Vampire and a magic girls / RE.   作:眼鏡花

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 最近ポケモンに熱が再び入りまして、ちょいとパーティー組んでみました。
 個人的には雨パだと思っているパーティーが一番勝率高くて、知り合いに「どうして雨パにクチートとサザンドラ入るんだよ?www」と爆笑されました。……勝率は結構いいのになあ……。
 ……書いてみようかしら?←


Eleven

 あの後の顛末をまずは語ろう。

 あの後、シェリアと過ごす事に為った私は日本に向かおうとした所で、在る問題に直面した。

 

『でもライネスさん、どうやって「ニホン」に行くの? 私飛べないよ?』

『……失念していた』

『ライネスさんはいつも……ううん、昔通りだねぇ』

『シェリア、それはどういう意味だね?』

 

 私は移動手段を持っていてもシェリアは移動手段を持っていなかったのだ。だから、今思うと中々に馬鹿馬鹿しいと言うか、そういった類の移動方で来たのだ。

 具体的に言えば、『蝙蝠に化けた私の群れが口に縄を咥え、吊るす形でシェリアを入れた箱か何かを飛んで運ぶ』といった中々に馬鹿げた方法だ。馬鹿げたけあって、欠陥も十二分に存在した。

 蝙蝠に化けてしまっては力を完全な形で発揮出来ない。更に、右腕の化けた蝙蝠はまともに飛ぶ事すらやっとだった。そこで魔術を使って蝙蝠に化けた私一匹一匹とシェリアが入る箱に強化を施し、 シェリアの事も考慮し二日で行き来する空を半日でここまで来たのだ。

 結果的に、私はそこで疲労やら激痛やら何やらが限界まで溜まり、その上で魔術を使っていた、いや魔力を精製し続けていたが為に月村家の中に入ってシェリアにある魔術(・・・・)を施した辺りで倒れた。まあ、伏せなくとも何の魔術を施したかは検討が付くと思うが。

 寝なくても死にはしないと思っていたが、まさか疲労困憊で倒れるとは思いもしなかった。

 そこまでが、私が起きていた範囲内で覚えている事だ。

 

 

「……む」

 

 見かけないベッドの上で、意識が覚醒する。何が在ったのかなぞ、大方見当は付いている。此処は月村家で、きっとこのベッドが置いてある部屋は私だけが使う予定だった空き部屋の一つだったというのも薄々見当が付いた。

 着た覚えの無い白の薄手の服装を一瞥し、何時の間にか三つ編みにされた髪を見てから右腕を見、動かす。動かせたが、如何(どう)にも僅かに痛む。利き腕がこの状態だと些か拙いか。どの道、暫し休ませなければ。

 

「む?」

「―――すう……すう……えへへ、らいにぇすしゃあん……」

「何と言うか……ありがちと言うか、ベターな。嬉しい限りだが、いやそれ以前に君も此処で寝ているのかね……」

 

 私が着せた覚えの無い、薄手で水色の服装でベッドに潜り込んでいるシェリアを見て、私は安心にも近い物を感じていた。

夢では、無かった。その安心感が今まで碌にここ数百年分の疲労を思い出させたのだろうか。ある種皮肉だ。

 私より頭二つ以上小さい―――それが普通であって、二メートル前後(私と同じ位の背)の女性など考える事すら出来ない―――背丈に、極めて珍しいとされる赤髪を長く伸ばし、髪に包まるように眠る彼女は何処か神秘的に見えた。

 尤も、満悦な笑みを湛えた顔を隠そうともせずにそんな寝言をのたまう事でその神秘性は勢いよく失せた訳だが、寧ろその方が今は嬉しい。彼女の口からその言葉が聞けて、彼女が生きていて、また同時に彼女から愛されている事を深く実感できた。

 だから、今はこれで良い。

 しかしながら日の位置を見る限りもう朝は過ぎているようだ。寝る子は育つ、という言葉を聞いた事はある。だが生憎私もシェリアも精神年齢はさて置き、既に子供と呼べるような歳では無い。流石に眠り続けるのは身体に悪いだろう。

 それに、私も拙い。

 

「シェリア、起きたまえ。もう朝は明けたよ」

「むー……ぁーい……」

「む…………」

 

 返事は聞こえたが、返事と言っていいのかも曖昧な返事が返して彼女は頭を上げた。

 だがその頭も頼りなくふらふら船を漕いでいる。暫し愛でていたい衝動に駆られたがこれ以上寝かしつけておくのも、再び夢の世界に向かわれるのも面倒だ。

 そんな折、昔シェリアに行った事を思い出して悪戯半分で実行に移してみる事にした。シェリアの片耳に口を近づけ、そして。

 

「―――ぅにゃあ!?」

「ぐば!?」

 

 歯を立てるように噛んだ所、歯が貫通する前に(・・・・・・・・)勢いよくヘッドバッドが飛び、私の頭に直撃した。

 

 

「ご、ごめんなさい! ライネスさん、ごめんね! ごめんね!」

「何事かと思って駆けつけてみれば……何をしたんですか」

「シェリア、気にしないでくれ、逆に感謝している位だ。忍君、一言で言えば出来心だったのだよ」

「……本当に、何したんですか……?」

「さてね?」

「忍様、氷嚢をお持ちしました」

「ありがとう、ノエル。さ、どうぞ」

「しのぶちゃん、ありがと」

 

 シェリアの悲鳴を聞いて駆け付けた忍君は半目で私を睨みつけながら問いかける。最早尋問と大して変わらない迫力があるが、私は軽くそれを流す。そこには威圧感と言うか相手を呑込む程の圧力などの類は殆ど無かったのだから当然だ。

 殺気は在ったとしても、恭也君のそれに比べれば泥にも劣る。だが、彼女はまだ若い。発展途上だというのも否定できない。

 シェリアは顔を熟れた林檎のように赤くし、会心の一撃をかました場所を(さす)り、忍君から受け取った氷嚢を私の頭に押し付けてくる。少々痛いが仕方が無い。シェリアにも言ったように私の自業自得なのだが、それでも介抱してくれる辺り本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。こういう彼女が本当に近くに居てくれると余計な事を考えずにすむのだから、頭が上がらないというか。

 

「それより、君も如何したのだね?」

「はい? どういう意味ですか?」

「恍けないでくれ。何やらとても調子は良いみたいではないか」

「しのぶちゃん?」

 

 指摘をすると、全く表面上の雰囲気を変えずに口の中だけで反響する程度の僅かな声で「ぁ……ぅ」と呟きながら固まってしまった。何が起きたか見当は付いているが、はてさて。

 というかシェリア。まさか忍君を『ちゃん』付けとは。恐れ入る。まあ、翻訳の魔術が君に通用していたと分かったから良しとしよう。

 当時の言葉が、現代で通じるかと聞かれれば私は肯定出来そうに無いからね。

 

「そ、そうですか? でも、変わった事なんて……」

「あ、そういえば昨日きょうやくんとお部屋でお馬さんごっこやってたよねしのぶちゃん!」

「しぇ、シェリアさんっ!? 何でしってるの!?」

「え? お部屋のとびら開いてたから、気になって。今度私も混ぜて?」

「……シェリア、そういう事は言ってはいけないよ。特に本人の目の前では、特に」

「? はーい」

 

 全く、君は……。実はそういう知識があるのをわざと無いように見せているだけであるのではと度々疑う事が在ったが、此処まで来ると疑念を抱く事すら無くなる。

 忍君は四肢をカーペットに付け「見られた……見られた……」と後悔やら羞恥やら等で僅かに見える顔が真っ赤になっていたと思えば真っ青になり、一緒に着いて来たメイドのノエル君に「忍様。御気を確かに。今朝は御元気そうに御帰りになってましたから……」と心配そうな顔つきで慰める、と中々に愉快な事となっていたのだが、不意に顔を上げて、睨むように私を見た。

 

「……んっ、んんっ! ラ、ライネスさん。今日は貴方に聞きたい事が在ります。正直に答えて下さい。すずかの友達もこれから遊びに来るので、手早くすませたいんです」

「ん? 何かね。何かしら迷惑の掛かるような事をした覚えは今知ったシェリアの一件以外―――」

「それはもう言わないで下さい……お願いですから。……二日前、ニュースで『全身を食い千切られたような状態のものと、首筋に噛み跡がある血の殆ど抜けたミイラのような死体男女二組が発見された』と放送していました。流石に心当たりの一つは有る筈ですよね」

「―――………………あるね。大いに」

 

 今思うと、だ。正直、人間という種そのものを軽んじて見ていた。

 それははっきり言ってしまえば、シェリアもまた例外では無い。同じ人間として、軽く見ている節があった。

 私の食事の為だけの、何時でも生け捕りに出来る食料という認識が最も適切で正しいのだと考える。更に性質(たち)が悪い事に(吸血鬼)にとって血とは一種の依存性があるようだ。考えてみると昔は全くと言っていい程血を飲まなかったのに、今では三日四日に最低一度は飲まなければ落ち着かず、一週間も経てば目に付いた人間から血を啜ろうとしてしまう。家に居た頃も適当な悪人を攫っては啜り殺していた。

 そして、私にとって極めて残念な事にその考えはシェリアが戻った今ですら例外では無い。抑えなければ欲求に駆られてこの場に居るシェリアの、忍君の、ノエル君の血を吸いかねない。そして、吸血鬼に血を吸われた者―――夜の一族は吸血鬼だが、まだ私と比べ人間寄りの為例外としよう―――の末路は大体決まっている。

 血を啜りきられて死ぬか。もしくは完全に血を啜られずに亡者。生きる屍。私が糸を持つマリオネットになるかの二択。啜られた者からすればどちらにせよ堪った物では無いだろう。

 

「……忍君。血は有るかね? 正直、限界だ」

「―――ちょっと待って。ノエル! 今すぐ輸血パックを持ってきて!」

「畏まりました!」

「ライネスさん、大丈夫……なの?」

「ああ、大丈夫。大丈夫だから、今は私から離れていなさい」

「……うん」

 

 シェリアも何となく私がおかしい事に気が付いたようだ。ちょこちょこと歩いて忍君の近くに寄って行く。

 極めて拙い。この状況そのものが。恭也君が居れば私の体の一部でも切り落として時間稼ぎを行えただろうが、ノエル君の言葉の通り、今は月村家に居ないのだろう。つまり、私を取り押さえられそうな者が居ないのだ。

 頭の中で叫び強さを加速度的に増していく欲求を捻じ伏せながら早く来てくれと念じる事しか出来ない今が、喉に煩わしく感じるむず痒さのようで気持ちが悪い。

 

「お持ちしました!」

「ナイスよ、ノエル。ライネスさん、これ!」

「ありがたい」

 

 忍君から渡された透明なビニールのパックの一ヶ所を裂き、零れだす前に飲む。飲み干す。何とも言えない味わいが口内に溢れ、限界まで押さえつけられていた欲求が霧散するように消えた。

 

 物の一秒僅かで飲み乾し空となったパックを忍君に手渡し、ありがとうとだけ礼を言った。シェリアは恐る恐るといった感じで忍君の背後から出た。

 

「ライネスさん……もう大丈夫?」

「……ふう。すまないね。もう大丈夫だよ、シェリア。ここ数日血を飲んでいなかったものだから、私自身どうなるか分かっていなかったがまさか、こうなるとはね」

「禁断症状、まるで麻薬ね」

「そういう事だ。無くても生きていけるが、欠けると異常をきたす」

「どうしたものかしら……」

「だね……」

 

 何時かこうなるとは予想していたが、ツケがこんな形で帰って来る事に為るとは思いもしなかった。自業自得だが解決策を見つけなければ何かしらやらかす(・・・・)恐れもある。本当、如何したものか。

 忍君と私が頭を悩ませていると「ノエルちゃん、つまり―――ってこと?」「概ねその通りです」とシェリアとノエル君のやり取りが耳に入り、目をやって度肝を抜かれ、同時に冷やされた。

 そこには、剃刀のような刃物を手首に向けたシェリア(最愛の人)が居たのだ。

 想像してみてほしい。片思いの相手、ないしは両想いの相手が手首に刃物を向けているのを目の前で見た状態を。それが今の私の状態だ。

 

「な、何をしている! シェリア!」

「ライネスさんは、血が必要なんだよね? じゃあ、私の血、あげる」

「馬鹿者、止めたまえ! 私がそのような行動に出ても何の問題も無いが、人の身である君がそんな事をすればどうなるかなんて、考えるまでも無かろう!」

「え? ……あ、ライネスさんにまだ言ってなかった」

「……何をだい?」

 

 出来るだけ落ち着きながらシェリアに問い掛ける。こういう場面において忍君が黙りこくっているのは珍しいというか、気味悪ささえ覚えた。

 だが、先程と同じく、否それ以上に思い出したくも無い事を思い出したように顔を真っ青に染めて頭を抱えている。ノエル君も「……忍様、あれは私のミスです」と語りかけていたが、昨日の夜何が在ったのかね?

 

「えっとね。多分なんだけど、私ライネスさんが居る間はずっと生きていられるかもしれないの」

「……は?」

 




 今回は補足コーナーは無しです。ではまた次回。宿題を潰しにかかっているので投稿はちょっと遅れる予定です
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