻ってきてくれ!』

ヴィータの焦燥した声が三人に緊迫感を伝え、廊下の空気は一変した。

 

           *

 

ミッドチルダ中央南駐屯地内A73区画

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 海上トレーニングスペース

 

急報を受け本局から駆けつけたなのは達。訓練場の方から響く異様な物音に、緊張が胸を締め付ける。

「なんなの?」

思わず声を漏らしながら訓練スペースへ急ぐと、目の前に広がるのは都市を模したフィールド。その中心で激突する二つの影があり、周囲には不安げに見守る前線メンバー達の姿があった。

「みんな!」

なのはの呼びかけに振り返るフォワードメンバー。その表情は戸惑いと困惑に染まっている。

「これは一体何の騒ぎや?」

はやてが問いかけると、スバルが戸惑いながら答えた。

「えっと・・・私達もよく分からないんですけど、エリオとユーノ先生が・・・」

「ユーノ君が?」

「エリオと?」

名前を聞いた瞬間、全員の視線が戦場の中心へ向けられる。そこには満身創痍のエリオと、高所から冷徹な眼差しで彼を見下ろすユーノの姿。ユーノの手には晩翠が握られていた。

「どういうことなの? なんであの二人が模擬戦なんか・・・・・・」

フェイトが息を呑むように呟いたその時、アギトが焦燥に駆られた声を上げる。

「模擬戦なんかじゃねーんだよ! 早くあの二人を止めさせないと! あいつら非殺傷設定なしで戦ってるんだ!!」

「「「――え!」」」

なのは達は息を呑む。魔導師にとって非殺傷設定の解除は、致命的なリスクを伴う危険行為だった。

「だったら早く止めないと! なんでみんなしてぼーっとしてるの!?」

「シグナム! なんで止めへんのや!? 私やクロノ提督が留守の間はシグナムに全権預けとるはずやで!」

焦るなのはとはやてに、シグナムが悔しげに答える。

「それが・・・申し訳ありません。止めようにもスクライアは、我々に干渉されぬよう何重にも結界を張っていまして」

「魔法結界だけならまだしも、鬼道も組み合わせてるんだ。ただでさえバケモノみたいな固さなのに手も足もでねーんだ!」

「そ・・・そんな!」

全員の間に焦燥が広がる中、エリオは満身創痍の体を引きずりながらもユーノへ向かっていく。

「は、は、は、・・・・・・でやあああああ!」

エリオの渾身の叫びが響き渡る。彼はビルを飛び越え、ストラーダを高く振り上げると、全力でユーノを目掛けて振り下ろした。

金属の衝突音と共に火花が散る。

ユーノは左手に握った晩翠でその一撃を受け止める。エリオの全力を込めた攻撃が直撃したはずなのに、ユーノの体は微動だにしない。

「く・・・・・・」

「・・・・・・」

歯を食いしばり、必死に踏ん張るエリオ。その表情には焦りと苛立ちが交錯する。一方、ユーノは言葉を発さず、ただじっとその攻撃を受け止めているだけだった。

やがて、ユーノは刀を横に払い、エリオの攻撃を弾き飛ばす。その勢いで後方に体が反り返ったエリオに向け、ユーノは喉仏目掛けて一閃の刺突を繰り出した。

「っ・・・・・・・・・!!」

その一撃はまさに閃光のような速さ。急所を正確に狙う戦場の殺人剣だった。しかし、エリオは間一髪ストラーダで受け止める。

だが、ユーノは容赦なく力技でエリオを突き飛ばした。

「ストラーダ!」

エリオは即座にセカンドモードに移行し、体勢を整える。しかし、ユーノはその隙を見逃さない。弾丸のように高所から飛び降りると、エリオに鋭い斬撃を浴びせかける。

「くっ‥‥‥!」

エリオは体を捻り、何とかユーノの斬撃を避ける。だが、ユーノは即座に斬魄刀を地面に突き刺し、柄頭を摑んで回転。そのままエリオに強烈な蹴りを叩き込んだ。

地面に叩きつけられたエリオに追撃の刃が振り下ろされる。防戦一方のエリオはストラーダで受け止めるが、その衝撃のたびに腕が悲鳴を上げる。

「う・・・このおおお!」

エリオの叫びと共にストラーダが閃光を放つ。全体重を乗せた力技で、ユーノの剣をようやく振り払う。

しかし、ユーノは驚くべき身軽さで後退した。さながら蝶が舞うように足場を変え、周囲のビルに足をつける。その反動を利用して、エリオへと急襲する。

鋭い一撃が空を裂く――。

エリオは辛うじて身を捩り、ギリギリでユーノの一閃を躱した。しかし、その剣速は彼の動体視力を遥かに凌駕していた。

ユーノの猛撃が容赦なく続く。エリオは死力を尽くして応戦するも、その差は明白だった。

(動きが読めない・・・・・・行動の展開があまりにも早過ぎる!)

エリオの額から汗が滴る。六課での猛訓練で培った自信は、この瞬間、易々と打ち砕かれていた。

(素早く考えて・素早く動く――六課で散々なのはさんに鍛えてもらって、それなりに自信を持っていたつもりだけど、この人は別次元だ! 僕の及ばない遥か彼方の先まで考えて動いている!?)

「――男とはこの程度なのかい? まだほんの前準備なんだけどね」

ユーノの冷たい声が響く。彼は容赦なくエリオを蹴り飛ばした。その瞬間、エリオの体は弧を描きながら宙を舞い、ビル群に激突する。

轟音と共に土煙が舞い上がる。

「目標・ビル激突を確認! 治療班、向かいます!」

スクライア商店のメンバーが慌ただしく動き始める。

「やれやれ。ちょっとやり過ぎな気がするけど」

「ったく。根性のねぇヤロウだ」

そう呟きながらも、彼らは駆け寄ろうとした。しかし――。

「まだだよ」

ユーノが瞬歩で現れる。彼の静かな声が全員を制止させた。

そしてそのまま、更にエリオを追い込むために、ユーノは姿を消した。

 

「ぐ・・・くそ・・・ッ。このままじゃ・・・・・・」

模擬戦では到底味わえない肉が裂け、骨が軋む、そんな本物の痛みに耐えながら、エリオは朦朧とする意識を保ちつつ、この戦いの始まりを思い出していた。

 

 

『え! 非殺傷なしでの戦闘ですか?!』

聞かされた瞬間、耳を疑うエリオに、ユーノはその冷徹な表情で答えた。

『そうだ。それが君への修行だ。これを乗り越えた時、エリオは本当の意味で今の殻を突き破ることが出来る。魔導師でも騎士でもない。戦士としての自分を確立する。これは普段の戦闘訓練では養えない研ぎ澄まされた己自身の力を開花させる為に必要な行為なんだ』

 

 

(そう言っていたものの・・・実際これはきつ過ぎる・・・・・・体中が痛くて痛くて・・・・・・ほとんど感覚がなくなってる・・・・・・これは最早ただの殺し合いだ・・・・・・)

額から流れる血が視界を曇らせる。その瞬間、ユーノが再び姿を現し、大きく振りかぶった晩翠でエリオに斬りかかる。

「!!」

紙一重で避けたエリオだったが、ユーノの一撃はビルを真っ二つに割った。

轟音と共に瓦礫が崩れ、エリオの体はビルから弾き出され地面へ叩きつけられる。

「うわあああああ!」

なおも追撃の手を緩めぬユーノは、急降下しながらエリオへと迫る。エリオは全力で転がり、その場を離れる。背後でクレーターのように大地が陥没し、砂煙が立ち上る。

「はぁっ。はぁっ。はぁっ。はぁっ。ストラーダぁ!!」

〈Stahlmesser〉

ストラーダの矛先に魔力刃が形成される。雷撃を纏った刃を全力で振り下ろし、ユーノに迫る。

「つらああああああああ!」

高速で迫るエリオの一撃。しかし――。

「!!」

ユーノは右手の人差し指一本で魔力刃を受け止めた。

「「「な・・・・・・」」」

誰もが目を疑う。魔力刃を指先一つで受け止めるなど、常識的に考えれば到底あり得ない。

だが、ユーノは唖然とするエリオを冷ややかに見つめるだけだった。そして、魔力刃を受け止めた指先を軽く折り、反撃の形で左脇腹に重たい蹴りを叩き込む。

エリオは吹き飛ばされ、瓦礫に叩きつけられる。激しい痛みに喘ぎながらも、エリオの脳裏にはただ一つの疑問が浮かぶ。

(な・・・何をしたんだ・・・・・・見間違いじゃ、ない・・・・・・こんなバカなことがあるわけが・・・・・・そんなわけない、いくらなんでもこんなに遠いはずが!)

その疑念を振り払うかのように、エリオは再び突進する。

(世界がこんなに遠いはずはない!)

闇雲に槍撃を繰り出す中、ユーノは無表情のまま斬魄刀でそれらを軽々といなし、払うだけだった。

後方に吹っ飛ばされるエリオ。見える光景はただ一つ――自分とは世界そのものが違っているユーノの圧倒的な存在感だった。

(この距離はないだろう! この遠さはないだろう!)

地面に矛先を突き刺して電気を流し込むエリオ。しかし、ユーノは直撃の前に瞬歩で消え去り、次の刹那、エリオの顔面をわし掴みにしていた。

「っ!」

「頭に血が上ってる。攻撃が短絡的すぎるよ」

渇いた声が響いた直後、エリオの顔はコンクリートの地面に叩きつけられた。

「がああっ!」

鼻骨が折れるかと思うほどの衝撃。フェイト達はその残酷な光景に目を瞑り、息を飲む。

一方、死神達はこの戦いを冷静に見守っていた。

「ひぃぃ・・・! 見ているだけでぞっとする。エリオには申し訳ないが、あれが私でなくて本当に良かった」

白鳥の声は露骨に震えていた。それに応えるようにルキアが口を開く。

「しかし、こうしてユーノ殿の戦い方を見ていると、節々に一護や浦原のそれを彷彿とさせるものがあるな」

「とは言え、えげつねーよな。やっぱ師弟っていうのは修行方法も似るのかねー」

恋次は苦笑しながらも、その目には緊張が浮かんでいた。

「なのは・・・・・・あれはほんとにユーノなの・・・・・・?」

「そのはずだけど・・・・・・あんなに雰囲気が違うと・・・・・・なんだか私も信じられないよ・・・・・・」

鬼神の如き強さを見せるユーノ。その威圧感に圧倒されるなのは達。そんな中、不意に声が響いた。

「『自分より強い相手に勝つためには自分のほうが相手より強くないといけない』・・・・・・」

すると、不意に誰かが口にした。なのはが驚いて声のする方へ振り向くと、そこには吉良の姿があった。

「吉良さん・・・それ、誰から?」

「前にユーノさんから問いかけられたのを思い出したんだ。この言葉の矛盾と意味についてね」

静かに口を開く吉良。彼の声音にはどこか沈思するような響きがあった。

「僕は考えた末にこう答えた・・・・・・『自分よりも総合力で強い相手に勝つためには自分が持っている相手より強い部分で戦う』。その為に自分の最も強い部分を磨き上げ、誰にも負けない自信と気概を持って戦いに当たる事が重要だと。まして集団ならばそれぞれの強い部分を持ち寄ればより万全に近くなる」

なのはは彼の言葉に耳を傾けながらも、ユーノとエリオの凄絶な戦いから目を逸らすことができなかった。

「・・・・・・だが」

吉良は一拍置いて、再び口を開いた。

「この問題提起は、彼の前では意味を成さなくなるんじゃないかって。(まれ)にいるんだ。あれこれ思案し策を講じたところで、(すべ)ての能力があまりにも掛け離れている為に、どれだけの知恵を総動員して、あらゆる不運に用心しても、その用心の遥か上に立つ強者の存在が」

吉良の視線の先、ユーノは幾度となくエリオを容赦なく弾き飛ばしていた。空に浮かび、悠然としたその姿。まるで絶対的な王者の如く圧倒的な存在感を放っている。

「ユーノさんを見ていると・・・・・・嫌でも藍染惣右介の顔がちらついて仕方ない」

 

吉良の冷静な指摘が場の空気を張り詰めさせる中、一方で、エリオは崩れ落ちる寸前の身体を愛機で支えながら辛うじて立ち上がる。

彼の内心にはまだ、折れない炎が燃えていた。

(こんなにも遠いものなのか・・・・・・僕は強くなるためにここにいるんだ・・・・・・こんなところで倒れる訳にはいかない!)

ボロボロになりながらも、エリオは立ち尽くすユーノに再び向かっていく。

「だあああああああああああ!」

その声は己を奮い立たせる雄叫びのようだった。しかし、ユーノは静かに剣を構え、エリオの突進を受け流しながら淡々と問いかける。

「何を望む? 強さの果てに何を望む?」

「僕は――守りたいんだ!」

語気を強めて答えるエリオ。しかし、その答えではユーノを満足させるには至らなかった。ユーノは冷たい眼差しを向けると、エリオの攻撃を弾き返し、言葉を投げかける。

「それで僕に勝てるつもりでいるのかい? 何とも浅はかなことだ。だから君は弱いんだ」

ユーノは瞬歩でエリオの懐に入り、一振りで吹き飛ばすと、その吹き飛ばされた先へ先回りし、踵落としを見舞う。

「エリオぉ!!」

「ユーノ君、もうやめて!! こんなのひど過ぎるよ!!」

「お願いユーノ!! これ以上やったらエリオが・・・・・・」

「スクライアアドバイザー、今すぐ戦闘行為を中止するんや!!」

なのは達の叫び声や懇願も、ユーノの耳には届かない。エリオへの攻撃は一層容赦なく苛烈を極める。

満身創痍のエリオは腫れ上がった目でユーノを見つめる。しかし、その視線の奥には明らかに恐怖が宿っていた。

(く・・・来るな・・・・・・来るな・・・・・・!)

ユーノはその恐怖を見透かしたように、静かに歩み寄り、淡々と声を発する。

「ガッカリだなあ。こっちがちょっとマジメにやったら手も足も出ないじゃないか。ホントに・・・ガッカリだ」

その声は冷徹で、どこか失望を孕んでいた。続けざまに、ユーノはエリオの状態を鋭く指摘する。

「エリオ。君の愛機には“恐怖”しか映っちゃいない。躱す時には“斬られるのが怖い”。攻撃する時には“斬るのが怖い”。誰かを守ろうとする時にさえ“死なれるのが怖い”。そう――君の愛機はくだらない恐怖ばかりを僕に語りかける」

その言葉を終えると、ユーノは晩翠をゆっくりと垂直に構えた。その動作に呼応するように、周囲の空気が震え、地面の塵が舞い上がる。

「違うんだよ。戦いに必要なのは“恐怖”じゃない。そこからは何も生まれない」

刀身に力が集中し、振動が増していく。エリオはその様子を見つめながらも、身体が動かなかった。

「躱すのなら“斬らせない”! 誰かを守るなら“死なせない”! 攻撃するなら“斬る”!! ほら。見えないかい。僕の剣に映った――“エリオを斬る”という“覚悟”が」

ユーノが言葉を紡ぐ間、彼が握る晩翠の刀身が静かに翡翠色の輝きを帯び始めた。その光は徐々に強さを増し、周囲の空間を震わせるほどの圧倒的な存在感を放つ。

その輝きに目を奪われたエリオは、まるで時間が止まったかのように動きを止める。

しかし次の刹那、ユーノが迷いも躊躇いも無く、一刀を振り下ろす。

「ユーノ君、ダメぇ!!」

なのはの叫びが響く。しかし、その声は翡翠の輝きと共に生じた震動にかき消されるかのように届かず、ユーノの動きを止めることはできなかった。

ユーノの一刀は、翡翠の斬撃となって放たれる。

直撃のコースにいたエリオの身体を貫いたその一撃は、計り知れない威力を秘めていた。エリオの体は空中に放り出され、全身が血に染まりながら、力なく宙を舞う。

「え・・・・・・エリオぉぉぉぉ!!!」

フェイトの絶叫が訓練場に響き渡る。その叫びに応えるような者はいない。フォワードメンバー達は、目の前で繰り広げられた惨状に息を呑み、言葉を失っていた。死神達でさえも険しい表情を崩さず、事態を静観するほかなかった。

地面に叩きつけられたエリオは意識を失い、血に染まった体が微動だにしない。そんな彼の傍らに歩み寄ったユーノは、冷静な声で静かに語りかけた。

「生き急ぐな。若き騎士よ。今は伏して眠れ。己を知り、世界を知り、そして――・・・強くなれ」

その言葉に込められたのは叱責か、励ましか。それを理解する術を持たないエリオを前に、ユーノは刀を納めると振り返り、背を向けて歩き始めた。

その姿は、戦場を去る孤高の戦士そのものであった。翡翠の輝きだけが、なおも消えぬ余韻を残し、静寂が訓練場を包み込む。

 

 

 

 

 

 

参照・参考文献

原作:久保帯人 『BLEACH 11巻』 (集英社・2003)

 

 

 

教えて、ユーノ先生!

 

ユ「今日はドーパントについてだ♪」

「元ネタは『仮面ライダーW』に登場する怪人の事だ。ガイアメモリと呼ばれる《地球の記憶》を封印したメモリ型ガジェットを用いて人知を超えた能力を手に入れ、その姿を異形の者へと変える」

「様々な力を持つガイアメモリだが、その中にはゴールドメモリと呼ばれる上位種が存在。通常のメモリと比べるとパワーもポテンシャルもけた違いだが、毒性が強い為専用のドライバーがないと自滅する可能性が高い」

「さて、実はここにも一つのガイアメモリがあるんだけど・・・・・・」

解説が終了したユーノ、懐からおもむろに研究用にと裏ルートで入手したガイアメモリを取り出す。メモリにはアルファベッドで「S」と書いていた。

ユ「これ何の能力だろう? 『S』っていっても、いろいろあるからな」

 すると、話を聞いていた浦太郎がやや興奮しがちにユーノに話しかけてきた。

浦「も、もしかしてそれ・・・! 『スケスケ』のSじゃないの!?」

ユ「『スケスケ』のS? どういうこと?」

浦「つまりっ! これを使えば、身体が透明になるんだよ! そうすればバレずに女の湯に入ることが出来るんだ!!」

 鼻息交じりに語り掛ける浦太郎。それを聞いた瞬間、ユーノは全力で脱力しかける。

ユ「そんな小学生の夢みたいな能力、誰が欲しがるんだよ!!」

浦「僕がだよっ!! 店長一生のお願い、それ僕に売って頂戴!!」

ユ「絶対ダメだ!!!」

 

 

 

魔導師図鑑ハイパー!

 

恋「イデッ!? イデデデデデエッ!!」

 トイレで小便をしていた恋次の股間に、これまで経験した事のない鋭い痛みが駆け抜けた。

 何事かと見てみれば、ブツの先から少し黄色がかった粘り気のある白い液体が・・・・・・

恋「な、なんだこりゃ!?」

 ただ事ではないと思った恋次はユーノに相談し、慌てて義骸の精密検査と共に血液検査、尿検査等を依頼。すると信じ難い事実が発覚した。

ユ「調べてみたところ・・・・・・恋次さん、あなたの義骸というかあなた自身が淋病(りんびょう)に罹っています」

恋「淋病だと!? なんだそりゃ!?」

ユ「性感染症、つまり性病の一つです。性交渉の際に淋菌という細菌が体内に侵入し発症します」

恋「なん・・・だと・・・!?」

 予想だにしなかった答えに凍り付く恋次。

 彼がどのような経緯で淋病に罹ってしまうのか――!?

 この続きは後半へ続く!!




登場AM体
AM-15
トカゲとアンゴルモアが融合して誕生したアンゴルモアモンスターであり、その変貌した姿。現地では「ギガントバジリスク」と呼ばれている。
その目で捕らえた標的を瞬時に石化させる光線を双眸から放ち、岩をも溶解させる猛毒の体液を武器とする。回復手段なしにその懐に飛び込むのは自殺行為に等しく、戦士にとって天敵のような存在。
本編ではエリオ、キャロ、鬼太郎と対峙。最終的にはハイメの放つフロストブレスの直撃を受け討伐された。
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