Vampire and a magic girls / RE.   作:眼鏡花

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 お待たせしましたー。

 誰か、昨日友人の言っていたユウキ(SAO)をテルミ(BB)と勘違いした俺をぶん殴ってくれ……。




Twenty

 

 終わったことを話そう。

結果的に、私はあの後碌なことを出来なかった。唯、少しばかりの露払いはしたが、それだけだ。

 問題は、ジュエルシードが封印されたのを確認した後のことだ。

 私に対して大人しくしているか、さもなければ拘束すると宣言をした少年からいけしゃあしゃあと逃げ――その前に『なのは君、用事を終えたならすぐにでも道場に来るよう兄君が言っていたぞ!』と告げてからだが――病院に戻り、すぐさまシェリアの様子を見た。

 

 ……今にして思えば、シェリアの安否を確認したい一心で逃げてしまったが、それなりに話を付ける良い機会を逃したのではないだろうか。いや、後悔しても仕方のないことだが。

 まあ、なのは君にああ言った以上、十中八九ばれたと考えていい。

 

 他はさして問題はない。

 魔眼で確認した結果、シェリアの体調が、つい少し前のことが嘘のように回復していた。……封印された側のジュエルシードにシェリアの方のジュエルシードの機能が取り込まれてしまうのではないかとも考えていたが、やはり私たちを繋ぐ線を乱されるだけらしい。

 それでも、彼女が苦しむ事には変わりない、が……。

 良かった。涙を流しながら、素直に喜べるくらいには、彼女が無事だったことが嬉しかった。

 

 そう考えると、どっと疲労が体を支配した気がした。ぶつん、ぶつんと全身から鳴っては不味い音が幾度も鳴る。一瞬、目も眩むような痛みが全身を巡ったが、それだけだった。

 

「……寝込む心配は、杞憂だったか」

 

 近くに居るだけでは、今の私はどうやら満足しきれていないらしい。

 今はまだ良いとして、私が彼女を求めるようになってしまったら、きっと後が大変だろうなと苦笑いする。その僅かな身体の動きで鈍痛が全身をめぐったが、耐え切れないほどでもない。

 

「失礼。……やはり戻っていたか」

「恭也君か。ああ、なのは君には一応伝えたよ。その時の反応まで見ることが出来なかったことが残念ではあるがね」

「……お前とは一度と言わず殺すまで剣を交える必要があるようだ」

「冗談だよ」

 

 物騒な軽口のたたき合い――だと思いたい――を病室に入って来た恭也君と行い、ベッドのすぐ横に置かれた椅子に腰かける。いやはや、痛い、痛い。身が裂ける思いだ。

 たいした理由もなく、シェリアの頭を撫でながら、ふと考えた。私はこれまで、愛とは何か、愛している行為とはどういう物か、という部分を何かに付けて求めていたが。――理由なんて、要らないのかもしれない。いや、“かもしれない”ではない。必要ないのだ。

 今、私がシェリアに対してこうした行動をしているのと同じで。自然と、そうなるのだから。

 ……ああ、何だ。簡単ではないか。難しく考え過ぎていたのだ。唯、愛しているという思いを胸にその相手と接すれば、それで済む話だったのだ。

 

「何かあったか?」

「どうしてそう思う」

「お前から感じていた重々しい粘着性のような感じが大分無くなっている」

「……傍から見るとそう見えていたのか」

 

 ああ、これまでシェリアへの愛を誰かに語って来た自分が何だか馬鹿馬鹿しい。これでは恋に恋する乙女か、余程執念深い変質者――これは否定できる要素がないとも断言しがたいが――と何ら変わらないではないか。

 私の中の彼女に対する何かしらの感情が、そうさせたのだろうか。

 ――その答えは、恭也君がたった今目の前で語った。いや、その『答えの一例』か。

 

「個人的な印象だが、お前は彼女に対して……いや、彼女そのものに恐怖していたようにも見えた」

「……どういう事だね」

「すぐに察するかと思ったが、そうでもないか。――負い目であれ何であれ、“愛している”と、そう伝えるのに何かしらの大義名分を欲したように見えていた」

 

 その言葉を聞いて、やけに胸が痛んだ。説明しづらいが、掘り返されたくない過去を掘り返されているような、そんな嫌な痛み。

 実際、恭也君の言い分の一切が事実無根というわけでもない。納得し受け入れることが出来る部分が多数だ。

 

「そうでなければ、潰れてしまうかのようにな」

「…………」

「俺にも似たような経験がある。……尤も、『俺は』だ。受け取り方は、お前次第だよ」

「いや、感謝しよう」

 

 その話が、結果として胸の中のつかえを取り払い、同時にすとんと落ちてきた。自分でも否定しようのないことだ。

 怖かった。恐れた。嫌われてしまうかもしれない、恐れられてしまうかもしれない、彼女が離れてしまうかもしれないという恐怖が、彼女の傍に居る為に一々理由を欲しがったのか。シェリアに対するイエスマンになっても構わないとしていたあの考え方が最たる例か。

 はっはっは……何という浅ましさ。こういう物は、他人に指摘されて気が付くというのも、なんだか微妙な気分になってしまう。こういう部分は本来、自ら気が付くべきだ。

 アルフ君にアレ呼ばわりされたのも、改めて納得だ。

 

「……すまない。少し眠らせてくれ」

「…………不貞寝か?」

「ぶち殺すぞ人間(ヒューマン)

 

 思わず本気で殺気立った声を上げてしまい、完全に否定できる要素が消えてしまい、恭也君からの「……すまない」の一言で、自らのことが一層惨めに思えた。

 次に起きたら高町家の喫茶店にでも、シェリアと共に行こうと考えつつ、彼女の眠るベッドの上に突っ伏した。

 

 

 

 目が覚めた時、辺りは夕焼け色に染まっていた。全身がだるい。何があったんだっけ?

 確か、ライネスさんが倒れて、長い間目を覚まさなくて、体調が凄く悪くなって――あ、そっか。またか。ライネスさんが眠っている間に、しのぶちゃんたちから言われたから知ったことだけど――胸にあるジュエルシードっていう宝石が原因で起きる病気みたいなもの。それがおこっちゃったのか。

 そう納得しながら、左手に冷たく、重みが掛かっていることに気が付いた。

 硬くて、大きい手だと分かる。その手の下に、私の手があった。少し痺れている。

 顔はわからない。だけど、覚えのあるフードを被りながら、私の寝ているベッドに大きな上半身をゆだねていた。

 ――息が詰まって、涙が零れそうになった。

 良かった。起きたんだ。とっても、心の底から安堵した。

 

 私を見捨てない人。私を助けてくれる人。

 怖がりで、格好つけで、よく失敗もする人で、大好きな人。

 

 ライネスさんが眠っている間に、きょうや君がライネスさんの事を子供と言っていた。それを聞いて、何となく納得したんだ。わがままで寂しがり屋で、頑固で意地っ張り。

 そんな人柄をしていたから、私は好きになったんだと思う。

 

 幸せな気分になりながら、フードを外して、頭を直接撫でた。……あれ、そう言えばライネスさん、血を飲んでないけど大丈夫かな。後で私の血、飲ませてあげなきゃ。

 撫でていながら、今後のことを考えてみた。今後――なんて言っても、将来の生活とか、夢見がちなこと。子供は何人が良いかなーとか、その前に子供ってどう作るの? とか。

 そんな風に考えてて、ふと思いついた。

 ――――私が傷付けば、ライネスさんは遠くに行かなくなる。私を守ってくれる/愛してくれている。なら、それを行動に移せばいい。でも、ライネスさんはきっと傷付く。でも、でもでも、でもでもでも――――

 

 たぶん、これは考えては、いけない事なんだ。すぐに分かった。でも、実際にその通りだと感じている。私だから? それとも、貴方が愛した人だから?

 ……結局、私を愛しているからそういう行動に出てくれるのは嬉しいのだけど、私が全部その行動に移すという部分を招いていることを考えると、少し悲しい。

 

 でも、愛したい/愛されたいのも否定できないんだよね。愛してほしい/愛したい。貴方の長い独りぼっちの間の時間を埋めてしまいたい/私がどうにかしてしまうくらい愛してほしい。

 

 ……酷い女だなぁ、私。相手が恐れている部分を分かって利用しようとしているんだ。本当に最低だ。でも、それで愛してもらえるなら――――。

 ぼんやりと薄暗くなっていく病室の中で、もう一度眠ってしまうまで私はそんなことをずっと考えていました。

 




書いてて思った。アイエエエ……? ライネス=サンどうにかなった(?)けどシェリア=サン、メンヘラと化してね?
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