Vampire and a magic girls / RE.   作:眼鏡花

5 / 22
 最近友人にジョジョを進められ『恥知らずのパープルヘイズ』というのを読んでみたのですが……。
 ……予備知識って、本当に大切ですね。
 


Four

 高さから見て、三階辺りか。そう言えば一番下の階で犯行者達の仲間が居た事を思い出し、割れた窓から下を覗き見る。しかし、車も見張りも居なかった。逃げたか?

 

「むっ?」

 

 紫髪の少女のスカートのポケットから、ループする電子的な音楽が流れた。携帯電話か。着信音がぽつりと鳴り響く。

 

「失礼するよ」

 

 聴こえてはいないだろうが、それでも一言断ってからポケットに手を突っ込み、携帯電話を取り出し開く。

 画面には『お姉ちゃん』と表示されていた。ふむ、この子の姉か。

 通話ボタンを押して耳に当てれば、絶叫とも取れる大音量が聞こえてきた。少し、耳が痛い。

 

『すずか! 漸く出たわね、大丈夫なの!?』

「落ち着いてくれ。これでは話したい事も話せん」

『……誰かしら?』

 

 妹―――すずかというらしい片割れの少女の姉は、先程の大いに焦ったような声色とはまるで違う、冷え切った冷淡な声を出した。思わず背筋がぞっとする感覚に襲われる。この手の者には口で勝てた試しは無い苦手な部類だ。さっさと事実を切り出す事にした。

 

「そうだね。君の言う『すずか』君と言う少女ともう一人、金髪の少女を誘拐犯兼夜月の民……いや、今は夜の一族だったか。その至上派から助けた。こう言えば見当は付くかな?」

『アリサちゃんも……何が目的かしら?』

「む? それはどういう……ああ、そういう事か。強いて言うなら遺体の処理位だね。私としては早く帰してやりたいのだが、私はこの地に来たばかりで土地勘が無い。安心しろ、というのが無理な話であるのは重々承知だが、それでもだ。至上派は私が屠ったし、誘拐犯も殲滅した。この子達に怪我も無い」

 

 私が更に別の、(すずか)君に害を為す存在だと思ったのだろう。だが、生憎私はそういう心算は全く無い。勘違いも甚だしいが、仕方が無い事かと割り切る。肉親がこのような目に遭っているのだ。そう思うなと言うのが無理な話だ。

 

『迎えを寄こします。どういう場所か教えてもらっても?』

「少々待ってくれ」

 

 通話しながら下っていた階段が終わり、先程まで車が止められていた入り口の辺りに立ち、周囲の様子を見る。

 遠くの方は人口の光に照らされ、煌々と輝いて見えるが、この辺りはまるでゴーストタウンのように思えた。活気がそう思える程無いのだ。

 

「この辺りは廃ビルばかりで、ゴーストタウンかと一瞬疑ってしまったよ。遠目に人口の光が多く目に映る」

『……あの辺りね。分かったわ、今すぐ迎えを寄こします。ですが、妹とその友達に何かあれば―――』

「それよりも、精神的なケアをしてやって欲しい所だ。確か、『アリサ』君だったか。この子は危うく凌辱的な目に合う所だったのだよ。更には、二人揃って服を剝かれている。目が覚めても知らない私が居るよりは知っている者が傍に居てやった方が良いだろう? そういう訳だ。早く来てやってくれ」

『―――分かりました。すぐに』

 

 通話が途切れる音の後に、ツー、ツー、と規則正しい音が流れる。全く。あの声色から察するに全くと言って良い訳では無いが、それと大差が無い程には嫌われた、或いは警戒されているらしい。

 

「それが当り前だろうね。糾弾しなかった分、正しい対応だ」

 

 仮に私が先程の犯行者と同類の者であると仮定しよう。

 私が嘘を吐き、すずか君の姉が糾弾する。そうすれば、私が逆上してすずか君に手を出す。こうなってしまえばもう取り返しがつかなくなってしまう。

 そう言った意味では、眠り続けているこの子の姉は理性的である。が、私がそうでないとは限らないのだ。

 考えている内に、アリサ君と呼ばれた方の少女が身動ぎをし始めた。もうすぐ目が覚めるだろう。フラッシュバックを起こさなければありがたいが、そう上手くは行かないだろう。最悪、男に対する精神的外傷―――トラウマを負う可能性も有る。

 

「勝手に助けただけだが、一体何だ。この後味の悪さは……」

 

 思わずため息を吐きたくなった。

 その場にこの二人を置いて逃げ出したい衝動に駆られるが、それでは同じ事を繰り返す可能性も否定しきれない。

 八方塞がり。ああ、今この子達を見捨てるのも忍びないが、これでは魔力の大元を探しに行けないではないか! 未だ魔力を感じ取る事が無い物の、何時起こるかが分かるほど私は私の大嫌いな存在()の如き存在になった覚えは無い。未来など、本当に少しの差異でその全てが変わってしまう物だと思っている。バタフライエフェクト、だったか。尤も、あれは風だが似たような事なら在ってもおかしくは無いだろう。

 

「んぅ…………あれ? 私……」

「ん? ああ、目を覚ましたのか。良かった。アリサ君……で構わないかね?」

「……そうだけど…………誰よ、アンタ」

「む、寝起きの第一声がそれとは。顔くらいは覚えていても良かったと思うのだがね?」

「え? ……―――――ひっ!!? い、いい嫌あぁ!」

 

 私には余計な事でも言う才能でも有るのだろうか。直接的に教えずとも、もっと遠回しに教える方法も在っただろうに。後悔しても時すでに遅し。

 彼女を抱え上げている腕から無理矢理にでも逃れようと必死に暴れるアリサ君。しかし私の腕から逃れられそうな気配は全く無い。そもそももし落ちてしまえば、二メートル近い高さから彼女は受け身も取れずに落下する事になってしまう。怪我をさせるのは嫌だ。

 慰めようにもこういう時には逆効果になる恐れもある上に、もう片方の腕はすずか君とを抱えている為に塞がってしまっている。

 はてさて、如何したものか。私の言葉に聞く耳を持ってくれれば最良なのだが。催眠の魔術でも習得しておくべきだったか?

 

「はな、して! 放してよ!」

「落ち着いてくれ。別に私は君の事を取って食おう何て考えていない。それに、もうすぐ迎えが来るだろう。だから、それまで我慢してくれ」

「放して! はなしてえ!!」

 

 むう、如何したものか。こういう部分において私は死ぬまで絶対にシェリアに敵わないだろう。彼女は幾らでも泣き続ける子供を慰めたりする事は当たり前、それこそ聖母のように行っていた。

 私と話す子供はそうそう居なかったし、私の話を聞かずに三つ編みにした髪を弄ばれるか、体を山代わりに使われていたかの覚えしかない。

 

「それに。すずか君、だったかな。その子も君の隣に居るのだ。起こしてやる訳にもいくまい」

「はな―――……すず、か?」

「ふう。漸く、話を聞いてくれる気になったか。助かった」

「アンタ、すずかに、変、な真似して、無いでしょうね!? 私はまだいい(・・・・・・)。けど、すずかに何かあったら―――死んでも許さないんだから!」

 

 驚いた。一緒に居た友達よりも先に酷い目に遭いかけたこの子が自身の事よりも友達の事を優先し、心配した事に。

 献身的、または自己犠牲か? まるでセリヌンティウスを彷彿とさせるこの子の態度に、私は相当間抜けな顔を晒してしまった事だろう。

 

「安心したまえ。先程言ったように、君の隣で眠っているよ。だが、君があれだけ叫んでも目を覚まさないとなると、起きるにはもう少し時間がかかりそうだ」

「……悪かったわね」

「子供とは大人に迷惑を掛けて生きるものだ。気にするな。時に不躾な質問だが、()が君に触れているが、恐怖心などは在るかね? あれば隠さずに答えて欲しい」

 

 本当に不躾だが、こういうものは総じて先に行っておいた方が良い。上げてから落とすような経験をさせる位なら先に谷を味あわせてやった方が良いと思うのは、私だけなのだろうか?

 この質問にアリサ君は顔を僅かに顰めながら答えた。

 

「本っ当に不躾ね。でも、そういうのは無いわ。有ったら今でも騒いでるわよ」

「成程。では、降ろすぞ」

 

 その表情と声色から、恐らく嘘だ。表情は言わずもがな声には怯えを押し殺したような物が混じっている。それでよく大丈夫だと言えたものだ。

 その場でアリサ君を手放す訳にはいかず、膝を曲げて高さを低くしてから降ろしてやった。

 子供と言うのは、周りに迷惑を掛けるのが当たり前である生き物であるだから、こういう際には泣いたりするのが普通なのだ。

 どれだけ精神が早熟しているのやら。

 そうこう考えている内に、一台のリムジンが遠目に映った。すずか君の姉が言っていた迎えの事だろう。これで私はお役目御免と言う訳だ。

 ゆっくりと私達の前でリムジンが止まり、扉から十代後半くらいのすずか君と同色の髪を持った少女が押し出されるように出て来た。

 

「すずか!!」

「静かにしたまえ。未だ眠っている」

「あ……ごめんなさい」

 

 反省した彼女に、抱えていたすずか君をそっと渡してやる。彼女は涙目になりながら妹の頭を愛おしそうに撫でると、リムジンの座席に乗せた。

 

「君に謝られる筋合いは無いが……。まあ良い。アリサ、君は車に乗りたまえ。すずか君の姉よ、彼女も頼むぞ」

「ええ、分かりました」

 

 それだけ言って私はその場を後にしようとする。これ以上厄介な事になるのはもう懲り懲りな上、私にはやらなければ為らない事が在る。早くそれをしなければ為らないと、半ば自らを脅迫しているような感覚に陥っていた。

 私としてもそれを叶えたい変わる事のない事実。早速実行に移そうと場所を後にしようとしたとき、後ろから声を掛けられた。

 

「貴方も乗って下さい」

「断らせて頂くよ。私は聖君太子の類とは程遠い化生なのでね」

「あら、なら私達(夜の一族)も人の事を言えませんが? それに、私も月村家当主代理として気になる事が在るので」

 

 背後に目をやり、当主を自称する少女の目を見る。

 この目を私は知っていた。かつての友の目、それと同じ目をしていた。

 優しく、執念深く、好奇心旺盛で、何より負けず嫌いであった友と同じ目を。

 

「……」

「……」

「……参ったな。淑女に声を掛けられて、それを無碍に扱っては元とは言え貴族の名が疑われる。分かった、私も乗せてもらおう。唯、時間を少々早めて貰っても良いかい?」

「ええ、大丈夫です。……失礼ですが、お名前は?」

「そう言えばまだ名乗っていなかったか。これは失礼。私の名はライネス。ライネス・ヴェルバータ。以後お見知り置きを、月村家当主代理殿」

 

 しかし、代理、か。これでは私の予想は一つ外れたようだ。

 そう言うと、月村家当主は苦笑いしながら頬を人差し指で掻いた。

 

「私には月村忍っていう名前が在るのだけど……あれ? 名乗ってなかった?」

「……少なくとも、名乗られた覚えは無いね。では、私も乗せてもらう事にしよう。私はライネス。ライネス・ヴェルバータ。そして忍君、アリサ君は?」

「既に車の中に居ます」

 

 微妙な空気に為りつつあった場を無理矢理修正し、会話を終わらせる事に成功した。

 魔力の原因探しは話し合いが終わってからで構うまい。恐らく、鋭い人間なら気が付けたかもしれないが、それだけだ。魔力が感じられれば適当な理由を付けてその場から離れれば良い。

 

「分かった。では、行くとしよう。……口約束とはいえど、忘れていないだろうな?」

「え、何の事ですか?」

「……はあ」

 

 この反応を見るに完全に忘れていると確信した私は、もう一度遺体の処理の事を話す事となった。

 どうでもいい事だが、私がリムジンに乗ろうとした際アリサ君がその少女らしいあどけない顔を怯えで歪めた際には、私のせいでも無いのに心が痛んだ。

 




要らない補足コーナー

・主人公って意外と小心者だったりします。

見張りがいない→フラグは折れた?

セリヌンティウス……走れメロスより。処刑されそうになったメロスの友。代理人として代わりに刑をうけそうになった。

Q.代理ってどういう事?
A.詳しくは後日。

Q2.アリサがいきなり大人しくなり過ぎじゃないか?
A2.これも後日。ただ、伏線は幾つかあるはず。

そのうち別キャラ視点でも書いてみようかな? EXTRA SIDE みたいな感じで。
一人称だから嘘は言ってない……よね?
今回は誤字は無い筈だ!(多分(オイィ?
↑すみません、嘘つきましたorz


11/15 誤字があったので修正
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。