Vampire and a magic girls / RE. 作:眼鏡花
……なんで目覚めの夢が『道路のど真ん中で竜巻がおきててその中央で炎の妖精が「もっと、あつくなれよおおお!」と叫びながら肘を突き出してきつつ俺の部屋に窓を割って飛び込んでくる夢』だったのか。
うん、わけがわからない。
昼になり、少し違和感を感じる調子で天候が崩れた辺りだ。忍君と恭也君が見舞いに来た辺りで真っ先に問い詰められた。
……恭也君も何時もの好青年の顔をしていない事から、心から尋ねているのが分かった。
「ライネスさん。……何をしたんですか!?」
「何、とは? それから、シェリアがまだ眠っているのでね……少し、小さめに頼むよ」
「大量出血に加えて貴方の体から、椎骨――背骨が無くなっていたんです。覚えは?」
「ああ、
『――は?』
忍君と恭也君の呆気にとられた顔が印象的だった。シェリアは、夜と同じように眠っている。手首の傷は、血を啜っている間に塞がっていた。こらこら。恭也君、君は武人だろう。そうやすやすと隙を晒していいのかね?
「シェリアの胸元についている宝石のような物は、忍君は知っているだろう。恭也君は知っているかね?」
「一応、忍から口頭程度には」
「妥協点だ。その宝石……ジュエルシードとか言うらしいものが複数個あり、その一つが何かしらの要因で『目を覚ました』
同時に、シェリアと私を繋ぐ生命線が文字通り舵を奪われてね。シェリアが死にかけた。
それを壊すための代償としてああなった、それで理由は不十分かい?」
「……」
嘘は言っていない。――幾分かの事実は、忍君が居るためにはぐらかさせてもらったが。
恭也君は何も言わない。その目は私のことを心配する色も有れば、怒りの色もある。喜怒哀楽のいくつかがまぜこぜになっている。そんな印象を私に与えた。
「でも、だからって――」
「例え話をしよう」
忍君の言葉に割り込んで、強引に話をする。
「恭也君。何時かも似たような話をしたが、もし忍君が生命の危機に晒されていて、それを解決するには見知った顔を巻き込まなければいけなくなる。君なら、どうするかね?」
「――あまり武人として、褒められた行為でなくとも感情で動くだろうな」
「忍君。彼の即答を見れば、私の回答など分かりきったことだろう?」
「気持ちは分からないでもないけど。……男って、みんなこうなのかしら……?」
否定は出来ないな。する必要もない。それが事実で、この場にいる男はそんな馬鹿共だ。一つのことに囚われれば、それしか見えなくなる大馬鹿だ。
故に、恭也君にはこの場で言っておかなくてはいけない。
「恭也君」
「なんですか?」
「そんな作った話し方では無くていい。先程の話し方が君の素だろう? ……すまなかった」
「――なにをだ?」
意味を隠して恭也君に頭を降ろす。
手汗をかくのが分かる。このまま言葉を吐いてしまえば、せっかく作れた関係を崩すことになりかねない。
しかし、私には謝らなければいけない理由が多数存在する。
意を決し、言葉を吐いた。
「私が倒れたあの日、私は君の妹である『高町なのは』を殺そうとした」
「話を聞いてからだ。内容によってはこの場で小太刀の錆びにするぞ、吸血鬼」
明確な殺気。感情の一切が押さえ込まれた、敵意。
その純然さに、思わず身を震わせた。――当時の、奴――私を吸血鬼にした者と対峙した時のように、皮膚が粟立つのを感じた。
「恭也!」と、忍君が宥めにかかっているが、寧ろこの場では逆効果だろう。
何時か、私は彼に人間なのか疑問に思ったことがあったが――成程。感情があるならば、十分に人間らしいじゃあないか。
「果たして君にできるかね?」と私は明確に煽った。そして、一つ呼吸をして、顛末を話すことにした。
「きっかけは、あの茶会だ。あの時、不意にシェリアは体調を崩した。風邪というには、様子があまりにおかしい。魔術を使ってみた所……そういえば、君は知らないか?」
「……」
「その様子では、ジュエルシードの浅い説明しか忍君から耳にはしていないようだね。まあ、ようは『願いを叶える効果を持った膨大な力の籠った宝石』、とでも覚えて置いてくれ」
「それが、何故なのはを殺そうとする事と関係する」
「落ち着きたまえ。本題は此処からだ。シェリアを蘇らせるためにそれを使ったのは良いが、今現在彼女は私の命を消費し続けながら存命している。ジュエルシードとしての力を殆ど失いながらも、願いを叶える能力の側面は生きているが、それはいい」
一つ呼吸をして、言葉を続ける。
「そこで最初の話に戻るのだ。魔術を使って私と彼女を繋ぐ幾本かの線を確認して見た所、それが殆ど無くなっているではないか。
……推察だが、『機能が弱まったジュエルシードは他のジュエルシードに力を持っていかれる』と判断した」
「成程、それが原因で、シェリアさんの命が危なくなったため、それを破壊しようと行動に移したと」
「ご名答。そして、――此処で話が繋がるのだよ」
「何だと……。おい、まさか」
一瞬顔を顰めたと思えば、次に顔を驚愕に歪めた恭也君。その顔は、その口が吐いた通りの顔にゆがんでいる。
忍君も同じような結論に行きついたようだ。これはいい。これから口にする内容を逐一説明する手間が省けたのは、僥倖だ。
「そのまさかだ。その場にはジュエルシードの影響で巨大化した子猫がいた。それを後先考えず殺そうとした際君の妹、なのは君が割り込んで来たのだよ。今思うと来た時とはと違う格好をしていたがね」
「……」
「そしてまあ、私もあの時は大分感情的だった。私の最高の魔術を使って破壊しに行ったのだがね……時間切れだ。尤も、もう一人居た黒い少女――確か、フェイト君、と言ったか? その娘がジュエルシードを回収し……今に至る」
思えば、私の『
精々、あの体での空気中の水分の干渉しやすさを利用して水を集めて大砲のように使った程度だ。
「まあ、そんな所だ。私を殺すかどうかは、君の一存だ」
「……一つ尋ねる」
「何だね?」
「お前は何を望んで生きているのか、俺には区別がつかない」
「――ふむ」
その通りだ。シェリアの為だのどうこうのたまい、今でもシェリアから離れた方が彼女の為ではないかと悩む。
今だって、する必要の無かった煽りを恭也君に向けた。
極端な話、利己主義者――エゴイスト。或いは、自己愛者――ナルシスト。
私は、どちらかを兼ね備えているかもしれないし、両方なのかもしれないな。
私自身、分からない。結局シェリアからの回答は提示されているのに、別途の回答を自問自答で探っている。
「……分からないよ。そんなことなど……。私が知りたいくらいだ」
「そうか……ん?」
「どうし――」
「えへぇ……らいねすしゃぁん……。わたしは……どこまでもいっしょだよーぉ」
……。
…………。
………………。落ち着こうか、落ち着けよ。私。
何故か、顔が異常に熱くなった気がした。
「……ッぷ」
「何だか、さめたな……。彼女、天然なのか?」
「……そうなのだろうよ。きっとね」
忍君の堪えきれないと言いたげな笑いが漏れ、そこがピークだった。
空気をぶち壊していく嵐のように無意識に口をはさんだ彼女のお蔭で、剣呑とした空気は何処かへ旅に行ってしまったようだ。
その後、恭也君と幾つか話をし「なのはに
「……っ、まさか」
真っ先に気が付いたのは私だ。ジュエルシードには及ばないが、大規模な魔力。それは徐々に徐々に大きさを高め、その後すぐに起こった地震のような、異常な出力の魔力――ジュエルシード一つなんて比では無い、まるで幾つものジュエルシードが暴走したような、馬鹿馬鹿しい魔力の量。
「……あら?」
次いで忍君がシェリアの様子がおかしいことに気が付いた。私が眠っている約一か月の間に何度か、シェリアが倒れたことがあったらしい。その時と同じように――否、その時らよりも酷く、シェリアの顔は青くなっていた。
「……二人とも、悪いがシェリアを頼む。少し、用事が出来てね」
「わかった。……万が一なのはに出会うことがあれば是非も無く言っておいてくれ。戻ってきたら一番に道場に来るように、お前のお兄ちゃんが言っていたぞ、と」
「引き受けた。……ローブはあるかね?」
「それならシェリアさんの隣の紙袋の中に」
シェリアの血を啜ってから、飛行用の魔術を一応考案して置いて正解だった。『血塊鬼』は飛ぶというより『浮く』の方が正しいので、実際の私の体で使えるような魔術を考案したのだ。
実際には、『飛ぶ』ではなく『立つ』が正しい。そうでもしなければ私の
シェリアをベッドに寝かし、窓を開け隠密用の魔術を発動。降り始めたばかりの雨粒が顔に掛かり、僅かに霞がかっていた意識を完全に覚醒させた。
白から所どころ斑に赤茶に変色したローブを病衣の上から被り、固まりきって痛みを訴える体を壊すように強引に動かしてから、私は蝙蝠に化けて飛んで行った。
――間に合えよ……。
・飛行用の魔術って、ぶっちゃけ必要なの?
→いちいちゲテモノな外見になってしまうのを防げる+そもそもアレは時間制限付き。
・シェリアの寝言
→本心です。
・タグのヤンデレは?
→シェリアの純愛ぶりをヤンデレと称したかったのですが……どうしようかしら。
・今どの時期よ?
→ジュエルシードが海で暴走した時くらいです。
すごく今さらながら、矛盾した箇所を見つけたため修正。20141027
なんか疲れてきた……お休みなさい。
誤字修正しました……やらかしたー…。