Vampire and a magic girls / RE.   作:眼鏡花

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 今日知った驚愕の事実。
 ケータイ(ガラケー)の待ち受けを変えられる事を知った事。……遅れてるなあ……orz
 あ、改訂版は改定前に比べ色々とペース配分間違ってます。


Seven

「はあ!」

 

 空中に飛んでいる少女は私に急接近し、手に持つ黒い機械的な斧を一閃。

 私はそれを逆手に構えた片手半剣で受け止める。硬い金属同士がぶつかる快音と共に、返ってきた衝撃は想像より大きかった。

 この小柄な少女が、少なくとも昨夜殺した男より少し弱い位だと言って、はたして納得できるものか。

 少なくとも私には出来そうにないが、その事実を今知ってしまった以上は受け入れるほかない。

 剣の刃を滑らせながら斧を打ち上げ、追い打ちとして斧の柄を蹴り上げ吹き飛ばす。無論吸血鬼の力に耐え切る力を持たない人間、ましてや少女は斧から手を放してしまう。彼女の視線が上に向かっている内に軸足を大きく曲げ、一気に伸ばして地を蹴りその場から離れ、そのまま走り去ろうとした。

 

「アルフ!」

「あいよ!」

 

 しかし、それを妨げる者が居た。上から降りてきたのは二色のオレンジ色の毛並みを持つ狼。アルフと呼ばれた存在。

 人の言葉を解す使い魔、それも高等なモノか。

 使い魔とは魔術師が精製した魔力を死した、もしくは死にかけた生物に与える事によって魔術の契約を結び、自身の眷属として使役する事が出来る生物の事だ。

 高等な頭脳を持つ存在であればあるほど主を見切って死を選ぶか、第三者に仕えるようになる事もある。後者は無いが、前者は経験談だ。

 

「面妖な……同時に厄介、いや面倒だ」

 

 一対多という状況は慣れている。しかしだ。今の私には左腕が無い。だから心配(・・)なのだ。

 監視として蝙蝠に変えてしまっている。戻そうにもそれでは約束を(たが)える事になる。それは駄目だ。

 魔術を使おうにも、それでは殺してしまうかもしれない。それこそ論外。

 ああ、これだから子供は苦手だ。些細な事が致命傷に繋がる。僅かにでも力加減が狂えば私の場合あっという間に殺めてしまうだろう。

 いや、彼女はそういう可憐な存在であるからこそ子供が好きだったのか?

 

「もう一度言います。ジュエルシードを渡して下さい」

「何度でも言うが、断るよ。ジュエルシードだったか。あれは私の物では無いが、君の物でも無い。早い者勝ちというやつだ」

「アンタなめてんのかい? フェイトはまだまだ本気を出していないんだ。怪我する前にとっとと寄こしな!」

 

 怪我するも何も、傷を負った傍から治す事が出来ると告げるのは止めておこう。余計に突っ掛かってきそうだ。

 それとも、狼を見せしめにするか? いや様子を見る限りアルフ君と、フェイトと呼ばれた少女は信頼関係にあるのだろう。だとするなら、フェイトに精神的ダメージを負わせる事になる。

 ……仕方あるまい。

 

「正面突破、もしくは後面突破と行かせてもらおう。覚悟は良いかね?」

「は! やれるもんなら、やってみなあ!」

「アルフ!」

 

 少しばかり手加減すれば問題なかろう。

 私はそう諦め、視界に映るのは駆け出し、此方に突っ込んでくる狼。猪突猛進というこの国の言葉がよく似合う。その勢いを活かしたままに跳び、私に食らいかかろうとするその姿は確かに、狼そのものだ。

 私はタイミングを合わせアルフの顎を狙って柄尻でアッパーカットのように殴りつけようとする。

 

『Scythe Form』

「アークセイバー!」

 

 しかし、その目論見は失敗に終わる。

 背後から聞こえた声の方を向けば、フェイト君が手にしていた斧が姿を変え、魔力で作られた刃を持つ大鎌になっていた。少女の黒い出で立ちから、命を刈り取る死神(タナトス)の鎌を連想してしまう。

 そして、彼女は掛け声と共に一閃。刃の形状をした魔力が飛来してきたのだ。

 避けてアルフ君(もう一人の敵)に当てようにも、器用に私の振上げかけた腕と頭を足場代わりに跳躍。私はバランスを崩され、アルフ君はフェイト君の横に並び立った。

 自然と、あの斬撃を避けられない状況が完成していた。

 斬撃がぶつかると同時に衝撃。私は吹き飛ばされ、服が破けた。硬い物が折れる音が聞こえる。無様にも地を転げる事になった。

 だが、予想していたよりもダメージは無い。いや、外傷は無いがダメージ自体は残っている。右腕の骨が折れたらしく曲がりもしない所で若干曲がっていた。どちらにせよ、すぐに治せる程度だ。

 同時におかしいと思う。あの魔力には私の体を斬り裂く位の力は在った筈だったにも拘らず、実際には大した傷は負っていない。

 手加減した? まさか。戦いにおいてそれは愚者の行う事だ。

 それにしても、拙い(・・)。これ以上の事をするとならば、自然と手加減出来なくなってしまう。そうなれば、下手をすると殺してしまう。

 私はシェリアに対してだけは、嘘吐きにはなりたくない。

 どうすればいい。すぐに治った右腕の剣を杖代わりに立ち上がりながら、そんな事を考えていた。

 

「な! 直撃だった筈だろ!?」

「あんな程度で戦闘不能になるほど、軟では無いよ。時に、フェイト君……だったかな?」

「……」

「君は、これを何の為に求める?」

「……」

 

 片手半剣をコンクリートの大地に突き刺し手放し、僅かに蠢いた影から飛び出したジュエルシードを右手に掴んでフェイト君に見せた。

 彼女は無表情から僅かに顔を強張らせる程度の反応だったが、それでも鉄仮面を被った雰囲気が在った先程に比べれば大きな差だ。

 

「……私は」

「フェイト!」

「アルフ君だったか。少々口を噤んでくれ。私は、君に何も尋ねていないのでね。……では、言葉の続きを聞かせてくれないか? フェイト君」

「……私は、母さんの為にジュエルシードを求めます。そうすればきっと、昔みたいに戻ってくれる筈だから」

「……成程。大方把握した、ならば私も返事を返さねばいけないね」

 

 母からの愛情を求めるからジュエルシードを求める、か。何と哀れな。結末は既に見え透いている。それに気が付けていない。いや、分かっていないのだろう。目を見れば分かる。あれは純粋無垢な幼子そのものの目だ。

 話を聞く限りは、やはりこれは魔力の原因であったようだ。程度の知れた事を調べる必要性が無くなったのは幸運だ。しかし、どうやって魔力を引き出す? あれ程大規模な魔力を内包する代物だ。 思いつく限りでは、力技で強引にジュエルシード()を破壊し、魔力(中身)を取り出すのが最も早い。もしくは、外部から規模の大きい魔力干渉を行うか、か。

 どちらにせよ失敗したらどうなるなんて、考えるまでも無い。考えたくも無い。

 

「私は、亡き最愛の人を求める。その為に必要な材料は殆ど集め終え、残るは魔力だけなのでね。都合がよかったのだよ」

「……え」

「ジュエルシードにそいつを求めるんじゃなくて、死人(そいつ)を、生き返らせる? ……アンタ、碌な死に方しないだろうね。それに魔力が必要なら、アンタのを使えば良いだろ」

「既に死んでいるようなものなのでね。更には、此方の方が早い」

「第一、その死んだ奴が喜ぶとも限らないけど」

 

 予想外だったから、フェイト君は僅かに目を見開いて、アルフ君は意味を咀嚼し、露骨な嫌悪の視線を私に向けた。

 確かにアルフ君。君の意見も尤もだ。だがね。

 

「それだけ、盲目的に、いや失明的に、彼女を愛しているのだよ」

「うわっ……」

「アルフ?」

「……ううん、大丈夫だよフェイト。少し、相手がアレ(・・)だからやりづらいだけさ」

 

 アレ呼ばわりか。はてさて、一体何が悪かったのやら。

 まあ、考えるまでも無い上にそもそも考える必要性も無い。

 

「……茶番はここまでにしよう」

「だね。いいかい、フェイト!」

「うん」

 

 二人は矢鱈とやる気になったようだが、私にはそんな(戦う)気は全く無い。何処か冷め切っていた。いや、慌てているのだろう。焦れているのだろう。

 漸く悲願を果たす事が出来そうだと王手に近い状態なのにそれを半歩手前で邪魔されているかのような苛立ちが沸き立つ。

 こんな時、かの都市伝説のジャックのバネ足が欲しくなるが、無い物強請りをしても何も変わらない。

 ズボンのポケットの中―――の影にジュエルシードをしまい、素手で適当に構える。

 まあいい。後はどうせこの場から早急に立ち去ってしまえばいい。

 それだけだ。

 

「はあぁ!」

「おお!」

 

 フェイト君が大鎌を構え低空飛行で直進。アルフ君は回り込むように弧を描きつつ私目掛けて突き進む。油断も慢心もしている訳では無いが、逃げるという時に片手半剣をしまう時間を作ってしまうのは惜しい。

 後退してもアルフ君に回り込まれ、左右に逃げよう物なら先程の斬撃が飛ぶか。対人(・・)用によく考えられている。しかし、だ。私はその規定に収まる必要も無い。それに選択肢ならまだある。

 追って来ると面倒だ。結界もある。フェイト君が術者であるなら、意識を失えば結界も自ずと解除される。だから私は前に出た(・・・・)

 

「な!?」

「隙だらけだ、よ!」

「きゃあ!」

「フェイ―――いだっ!?」

 

 例えば、フェイト君の目と鼻の先に一息で近づけばどうなるか。

 鎌というのは独特で奇抜だ。間合いを測り辛く、ショテールの如き軌道で刃先が迫ってくる事もあるのだから。

 だが、よく考えれば『攻撃を当てられない場所』も存在する。今私が居るようなフェイト君の目と鼻の先―――刃よりも下、柄と呼べる場所が特に顕著だ。

 驚いた顔で一瞬動きの鈍ったフェイト君のマントを掴み、アルフ君目掛け手加減して投げつける。もみきりしながらアルフ君に頭からぶつかった彼女は、どうやら気を失ったらしい。後遺症などが残らなければ良いのだが。

……次に会う機会があれば、念の為様子を見るか。

 

「では、私はこれで失礼さえて貰うよ。生憎、私には君達と戦う義理も義務も無いのでね」

「っづう……あ、あんた。よくも、フェイトを!」

「無理に動かない方が良いだろう。―――と、言いたい所なのだがね。結界が解けている。この場所の人通りが少ないからといって、そんな格好の子を放っていては拙かろう」

「―――ックソぉ! 覚えてろ、次はその喉笛食い千切ってやる!」

「出来るものならやってみてくれたまえ、朱色の狼」

 

 尤も、死なないだろうが(生き返るだろうが)

 結界が空気に溶けるように消えていく最中、アルフ君はフェイト君をくわえ虚空を蹴りながら何処かに行ってしまった。その掛ける様子の中にもフェイト君()を労わっているのが伝わった。

 そして、彼女らが人目に付かなくなるよりもやや早く、同時に結界は役目を終えた。

 ああ、疲労が一気に体にたまるのが理解できる。腹も減った。

 丁度いい。食事(・・)を行う対象(・・)なら既にいる。

 

「まあそんな訳だ。呪うなら、此処を今通ってしまった君達の不幸を呪ってくれたまえ」

 

 後日。私とフェイト君が戦った人通りの少ない裏通りで、二組の男女の全身を食い千切られたような死体と、首筋に噛み跡がある血の殆ど抜けたミイラのような死体が発見されたらしい。共通しているのは、胸に杭を突き立てられたような穴が開いている事との事だ。やけにつやつやしつつ後悔の念に駆られたような忍君に睨まれながら告げられた。

 その日、私は家に戻っていたから詳しい事は知らないが。

 

 

 

 




補足コーナー
・都市伝説のジャック…イギリスの都市伝説の一つである『バネ足ジャック』の事。手足がバネで、女性に火を吹きかけたりしたが、後の切り裂きジャックに比べれば幻想的でかつ殺人を犯さず、どの悪戯も常識的ではないが殺人にはならない範疇だった。作者の片割れが大好きな存在。その内主人公に添えて短編でも書こうかと画策中。
・フェイトとアルフの口調やらキャラやらにまったく自信がない作者。

 吸血鬼は、全ての材料を添えろえ終えました。
 ∵もうすぐ眠り姫の復活の時。
 ∴でも油断なさらないよう。
 ∵上げてから落とされた方が、悲哀の花は美しく咲くのです。
 ∴果たして吸血鬼は―――花を咲かせないように過ごせるでしょうか?

 ミス、言葉、描写が足りない部分があったため、修正しました。俺の阿呆……。
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