ユーノ・スクライア外伝   作:重要大事

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第7話「面影は永久(とわ)に」

前回のあらすじ

 

 巨大虚(ヒュージ・ホロウ)を素体とした魔導虚(ホロウロギア)・バリオスFの都心への侵攻を食い止めるべく、機動六課より出動した高町なのはらは、時同じくミッドチルダへとやって来た死神・阿散井恋次ら四人組と遭遇。

 彼らの助力もあり、見事バリオスFを撃破する事が出来た。

 死神と魔導師・・・・・・異なる世界における秩序を担う者同士が、ひとつの目的の元にミッドチルダへと集結した。

 

           ≡

 

新暦079年 4月8日

第1管理世界「ミッドチルダ」

ミッドチルダ中央南駐屯地内A73区画

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 隊員宿舎

 

 午後10時過ぎ―――。

 交渉の末、ミッドチルダにおける魔導虚(ホロウロギア)関連事件への情報提供及びその迎撃を協力するという名目で阿散井恋次一行は、その身元保証を受けられる事となった。

 この事を早速支援者であるユーノに報告を入れる為、恋次は宛がわれた部屋で次元電話を試みる。

 プルルル・・・。プルルルッ・・・。ガチャ・・・。

『ユーノです』

「俺だ。おめえの言った通り機動六課とやらに潜り込む事ができたぜ。あと、こっちに着いて早々巨大虚(ヒュージ・ホロウ)を素体とした魔導虚(ホロウロギア)とも接触した』

『お怪我は?』

「この俺を誰だと思ってんだ? 多少ドジったがきっちり片付けたぜ」

『そうですか・・・』

「ただ、妙な事にその魔導虚(ホロウロギア)な・・・・・・人間を取り込んでいやがった」

『人間を、ですか?』

「仮面を斬ったら出て来たんだよ。どうも取り込まれた人間の話だと、妙な機械人間とやらに(そそのか)されて、気がついたら魔導虚(ホロウロギア)になっちまったらしい」

『おそらくですが・・・その機械人間というのは戦闘機人(せんとうきじん)の事だと思います』

「戦闘機人っつーと、例のスカリエッティが作った生体兵器か?」

『誕生の段階で機械の身体を受け入れられるようにあらかじめ調整されて生まれきた人間、それが戦闘機人です。それを強化する事で計り知れない戦闘力を手に入れる。スカリエッティは一犯罪者である以前に、常人では到達しえない様な無知と倫理の壁を取り払った異形の天才なんです』

 まるで浦原さんか(くろつち)隊長みたいだな・・・。心中そう思った後、恋次は伝令神機を右から左へと持ち替える。

「にしても妙じゃねえか? 今回の話の流れをまとめればだ、戦闘機人が魔導虚(ホロウロギア)の製造に一役買ってるって事だろ。しかも獲物は魂魄じゃなくて生きた人間ときた。何の為に人間を取り込む必要がある?」

『奴らの狙いについては追々分かります。とりあえず、報告ありがとうございます。早速僕なりに調べてみますね』

 直後、恋次は神妙な面持ちで電話の向こう側のユーノに問いかける。

「ユーノ・・・ひとつ聞きてえんだが」

『なんですか?』

「高町なのはって女の事なんだが・・・・・・お前、あの女とどういう関係なんだ?」

『・・・・・・なぜそんなことを?』

「あの女に聞かれたんだよ。“ユーノ・スクライア”について何か知ってるかって? 最初聞いたときは流石にビビッたぜ」

『・・・話したんですか?』

 少し間を置き、なおかつ低い声で問いかけるユーノ。恋次はありのままに事実のみを端的に伝える。

「あんときは咄嗟に浦太郎がフォローに入ってくれたから深くは追及されなったが、お前・・・・・・俺たちに何隠してやがる?」

 勘があまりいい方ではない恋次でも、ユーノとなのはに何らかの因縁がある事は判った。その上で自分達に未だ伝えていない事も数多いと踏んで思い切って問う。

『恋次さん・・・ひとつご忠告をしておきます』

 するとユーノは電話越しに、恋次を諌める様に呟いた。

『世の中には知らなくてもイイ事がたくさんあるんです。僕と彼女の関係を詮索したところであなた方には全く意味の無い事です。では―――』

 ブツッ・・・。ツー・・・。ツー・・・。

 何かを教えてくれそうな気配は皆無に等しかった。

 端末を閉じ、恋次は月明かりのみが照らす部屋のベッドへ横になると、天井を仰ぎ見ながら数時間前の出来事を振り返る。

 

 

「ユーノ・スクライア、という男性を知っていますか?」

 司令室でなのは本人の口からそう問われた途端―――恋次と吉良、浦太郎、鬼太郎の四人は目を見開き驚愕。

 なぜこの女の口からアイツの名前が出てきやがる? 真っ先に疑問を抱く恋次だが、ふと出発時や電話口でユーノが語っていた内容―――尋問を受けた際、名前自体の公表を避ける様にと言われていた事を思い出す。

 恋次は約束を破った後に待ち受けるユーノからの制裁を恐れ、この場は白を切って誤魔化す事にした。

「い、いや・・・・・・何の事だか俺らにはわからねえ。だろう吉良?」

「あ、あぁ・・・」

「きっとなのはちゃんは誰かと勘違いしてるんだよね! だってよく考えてみなよ。僕はともかくここにいる恋次さんや吉良さん、先輩に至ってはミッドに来たのは今日が初めてなんだよ。“ユーノ・スクライア”なんて名前を聞くのも今日が初めてだ。ということはつまり、何の面識も無いってこと。そんな見ず知らずの人の事を知ってると思う?」

「それはそうですが・・・・・・・・・だけど! 「高町隊長。」

 どこか腑に落ちず必死で食い下がろうとしたなのはだったが、状況を見ていたはやてが冷静な態度で制止を求める。

「浦太郎さんの言う通りや。気持ちは分からんでもないけど、この人達に彼の事を尋ねるのは荒唐無稽ちゅうもんや」

 はやての言い分はもっともだった。なのはは一度冷静になり、如何に自分が焦っていたのかを理解。ハッキリ言ってお門違いな尋問をしたと深く反省し、はやてと恋次達へそれぞれ首を垂れる。

「・・・・・・申し訳ありません部隊長。阿散井さん達も、突然の発言に困惑させてしまいました。深くお詫び致します」

「別に僕らは気にしてないよ。だよね先輩?」

「そ、そうだな! それよりも腹減ったよな! 食堂ってどこにあるんだろうな?」

「でしたらのちほどご案内します。今日はもう遅いので、阿散井さん達からお話を伺うのは明日にします」

「あぁ。こっちもその方が助かるぜ」

 何とか急場を凌ぐ事が出来安堵する恋次。

 ふとなのはを一瞥すれば、彼女は寂しさと悔しさ両方を内包した様な顔で首にぶら下げたロケットを握りしめていた。

 

 

(絶対なんかあるよな・・・あいつとあの女との間に――――――)

 確信を持って思案する恋次。ひとまず今日はもう遅いと、明日に備え慣れないベッドで眠りに就くことにした。

 

           *

 

ジェイル・スカリエッティ 地下アジト

 

 己が欲望のままに世界を混乱に陥れ、破滅へと導こうとする男―――ジェイル・スカリエッティは不気味な笑みを浮かべるとともに、ラボに集まった四人の幹部達を見据える。

「ふふふ・・・全員集まったようだね。“機人四天王(きじんしてんのう)”諸君」

 機人四天王―――そう呼ばれると、居合わせていた四人の戦闘機人が挙ってスカリエッティの方へ視線を向ける。

 集まった四人のうち、戦闘機人の初号機であるウーノ、トーレ、クアットロの三人はスカリエッティとともに軌道拘置所を脱獄したメンバー。もう一人は死亡したセッテの代わりに今回スカリエッティが新たに製造した初の男性型の戦闘機人ファイ。この四人を指して【機人四天王】と呼ぶ。

「あら~~! ドクターがお呼びとあらば、このクアットロいつでも参上いたしますわ♪ そうですわね~、トーレ姉様?」

「ああ。ドクターから(たまわ)ったこの新たなる力・・・全身から溢れ出す! これで従わないというのがおかしい。」

「妹達の強化は元より、ドクターの頭脳はいずれこの世界を本当の意味で救済するわ。魔導虚(ホロウロギア)はその為の第一歩よ」

「ふん・・・・・・。」

 スカリエッティを神の如く崇め奉り称賛の声を惜しまないウーノ達。

 その一方で、彼女達とは異なり一人異彩を放つファイ。感情の起伏が少ないという点ではセッテと似通っている点も多いが、どうにも近寄りがたい。他の三人も彼とはあまり積極的な関わりを持とうという気になれなかった。

「してドクター、本日の定例会・・・議題はやはりバリオスFを殲滅したという、例の黒衣の集団のことでしょうか?」

「おそらくはマカラガンガーの記録に残っていた死神だろうね。いやー、私の期待以上だったよ、彼らの能力(チカラ)は」

「それにしてもドクター。ゴミを寄せ集めた魔導虚(ホロウロギア)・・・弱過ぎましたわね~」

「核となる人間の選択も甘かったな」

 前回の魔導虚(ホロウロギア)について酷評が絶えないクアットロとトーレ。

 彼女達の気持ちを理解しながら、スカリエッティは「次なる手は打ってあるのかい、ウーノ?」と、おもむろに問いかける。

「お任せくださいドクター。死神の脅威はもっともですが、先ずは管理局の小うるさい魔導師達を潰すのが先決です。次なる魔導虚(ホロウロギア)はその役に適任かと思います」

 

           ◇

 

4月9日―――

第1管理世界「ミッドチルダ」

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎 部隊長室

 

 翌日―――。恋次達は当初の予定通り、機動六課への魔導虚(ホロウロギア)に関する情報提供を行う事にした。

「んじゃ・・・昨日話した内容をもう一度おさらいするぜ」

 スケッチブックを手に取りおもむろにペンを走らせる恋次。やがて出来上がった絵をはやて達に見せながらひとつひとつ説明をする。

「・・・『魔導虚(ホロウロギア)』ってのは、魔導師と死神の力である魔力と霊力を併せ持った(ホロウ)と呼ばれる悪霊が進化したものの一団だ。元々突然変異から生まれた個体ゆえに数も少なくモノになった例は極僅かだったが、そこに何らかの方法・・・聞いた話じゃ古代遺物(ロストロギア)の力を手に入れたスカリエッティが接触することで極めて精度の高い魔導虚(ホロウロギア)が誕生した」

 ページを一枚めくり、「こいつが昨日ブッ倒した馬面魔導虚(ホロウロギア)だ」と、自分の描いた絵を見せる恋次。だが、ハッキリ言って彼に絵心は無かった。手づつな絵を見せつけられたなのは達もただただ唖然とするばかり。

「ここまでで何か質問はあるか?」

「そうですな・・・とりあえずそのスケッチブックが無ければもっとわかるんやけど」

 うっかりはやてが失言した。聞いた直後、恋次は露骨に不機嫌な顔を浮かべはやての頬を引っ張りあげる。

()タタタタっ!!」

「このちびダヌキ! 人がわざわざ分かりやすく図解してやってんのにその態度は何だ!?」

(あれで分かり易くしていたつもりなのか・・・)

 恋次には悟られない様心の中だけで呟く吉良。他のメンバーもとばっちりを受けない様に終始苦笑いを浮かべる。

 赤く腫れた頬を撫でつつ、はやては率直な所感を口にする。

「てててて・・・せやけど不思議やわ。確かに私たちは物心ついた頃から魔法使いでしたけど、ユウレイやその他の類を見るのは生まれて初めてです。おまけに死神が組織だっているちゅうのも予想外ですわ」

「俺だってことごとく裏切られた気分だぜ。現世のサブカルチャーとやらで魔法使いについていろいろ勉強してきたのに、いざ会ってみたらこれだぁ・・・一体この世界の何処に『ソウルジェム』や『インキュベーダー』がいやがるんだ?!」

「あのそれ、大分世界観が異なる作品ですけど・・・」

「つーかよりにもよってまどマギ観たのかおまえ・・・」

 全てにおいて恋次のサブカルチャーのチョイスは世間とはズレていた。彼に同行した浦太郎と鬼太郎もここまで逸脱し、悪い意味で予想を覆してくるとは思ってもいなかった。

 吉良は妙な雰囲気が漂っている事を懸念し、一度咳払いをする。

「・・・カルチャーショックがあるのはこの際仕方がない事だが、僕たちをここへ導いてくれた者の話によれば、魔導虚(ホロウロギア)はスカリエッティによって改造された事で一般人にも視認できる霊魂へと変貌を遂げた。本来この世界には存在しなかった不確定要素が流入した結果、次元世界規模での大いなる災いが起こっている」

魔導虚(ホロウロギア)を根絶させ、スカリエッティの野望を止める為に俺たちはここまでやってきたんだ。お前ら機動六課も目的は同じ筈だろ」

「・・・確かにあなた方の言う通りです。我々は一度逮捕した次元世界最悪の犯罪者を再び世に放ってしまった責任がある。これ以上あの男の欲望の為に、人々の血を流させるわけにはいかない」

「「うん」」

 クロノの言葉になのはもフェイトも首肯する。

 やがて、先ほどは恋次の怒りを買ってしまっていたはやても真面目な表情で居合わせた四人を見据える。

「機動六課部隊長として、改めてお願いします。どうか事件解決の為にご協力頂けますか? 決して死神さん方の足を引っ張るような事は致しません。何卒あなた方の力を我々にお貸して頂けますか?」

 その言葉をずっと待っていた。当初の目論み通りに事が運んだと理解した恋次はにんまりとした表情を、吉良達へと見せ他の三人も口元を緩める。

 重い腰を持ち上げると、恋次ははやての手を掴んで全面的な協力を約束する。

「死神の目の前で死ぬのだけはやめろよな」

「善処します」はやても口角を緩め顔を綻ばせる。

 ピピピ・・・。ピピピ・・・。

 話がちょうどまとまった時だった。はやて宛てに内線が入って来た。

 ディスプレイを開くと、眼鏡をかけた薄紫色の髪の男性―――交替部隊責任者で部隊長補佐を兼任するグリフィス・ロウラン三等陸尉が切羽詰った声で呼びかける。

『八神部隊長大変です!』

「どないしたんやグリフィスくん? そんな声荒らげて・・・いつものグリフィスくんらしくないなー」

『先ほど首都警邏隊からの連絡があって、ランスター執務官が出先で子供を庇って車に轢かれたと・・・!』

 

           *

 

ミッドチルダ中央区画 クラナガン中央病院

 

 事故の一報を聞きつけた主要メンバーが病院へ駆けつけると、幸いにもティアナは軽い腕の打撲程度の怪我で済んだことが分かった。

「でも良かったよ。車に轢かれたって聞いたときは一瞬不安になっちゃったよ」

「おまえも無茶するよなー」

「すみません。子供を守らねばと無我夢中だったもので・・・」

 スバルやヴィータから心配を寄せられ、事故直後の自分の行動を省みるティアナ。そもそも事故に遭った経緯というのは、外回り中にたまたま道路に飛び出した子供を守ろうとティアナが体を張った結果だった。子どもは彼女の勇気ある行動によって命を救われ、目立った怪我も無かったという。

「ひとまず救助した子供に外傷は無いそうだ。轢き逃げした車についてはこちらで調べる。今日のところは一先ず自宅療養に専念しろ」

「はい・・・この度はご迷惑おかけしました」

 方々に謝罪をするとともに、ティアナはシグナムの言う通りに自宅へと戻って大人しくする事にした。

 

 ロビーで会計を済まそうと待っていた折、ふとティアナの後ろから声がした。

「ココいいかな?」

 振り返ると、柔らかい笑みを浮かべ自分を見つめる浦太郎が立っていた。

「あ、はい。どうぞ」

 何故だかは分からないが浦太郎が自分を気に掛けている事だけは確かだと思い、無碍に扱わない為に隣に座る事を許可する。

「えーっと・・・たしかティアナ、だったっけ?」

「はい。そうですが・・・亀井浦太郎さん、でしたか?」

「浦太郎でいいよ。それにしても・・・」口にした直後、浦太郎は怪訝するティアナの顔をじっくりと観察する。

「―――なるほど。どおりで良く似ていると思った」

「似ている? 誰にですか?」

「昔さ、士官学校時代に君と同じ()をした魔導師がいてね・・・君のお兄さん、ティーダ一尉と僕は同じ釜の飯を食べた仲間なんだ」

「兄が・・・浦太郎さんと!?」

「年の離れた妹がいるとは聞いていたからどんな子かなーとは思ってたんだけど、噂以上に相当レベルの高い子で僕は嬉しいよ♪」

「え、えーと・・・・・・」

 魔導師としては極めて優れる浦太郎だが、こと女性に関してはどうしようもなくだらしがない。ティアナも浦太郎の話は小耳には挟んでいたが、実際の人となりは殆ど知らない為、ちょっとしたショックを受けていた。

「おっと、いけないついいつもの癖が・・・うっほん!! まぁ士官学校の頃から彼がいろいろと話してたんだよ。自分なんかよりもずっと魔法の才能があって、ちょっと頑固だけどかわいい自慢の妹がいるって。あんまりにもしつこいもんだから時々イラっとした事もあったっけな」

「兄が私をそんな風に・・・・・・」

「僕には正直彼のシスコンが理解できなかった。でも、たった二人の兄妹・・・・・・兄の果たせなかった夢を妹が叶えたんだから。お兄さんもきっと喜んでいると思うな」

 ティアナは今は亡き兄と交友があった人間の存在は元より、生前に自分の事を高く評価していた事を今の今まで知らなかった。

 死に別れてから早10年―――心の中で生き続ける兄の面影をふと目の前の浦太郎に重ね合わせたとき、胸の鼓動が昂ぶるものの優しい気持ちになるのを感じた。

「それはそうと腕の怪我は大丈夫なのかい?」

「あ、はい。すみません浦太郎さんにまでご心配を。大丈夫ですよ。ちゃんとお医者様にも診てもらいましたから」

「じゃあその首筋についてるそれも?」

「え」

 不意に浦太郎に指摘されたティアナが鏡に映った首筋を確かめると、いつの間にか気が付かない所で赤く痣の様に腫れ上がったものが出来ており、少し触っただけで痺れるような痛みが走る。

「ほんとだ・・・・・・何だろうこれ。いつの間にこんなものが」

「気が付かなかったのかい?」

「はい、お医者様に診てもらったときには何も無かったと思ったんですけど・・・・・・たぶん、事故の時にどっかにぶつけたんだと思いますけど・・・」

「俺にもそれ診せてもらえるか?」

 すると不意に恋次がティアナの元へと現れた。おもむろに近付き、恋次は困惑する彼女の首筋を凝視する。

(――――――! こいつは)

「あ、あの・・・阿散井さん?」

「・・・どうしたんですか、こわい顔して?」

「あっ、いや、なんでもない。ちょっとした思い過ごしだった。悪かったな」

 踵を返しティアナから離れる。ちょうど恋次が戻って来るのを待っていた吉良が危惧を抱いた様子で立っていた。

「おい吉良。」

「ああ。君の考えは正しいと思う」

「微かだが、アイツから魔導虚(ホロウロギア)の匂いがした」

「どうするつもりだい?」

「ちょっくらティアナの身辺を調べてみる。おそらく敵はアイツの関係者だ」

 

           *

 

 病院から帰った後、恋次はティアナの身辺周りを調べ始めた。

 そしててっとり早くに情報を掴むため、彼女が所属するスターズ分隊の隊長でもあるなのはに話を聞くことにした。

 

           ≡

 

機動六課 ミッドチルダ地上隊舎

 

「ティアナの家族・・・、ですか?」

「隊長のおめえなら何か知ってるかと思ったんだが・・・」

 問われると、なのはは少し悲しそうな表情を浮かべおもむろに口にした。

「・・・・・・・・・たった一人の年のはなれたお兄さんがいたんです」

「“いた”?」

「10年前、航空魔導師だったティアナのお兄さん・・・ティーダ・ランスター一等空尉は任務中の事故で亡くなったんです。ティアナが10歳の頃でした。ティアナは亡くなったお兄さんが果たせなかった執務官になる為に、必死に努力して今に至ってるんです」

「―――そうか」

「あの、どうして急にそんな事を?」

「大したことじゃねえ。気になる事があっただけだ」

 仕事の邪魔したな。そう言ってなのはの元を去ろうとした恋次だったが・・・

「あの―――!」

 意を決したなのはが大声で呼びかけて来た。一瞬吃驚する恋次に、不安と焦りを孕んだ表情で問いかける。

「本当に恋次さんは、ユーノ・スクライアって人のこと知らないんですか?」

 昨日聞くに聞けなかった事を再び話題に出したなのは。ここでうっかり口を滑らせるわけにはいかない。恋次はユーノとの関連性を探る意味でも今回も敢えて白を切るという選択肢を取った。

「・・・・・・その話なら昨日も言っただろう。そんな奴は見たことも聞いたこともねえって。だいたいなんで俺なら知ってるんだって思ったんだよ? そもそもお前にとってユーノ・スクライアってのはどんな奴なんだ?」

「その人は――――――私の道を示してくれたんです。私のただ一人の魔法の先生で、私が魔法に出会うきっかけをくれた恩人なんです! 私が悩んだり、戸惑ったりしたとき、いつも優しく話を聞いてくれて・・・そっと背中を押してくれて・・・今だって感謝してもし切れないくらいその人の、ユーノ君の事で胸がいっぱいなんです・・・・・・!!」

「おまえ・・・・・・」

「前に地球に里帰りしたとき、恋次さんと同じ格好をした死神の男性を視たんです。その人はユーノ君の魔法を使ってて・・・・・・だから恋次さんならユーノ君の事を知ってるんじゃないかって思ったんです!」

 ありのままに事実を伝えるなのは。若干驚いた様子の恋次だったが、ここで迂闊に自分とユーノの関係を教えるのは得策ではないと判断。慎重に言葉を選びなるべく自分にとって有利な方へと誘導する。

「仮に俺がそいつの事を知っていたとして、お前はどうするつもりなんだ?」

 打算からくる誘導尋問。するとなのははそんな打算と知ってか知らずか、赤裸々に自分の思いを告白する。

「ユーノ君に今の私の正直な気持ちを自分の言葉で伝えたいんです・・・・・・じゃないと、もう二度と分かり合えない。他の方法じゃダメなんです。ユーノ君とは直接ぶつかって分かり合うなんて出来ないんです・・・・・・ちゃんとした言葉じゃないとダメなんです・・・・・・!!」

 段々と声を震わせ、ついには涙腺を崩壊させる。

 恋次はユーノに対し並々ならぬ思いを抱えている彼女の気持ちに共感するも、ユーノとの間で交わした約束を破る訳にはいかないというジレンマに駆られた。

 

 光陰矢の如し―――時刻は夜の8時を迎えた。

 一日を終えた浦太郎と吉良は、風呂上り宿舎の談話室で話をしていた。

「いくらなんでも信じられないですねー。魔導虚(ホロウロギア)って無差別に人を襲うんですよね? それがティアナ個人を襲うなんてこと・・・」

「少なくともその可能性は高いと、僕らは見ているよ」

「根拠は?」

「考えられるとすればひとつしかない。だが―――」

 その根拠を口にするのは些か気が引けてならなかった。険しい表情を浮かべる吉良を見ながら浦太郎が眉を顰めていた、そのとき。

 ピピピピッ・・・。吉良が持つ魔導虚(ホロウロギア)探知機内蔵の伝令神機がけたたましく鳴り響く。

「これは!」

魔導虚(ホロウロギア)ですか!? 場所は!?」

「待ってくれ―――そんな・・・まさか・・・」

「吉良さんどうしたんですか!?」

「時間も場所も・・・今・・・ここだ!!」

 口にした直後。吉良と浦太郎が立っている足場からどす黒い煙が出現し、足下より禍々しい怪物の腕が伸びて来た。

「「・・・な・・・ッ」」

 咄嗟にジャンプして攻撃を回避する吉良と浦太郎。亜空間より姿を現したのは、全身至るところが金属でコーティングされた西洋のドラゴンの様な体つき、仮面の突起物が回転式拳銃の銃身を思わせる魔導虚(ホロウロギア)だった。

『ウオオオオオオオオオオオオオ』

 見た目に違わぬ豪快な(いなな)きは強者である事を主張。吉良と浦太郎は眼前の魔導虚(ホロウロギア)からひしひしと伝わる霊圧の強さを間近で実感する。

「気を付けるんだ。この霊圧・・・ただの魔導虚(ホロウロギア)じゃない」

「みたいですね。いくよフィッシャーマン」

〈All right〉

 防護服を身に纏い、愛機フィッシャーマンを構えた浦太郎は魔導虚(ホロウロギア)・デカデンシアへの攻撃を開始。

「ソニックスピア!」

 高速で繰り出す槍撃(そうげき)。しかしデカデンシアの外皮は強固な鉄の如く加工が施されており、浦太郎の攻撃はすべて無効化。

「ぐあああああああ」尻尾部分を振り回して浦太郎を弾く。

「浦太郎くん!」

 見かけ通り強力な力を秘めていた敵の能力を懸念し、吉良は即行で終わらせようと封印状態の斬魄刀を解放する。

「面を上げろ、侘助!」

 能力解放するとともに頭上高くから、魔導虚(ホロウロギア)の仮面ごと頭を割ろうと刃を振り下ろす。

 しかし運の悪い事に仮面の強度もまた体組織同様非常に固く、一撃振り下ろしただけでは完全に割る事が出来なかった。

(なんという固さだ!! 完全に見誤った!)

『オオオオオオオオオオオオオオオ』

 苦痛に喘ぎ叫ぶデカデンシア。亀裂の入った仮面の一部が咆哮を上げた際に割れ、床へと散らばった。

「―――え!!」

 このとき浦太郎は割れた仮面下にあるデカデンシアの正体を目撃。そこには決してあり得ない光景が映っていた。

「咆えろ、蛇尾丸!!」

 ちょうどそこへ、霊圧を感じ救援に駆け付けた恋次が戦闘へと割り込んだ。

 デカデンシアは蛇尾丸の一撃を受けると、分が悪いと判断―――体勢を整える為に亜空間の中へと姿を消した。

「・・・逃がしたか・・・! 追うぞ吉良!!」

「ああ」

 大至急取り逃がしたデカデンシアの追跡を試みようとした直後。

「・・・ちょっとまってください!!」

 突然、浦太郎が声を荒らげ二人を止めに入った。

「・・・どういうことなんですか・・・?」低く震えた声を発しながら、浦太郎は恋次と吉良の方へ驚愕に満ちた顔を向ける。

「・・・今のは・・・・・・ティーダ・ランスター一尉・・・・・・紛れもなくティアナのお兄さんでしたよ!」

 問われた途端、恋次と吉良は互いに険しい顔となる。やがてその表情を崩さず、厳粛にある一つの事実を口にする。

「俺ら死神っつーのは、背後から一撃で頭を割るのが(ホロウ)退治のセオリーでな・・・その理由は大きく別けて二つある」

「ひとつは戦いに於けるダメージを最小限に減らす為という合理的な理由・・・そしてもうひとつ、重大な理由がある。一撃で倒し・・・(ホロウ)の正体を決して見ないようにする為だ」

「どういう事ですか? なんなんですか。(ホロウ)の正体って?」

 気になる(ホロウ)の正体。浦太郎が食い下がると、吉良は端的に答える。

(ホロウ)というのは全て――――――元は普通の人間の魂だったものなんだ!」

「え!?」

 

           *

 

ミッドチルダ都内 ティアナのマンション

 

 ピンポーン! 自宅で療養中だったティアナの部屋へ夜分遅くに来客が。大方予想を付けながら尋ねてきた人物を確かめると、案の定ティアナの数年来の親友であるスバル・ナカジマだった。

『ティアー、あたしあたし!』

 やっぱりスバルか・・・。長い付き合いゆえに彼女の考えが何となく読めてしまう。ティアナは鍵を開けると、スバルを出迎える。

「どうしたのよこんな夜更けに?」

「へへへ。ちゃんと安静にしてるかどうか気になっちゃって。それとね・・・じゃじゃーん! ナカジマ家特性の肉じゃが! ギン姉が多く作り過ぎたからティアにも持ってけーって!」

「わざわざいいのに。でもありがとう、ちょうどお腹空いてたところだし入って」

「はいはーい♪」

 

           *

 

同時刻 機動六課 ミッドチルダ地上隊舎

 

 死神からもたらされた真実。悪霊である(ホロウ)の正体が元々はただの一般魂魄、すなわち死んだ人間の魂であった事。幸か不幸か、浦太郎はユーノからこの話をあらかじめ聞かされておらず、今の今まで知らずにいた。

 矢も盾もたまらず浦太郎は珍しく感情を高ぶらせ、近くにいた恋次の胸ぐらを思い切り掴み鬼気迫る顔で尋問した。

「―――ど・・・どういうコトですか! 普通の人間って! そんなの僕聞いてませんよ! あいつらはバケモノなんでしょ!? 倒さなきゃならないモノなんでしょ!?」

「あぁそうだよ!! ()()()()()()()()()! ()()()()()()()()()!」

「けど、元は人間って・・・!?」

「恨みや悲しみ、現世に想いを残す者の魂はなかなか死神によって『魂葬(こんそう)』される事無く放置される。そして自ら、あるいは先んじて(ホロウ)となっているモノに取り込まれ、新たに(ホロウ)となるんだ」

「そんな―――」

 吉良の言葉に大きなショックを抱き言葉を詰まらせる。恋次は胸ぐらを掴んでいた浦太郎の手を解き、襟元を整えるとやや焦った様子で口にする。

「ここで口論してる暇はねえ! ティアナの元へ向かうぞ。じゃねえとアイツが――――――死ぬ。」

 

           *

 

ミッドチルダ都内 ティアナのマンション

 

 夕食を終えたティアナとスバル。年頃の娘らしくガールズトークに花を咲かせていた折、バスン! という不自然な物音を聞きとった。

「な・・・・・・」

「何? 今の・・・―――音・・・」

 物音がした方へ振り返る二人。そのとき、ティアナの眼に真っ先に映ったのは床に無造作に転がる写真立てだった。

「ああっ! 兄さんの写真が!」

 慌てて写真立てを拾い上げるティアナ。写真には幼き頃の自分が無邪気におもちゃの銃を持ち上げており、その横には優しく見守る兄・ティーダの姿が写っていた。

「―――・・・!?」

 だがそのとき、ティアナは手にヌルっとした感触を覚え目を見開く。

「ティア、どうかした?」

 彼女の様子が気がかりとなりスバルがおもむろに声をかける。

「・・・何これ・・・・・・? なんか・・・―――血・・・・・・みたいなものが・・・」

 写真立ての後ろに付着した紅色の血液を目の当たりにし、ティアナは言葉を詰まらせていた・・・次の瞬間。

 

 ―――ドン!

 

 体の中心を抉り出すような強烈な衝撃が全身に走った途端、ティアナは白目を剥いて後ろへとひっくり返った。

「ちょっ・・・ちょっと! 何!? どうしたのティア!!」

 あまりに唐突な事態にスバルは訳が分からず声を荒らげる。このとき、ティアナの意識は完全に失われていた。

 

 ティアナの身に危険が及んだ頃、逃走したデカデンシアの足跡を追っていた恋次は、浦太郎を背に乗せて走る吉良とともにビルからビルへと移動していた。

「あの魔導虚(ホロウロギア)が・・・・・・肉親(ティアナ)を襲う!?」

魔導虚(ホロウロギア)も元をただせば(ホロウ)だからな」

「でも(ホロウ)ってのはお腹を空かせて魂を食べるんですよね! 無差別なんじゃないんですか!?」

「無差別に人間や他の霊魂を襲うのは・・・既に肉親を喰い殺した(ホロウ)だよ。」

「・・・・・・な・・・・・・」

 吉良の一言に絶句する浦太郎。そしてさらに、吉良は話を深く掘り下げる。

「あと一つ勘違いしないで欲しいんだが・・・(ホロウ)は決して空腹ゆえに魂を喰らうわけじゃない。苦痛から逃れるために魂を喰らうんだ」

「苦痛?」

(ホロウ)とは即ち『堕ちた魂』だ。死神に尸魂界(ソウル・ソサエティ)へと導かれなかった魂。とりこぼされた魂。(ホロウ)から守ってもらえなかった魂。それらが堕ち中心(こころ)を亡くして(ホロウ)となる。そして(ホロウ)となった魂は亡くした中心(こころ)を埋めるため、生前最も愛したものの魂を求めるんだ」

「よく夫が死んだ数年後に後を追うように倒れる妻の話なんかを耳にするだろ。あれは(ホロウ)になった夫に魂を喰われた妻の姿だ」

 次々と明るみになる(ホロウ)にまつわる新事実。本来であればユーノから教わるべき事だったが、浦太郎は窺うタイミングを逸してしまい現在に至る。その結果が今であり、ティアナを危険に晒す結果となった。

 思わず無言となる浦太郎。恋次はショックを受けている彼に更に重い事実を突き付ける。

「・・・昼間・病院でティアナに会ったとき、首筋に大きな痣があっただろ。ありゃさっきの魔導虚(ホロウロギア)が掴んだ跡だ」

「!!」

「もしやと思ってなのはに訊いたんだ。『あいつに家族はいるか?』って。そしたらなのはは『年のはなれた兄貴が一人だけいた』って答えた」

「彼女の肉親がその『年のはなれた兄』―――ティーダ・ランスター一人ならば、間違いない。狙われるのはティアナなんだ!!」

(ティーダ一尉が・・・・・・(ホロウ)に堕ちるなんて!?)

 信じ難く、受け入れ難い話だった。しかし現実として、ティーダの魂は悪霊へと成り果て実の妹を喰い殺そうとしていた。

 

           *

 

同時刻 ミッドチルダ都内 ティアナのマンション

 

 ゴトン―――!

 ティアナが意識を失った直後、スバルは正体不明の敵によって襲われていた。

 強い力で吹っ飛ばされたと思えば、左肩にかけて出血が見られ、スバルは達まち動揺を露わにする。

「・・・な・・・なに!? 何なのコレ・・・? なんで血が・・・一体なにが・・・おき・・・・・・・・・」

 ダン! 状況を把握する暇なく目の前から加わる圧力。

 押し倒されたスバルが一歩も動けずにいる中、ティアナは壁の隅で縮こまりながら、幻術魔法『オプティックハイド』で姿を周りの景色と同化させ、親友へと襲い掛かる魔導虚(ホロウロギア)・デカデンシアを見つめる。

(・・・な・・・なにが・・・何がどうなってるよ・・・!? この威圧感・・・この不気味な容姿・・・こいつも魔導虚(ホロウロギア)なの・・・?)

 恐怖に怯える思考と心情。ティアナの視界には、力なく床に伏せたまま動かない自分の身体から生えた一本の鎖が胸と直結しているという奇怪な事態が気になった。

(わたしの体・・・・・・なんであんなところにあるの・・・わたし・・・・・・一体どうなっちゃったの・・・? ・・・頭がクラクラする・・・この鎖・・・・・・何なの・・・? すごく・・・・・・苦しい・・・・・・ち・・・・・・ちぎっちゃいたい・・・)

「ふ、うッ・・・うお・・・っ」

 理解の追いつかない事態に困惑している間にも状況は更に悪くなる。デカデンシアの魔の手がスバルへと襲い掛かり、一歩も動けない彼女はデカデンシアによって首を絞められ、今にも窒息しそうだった。

「スバル・・・!!」

 このままでは彼女が死んでしまう。息の上がる苦しい体に鞭を打ち、ティアナはゆっくりと立ち上がる。

(・・・そうよ・・・わたし・・・・・・なにボーッとしてるのよ・・・スバルを助けなきゃ・・・!)

 いても経ってもいられなかった。決意した途端、勇気を振り絞った彼女はデカデンシアへと体当たり。

「このバケモノ!!」

 身を挺してスバルからデカデンシアの腕を解放。直ぐに半ば意識を失いかけているスバルの身を案じる。

「す・・・スバル大丈夫!? 早く逃げなさい今のうちに!」

「はあっ・・・は・・・・・・」

「スバル! どうしたの! きこえないの!? 『・・・ムダだよティアナ・・・』

 必死で呼びかけるティアナの言葉を遮り、デカデンシアが横槍を入れて来た。

『今の彼女には俺たちの声は届かない』

「―――どうして・・・・・・あんた私の名前・・・知ってるのよ・・・」

『・・・・・・・・・・・・俺の声も忘れたのか・・・・・・俺だよ、分かるだろ?』自分を分かってもらおうと顔を近づける。

「いやぁ来ないで!!」その途端にティアナから拒絶された。堕ちたティーダの魂はこの事実に承服しかねた。

『・・・悲しい・・・悲しい・・・悲しいなティアナ!!』

 デカデンシアの鋭い爪がティアナへと向けられる。

 

 ゴツン―――!

 

 一瞬目を瞑ったティアナ。だが痛みなどは一切感じない。恐る恐る視界を開けてみると、目の前には恋次と吉良、浦太郎の三人が共同でデカデンシアの爪を受け止めていた。

「・・・恋次さん・・・吉良さん・・・浦太郎さんも・・・どうして・・・?」

「おめえら管理局員が全ての次元世界の治安を守るようにな、死神っつーのは全ての霊魂を守るためにあるんだよ! 決してえり好みせず、どんな霊も平等に助ける! そのためにはどこまでも駆けつけ―――その身を捨てても助ける覚悟をもってるんだ!」

『死神め・・・・・・・・・・・・邪魔をする気か・・・!』

「・・・(わり)ィな・・・・・・それが俺の仕事なんでね・・・ティアナを殺したけりゃ・・・先に俺を殺すことだな!」

 語気強く宣言する恋次。デカデンシアは恋次から漂う霊圧に臆した様子で一旦後退し、牽制を図る。

(攻撃・・・・・・してこねえ・・・俺の霊圧で怯んでくれたか・・・?)

 デカデンシアの動きに警戒しつつ、近くで血を流して倒れるスバルを一瞥。

(・・・スバルか・・・家に来てて巻き込まれたのか・・・・・・クソっ・・・!)

「だいじょうぶかい?」吉良と浦太郎がティアナの安否を気遣い寄って来た。

「は、はい・・・あの・・・わたし・・・どうなったんでしょうか・・・」

「吉良さん、これって!?」浦太郎は直ぐにティアナの胸の中心に生えてある一本の鎖に目が行った。

 これが意味するものが何かは死神である吉良が最も理解しており、厳しい現実を目の前のティアナに告げる必要があった。

「ティアナ・・・・・・落ち着いてよく聞くんだ。君の胸に生えているのは『因果(いんが)(くさり)』と言って、今の君は魂魄の状態。すなわち、肉体から魂が抜け落ちてる状態なんだ!!」

「え!?」

 あまりにショッキングな話に絶句するティアナ。

『ティアナは俺と一緒に暮らすんだ! 誰にも―――邪魔はさせない!!』

 すると、デカデンシアが一瞬の隙を突いてティアナの因果の鎖を握りしめ、彼女を人質にとった。

「キャアアアア」

「「ティアナ!!」」

「このクソヤロウ!!」

 恋次が斬魄刀で斬りかかる。咄嗟にデカデンシアはコーティング加工された尻尾で刃を受け止め攻撃の威力を削ぐ。

(なんだこいつの皮膚は・・・!? 刃が通らね・・・)

 ドン! 間隙を突いたデカデンシアの攻撃が通り、恋次はマンションの壁を突き破って外へと放り出された。

「クソ・・・がッ」

 霊子で足場を固定させ、額から派手に血を流す恋次を嘲笑うようにデカデンシアはティアナをこれ見よがしに見せつける。

『どうした・・・・・・威勢のいいセリフを吐いた割には・・・随分と動きが鈍いじゃないか・・・死神とやらも存外大した事ないなァ!!』

 言うと、仮面突起物状の回転式弾倉を動かし銃口付近に魔力エネルギーを充填。デカデンシアの足下に水色のミッド式魔法陣が浮かび上がると、空中に複数の魔力スフィアを形成する。

(なんだこりゃ・・・!?)

(あの魔法は・・・・・・マズい・・・!!)

 魔法について十分な知識を持たない恋次とは対照的に、デカデンシアが発動した魔法について看破していた浦太郎が危惧の念を抱く。

 次の瞬間、デカデンシアの咆哮を合図に計20発もの魔力スフィアが一斉に恋次目掛けて同時発射された。

 数の多さ、的確に標的へと飛んでくる誘導力、恋次は避ける事もままならずその着弾を許して撃墜された。

「「|阿散井くん(恋次さん)!!」」

「あぁ・・・・・・!」

 自分が得意とする精密射撃魔法を駆使するデカデンシアによって恋次が傷ついた。それがティアナには何よりも許せなかった。

「は・・・放しなさいよ・・・! さっさと放して・・・!」

 強い握力で魂魄である体を握り締めるデカデンシアから離れようと必死で抵抗する。そんなティアナを見るうち、デカデンシアの心は切なさを抱く。

『・・・・・・ティアナ。本当に・・・俺を忘れてしまったのかい・・・? 俺だよ・・・! ティアナ・・・!!』

 妹に分かって欲しい。デカデンシアは吉良によって壊された仮面部分を露わにし、その素顔の一部をティアナへと向けた。

「・・・に・・・兄さん・・・!?」瞳孔を見開きただただ目の前の光景を疑った。

 

「阿散井くんっ!! しっかりしろ阿散井くん!!」

「う・・・・・・うるせえぞ」

 撃墜された恋次の身の上を確認する吉良だったが、その口調からも分かる通り無事であることが確認された。

 安堵する反面、人の心配を無碍にする様な言い方に苛立ちを抱いた吉良は本気で怒りを露わにする。

「起きるなりその言い草は何だ!? なんて様だ! 隊長格ともあろう死神が魔導虚(ホロウロギア)一体に油断するとは!」

「ゆ、油断なんかしてねぇよ!! ただ・・・アイツの使った魔法が速くて避け切れなかっただけだ!!」

「クロスファイアーシュート。複数の誘導弾によって空間制圧を行う事を目標として組まれた中距離誘導射撃魔法。ティーダ一尉の十八番だった魔法です」浦太郎がティーダの使った魔法の説明を加える。

「初見であの魔法を破るのは困難だ。ここは僕がサポートしますよ」

 

「ホ・・・ホントに・・・兄さん・・・・・・なの?」

 夢が現か、その真偽は重要じゃない。確かな事はひとつ、目の前にいるのは紛れも無く10年前に死別した最愛の兄・ティーダである事だ。

『・・・ああ。そうだよティアナ。やはり忘れてなんかいなかっ・・・『なんでよ・・・?』

 嬉しさに感極まるティーダだったが、その直後自分の言葉を遮る形でティアナが声を荒らげた。

「なんでスバルや関係ない人達を傷つけたりするのよ・・・!? 兄さんは人を傷つけるような人じゃなかった! どうしてよ兄さん・・・!」

『どうしてだと・・・? 寂しかったのさ・・・だんだんとお前が俺の事を忘れてしまうのが・・・・・・』

「――――――え・・・?」

『俺が死んでからというもの・・・おまえは毎日俺の為に祈ってくれていたね・・・ずっと見ていたんだよ・・・・・・ティアナの祈りだけで全てが救われる気がしていた・・・だがそれから数年ほどして、おまえはあのスバルと言う女と友達になった。その頃からおまえが・・・俺の為に祈る回数はどんどん減っていった・・・! そして俺が果たせなかった夢を、執務官となったおまえはとうとう―――俺の為に祈ることをしなくなった!!』

「――――――・・・!」

『つらかった・・・ティアナの心から・・・日毎(ひごと)に俺の姿が消えていくのを見るのは・・・! だから俺は―――』

「ち・・・・・・ちがうわ兄さん! それは・・・『いいかティアナ!』

 今度はティアナの言葉を遮り、デカデンシアは妹の脆い体を掴み掛かると鬼気迫る勢いで懇願、もとい脅迫した。

『少しでも俺を想う気持ちがあるのなら、これ以上俺を裏切るなぁ!! おまえは俺の言う通りにしていればいいんだ』

「やめてよ兄さん! 気持ちはわかるけど、だからってこれ以上他の人を傷つけるのは―――『黙れっ!!』

 一喝し、自分に歯向かったティアナを鷲掴む。

『誰の所為でこんなことになったと思ってるんだ・・・!! お前だろうティアナ・・・!』

「ッあ・・・」

『おまえは俺の言うことを聞くんだ! さもなくば―――お前から殺してやる・・・!』

 理性を失くし怒りと悲しみに捕われたデカデンシアは魂魄である妹の体を力いっぱい握り潰そうとする。

「やめるんだティーダ一尉ッ!」

 危機へと駆けつけた浦太郎。手持ちのフィッシャーマンでデカデンシアの背中を何度も何度も突き刺し、ティアナを解放しようとする。

 鋭い痛みに耐え切れずティアナをその手から放すも、直ぐに取り戻そうと手を伸ばす。

「咆えろ蛇尾丸!!」

 そこへ恋次が割り込み蛇尾丸の刀身で右腕を斬り落とす。

『グアアア・・・・・・亀井浦太郎・・・そして死神・・・・・・揃いも揃って何故俺の邪魔する・・・・・・!?』

「・・・あなたのシスコンは度を超えているよ・・・本当に妹を想う気持ちがあるなら、どうして彼女の心を見ようとしないんだ・・・? 最早彼女は君に守られる少女じゃない。一人の魔導師として、一人の女性として、彼女は自分の道を歩いている。それを何故理解できないんだ!?」

『う・・・おおおオオオオオ・・・!! 黙れ黙れ黙れッ―――!! 両親が事故で死んでから俺たち兄妹は二人でずっと生きてきたんだ! ティアナを育ててきたのは俺だ!! 守ってきたのも俺だ!! ティアナは俺のものだ! 誰にも渡しはせん!! 渡すものかァ!!』

「兄さんッ!!」

 荒れ狂う心。ティアナの声など最早聞こえない程に怒り狂ったデカデンシアは、説法を解いた浦太郎へと食らいつこうとする。

 それを阻んだ恋次は蛇尾丸の刃でデカデンシアの歯を受け止め持ち堪える。

「ふざけんなよシスコン野郎・・・ティアナはティアナだ! 誰のモノとか・・・そんなんじゃねえだろ・・・!」

 (ことごと)く身勝手な事を口にし続けるデカデンシアへ喝を入れ、恋次は鈍った敵の体を斬りつける。

「やめて!! 兄さんを斬らないで!!」魔導虚(ホロウロギア)となった兄を斬る事に躊躇しない恋次へ悲痛な声で呼びかけるティアナ。

「馬鹿言ってんじゃねえ!! 俺たち死神が斬らなきゃな、てめえの兄貴の魂は永遠に救われねえんだ!!」

 一度(ホロウ)となった魂が元に戻らない以上、死神は(ホロウ)を斬らなければならない。それが堕ちた魂を唯一救済する方法なのだ。

『ウオオオオオオオオオオオオオ』

 劣勢となってきたデカデンシアは事態打開を図り、オプティックハイドで姿を眩ませるとともに、先ほど恋次を苦しめたクロスファイアーで再び攻撃を仕掛ける。

 容赦なく飛んでくる無数の誘導弾。恋次は斬魄刀を振り回した程度では捌き切れない正確無比な射撃魔法に終始苦戦する。

(この数と精度は半端じゃねえ!! 捌き切れねえ!!)

 忽ち追い詰められる恋次。それをフォローしようと、浦太郎がフィッシャーマンを抱えてデカデンシアへと飛んできた。

「いい加減に目を覚ませッ!!」

『貴様もひっこでいろ!!!』

 ドン!! 尻尾で浦太郎を近くのビルへと叩きつけ戦闘不能へと陥れる。

『ティアナは俺のものだ! すべて! 俺はティアナの為に生きた!! だがティアナは! 俺の為に生きてはくれない!! ならばせめて・・・』

 言うと、ティアナの方へ振り返り迷う事無く彼女の魂を喰らわんと飛び付いた。

『俺のために死ねえ!』

「やめろ!!」

 

 ドン―――ッ。

 

 恋次を始め、吉良も、そして浦太郎も全員が目を疑った。

『・・・・・・ティ・・・・・・・・・アナ・・・・・・?』

 何よりも一番驚いたのはデカデンシアだった。ティアナへ食らいつこうとした瞬間、彼女は逃げる素振りは一切見せず、むしろ自分から進んで受け入れたかの様に近づいた。

「・・・ごめんなさい・・・・・・兄さん・・・・・・」

 弱々しい声で呟くと、肩から血を流したティアナが堕ちた兄を優しく抱きしめながら謝罪する。

「わたしのせいだ・・・・・・私がもっとちゃんと兄さんのこと考えてたらこんな事にならずに済んだのに・・・最初のころは私も毎日祈ってばかりだった・・・・・・でもそれじゃいけない・って思ったんだ。私が悲しんでるところばかり兄さんに見せちゃいけないって・・・それじゃ兄さんが安心できないから・って・・・」

 言うと、デカデンシアの仮面から窺える兄の目を見ながら―――ティアナは潤んだ瞳で声高に主張する。

「だから証明したかったの! 兄さんから教えてもらった魔法で私が兄さんの叶えられなかった夢を叶えて、兄さんの分まで幸せです! だからもう心配しないでって、そう言う姿を見せたかった!」

『・・・・・・!』

「だけど・・・それが兄さんを淋しくさせてたなんて・・・私ちっとも・・・気付かなかった・・・ほんとに・・・・・・バカみたい・・・・・・」

『ちが・・・ちがう違う違うッ! う・・・ウワアアアアアアアアアアア!!!』

 妹の言葉に心が揺れる。デカデンシアはティアナを離すと、顔を押さえながら発狂し苦しみ喘ぎ始めた。

「これは、どういう事ですか!?」

 突然の事態に驚く浦太郎は吉良に事情の説明を求める。

「おそらく彼は今・・・自分の中の(ホロウ)に抗っているんだ。彼は自分の意志で(ホロウ)になったわけじゃない。スカリエッティの手にかかって無理矢理(ホロウ)に取り込まれ、魔導虚(ホロウロギア)になったんだろう」

「なぜそんな事を?」

「おそらく、スカリエッティは僕ら死神の存在を認知しているんだ。その僕らが機動六課と接触した事も把握している筈だ。ならば、六課の戦力を潰す為に刺客を放ってくることもまた必定だ。その為にティーダ・ランスターの魂を利用し、刺客として差し向けたんだ。だが彼は今必死でその(ホロウ)と戦っている。妹の為に―――」

『ぐあああああああああああ・・・てぃ、ティアナぁぁぁ!!』

 失いかけていた理性が少しずつ戻り始める。デカデンシア、いやティーダ・ランスターは取り込まれていた己自身の魂をもう一度闇の中から引きずり上げると、素顔を覆っていた仮面を自ら打ち砕いた。

 ティーダが己の中の(ホロウ)に打ち勝ち、素顔を見せた瞬間―――安堵したティアナは一筋の涙を流し破顔一笑。そのまま気を失った。

「ティアナ!!」

 恋次は大急ぎで彼女の元へ駆け寄り、吉良へと問いかける。

「吉良! 助けられるか!!」

「胸の因果の鎖は切れていない・・・こん睡状態だがまだ間に合う。スバルと一緒に僕が治療する」

「頼むぞ、元・四番隊」

「一体いつの話をしているんだ・・・」

 吉良の手にかかればひとまず安心だろう。そう思っていると、本来の心を取り戻したティーダは涙を流し、深く項垂れていた。

『ああ・・・ティアナ、俺は本当は気付いていたんだ・・・おまえが俺を心配させないために祈るのをやめて俺の夢を必死で叶えようとしていたことを・・・でも・・・それでも祈っていて欲しかったんだ・・・俺のために祈ってくれている間だけは・・・おまえの心は俺だけのものだったから・・・』

「―――あなたは・・・一体彼女の何を見ていたんですか・・・」

 そのとき、問いかけた浦太郎が持ってきたのはおもちゃの拳銃だった。

『そ、それは―――』

 ティーダは目を見開き驚愕。そのおもちゃは、小さい頃にティアナの誕生日プレゼントとして自分が買った物だった。

「見覚えあるみたいですね。あなたがプレゼントした物でしょう。それがあるって事は、ティアナはずっとあなたの事を想い続けてたって証拠じゃないんですか?」

 聞いて愕然とする。言葉を無くすティーダに、浦太郎は更に隣で語りかける。

「―――同じなんですよ。死んだ者も残された者も。どっちも同じだけ淋しいんです・・・! 自分一人だけが淋しがってるなんて・・・そんな勝手な思い込みしないで下さい・・・!」

『―――気付かなかった・・・俺は・・・俺は・・・』

 つくづく身勝手だったと深く自省。これ以上彼女が泣いたり傷つかない為に、ティーダは恋次へ懇願する。

『・・・死神よ。俺を斬って欲しい。このままではいずれまた自分を失って怪物となりティアナを襲う。だから今、少しでも正気を保っている間に消えておきたいんだ・・・』

「ティーダ一尉・・・だけどそれは・・・「浦太郎くん!」

 当惑する浦太郎へ吉良が声をかける。ティアナとスバルの治療を同時に行いつつ、淡々と呟く。

「彼の判断は正しい。一度、(ホロウ)になったものの魂は二度と元には戻らない」

「吉良さん・・・ですが!」

「・・・ユーノさんから教わらなかったのかい?  (ホロウ)を“斬る”ということは“殺す”ということじゃないって」

「俺ら死神の持つ斬魄刀はな、(ホロウ)になった奴の罪を洗い流してその魂を救済する。そして魂の故郷である尸魂界(ソウル・ソサエティ)へと行けるようにする。俺ら死神はその為にいるんだ」

 吉良に便乗した恋次は、自ら昇華を受け入れたティーダへと歩み寄ると、彼の心臓付近に刃を貫こうとする。

「・・・まって・・・兄さん・・・・・・」

 そのとき、意識を失っていたティアナが旅立とうとする兄へと弱々しい声で呼びかける。

「兄さんが死んでから・・・・・・私は我武者羅に力が欲しかった・・・・・・・・・・・・兄さんを馬鹿にした奴を見返したいって・・・・・・そんな幼稚な復讐心を燻らせて・・・・・・」

『ティアナ・・・』

「だけどね・・・・・・スバルと出会って・・・・・・機動六課に入って・・・・・・私変わったの・・・・・・私が本当に力を求めていたのは誰かを見返す為じゃない・・・私みたいな悲しい目に遭ってる人を一人でも多く助けたかったからなんだって・・・・・・兄さんが私に教えてくれた魔法はその為にあるんだって・・・・・・今ならよくわかるよ・・・・・・」

 双眸から流れ落ちる涙。潤んだ瞳で妹は生前と全く変わりない優しい表情を浮かべる兄へ最期の言葉を掛ける。

「・・・お兄ちゃん・・・いままでもこれからもありがとう・・・・・・いってらっしゃい・・・・・・」

『ああ・・・・・・いってくるよ』

 

 ドス―――。

 

 恋次の斬魄刀に貫かれた瞬間、ティーダの魂は空気に溶けながら粒子となってゆっくり、ゆっくりと天へと昇って行った。

「う・・・うあああああああああああああああああ」

 本当の今生の別れとなったティアナの心は張り裂けそうだった。幼い子供の様に声を嗄らして泣き叫ぶ彼女を浦太郎が確りと抱き寄せる。

 さながら浦太郎にティーダの面影を感じられたティアナは、忌憚なく声が出なくなるまで永遠と泣き続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

参照・参考文献

原作:久保帯人 『BLEACH 1、22巻』 (集英社・2002、2006)

 

用語解説

※魂葬=死神によって尸魂界(ソウル・ソサエティ)へ送られる事。成仏と同義。

 

 

 

 

 

 

教えて、ユーノ先生!

 

ユ「今日はデバイスと斬魄刀についてそれぞれ説明するよ♪」

「魔導師が使用するデバイスは、一部を除いてはそれ自体が武器として成立しているのではなく飽く迄も魔法を行使する上で演算を補助する装置・・・文字通りの意味合いが強い」

「対する斬魄刀は、死神必須のアイテム。『(プラス)』を魂葬したり、『(ホロウ)』を昇華・滅却する為に使用する。そして個々特有の名前を持っていて、その能力は死神の数だけ多様だ」

一「今日の話・・・どっかで見たことある展開だと思ったら、前に織姫の兄貴と戦った時と状況が似ていたな」

織「ティアナちゃんも私と同じだったんだね・・・・・・なんだか私も久しぶりにお兄ちゃんに会いたくなってきちゃった」

一「じゃ、今度の休みに墓参りに行くとするか。俺もたまにはお袋と話したいしな」

ユ「『人は二度死ぬ』と言います。一度目の死は肉体が滅んだとき。二度目の死はすべての人の記憶が消えたとき。でも、三つ目の命は死なないんです」

一・織「三つ目の命?」

 その言葉の意味が気になる二人。ユーノはおもむろに答える。

ユ「一つ目の命が“人生”、二つの目の命が“想い出”、そして三つ目の命・・・・・・それは“魂”です。僕はこれを“心のDNA”と呼んでいます。その人が残した心を別の人が受け継ぎ、いずれ知らない人達にも、世代を越えていつまでも受け継がれていく・・・と、僕は考えています♪」

 

 

 

魔導師図鑑ハイパー!

 

鬼「どういうことだよ一体!!」

 デカデンシアとの戦いに参加できなかった鬼太郎は浦太郎に問い詰める。

鬼「なんで俺を呼ばなかったんだよ!! そんな大事な戦いなら俺を参加させるのが至極当然じゃねえか!!?」

 当時、鬼太郎はデカデンシア出現の際風呂に入ってゆったりと寛いでいた。

浦「しょうがないでしょう、ほんとに忘れてたんだって。第一先輩が来るといろいろとややこしくなりそうだったし・・・」

鬼「チクショウ~~~!! 俺だってカッコいいところ見せたかったんだからな!! なんだよ今日の話は・・・全部亀のいいとこどりじゃねえかァ!!」

浦「あんまり僻まないでよ。そんなに悔しかったら先輩ももっと自分を売り込むことしたらどうなの!?」

 そこで、鬼太郎は自らを売り込むための活動を開始した。

鬼「用心棒雇いませんかー! 俺がいればご自宅の防犯対策はもちろん、痴漢だって撃退しますよー!」

 町に出て地道にビラを配っての活動。これを目撃した恋次、吉良、浦太郎の三人は・・・・・・

恋「あいつは一体何がやりたいんだ?」

吉「僕が知る訳ないでしょう」

浦「売り込むって言葉通りの意味じゃないんだけどな・・・・・・やっぱ先輩って馬鹿だわ」




次回予告

は「魔導虚(ホロウロギア)が次元世界各地に現れ始めた二か月前、第181観測指定世界『プラスター』で謎の巨大爆発があった」
恋「俺たちは調査のため現地へ向かう事になったんだが、調査団は消えちまうし、謎の魔導虚(ホロウロギア)の大軍はぞろぞろ出てきやがるし・・・」
な「そのとき、絶体絶命の私たちの危機を救ってくれたのは―――」
ユ「次回、ユーノ・スクライア外伝・・・『その名は翡翠の魔導死神』。お楽しみに♪」






登場人物
ティーダ・ランスター
声:平川大輔
ティアナの兄。親代わりとして幼い彼女を育てていた。首都航空隊所属の一等空尉で執務官志望のエリート魔導師だったが、ティアナが10歳の時(『StrikerS』本編から約6年前)に21歳で殉職している。
彼の最後の任務は逃走した違法魔導師(詳細な設定は無い)の追跡・捕縛であり、対象の魔導師との交戦に敗れ殉職した。その際、心無い上司から魔導師を捕縛出来なかったことに関して非難され、その死は不名誉で無意味だったと侮辱される。そのことがティアナの心に傷を残し、過剰に力を求める原因となってしまった。
浦太郎とは士官学校時代の仲間で、浦太郎曰く頻りに妹の自慢ばかりをしていた程のシスコンだったという。
スカリエッティらの手で無理矢理魔導虚になってしまう。デカデンシアとなってから、その寂しさを埋めるかのようにティアナを襲った。最期はティアナの思いを受け入れ、恋次の斬魄刀で昇華された。






登場魔導虚
デカデンシア
声:平川大輔
ティアナ・ランスターを襲った魔導虚。
西洋のドラゴンの様な体つき、回転式拳銃の銃身を思わせる突起物のある仮面を持つ。正体は殉職したティアナの兄「ティーダ・ランスター」。ティアナを魂魄にした後に食いかかろうとしたが、駆けつけた恋次達によって防がれた。恋次に襲いかかろうとするが、正体が自分の兄だとわかったティアナが身を挺して止めた。一時的に正気を取り戻したデカデンシアは浦太郎に諭された後、恋次に止めを刺す様に懇願し昇華を受け入れた。
ティアナ同様に射撃と幻術魔法を得意とし、「クロスファイアーシュート」や「オプティックハイド」といった技を使える。加えて金属でコーティングされた強固な外皮「スティールスキン」で覆われており、対戦した恋次の斬魄刀の刃も通りにくかった。
名前の由来は、スペイン語で「退廃」や「堕落」などを意味する「decadencia」から。
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