Vampire and a magic girls / RE. 作:眼鏡花
いや、申し訳ない。自分でこういう風に書きたいというのに、上手く書けなかったもので、何度も書き直してしまいました。あと、ストックを作っていました。
で、現在に至ります。申し訳ない。そしてやっぱり戦闘描写は才能ねえ……
誤字があったので修正しました。
「ヴヴヴ……」
「きゃ!」
「なのは!」
――邪魔を、するか。小娘共。
本心からの怒り。それに身を任せ、こうして八つ当たりにも近い感情を抱いている矮小な自分に呆れながら、それを理性で御し切る事の出来ない自分の弱さに二度呆れてしまった。無様。もう一人の黒い小娘の攻撃を受けて漸く己を取り戻した事に、更にいらだちが募る。
紛らわせる為に椎骨で白い小娘を地面に飛ばしたが、碌にダメージもとおっていないだろう。感触が違った。硬い。罅が一瞬入っただけで、すぐに元通りだ。
しかし、何故だろうか。今は言う程感情が湧いてこない。静かだ。在るのは唯――純然なる殺意。あの猫を殺す、決意。
思えば、こうしてこんなにも穢れた激情に身をゆだねるのも、シェリアが一度死んだ時だけだ。
……もしかすると私は大義名分が欲しいだけなのか? シェリアが死んでしまいそうだ。だから全力で力を振るう。ああ、なんて汚らしい事か。
だが、それでもいい。その結果で、シェリアが治るのであれば。私は、幾らでも汚れてやろうじゃないか。
「――ヴォオオオ!!」
さあ、やってやろうじゃあないか。毒と手数に物を言わせる、この体で。
切り札は既に切った。後は、三分を切った時間内に猫をしとめる。
語られる通りの吸血鬼とは趣が違うが、血のみである吸血鬼も語られている。
故に、この姿もまた、悪くないだろう。
早急に。徹底的に。化け物らしく。振る舞おう。
彼女の為に。
「うぅ……ぅ……」
苦しくて、気持ち悪い。
最初に感じたのは、そんな感覚。喉の奥に髪の毛でも突っ込まれたら、きっとこんな感じなんだろうね。
あれ、私、どうして横になってるの? 確か、ライネスさんに無理を言ってお茶会に参加して、それでわいわい楽しんでたら、急にぐらぐら頭が揺れて来ちゃって、それから――あれ、覚えてないや。
でも、嫌な事に、解ってる事が一つある。私は、この感覚をしっている。もう、体験したくは無かった。――無理矢理送られそうでいる、死ぬ時の感覚。怖さ。
少し違うのは、それが中途半端に収まっているから尚更気分が悪くなっている事なのだろうけど、こうやって考える力があるって事は、まだ大丈夫なんだって、思えた。
だからこそ、辛い。
「ライネス……さん?」
最愛の人の、名前を呼ぶ。でも、返事は無い。首を動かして窓を見たら、窓が開いていた。
何処に行っちゃったの? 一人は、寂しいし、つらい。
……ああ、だから。
ライネスさんもきっと、こんな風だったんだろうなーって、自分を恨む。きっとこれは私への罰なんだ。居ちゃいけない筈の私が、今此処に居るから、神様が怒っちゃったんだ。
ライネスさんを一人ぼっちにさせていた分の差が、此処に来たんだ。
でも、神様。ごめんなさい。私はもう一度そちらに向かう気はありません。それに、私は貴方が嫌いかもしれません。
私は、最愛の人の隣で生きていたいです。だから。だから、ライネスさん。
「早く、帰って来てね……」
こんな我が儘な私を愛してくれて、ありがとう。
だから――私も頑張らないとねー。
「ヴゥウウウ……オオオォ!」
早い。わたしに向かってくる赤い人の速度に、そう思った。
まだ魔導師として全然駄目だって思ってたけど、そんなのは甘かった。現に、守りに徹する事しか出来ない、触れたら終わりだっていう事がどうしてか湧き上がるように理解できるの。両手の武器で、脚で、翼で。手数が違い過ぎる。
わたしが魔法と使おうと止まってしまえば、その間に赤い人はわたしを――お兄ちゃんの言い方を借りれば、“しとめる”。そうしたら、後が無い。
目を少しでも離すとすぐに猫さんの方に行こうとする。幸い、ユーノ君が邪魔してくれるお蔭で防げているけど、このままじゃ……。
それだけじゃない。もう一人居る筈なの。
わたしと同い年くらいの金色の髪の毛の魔導師が。さっき、赤い人が猫さんに襲い掛かろうとした時に、止めてくれた子。
牽制の為に赤い人に魔法を飛ばしてくれてるけど、赤い人は水みたいになって全く効き目があるように見えない。
駄目な流れだ。おまけに、魔力も底をつきそうなの。
「<ユーノ君、どうしよう……もう魔力も殆ど無いの>」
「<……くっ! ジュエルシードさえ封印できれば……――! なのは!>」
「え? ――きゃ!」
また、吹き飛ばされた。でも、何か違う。
さっきは叩かれて飛ばされたけど、今の、もっと攻撃的だった。障壁が吹き飛んで、魔力の消費が加速する。
赤い人の方を見れば、赤い人の周りに透明な玉のような水が浮かんでいた。肌越しに感じる、チクチク来る様な魔力。それが十以上。
「――もう一人の子! ジュエルシードを封印して、逃げて!」
こういう時、名前を言えないのははがゆいなと思いつつ、私は魔法を使っていた。
早い。わたしの魔法が、間に合わない――!
牽制、妨害。今の私に出来る、精一杯。その間にも撃ちもらしが猫さんに向かって行く。
相殺――違う。魔法がぶつかった先から水は、どぱんっどぱんっ、と弾けるように衝撃を撒き散らしながら、破裂していく。猫さんにもしもあれが当たったら――。
先程の衝撃を一応直接感じた身として、それはいけない。
お願い――間に合って。
聡明だ。あの白い子の判断にそう思う。私ならそもそも――状況が状況だという事があったとしても、そんな事に意識を割く余裕なんて全くない。
数日前のあの男の人との一件だってそうだ。ジュエルシードの事で焦りがあったとは言え、一度あの人には負けている。あの時も、戦う事だけにしか専念できなかった。
きっと、強い。
そして、今はありがとう。
「アルフ、転移をあの猫に! 出来るだけ高い場所に!」
「あいよ!」
「にゃー!」
猫は逃げ回っていた。当然だ。あんな爆撃に似た蹂躙。余程のバカじゃない限りは逃げる。
でも、唯封印するだけではだめだ。あの猫が元の姿に戻って――。頭の中を過ぎった未来は、最も避けるべきだ。あの子に、顔向けできない。
母さんの言う通りにするべきなら、猫は切り捨てるべきなんだ。わかってる。
でも、出来そうも無い。どうしてか、あの猫の姿が――居なくなってしまったリニスの姿が重なってしまう。
だから、少しだけ無茶をしよう。怒られるかもしれない。でも、覚悟の上だ。だから、猫にも少しだけ覚悟してもらおう。
「行くよ――」
アルフの言葉に続いて、魔法陣が光り輝く。爆撃に追われていた猫は地上から消えた。
その代わり、遥か上空から「にゃああ!」と悲鳴のような鳴き声が聞こえてきた。
赤いなにかはすぐに猫を見つけて、またあれを使おうとしていたが、白い子の砲撃魔法に吹き飛ばされていた。水の塊も、おってこない。
「ジュエルシード――封印!」
猫に封印魔法を掛けた。猫は小さくなり、ジュエルシードはパルディッシュの中に消える。そうやって収納される直前、ジュエルシードから変な魔力が霧散して散って行くのが見えた。
兎も角、今は此処を離れ「逃げてぇ!」「フェイトォ!」――え。
地上と、上空。白い子とアルフから、そんな声が聞こえた。
すぐに聞こえた、「ヴォォォォオオ!!」という、化け物の声。
金属同士がすりあったような音が耳を打って、手が吹き飛んだような錯覚の後、すぐ体が浮いた。
失態だ。最悪だ。
ジュエルシード。彼女の命を繋ぎとめる楔の一つ。それがとられた。ならば、その内に在った筈の力は何処に?
唯の現実逃避だ。まだ間に合うかもしれない。解っている。だが今は、現実を直視したくない。幻想に縋りついていたい。
出来ない。したい。
頭の中がごちゃ混ぜになって行く。癇癪を起した子供だ。もう、どうでもいい。
あの黒い機械の武器だ。あれを壊せばまだ希望はある。だから、間にあえ。
剣を振り上げて、武器に突き刺そうとして――
「――ヴウゥ!?」
――――クソ。クソ、クソ、クソクソクソ!
どうしてだ。こんな、こんなタイミングで時間切れだと。
ふざけるな。何て、なんてシェリアに顔向けすればいい。再び彼女を死なせろというのか。
体が形を失っていく。ああ、クソ。認めたくない。結果は結果だ。憤怒。諦め。
矛盾した思考が脳裏を埋め尽くす。
「――オオオオオオオオオォォ!」
畜生。畜生、畜生! なんて醜態、なんて無様。
……ごめんよ、シェリア。
怨嗟の代弁たる叫びを残して、この体は本来の体の元へ流れて行った。
――畜生。