Vampire and a magic girls / RE. 作:眼鏡花
今回結構独自設定入ります。
少し考えれば解った。そう。解る、分かる筈だった。
ジュエルシードは、複数個存在している事は薄々分かっていた。ジュエルシードを私は一つ使った。それでも消えない強大な魔力。この二つだけで推測するのは、あまりに容易だった。
なら例えば、例えばだ。
私がわざと暴走させたように、ジュエルシードは暴走を誘発させる事も出来る。なら、同一の存在がその付近にあった場合はきっと、きっと共鳴するのだろう。
但しそれは対等ならば、だ。シェリアのジュエルシードは最早空と言って過言では無かった。はりぼてだった。
――推測だがジュエルシードはその大規模な魔力を持って願いをかなえる、言わば願望を叶える装置のような物では無いかと思う。そうでなければ都合よくジュエルシードからあのような魔力の膜など、出る筈も無い。
――私と命をつなぐための装置という役割をおっているだけ。
そんな状態のジュエルシードが、均衡出来る筈も無い。力のバランスは崩れ、弱者は肉となり強者は糧を食らう。
弱肉強食。同じことがジュエルシード間で起こったと考えた。だとするならば、私にとってこの先がもっとも拙い。
今死にかけているシェリアが、本当に死んでしまう。愛した人が、また死んでしまう。また、死という苦しみを味あわせて、それで、終わりだ。
賭けだが、命のつながり自体を奪われても、きっと奪った側がわたしとつながる事は無いだろう。
もしジュエルシードが願いを叶える存在なら、願いは千差万別。願ったものにしか結果は実現しない筈だ。
「……シェリア。少し、此処を離れるよ」
部屋の窓だけ開ける。私は、部屋の外に出る心算は無い。シェリアが心配だから。
だが、出る。これ以上苦悶に歪み青白くなっていく彼女の肌を、見ていられそうも無いから。
わかった。よく、わかった。わかってしまった。
だから、
あの時のように襲撃があるかもしれないが、潰して取り除こう。
穴だらけの、我が切り札を。我が二つ名の由来を。此処に示す。だから、その為に魔力を一気に、過剰に精製する。一瞬、酷い眩暈が襲うが気にしない。使用制限通りにしか使えない程度の量だが、十分だ。
魔力の準備を終えた私は開けた窓から外を覗き、パックリッ、と。影から出した片手半剣で手首を貫き、裂いた。勢いよく溢れる血。多量の血が私の体から漏れ出すが、意識がぐらつく事も無く苛立ちだけが募っていた。
息を吸う。息を吐く。
準備は整った。制限時間は五分。それまでに、それまでに共鳴したジュエルシードを――
……そのためにも、剣をもう一本持っていくか。
「『雨風吹かぬ渇いた青空。育む愛を忘れた大地』」
謳う。唯一つ、私が詠唱する魔術。自ら見出したこの体を一時的に捨てる、この体でなければ為し得なかった狂った魔術。
「『孤高の狼地を走り。蝙蝠は独り飛び回る』」
悔しい話だが、奴と戦い、『魔術をその身に取り込み、取り込んだ魔術の特性を得る』等という奴らしい狂った発想を参考にして完成した、その劣化存在の魔術。
「『共に狙うは動く血袋。一刻続かぬ共演の終わり』」
そう何度も使うような魔術では無い。ましてや見せられるものですら無い。だから、この魔術を使う事になった理由に二度も関わる者がシェリアになるとは、思いもよらない事だった。
「『鮮血の幕は――鬼によって降ろされた』」
さて、詠唱も終わりだ。
今までの比では無い勢いで溢れだす血。目に物を見せてやる。
ジュエルシードよ。意思があるなら、その存在に刻んでおけ。
わたしこと、『高町なのは』は何処にでもいるような普通な女の子でした。
でも、ユーノ君と関わって一変! 今では魔法少女として頑張っています。……アリサちゃんとすずかちゃんに相談出来ないのが、偶に傷だけど。
今日はすずかちゃんの家でお茶会しようって話していて、お兄ちゃんも忍さんの所に行く予定だったので、一緒に行きました。案内してくれたノエルさんが「今日は面白い人達も一緒みたいですよ?」と言って、お兄ちゃんは「ああ……」と何とも言えない顔をしていたの。どうしてだろう?
その場に行ってみると、アリサちゃん、すずかちゃん、忍さんに、知らない女の人と、男の人が一人ずつ。
男の人はライネスさんと言って、最初はとっても居づらそうな顔をしていました。目を合せようにも、どっちも違う方を見ていて何処か怖いです。
なんでも、アリサちゃんとすずかちゃんとは知り合いで、この家に訳あって滞在しているそうです。
女の人はシェリアさんと言って、ライネスさんとは逆に始めからにこにこと笑っていました。とっても明るい人で、でも何処かずれてるというか、吃驚してしまうような発言もありました。
ライネスさんが途中から話の輪に加わりだしたのは、きっとシェリアさんのお蔭です。
でも、わたしはちょっと緊張していました。理由は、ユーノ君とレイジングハートの言葉です。
『<なのは、気を付けた方がいい。女の人……シェリアさんからジュエルシードの気配がする>』
『<ふぇ!? ほ、本当、レイジングハート>』
『<Yes. However, it is very weak and it is a doubtful grade whether it has moved or not.>
《はい。ですが、極めて微弱で、発動しているかすら疑わしい程度です》』
『<で、でもライネスさんから魔力なんて感じないよ?>』
『<うん……。だから、もしかしたらシェリアさんの自覚が無い所で発動しているのかもしれない。気を付けて置いて>』
『<わ、わかったの>』
なので、こうして話したりするかたわら、シェリアさんの様子を見張ったりしていたのですが……。
ジュエルシードが発動するのと一緒に、シェリアさんも具合が悪そうになってしまって、ライネスさんと一緒に部屋から出て行ってしまいました。
その後から感じるようになった、ジュエルシードともう一つ、別の魔力。
「シェリアさん、大丈夫かな……?」
「でも、ジュエルシードが発動するのと一緒に具合が悪そうになったって事は、ジュエルシードが関わっている事は明らかだ。……ん……?」
「どうしたの、ユーノ君?」
ユーノ君が走るのを止めて、何かにおいを嗅ぐような仕草をして見せると、少し顔色が曇りました。
どうしたの? と問い掛けようとして、でも出来ませんでした。
「――ヴヴヴゥゥゥゥ!」
「きゃ!?」
遠く、とはいっても体感的に遠い訳じゃ無くても、どうしてか異常に遠く感じる場所から、まるで心が潰れてしまいそうになるような、掠れた怖い声が聞こえてきました。
ただ、どうしてそんなに怖い声を出しているのか、わかった。ものすごく、怒ってる。
でも、どうして? 聞き覚えのある声だったような気がするの。
「な、なに!?」
「落ち着いて! ……この先で、凄い血の匂いがする。なのは、レイジングハートを!」
「う、うん。レイジングハート!」
「All right.
<了解しました>」
ユーノ君に促されて、わたしはレイジングハートをセットアップする。制服そっくりのバリアジャケットを確認して、周囲の景色から色が何時もと若干違っていた。これは?
「結界を張っておいたんだ。結界の中と外で時間の流れをずらして、結界の中で起こった事を外に反映させないようにする……わかる?」
「……よくわからないです」
「うーん、今は分からなくていいや……よし、行こう!」
「うん!」
よく分からないけど、要するに周りに迷惑が掛からないってことだよね。
それなら、急ごう!
「何、これ」
わたしがこの場に来て、真っ先に口に出した言葉がそれだった。
母さんの為に、母さんの言う通りにすれば、そうすれば昔みたいに優しい母さんに戻ってくれると信じて、ジュエルシードを指示通り集めていた。
前回の男の人のような事にならない為にも気を引き締めて来た。もうあんな事になってアルフまで傷つけるのは嫌だったから。
でも。
「フェ、イト! 此処、何かヤバい!!」
アルフの言う通りだ。今他の魔導師が張った結界で、尚更この空間のおかしさが目に映る。
この世界のこの辺りの地域は水が豊富で、湿度が高いそうだ。だけど、今は季節が季節でとても過ごしやすい。
でも、だからおかしい。木々が多く生える周囲の空気がやけに、乾いている。土も、若干乾いていた。
その中でアルフが感じた『ある臭い』が、私の頭の中で強く警報を鳴らしていた。
とても強い、血の臭い。
「……行こう」
「フェイトッ、でも……」
「大丈夫、危ないと思ったらすぐに逃げる」
「……はー……わかった。サポートは任せな! なんたって、私はフェイトの使い魔なんだからね!」
「……うん!」
呆れられたのかもしれないけど、わたしにとって母さんが昔みたいに優しくなってくれるのが、一番大事。
だから、ジュエルシードを、今回こそ。
「……見つけた」
ジュエルシードで、たぶん『大きくなりたい』という願いが反映されたような猫に、電柱の上から攻撃を仕掛けようとして……。
――別の何かが、猫目掛けて飛び掛かっていた。
「!? パルディッシュ、フォトンランサー」
『Photon Lancer』
一発、猫目掛けて撃とうとしたのを変更。何か目掛けて放つ。
でも駄目だった。僅かに爆発して蒸気が上がり、何かの全身が飛び散って、でもすぐに元通りになってしまう。
――何、あれ。
私が、元通りになった何かを見て抱いた感想が、それだった。
何かは、赤黒い全身に、背中から大きな翼を持って、右手に真っ直ぐな剣、左手に白いうねった剣のような物を持っていた。気のせいか、左手の物には生々しい糸のような物が沢山へばり付いている。
「ヴゥゥ……オォオオオォォオ!!」
「シャー!」
何かが咆える。猫が動向を細めて威嚇する。
けど、何かはそんな威嚇を無視して、猫に向かって飛んで――
「駄目ぇえええええ!!」
「なのは!」
――右手の長い剣で首を刎ねようとしたのを、その場に居合わせたと思われる魔導師の少女の防御魔法に阻まれ、剣の行き先が逸れて。
一緒に大きくなった鈴だけが、かしゃんと音を立てて落ちて、元の大きさに戻った。
補足コーナー
・ライネスの状態……暴走状態。感情的な暴走だから質が悪い。
・推測……独自設定です。
・詠唱……ライネスが自分のその魔術に対して抱いている印象と言ったところです。
・レイジングハート……あってるかなあ……。
・剣のような物……分かる人にゃあ分かる筈。
緊張感のあるシリアスな空気が上手く書ける人は凄いと思う、本当に。
……そろそろ、幻眼魔も更新しようかな。
では、また次回。