Vampire and a magic girls / RE.   作:眼鏡花

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 最近寝ようにも寝られない今日この頃…。
 三時半から五時半までしか眠れなかったとか、俺も歳かねえ…w
 では、どうぞー


Two

 夕日が沈み掛け、満月が昇りかけ、昇りきればさぞ美しい満月が浮かんだであろう静かな夕方。飛来してきた蝙蝠の大群が一つの路地裏に集まりだす。

それはやがて融合し、人の―――私の姿になる。

 漸く蝙蝠の姿から解放された事を心から喜び、目撃者が居ない事を確認し表通りへ出る。居た時は啜るだけだ。躊躇う必要は無い。ああ、そのついでに労働力に変えるのも悪くないか。

 だが、生憎と目撃者は居なかった。こんな時間まで遊んでいては何が起きるか分からないからね。或いは、人間の暗闇に対する本能的な恐怖からか。どちらにせよ、この辺りは夜遊びをする未成年が跋扈しない程度には治安は良いのだろうとあたりを付けた。

 

「二日ほど飛び続けたが、この町の周辺で間違いない筈だ」

 

 いい加減、この独り言を言ってしまう癖を治そうかと考えるが、この癖とも早六百年以上の付き合いだ。諦めるのが妥当か。

 兎も角、言葉通り二日間飛び続け地球儀を見た限りではこの町の辺りだというのは違いない。だが、あれ以来魔力を感じることが出来たのはたったの一回。だが、感じる時間は長かった。

 如何したものかと悩んだが、悩んでも仕方あるまいと結論付け、辺りを散策してみる事にした。

 私は魔力の大元は何らかの装置、兵器のような物だと目星を付けている。そうしなければあんな風に断続的に途切れたりしない筈だ。そうでなければ、魔力を放ち続けるかのどちらかになるだろう。放つと言っても、魔力の有無が分かりようになるだけであって、魔力の総量はそう変化しない。

 変化などされたら、私からすれば堪った物ではない。減ってしまえば、それだけシェリアの蘇生から遠のいてしまう。私の知らない類の物であれば、或いは起こり得る最悪の事態かもしれないが、それは起こらない事を願う他無い。

 それにしても、確か日本というのは敗戦国だった筈だ。此処まで発展した敗戦国はそうそうあるまい。ビルの傍にはマンションや家々があり、どれだけ豊かな生活を送っているのかが手に取るように理解できた。

 

「む」

 

 思わず、振り返ってしまう。

 どうでもいい事だが、私は子供が好きで、苦手だ。基本的に幼い者は彼女を連想させ、どうしようもなく安心からである。シェリアが子供好きだったことも一役買っているかもしれない。

同時に手に掛けようとする(吸血しようとする)際にも彼女の事を思い出してしまう。だから好きで苦手なのだ。

 

「それにしたって、なのはは大丈夫かしら。風邪引くなんて」

「大丈夫……だと良いね」

 

 たった今すれ違った二人の可憐な少女達。紫色の少女の方から本当に僅かだが吸血鬼(同族)の匂いがした。だが吸血鬼と呼ぶには匂いが薄すぎて、これでは人間だとしか思えない。そも、紫髪の吸血鬼達に覚えが無い訳では無い。あり過ぎる位だ。だがこの匂いの薄さは何だというのだ。虹彩も赤くない。推測としては他種族肯定派の者達の関係者という可能性もある。だが、最大の疑問はこれに尽きる。

 

「夜月の民の者よ。何故、ここに居るのだ」

 

 あの者達はフランスの秘境にて数百人規模で生活していた筈だ。至上派と肯定派がどうなっているかは知らない。だが、この地に来る理由が無い。或いは何時の間にか移り住んでいた可能性も有る。

 ……いかん。最近は研究に没頭しすぎたせいか幾つかの可能性とその証明を行ってしまう事が増えた。

漏れ出した言葉は、三人を含めて人間に聞かれる事は無かった。

 いや、聞かれていた可能性も否定は出来なかったが背後から聞こえたタイヤがスリップする音を聞いてそれは無いと何となく思えた。

 だが、すぐに妙な事に気が付いた。音がやけに近い、これではまるであの少女達が狙われたかのような。

 背後を見てやればどこか力の籠っていない四肢を晒して頭を垂れた紫髪の少女とそれを抱える覆面を被った男、同じような覆面を被った別の男に無我夢中にもがいて抵抗しながら黒塗りの車に乗せられていく金髪の少女の姿を捉えてすぐに、その場から逃げ去るように離れていく車が見えた。

 

「……」

 

 離れていく車を見て、あの子達が今目の前で誘拐された事実に遅れて気が付いた。あまりに唐突に起こった出来事で、考える力が固まってしまったらしい。

 

「ふむ……」

 

 放っておくか。私には関係ない事だ。

 そう考え、その場を後にしようとする。だが、何故だかあの二人の姿に彼女の姿を重ねてしまう。溜息を吐きながら頭を軽く掻き、その都度腰辺りまで伸ばし三つ編みにした銀というよりは黒に近い灰色の髪の毛の毛先が揺れる。

 もう一度言う。私は子供が、好きで、苦手だ。苦手と言っても今回は手に掛ける(吸血する)気は毛頭ない。在っても、それは緊急事態かそれに準ずる状況にでも為らないと血を啜ろうとは思えない。

 つまり、だ。

 

「放っていては―――彼女に顔向けできまいよ」

 

 私は、本当に惚れた女にはとことん弱いらしい。

 そんなこの場において考える必要性の無い馬鹿のような、いや馬鹿げた事を考えた事を自嘲しながら、私は人目が無いのを確認して蝙蝠の群れへと化けた。

 この時は、この姿に対する嫌悪はなりを潜め、寧ろ誇らしさが在った。

 

 追跡して見た所、私が辿り着いたのは廃墟となった一つのビルの屋上だ。その入り口の目の前に車が止められていて、見張りだろうか。拳銃を恐々としながら色々な向けへと向けている。

 敢えて降り、入り口から正面突破で入り込むのも粋だが、そんな事をして相手方を刺激してしまい彼女らに被害が及ぶような事になってしまえば、それこそ彼女に顔向けできない。求められるのは静かに忍び込み、あの二人を早急に、無傷で救出する事、か。

 この身体能力で持ってすれば不可能では無い。だが、あの少女らの姿を見た限り年齢は十前後。精神的外傷(トラウマ)を植え付けるには少々酷だろう。

 

「そして、恐らくだがこの真下に居るのが今回の犯行者達と、人質か。……ハハッ」

 

 思わず嗤ってしまう。その笑みの意味は嘲り。私自身に対してでは無い。増してや、あの二人に対してでも無い。犯行者達に向けた、笑み。

 策は考え付いた。見せられぬなら、見られぬように意識を落とさせてしまえば良い。眠らせるか気絶させるか、どちらでも構うまい。

 

「何時如何なる際でも、幕開けとは静かに行われるのが相場だったか?」

 

 今は知らないがね。

 屋上の扉へと手を掛け、ゆっくりと開ける。長らく使われていなかったからか錆びが零れ、金属同士が擦れあった時の何とも言えない気味悪さを覚える音が小さいながらにバックミュージックとして機能する。

 その音を聞き流しながら私は魔力を精製する。これから行う幕開けを飾る我が切り札を使うための下拵えだ。標準分あれば良かろう。

 生憎、上から見た時のような見張り役は居なかった。居れば血を啜って材料の一つとして有効活用してやろうと思っていたのに、残念だ。

 階段を下りながら、影から飛び出した片手半剣の柄をしっかり掴み、引き抜く。

 我が友から承り、魔術を使って限界まで強化し、幾人の血を吸ってきたこの剣は魔剣の域に達しつつある。

 いや。青炎を纏い、形を失わない時点で既に真面な剣から余程遺脱しているとは思うが、それはそれとしてだ。

 

「んー!! んーんー!!!」

「あ、アリサ、ちゃん……」

「お、良いねえオ・ジョ・オ・サ・マアァ? 俺の見てそんなに暴れちゃってさ。そそるねえ」

「オイオイ、俺達も混ぜろよー?」

 

 悲鳴に乗った拒絶、それを上回る恐怖の混じった声。

 それに上乗せするように下卑た、いやらしい下衆の声が聞こえる。嫌な予感がして階段を下りる足を速め、大きなフロアへの出入り口が見えた所で―――私は既に全力で駆け出し、本気で頭に来た。

 考えていた策など、二の次に出来るほど。

 

「あぎゃっ!?」

「ん!?」

「きゃ!?」

 

 片手半剣を男目掛けて投げる。空いた両手で少女二人を抱えて、中央に屯っていた()六名の名も知らぬ人間達から距離を取る。

 私以外は状況に着いて行けず、強気な印象を受ける少女は口に凌辱的な行いをする為の道具が着けられている。見れば二人とも服も下着が見えてしまう程にボロボロだった。

 片方の少女の口に付けられたそれを外してやり、縄を爪で切る。そこで二人とも漸く私という存在を認識したようだ。今にも泣きそうな顔をしながら必死に泣くのを堪えているのがよく分かる。

 

「怖かっただろう。もう大丈夫、私は君達の敵では無い」

 

 そう言って彼女らに背を向ける。僅かな時間差を置いて背後から聞こえる少女らしからぬ押し殺したような嗚咽を聞いて、良かったと思えた。

 私らしくもない。そう思う。策も無意味となってしまったし、切り札を使っては少々拙い。殺す事は背後に居る二人(荷物)を眠らせれば問題無い。守りながら殲滅するのは少々骨が折れるだろうが、それもまた一興だ。

 復活した人間達も、ある者は腰を抜かして、またある者は気丈に立っているように見えて体が動かないだけだったようだ。

 原因は、一つに尽きる。

 

「さて、人間共。第四圏、或いは第七圏の地獄へ赴く準備は万端かね?」

 

 この言葉がどれだけ聞こえているかも定かでは無いが行う事に変わりは無い。

人間達の注目を集めているそれは、つい先ほど出来上がったばかりのオブジェだ。先程まで立ちあがっていた性器を露出させ丁度心臓の位置に片手半剣が垂直に突き刺さり倒れきれずに中途半端に固定されたかのように死んでいた。

 一足先にきっと第二圏へと向かったであろう、男の姿がそこにあった。

 




 要らない補足コーナー

Q1 第二圏、第四圏、第七圏ってなに?
『神曲』より。八つ存在する地獄の四番目と七番目の地獄の事。
第二圏は愛欲者の地獄。肉欲に溺れた者達が暴風に吹き流される地獄。
第四圏は貪欲者の地獄。浪費や吝嗇、大雑把に言って金に関わる悪徳を積んだ者が落ちる地獄。
第七圏は暴力者の地獄。他者や自身に振るった暴力によって落ちる場所が振り分けられる地獄。

Q2 主人公はロリコンですか?
A 寧ろ保護者。

 誤字や間違った日本語などあったら、報告をよろしくお願いします。
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