Vampire and a magic girls / RE.   作:眼鏡花

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 読書感想文が終わり、余裕があったので一気に書き上げました。ですが、結構あれです。
 ……今回こそなのはを出したかったのになあ……。悔しい。
 ……読者感想文が一番楽に感じるのは果たして自分だけなのでしょうか?
 あと、今回ある作品から設定を一部引用させてもらった部分があります。……タグ増やすべきか?


Twelve

月村(・・)君? 何か言い残す……もとい、言いたい事は在るかね?」

「本当に申し訳ありませんでした」

 

 さて、どうしてこうなった―――忍君が私に頭を下げ、私が忍君を何時もと違う呼び方をし、額に青筋を浮かべていた―――のか。

 

 

「それは、どういう事かね、シェリア」

「えっと……昨日の事なんだけど」

 

 ずっとシェリアと居られるかもしれない。そんな可能性を示唆され冷静でいられるほど冷めた思考回路を持った訳では無かった。

 何故だ。どうしようもなく駆られる。聞いたらもう後戻り出来ないような、不安感に。

 だが、今更もう後戻りなんて私には効かない。彼女を(ここまで)蘇らせた(きてしまった)以上後戻りなんて、出来る筈も無い。そんな選択肢なんぞ、在ってはいけないのだ。私には。

 剃刀を手首に向けたままのシェリアに一歩歩み寄る。剃刀は動かなかった。もう一歩寄る。やはり動かない。もう一歩近づいた所で、その手にあった凶器の刃を私が掴んだ。彼女に血を見せないように、軽く。

 

「あ……」

「……会話の際、こんなものは不要だろう。必要に為ったのなら、私はこの手を放そう。それでいいね?」

「うん……ごめんなさい。ちょっと慌てちゃってた」

「気にしなくて良い。それで、昨日どうしたんだい?」

 

 そう尋ねてみると、シェリアは私の顔を見ず、忍君の顔に視線をやっていた。はて何事かとシェリアに倣ってそちらを見ると忍君が表情を引き攣らせたまま固まっていた。今まで大して表情の変化の無かったノエル君も冷や汗を流しているようにみえた。

 一体何があったのかと思ってシェリアに表情を向けると、面食らってしまう言葉が飛び出した。

 

「昨日ね、お風呂に入ったんだけど……」

「ふむ。それで?」

「その時に足を滑らせちゃって、頭を打っちゃったの!」

「………………」

 

 ふむ、落ち着こう。

 もう一度状況を把握しなおす事にする。

まず、シェリアは私の依存症状―――便宜上『飲血衝動』とでも呼ぼう―――を抑えるべく、ノエル君から剃刀を受け取り、自身の手首に向けた。まずこの時点でノエル君には詳しく問い詰めなくてはなるまい。

 そして、シェリアは言った。ずっと(ライネス)と過ごせるかもしれない、と。その話に指揮性が向いた辺りで顔色をまるでカメレオンのように変幻自在に変えていた忍君と目に見えて分かるほど顔つきというか、様子が変わったノエル君の二名。

 そこでシェリアがたった今言った『風呂場で足を滑らせて頭を打った』。

 頭を、打った。

 ―――頭を、打った!?

 

「だ、大丈夫なのかシェリア!? 何処か怪我は…………」

「大丈夫だよー。ほら、布だって巻いて無いでしょー?」

「ほ、本当だ……よかった……」

 

 思わず手を放し、彼女の肩を掴み問いただしてしまった。剃刀がその際、彼女の手から零れ落ちて音を立てた。

 膝から崩れるように尻餅をついてしまう。あまりに私らしくない。いや、寧ろこれが私の普通だったか。昔はどうだったか、忘れてしまったが、はっきり言える。

 仮定だったとしても、大切な人を失うのを予想しただけで混乱して、どうしようもなくなってしまう程脆い者。

 脆弱。この一言に尽きる。

 たとえ体が強かろうとも、精神が弱くては何の意味もなさない。

 

「ライネスさん?」

「あ、ああ。すまないね。でも良かった。怪我が無かった―――」

ううん(・・・)治ったの(・・・・)

「……」

 

 とうとう歳が来たのだろうか。私の耳は駄目になりつつあるらしい。

 彼女は今、治った。と言ったようにしか聞こえなかった。いや、錯覚か空耳だろう。

 在りえない。だって、シェリアは私と同じ(吸血鬼)では無い。私のような化け物の力も、再生能力も持ち合せていない筈なのだ。

 では、何故。

 

「ラ、ライネス様。シェリア様の湯浴みの際にお体を洗う為に同伴させて頂いたのは私です。その、シェリア様の胸に(・・)埋め(・・)込まれている(・・・・・・)宝石のような物に(・・・・・・・)に心当たりは在りますか?」

「胸に……宝石……?」

 

 ノエル君。暗に『忍君は悪くない』と言ってくれているが、こういう重要な事は本人の口から聞きたかったものだ。まあ、君は自首したから良いとしよう。

 ……そういえば。ジュエルシードは何処に行ったのか。確か、家で意識が戻った時には既にこの手の中から失せていた。どうせもう私には必要なくなった上に、これといった利用価値も既に見出す必要すらなかった為放置していたが。

 ……いや、待て。あの時(・・・)。シェリアに顔を抱かれた、あの時。硬い感触が混じっていた。そして、あの場所は確か―――。

 

「……ノエル君、シェリアの宝石の位置は、丁度心臓の辺りかね?」

「―――はい。僅かに隠しきれていない傷跡の上から瘡蓋(かさぶた)のように」

「……はぁ。暫し、静粛に頼むよ?」

 

 溜息が漏れる。まだ三つ編みに結んでいない灰の頭髪をガシガシとかきむしった。影から既に魔法陣の書かれた紙と羽ペン、インクを取り出して魔法陣を書き上げる。

 三角形とその上から重なる四角形。極めて乱雑に書いたルーンと言葉。

 それに魔力を流しこむと、紙は燃える事無く灰になり魔法陣は虚空に光りながら、書かれた本来の大きさのそれよりも縮小していって、私の右目の表面に張り付いた。

 私の赤眼は僅かに色を黒くした程度で、周りから見れば大して変化の無いように見えるだろうが、私の視界は違った。

 

「……何をしたのかしら?」

「簡単な魔眼を作ったのさ。他人との『つながり』を見取る事の出来る魔眼をね」

 

 魔術的なつながりどころか、極論を言ってしまえば、師弟やら血縁、主従や交際関係も見取る事は出来るが、生憎一分と発動を維持出来ない為、早急に事を済ませる。

 シェリアを右目で見取る。見えたのは、胸から伸びる赤く太い線。つながっているのは私の心臓の辺り。

 更に、彼女の体全体を覆うように青い光の膜が張られていた。奇しくも、家で見たあの青い暴力と変わらないそれと同じ光を湛えていた。光源は胸元のジュエルシードで、光の膜は風船のようで、膜から伸びた幾本の糸が私に絡んでいるのがよく分かった。確認を終えた辺りで魔術が解ける。

 似たような魔術を私は知っている。確か、『二人命を持ったものの命をつなげて、両者が死なない限り両者とも生き続ける』と聞いただけでは理解しづらい魔術。

 恐らく、それの上位互換と言った所か。

 

「共存……為らぬ、共命の魔術というやつかね。これは」

「ライネスさん。一人で納得されても困るから私達にも説明して下さい」

「む、すまんね。唯、先に言っておくとこれから私の言おうとしている事は推測の域を出ない。件の宝石の詳しい情報を、私はまだ掴んでいないのでね」

「それでも構わないわ」

 

 ただ、説明するとなるとこれは本当に難しい。

 状態的に言えば、私とシェリアの命は繋がっており、かつシェリアは怪我を負っても私の命を消費して傷を癒す事が出来る、という状態なのだが、ピンと来る例えでは無い。何かもっと良い例えは無いか。

 

「むぅ……そうだね。極論を言えば『シェリアは私が生きていれば死なず、時間差もあるが傷も癒えるようになった。死ぬには(ライネス)と同時に殺すしかない』……と言った所か」

 

 結局例えは見つからなかったが、噛み砕いて説明する事は出来ただけよしとしよう。

 傷に関しては私とは違って自動だろうが、私と同じようにある程度の時間差は存在する筈だ。

 

「じゃあ、ライネスさん。私の血、飲んでもいいからね?」

「では、その時に為れば潔く頼らせてもらうよ」

 

 シェリアを亡者にしない為にも、対策用の魔術を作り上げる必要性が出て来た。至急完成させなければ忍君達にも迷惑を掛ける。それに今後、これ以上面倒な事に為るのはごめんだ。

 早い内に作り上げるのが吉か。

 

「……非常識の塊ね」

「君がそれを言うかね? 夜の一族(忍君)?」

吸血鬼(ライネスさん)非常識()から見ても非常識って事よ」

「成程。……ああ、時に月村君(・・・)?」

「……え、あ……はい」

 

 皮肉で返した心算が、まさか皮肉で帰って来るとは思わなかった。まあ、それはいい。

 唯、シェリアが怪我をした事を真っ先に教えてくれても何の問題も無かった筈だ。忍君も私が何を言いたいのか察してくれたのだろう。どうも暗いような雰囲気がにじみ出ていた。

 と、こういった状態から冒頭に繋がるのだ。

 

 

 

「いや何、私としては真っ先に言って貰いたかったのだよ。シェリアの事だから浮かれていたというのも想像が付く。そう言ってくれれば、まあ小言の一つですませようと思っていたがね、流石にこれは私が激怒しても誰も文句は言わない筈だよ?」

「はい……今回の事は本当に……」

「ライネスさん。その、悪いのは私だから、しのぶちゃんを責めないで!」

 

 十分程つらつらと小言並べ説教をしていると、シェリアから仲裁が入った。

 ……確かに、シェリアにも責任が無かったかと言われれば寧ろ今回の事はシェリアに火が有る。

 シェリアがそう言うのであれば、そうしよう。尤も、感情論で突っ走ってしまった私にも大きく非はあるな。

 

「……分かったよ、シェリア。後で君にもしっかり言っておかなくてはね。……忍君もすまなかったね。感情的になり過ぎた」

「い、いえ気にしないで下さい。今回の一件は本当に何をされても文句は言えない立場でしたし」

「うん、良かったぁ」

 

 安心したような溜息を付く忍君と、自分が起こられる事に為ったのに酷く幸せそうなシェリアが対照的に見えて、思わず笑みがこぼれた。

 まあ、漸く取り返せた『今』だ。こういう一時があっても良いだろう。

 等と老人のように考えていると「あ、そういえばもうすぐね」と忍君の声が私の思考を遮った。

 

「どうしたのかね?」

「本日の午後より、すずか様の御友達が遊びに来るのです。その際に恭也様も訪れる事に為っています」

「すずか君の友達、か」

 

 そんな場に居合わせてしまったら、すずか君達も気まずいに決まっている。

 シェリアと二人で出かけて来るとするか。

 いや、しかしシェリアは子供好きだ。どうする。

 

「ふぅむ。シェリアはどうしたいかね?」

「私? んー……あ!」

「む!?」

 

 突然シェリアに顔を引き寄せられた。それもかなり勢いよく、だ。

 寝巻の襟が引っ張られ、首が僅かに締まるが息苦しさは無い。唯、何事かと思ってシェリアに視線を向けると、シェリアはにっこりと笑った。

 

「その……出来るだけ私以外の女の子、見ちゃ()だよ?」

「……は?」

「んーと、じゃあすずかちゃんの友達に会ってみたい!」

 

 いや、今確かにシェリアしか見ていなかったはずなのだが……。

 どういう事だろうか。

 まあ、シェリアが私に寄ってくれただけでもよしとしよう。

 

「…………まあ良いか。但し、はしゃぎ過ぎて怪我をしないように」

「私は子供じゃないよ! それに、すずかちゃんとは昨日会ったもん!」

「……という事らしい。忍君も構わないかね?」

「本当は駄目なんでしょうけど……今の時期は、その方が安心します」

「了解したよ、兎君(・・)

「はっ倒しますよ!?」

 

 そういう所が子供らしいのだよ。とは言わないでおいた。

 ふくれ面している彼女の顔を見ながら、脳に焼き付ける。可愛らしい。

 私の質問に答えた忍君は、どういう訳か顔をほのかに赤くしていた。まあ、理由に察しが付いた私は好機と言わんばかりに一言言うたびに面白いリアクションが見れただけ良いとしよう。

 

「ああ、そう言えば私達の服は有るかね?」

「あ、それなんですけど。ボロボロだったので新しいのを私達が用意しておきました。ノエル」

「畏まりました」

 

 そう言って、この部屋を立ち去るノエル君。

 忍君は部屋の隅に置いてあった小さ目な椅子を取り、腰かけた。

 

「ノエルが戻って来るまでアレですし、三人で談笑でもしましょうか。あの時聞けなかった事も沢山聞けそうですし」

「あ、私も私もー!」

「……」

 

 酷く、嫌な予感がしたのは、断じて気のせいでは無かろう。

 何せ、忍君の目が狩人(かりうど)の目に、鼠をいたぶって遊ぶ猫の目のように見えてならなかったから。

 ……ノエル君、出来れば早く戻って来てくれ。

 

 

 




補足コーナー
・ジュエルシード……どちらも死ぬまでどちらも死なないという設定は、ある格闘ゲームから使わせて頂きました。
・ジュエルシード2……今の所、常に起動状態。つまり……。
・シェリアの発言……ライネスは〇〇である。忘れられがちですけどね。深い意味は無いです。
・ライネス……ノエルが来るまできっちり絞られました。

 んー、クチートであまえてガブリアスを下げさせて、交代読みでれいとうパンチやったら急所にあたって美味しい思いをした今朝。直後にブッツンされましたけどね……orz

 あ、活動報告でしょーもない企画をやっているので、よければ見て行ってください。早い者勝ちだよーw
 では!

すみません、かなりやばい規約違反を起こしていたようで。活動報告の方は消去させてもらいます。申し訳ありません。 
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