アイドルは労働者(仮)   作:かがたにつよし

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多分、コミケ前最後の更新です。


8.規則は明文化されているからこそ、破る事が出来る。

ライブ翌日、未央の事が気になって、授業が終わるなり学校を飛び出して346プロに来た。

 

隣の部屋の雰囲気は、嫌でも伝わってくる。

稀に交わされるジョークとその笑い声。

昨日の出来事がフラッグシップ・プロジェクトの明るい未来を保障しているような、そんな雰囲気。

 

対して、こちらの部屋はどうだろう。

殆どのメンバーがレッスン等で出払っているとはいえ、電気も点いていない。

私がこの部屋に入ったときからそうだったし、私自身、電気を点けようという気にもならない。

しばらく経って卯月が来たが、それでも電気は点かなかった。

 

私と卯月の2人は何を話すわけでもなく、部屋のソファーに腰掛けもう一人を待つ。

本田未央、ニュージェネレーションズのヒトカケラ。

昨日のデビューライブ終了後、「アイドル辞める」と言い放ち去った彼女。

 

「未央ちゃん、来ますよね……?」

 

底抜けに人が良い卯月は、未央が来る事を信じている。

勿論、私も来て欲しいと願っている。

けれど、私が未央の立場になったとき、あんなに強い言葉をプロデューサーとユニットメンバーに放ってしまった翌日、何事も無かったかのように皆に会えるだろうか。

 

衝動的にやってしまったとはいえ、過去の自分の行動と今の自分の想いが相反する状況は、自分だけでは整理がつかない。

だからこそ、私達が未央を助けないといけない。

私達が未央に会わないといけない。

 

部屋の扉が開き、ガタイの良い大男が入ってくる。

武内プロデューサー、彼の表情にも私達と同じく明るさが無かった。

未央が来ていないのに、こちらに目を向けることはない。

私達が未央に会いたいといっても、こちらに任せるようにとの一言だけ。

 

「任せられない、任せられないよっ……!」

 

そんな勇気の無い目に。

そんな自信の無い背中に。

そんな輝きの無い表情に。

 

「何か言ってよ、何を考えてるか教えてよ、プロデューサー」

 

私の搾り出した声は誰にも届かない。

執務室に居たはずのプロデューサーは、私達がレッスンをしている間に黙って未央の家に向かっていた。

 

 

 

「凛ちゃん、ちょっと悪い事しませんか?」

 

レッスン後、卯月が意外な提案をしてきた。

純粋無垢で校則すら遵守していそうな卯月からこんな言葉が出てくるとは思わず、変な声で返事をしてしまった。

 

「不安を抱え込むと良い事がありません。解消にはちょっぴりの反抗と相談が大事です」

 

全く後ろめたさが感じられ無いので、今までも何度かやっていたのだろうか。

確かに、卯月は今までに何度か不安そうな表情を見せた事がある。

でも、それは一時だけで、次の日にはケロッと治っている事が多かった。

その卯月の秘密を覗いてみたくもあり、その提案に乗る事にした。

 

卯月に案内された先は1階の346カフェ。

346プロの定時も近く、閑散としつつあるそこには、2人の女性が待っていた。

 

「あっ、卯月ちゃーん! ちゃんと捕まえておきましたよ!」

 

1人は菜々さん。

アイドルと346カフェのアルバイトの二足の草鞋を履く人。

卯月と同じ17歳とは思えないほど言葉に含蓄があり、相談役として納得できる。

 

「今日は席の回転率について言わないと思ったら、こういうことですか菜々さん」

 

もう1人は安曇玲奈。

シンデレラプロジェクトと並行してスタートした”フラッグシップ・プロジェクト”唯一のアイドル。

アイドルに対して極端にビジネスライクな考えを持つと言う事で、プロデューサーから接触を控えるよう言われた人。

そんな玲奈に卯月は躊躇い無く向かおうとする。

 

「ちょ、ちょっと卯月!」

 

「凛ちゃんもこっちこっち、一緒に座りましょう」

 

卯月は足踏みをしていた私の手を掴むと、カフェの方に引っ張っていった。

 

 

 

「それで、今日の相談は何かしら」

 

私達が席に着くと、玲奈が口を開いた。

まるでこういうことには慣れっこだと言わんばかりの問いかけだった。

これが卯月の秘密なのだろうか。

 

「今日は貴女だけではなくて、渋谷さんまで来るなんて、何かあったのかしら」

 

「そうなんです、実は……」

 

卯月が昨日あった出来事と、今日未央が休んでいる旨を伝える。

反応を見るに、未央がライブ翌日に無断欠席したことは知っていたようだけれど、ライブの場で何が起こったかまでは知らなかったようだ。

玲奈が知らなかった事を卯月が伝える度、表情が険しくなってゆく。

 

「……私達は、どうすればよいんでしょう」

 

玲奈が額に手を当て天を仰ぐ。

ギィ、と椅子が嫌な音を立てたため、慌てて背を起こしていた。

 

「菜々さん、そろそろ私お金とっていいよね」

 

まさか、卯月の相談を受けるたびにお金を取っていたのだろうか。

卯月が少ないアイドルのギャラの内から玲奈に差し出す様を想像する。

あまり洒落にならない絵だった。

カツアゲが様になるアイドルと言うのも、どうかと思うけれど。

 

「だ、だめです! 私はプロデューサーにお忍びできてるんです。なのにプロデューサーに請求書を渡してしまったらバレちゃうじゃないですか」

 

「またタダ働きですね、玲奈ちゃん」

 

「ボランティアは金持ちの娯楽。私はそうじゃない、武内Pの接触自制令が解けたら一括で送りつけるわ」

 

A4のクリアフォルダに入っている複数枚の書類を示す玲奈。

きっちり請求書を作っているのは、プロデューサーの言うとおり、アイドルらしくないビジネスライクな一面だろう。

けれど、卯月のお願いに押されて一時的とは言えそれを曲げてしまっているのは、なんだか滑稽だった。

私がクスリと笑ったのを見た玲奈が、それを問う。

 

「思っていた人柄とちょっと違うな、って」

 

「そうですよ、凛ちゃん。安曇さんはとっても良い人なんです」

 

卯月がダメ押しとばかりに私の言葉を肯定する。

当の本人は心外だと表情が訴えていた。

 

「色々演技しているアイドルとしての仕事中ならともかく、普段はこんな感じよ。貴女達がどう思っているかは分からないけれど」

 

シンデレラプロジェクトのメンバーならともかく、別プロジェクトのアイドルの普段なんて、中々分からない。

まだ346プロに所属して3ヶ月も経っていないので、玲奈だけではなく、他の先輩アイドルの普段も知らない。

プロデューサーの取り計らいで、仕事モードの玲奈を見たことはあったけれど、こうしてカフェで寛いでいる姿は初めて見る。

 

「さて、本題に入りましょう。今の本田未央の状況に対して、貴女達がどうすれば良いか」

 

卯月のことだから、長電話のように状況を話して終わりかと思っていた。

溜め込まずに話すだけでも、いく分か心が軽くなる。

けれど、卯月が求めたのは問題に対する明確な解決手段。

私達がとるべき具体的なアプローチ。

 

 

 

「目標は原状回復、本田未央の復帰。状況の原因は昨日のライブで本田未央の想像よりも観客が少なかった事。初ライブにて過剰な観客数を想像するに至ったのは、Happy Princessのバックダンサーを務めた際、そのライブの観客数がアイドルの基準値だと思い込んだため。その観客数を見込んで同級生に声掛けしたが、閑散とした初ライブで恥をかいたと思っている」

 

一つ一つ、言い上げる度に玲奈は指を立てる。

その筋道だった説明には妙に説得力があったが、少し意図的な部分も感じる。

卯月は玲奈の言葉を丸呑みしているようだけれど、彼女自身が私達に与えた影響を全く考慮していない。

 

「フラコンの舞台も相当効いてると、菜々は思うんですけれど……」

 

私が指摘する前に、菜々さんが口を開いた。

玲奈はそれも想定の範囲内だったようで、詰まることなく口を開く。

 

「勿論、可能性としては捨てきれないわ。765プロオールスターズと私の撮影はエキストラとはいえ、それなりの動員数があったし、ニュージェネレーションズの初ライブと同日のフラコンイベントは天海春香の参加もあって、観衆の数は多かった」

 

けれど、と玲奈は自分の影響を否定する。

 

「本田未央と同様に私の撮影を見学したラブライカや貴女達には全く影響がないわ。ラブライカとニュージェネレーションズの違いはHappy Princessのバックダンサーを務めたか否か、本田未央と貴女達の違いは同級生に大々的に声を掛けたか否か、それだけじゃないかしら」

 

まるで、生物実験の説明のように淡々と否定した。

私達やラブライカを本田未央の対照実験であるかのような物言い。

 

「そんな。皆それぞれ違う人間でしょ? 物事の受け取り方だって違うかもしれないのに、何で……」

 

そう割り切ってしまえるのか。

私達は実験動物じゃなく、人間だ。

 

「本田未央の人間性を議論するのは、この場の目的ではないし、それを確かめるためには彼女に会って話をしないといけないけれど、それが出来ない以上、本田未央を一般化して議論をすべきじゃないかしら」

 

私が再度反論しようと口を開きかけたとき、何か柔らかいものに口を塞がれた。

 

「まぁまぁ、凛ちゃんも熱くならずに、とりあえず安曇さんのお話を聞きましょう。それからどうするかは、凛ちゃん達が決めればいいんです」

 

ねっ、と私の口を人差し指で押さえながら話す菜々さん。

彼女と触れている私の唇から熱気が抜けていくようで、少し落ち着くことが出来た。

玲奈には玲奈の考えがあり、卯月はその考えを尊重しているけれど、私がその考えに従うか否かは、私自身が決める事ができる。

まずは、卯月の信ずる玲奈の考えを聞いてみよう。

 

私の前から菜々さんが避けると、対面に座っている玲奈が視界に映った。

私の感情が落ち着いていることを確認すると、玲奈は頷き、話を続ける。

 

「本田未央は、初ライブで恥をかいたこと及びその意識によって上手くライブが出来なかったことを負担に思っていると仮定したい。であれば、解決方法は”ライブは成功だった、上手く行った”と本田未央に思わせること」

 

 

 

私は未央が感情的に放った言葉により未央自身が縛られているのかと考えていたが、玲奈はそうではなく、未央を感情的にした事象にこそ未央が縛られていると言う。

言葉は文字と違って一時限りのもの。

それがどのような意味を持つとはいえ、新しい言葉で塗りなおす事も出来れば、時間と共に風化させることだって出来る。

結局のところ、未央の心の整理さえ付けば、未央から言葉については謝ってくるだろうとのことだ。

 

「CDの販売枚数や観客動員数といった定量的な指標より、ファンレターやネットの声など本田未央の感情に訴える材料を持っていくといいと思うわ」

 

玲奈は卯月の願いどおり、解決手段を示した。

それを選択するかは、私達の自由。

卯月は玲奈が提示した手段に賛成するだろうけれど、私がうんと言わない限り実行しないだろう。

玲奈の手段には思うところがなくはないが、それ以上のアイデアは今のところ私にはない。

 

「卯月、私も玲奈の考えに賛成するよ。……卯月?」

 

いつもなら直ぐに返事をくれる卯月が明後日の方向を向いたまま固まっている。

卯月の目線を追うと、建物の入口に大男が居た。

 

「プロデューサー……さん……」

 

卯月の言う”悪い事”が露見した瞬間だった。

 

 

 

ずんずんと、プロデューサーがこちらに歩いてくる。

あわあわと慌てる卯月、隙を見て逃げ出そうとしている菜々さん。

そして、プロデューサーを横目に見たままピクリとも動かない玲奈。

 

「……皆さん、こんな時間にどうかされましたか」

 

皆さん、と言いつつ玲奈だけを真っ直ぐに見据えて問いかけるプロデューサー。

玲奈は定時になるといつの間にか居なくなる事で有名だ。

平日の放課後や土日にしか346プロに顔を出さない学生アイドルは彼女を見たことが無いことも多い。

そんな玲奈が、定時を回っても346プロの敷地内に、しかも、接触自制をお願いしているシンデレラプロジェクトのメンバーと一緒に居る。

プロデューサーから見れば、違和感しかないだろう。

 

「ちょっとした、定時後のコミュニケーション、そう”女子会”です」

 

これを女子会といってよいのだろうか。

プロデューサーの眉間に皺が寄る。

 

「女子会、ですか?」

 

女性に精通している訳ではなさそうだけれど、女子会がこういうものではないことは知っている様子。

玲奈が適当な事を言って煙に巻こうとしているけれど、そうは行かないと思う。

 

「わ、私が安曇さんに相談に乗ってもらっていました」

 

プロデューサーが固い表情のまま詰め寄ると、卯月があっさりゲロった。

やっぱり、卯月は悪い事をするのに向いていない、根が正直すぎる。

玲奈が下手な言い訳だけれどかばってくれているのだから、それに乗ればよかったのに。

 

「相談と言うと、本田未央さんのことでしょうか」

 

「ええ」

 

卯月がゲロって誤魔化す必要がなくなったのか、玲奈が答える。

 

「何かを始めたとき”こんなはずじゃなかった”と思うことは誰もが繰り返し通る道です。武内Pも特別な事象として重く取り扱うのではなく、もう少し気軽に対応してみてはどうでしょう。こんな風に相談に乗るとか」

 

余っている席を引いて、プロデューサーに座るよう促す。

いつも通り、首に手を当て少し困った表情をしながら、その椅子に腰掛ける。

 

「……本田さんの家に行ってきました」

 

タップリと間をおいて、プロデューサーが話し始めた。

私達がレッスン中に未央の家に行っていたのなら、せめて何か教えて欲しい。

 

「それで、どうだったの? 未央は? 追い返されたの?」

 

「会って、お話をすることが出来ました」

 

じゃあ、何で未央はここに居ないの。

何で未央をここに連れてこなかったの。

 

「本田さんの意思を酌んで、今日は家で休んで頂く事にしました」

 

未央の意思って何よ。

それはこの状況より大事な事なの?

私達はどうなるの?

 

机に手を付き身を乗り出してプロデューサーに吼える。

さっき菜々さんに吸い出されたはずの、灼熱の感情が抑えられずに口をつく。

菜々さんに抑えられるけれど、私の蒼い炎がとまらない。

 

「あんたは何を考えてるの、何か言ってよ、プロデューサー!」

 

プロデューサは私に目を合わせようとしない。

バツの悪そうな表情のまま、目を逸らし続けている。

逸らした目線が明後日の方向を泳ぎ続け、一瞬だけ卯月と目が合った。

 

玲奈が卯月の手を握る。

卯月は何故手を取られたのか分からず、きょとんとしている。

 

「……本田さんには、初ライブは決して失敗でない事をお伝えに行きました」

 

観客を写した写真を持っていったという。

少なくない観客が笑顔で私達のステージを見てくれていた。

玲奈が提案した解決へのアプローチと同じ方法だ。

 

「でも、本田さんにとってステージが他人にどう見られたかは重要ではなかったのです。”それでも卯月は笑顔だったんだよ”……それが本田さんから搾り出された言葉でした」

 

卯月が玲奈の手を握りつぶしていた。

 

 

 

***

 

 

 

その可能性を考えなかったのかと言われれば嘘になる。

実際、島村卯月に笑顔でいるようアドバイスしたのは私だ。

今はそうではないが、島村卯月は天海春香に比肩しうる存在。

あの輝きを至近で直視できる者はそうそう居ないだろう。

765オールスターズが天海春香の傍に立って問題ないのは、彼女が原石の時代から隣に居たからだ。

 

同じように、シンデレラプロジェクトの面々も島村卯月の輝きに徐々に慣れていくだろうと思っていた。

宝石の原石達が互いを研磨しあい、神話のようなアイドルグループを作り上げるものだと。

 

だが、現実は島村卯月が1人飛び抜け、本田未央はその眩しさに当てられた。

 

「安曇さん、私、未央ちゃんを苦しめていたのでしょうか……」

 

先ほどから握られている左手は先が鬱血し始めている。

これ以上握り続けるのは止めて頂きたいが、島村卯月は誰かの存在を感じていなければならない程動揺しているのだろう。

抜本的解決にはならないが、応急処置なら簡単だ。

左手は握り潰されて動かないので、右手で島村卯月の頭を抱えて胸に導く。

 

「大丈夫、今は一時的に擦れ違っているだけ。直ぐに元通りになるわ」

 

男の方が効果があるだろうが、女の子相手にも馬鹿にならない威力を誇る。

今世ではそれなりのサイズを得る事が出来たので、活用しない手は無い。

シャツは化粧等でドロドロになるだろうが、これはウォッシャブルだ。

 

しばらくすると左手を解放してくれたので、開閉を繰り返し血流を維持しながら考える。

状況が更新された分、新たな解決手段を考えなくてはならない。

もっとも、武内Pが関わって来た時点で島村卯月の”個人的なお願い”の範疇を越える。

ここらで手を引くと言うのも、ひとつの手段だ。

 

「今日はここまでにしましょう。渋谷さん、島村さんが落ち着いたら一緒に帰ってあげて」

 

既に大分落ち着いていると思うが。

何しろ、さっきから島村卯月の手つきが怪しい。

 

 

 

ニュージェネレーションズの2人が帰った後、私も帰宅準備をしていると武内Pが口を開いた。

 

「安曇さんは、どうしてあの2人の相談に乗ったのですか?」

 

意外にも金にならないことをやっている、そう思われたのであろうか。

残念ながら、相談料は武内Pに請求予定だ。

クリアファイルに収めた請求書を武内Pへ手渡す。

武内Pの顔芸は初めて見た。

ウサミンが頑張って笑いをこらえている。

 

「……いえ、金銭面ではなく、ライバルプロジェクトを何故助けるのか、ということです。増毛先輩はシンデレラプロジェクトをライバルとして認識しています。同様に、私もフラッグシップ・プロジェクトには負けられないと思っています。安曇さんはそうではないのでしょうか」

 

ライバル? プロデューサーもアイドルも全て346プロの資本であり、そこに違いはない。

”どのプロジェクトが利益を出しているか”より、”アイドル事業部、346プロが利益を出しているか”が重要ではないだろうか。

私は労働者として給与が頂けるのであれば、組織のため動く事に抵抗はない。

増毛Pも武内Pも、未だその辺りは理解していないようだが。

 

「確かに、フラッグシップ・プロジェクトはアイドル事業部としては高い利益を出していますが、346プロとしてはそれほどでもありません」

 

定時に346プロの入口前カフェにたむろしているのだ。

帰り際の千川さんがやってきてもおかしくない。

残念ながら、その愛する男のための戦闘モードは蛍光緑の制服を着ているときだけにして頂きたかった。

 

「フラッグシップ・プロジェクトへの投資分を外注に回していては、346プロとしては商売上がったりですよ」

 

確かに、私は346プロから頂いた大量の資本の大部分を外注先に回している。

その結果生まれた1stシングル”Ace, High”の初日売り上げは、天海春香効果もあったとはいえ過去の346プロのアイドル達のそれを塗り替えた。

ニュージェネレーションズやラブライカとは桁が違う。

果たして、346プロで飼っている連中にそれが出来たであろうか。

 

「ご安心ください、外注分も直に回収して見せますよ」

 

フラッグシップ・プロジェクトは投資分以上の資本を回収する。

346プロの内製部門は競争によりクオリティの高い作品が出来るようになる。

一石二鳥ではないか。

346プロ内に顔の広い千川さんのことだ、フラッグシップ・プロジェクトも内製させるようお願いされたのだろう。

だがここは346プロのため、心を鬼にしてそれを断って頂きたい。

 

「……346プロには多数の部門があり、それぞれが様々な事を考えています。良い事も、そして悪い事も。そんな中で、何を目的としてニュージェネレーションズを助けるのですか」

 

大企業ならではの贅沢な悩みだ。

このご時勢にアイドル事業部を立ち上げたのだ。

内ゲバをしている連中が、それ一筋で統率された連中に敵うとでも思っているのだろうか。

幸い、島村卯月とシンデレラプロジェクトという素材は揃っているのだ。

本気で765プロと競争するのであれば、彼女らを内ゲバの魔の手から遠ざけ、トップアイドルへ育て上げなければならない。

 

「本当に、346プロのためだというのですね」

 

勿論だとも。

我々労働者同士が争う必要など、どこにもないのだから。

 

「ですが、安曇さんの持つアイドル像はデビュー間もないシンデレラプロジェクトにとっては非常に危険なものです。あまりにもビジネスライクな考えを彼女達に伝えるのは遠慮して頂きたい」

 

シンデレラプロジェクトの皆がよそよそしいのは、てっきり、増毛Pの残念な性格や頭皮が年頃の女の子のメンタルにダメージを与えるためと思っていたが、私が原因だったとは。

しかし、そういうのは裏でやり続けるものだと思っていたが、随分早く正面攻撃に出たな。

結構、掛かって来い、相手になってやる。

 

 

 

私にとってのアイドル像、彼らにとってのアイドル像。

2つの主張がぶつかろうとしたとき、視界の隅にキラリと輝くものが映った。

 

「おいおい、20いったばかりの娘を取り囲むなんて、いい歳食った(アラサー)連中のすることじゃねぇぞ」

 

事態をますますややこしくする存在、増毛Pの登場だ。

 

 

 

 




ちゃんみお回(ちゃんみおが復帰するとは言っていない)

しまむー「おっぱい柔らかかったです!」
ウサミン「ここから逃げたい」

しぶりん→玲奈ちゃんの呼称どうしようかと悩んで結局呼び捨てに。
しぶりん可愛いよしぶりん。

ウサミン描いてみました。
本編とは全然関係ありませんが、もし宜しければどうぞ。

【挿絵表示】

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