Vampire and a magic girls / RE.   作:眼鏡花

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 なんか最近、熱中症とかでダウンすることが増えた今日この頃……頑張るぞ。


Thirteen

 忍君に絞られた後、ノエル君が持ち込んだ服―――忍君が準備したらしい。……流石にこれだけ迷惑をかけている以上、今後軽率な冗談は控えるべきと判断した―――を着た私達はシェリアと私は、このような服装で彼女達の前に出ても大丈夫なのかと本気で思った。

 私にとってもシェリアにとっても服自体に問題無い。生地も高い物が使われているのがよく解った。金糸が使われているのが何よりの証拠だろう。

 シェリアは明るい緑を基調とした薄手の服装にスカートは落ち着いた丈の長い青色で、一見合わない組み合わせのようで面白い位噛みあっていた。外に出れば間違いなく声を掛けられると確信できる。手を出そうとする者がいれば、その時はどうなっても知らないが。

 私は服に関してあれこれ口出しできる程詳しい訳でも、ましてや他者の服をあれこれ選ぶ事が出来る訳でも無い。門外漢もいい所だ。似合っているかどうかの区別も碌に出来ない。

 一方で私の服装は黒のロングコート、その下に金色のドクロのプリントが施された白いロングシャツを着て、紺色のジーパンに茶色のブーツだ。

 更にコートの上からマントのように金糸の施された白いフードローブを羽織っている。

 唯でさえ厚着と言える服装の上にフードローブを着る必要性は無いのではないかとも思ったが考えると被れば日差しを直接浴びなくて済む上に白色で熱くなりにくい。だが、これからの季節の事を考えると自ら薄手の服を購入した方が良いだろう。別にコートを脱げば問題無いかもしれないが。

 しかし、これ程質のいい服を用意してくれたのは忍君の気遣いだろうか。いや、考え過ぎか。日光の一件は先程話したばかりだ。それに、今まで冗談とは言え戯言を吐いてきた身である。

 

「忍君」

「どうしました?」

「ありがとう」

 

 忍君は怪訝な顔をしたが、それでいい。

 本人にその気は無くとも私がそう感じたのだから、最低限の礼はしておきたかった。それだけだから。

 すずか君の友達が遊びに来る部屋にて、私達は紅茶を飲みながら談笑していた。

 そしてこの部屋の特徴を一言で表すとするなら……猫の海だ。

 何でもすずか君が大の猫好きで捨て猫を見つけては飼い、忍君も猫が好きな上に拾ってきた生き物を捨てて来いと言えるかと問われれば違う訳で、気が付けばこんな状況になったそうだ。

 一目見ただけで軽く二十は居る猫達の餌代を考え、実際に聞かされた数字を思い直してもなかなか現実味が湧かなくてぞっとしない話だった。

 言い方を変えれば、当時の金銭で当てはめていくと本当に肝が冷えたのだ。

 

「わぁ、猫さんだー」

「にゃー」

「……」

 

 猫と戯れる彼女を見て自然と、私も救われたような気がした。同時に、あの時の発言の意味も何となくだが理解できたのだ。確かに、こういう状況は堪える物が有る。

 在りえないが、言外に興味が無いと宣告されるような嫌な錯覚を覚えた。

 シェリアはそう思ったからこそ、私にああ言ったのか。

 はたまた、偶々斜視で片目が余所を見ていたのを不服に思ったからか。両方かもしれないし、私の及び付かないような事を指して言っていたのかもしれない。

 だがそれを知る事が出来るのは結局の所シェリアだけである。考えるのはいいが、考え過ぎるのは無駄だ。

 どの道、悪い事をしてしまった。

 謝ろうにも、あのような和んだ状況で声を掛けるのは憚られた。

 まあ、いいか。目下、問題なのは。

 

「アリサ君。私がここに居ても大丈夫なのかね?」

「だ、大丈夫よ。私を誰だと思っているのよ」

「…………」

 

 アリサ君だ。

 私達が此処に来た頃には既に来ていたのだが、私を見た途端に縮こまってしまったのだ。やはり、私が居るのは拙いだろう。シェリアはファリン君が居るから良いが、私は男だ。アリサ君に手を出しかけた者達と同性だ。

 居ない方が良いに決まっている。

 すずか君と小声で何か話しているのが耳に入ったが、そちらに意識を向けずにこの場を後にしようと忍君に声を掛けた辺りで、被せるようにアリサ君から言葉が出た。

 

「その……ありがと」

「……え?」

「あの時は、その……あ、ありがとって言ったのよ。文句ある!?」

「アリサ君……」

 

 酷い言い方だが、意外だった。見立てだとプライドが高そうだという印象があったせいで、何も言わずに終わるのかとも思ったが、真実その逆だった。

 その言葉に続いたのは、すずか君だった。

 

「わたしからも、ありがとうございました。その、まだちゃんとお礼が言えてなくて……」

「すずか君……くくっ……いやぁ、すまないね」

 

 抑えきれず、笑みが出る。私の考えが外れて喜ばしかったのか、彼女達の精神の強さが想像以上で驚いたからか。私自身にすら分からない理由の笑みを浮かべながら、一言詫びを入れた。

 シェリアが「よかった……」とほっと一息吐いているのを耳にして、彼女にも心配をかけていた事が、隠し事をしていた子供のようで気恥ずかしかった。

 そんな事を考えた辺りで、一つ。アリサ君に対する謝礼の物をまだちゃんと考えていなかった事を思い出す。その事で一つ名案とまでは行かないが、いい案が浮かんだ。

 

「アリサ君、すずか君、時に一つ聞いておきたいのだが、いいか?」

「……何よ」

「何ですか?」

 

 顔を赤くして睨むような、言外に「今は話しかけるな!」と言われているような気もしたがそれは無視する。

 何せ、これから尋ねる質問の応答が少し違うだけでアリサ君の今後が大分変わるかもしれないから、聞かない訳にもいかない。

 すずか君はキョトンとした顔で、何を問われるのか全く分かっていない表情だった。当たり前だが。

 まあ、何にせよ準備自体は近い内にしておいた方が良いだろう。奴とは大分毛色は違うが、流石にこの事は強制する気も無い。そもそもそんな気を起こせるはずもない。

 

「君達は魔術を使ってみたいと、思うかね」

『―――え』

 

 その問い掛けの返答を遮るかのように、『ピンポーン』と電子的な音が響いた。

 恭也君と話に聞いた、確か、なのは君だったか。今日ばかり、いや今ばかりは恨むよ。

 

「あ、なのは御嬢様と恭也様が来たみたいですね。迎えに行ってきます」

 

 ノエル君がそう告げると、私はため息を吐いた。運命の悪戯だろうか。もしこのタイミングで狙って引き起こした神がいるなら、喜んで八つ裂きにしてやりたい所だ。

 北欧の最高神のように自らの質に出させるのもいいかもしれない。だが、生憎私にはという空より高い場所にいる筈であろう神を認識する術を持たない。それに、その行いは考え直してみると神に新たな知識を与えるにすぎないと考えると、無為な事だと思い直した。

 

「返答は後日で構わないよ。君の自由だ」

「……考えておくわ」

「お姉ちゃん……」

「……貴女が決めなさい、すずか」

「……わたしも、保留で」

「そうかい」

 

 可能であれば、是を取ってほしい所だ。

 そうでなければ、私はきっと自己嫌悪でどうかしてしまうだろうから。

 

「……ライネスさん。何かあったの?」

「さあね? 特に何も無かったよ」

「本当?」

「本当さ」

 

 あの時の事を私の口から彼女に言うのは、憚られた。

 第一、アリサ君とすずか君がこの場に居る状態でそんな事をすれば、彼女らの精神衛生上よくないのは火を見るよりも明らか。

 それに、本当に酷い話―――酷過ぎて思わず自分を殺したいほどだ―――シェリアが他の誰かと極力関わる様を、直視したくなかったというのが本音なのだ。

 シェリアの事だ。あの日の事を語れば二人を心配して優しく構うようになるのは分かっている。私はそれが、まるで彼女を盗られたと思ってしまいそうで仕方が無い。

 ならば私がやる事は一つ。私の出来る範囲内で彼女達に詫びを行う。これが最善だった。

 最低だと思う。今の私は彼女を殺めた人間達よりも、誘拐犯の人間達よりも、何より奴よりも比較し難い悪と呼べる存在に違いない。

 

「大丈夫? 随分酷い顔してるわよ。今のライネスさん」

「……すまないね、忍君」

 

 そうこうしている間に、三人分の足音が近づいて来ている事に気が付いた。

 一つはノエル君で間違いない。二つの内の一つは聞き覚えのある足音だった。具体的には、忍君と付き合っている彼の足音で間違いない。

 となると、消去法でもう一つの軽い足音は。

 

「あ、なのはちゃん、恭也さん」

「すずかちゃん!」

 

 ノエル君が扉を開けると、そこに居たのは恭也君と―――初めて御目に掛かる彼の妹、高町なのは君だった。

 

 

 

 




補足コーナー
・服装……改定前のライネスの格好をアレンジしたようなものだと思って下さい。ライネスのは。違うのはローブに金糸刺繍が入った事。どんなかんじかはご想像にお任せします。
・最高神のように~……北欧神話のオーディンはルーン文字の知識を得るために自らを自らの生贄に捧げた。……言葉がおかしいようで実際間違ってないから困る……。
・ライネスの心境……独占欲?

 誤字等あればよろしくお願いします。
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