アリティアの東、マケドニアの北。
グラに向かう時に要となる、列島の一つで。
パオラは、爆弾発言をする。
「マケドニア白騎士団を・・・・・・
現時刻を持って解散します」
反応は様々だった。将軍職のリュッケや、竜騎士団から目付けとして来ているルーメルなど真っ青になっていた。
「何を言い出すのだパオラ中将!?
気でも狂ったか?!
我々は同盟国グラの要請により、共にアリティア反乱軍を叩きに来ているのだ!!
お主等にすれば、ミネルバ将軍の仇!!!
それ以前に、このようなときに軍の解体!?
そもそも貴様にそんな権限は無い!!!!!
聞かなかったことにしてやるから、直ちに城にむかえぇ!!!!!!!!!」
パオラはにこやかな笑みを崩さぬまま、言い放つ。
「私の言った事は明確な違反、ともすれば反逆ですよね? にもかかわらず、『聞かなかったことに』? お優しい方。
私に手を出せば、半数以上が敵に廻るのくらいはいくらなんでも解るんですね。
さすが無能で将軍職だけあって、保身には頭の廻ること」
リュッケの顔色は大忙しで変わっていた。
そして、目の前に手槍を投げつけられ、
・・・失禁した。
「いいわよ。行きなさいな。
この先マケドニアにいてもいい事はないわ。
それでもしがみつくのは立派よ」
ひいぃ、と情けない声を出し、二人と数名の竜騎士はグラ城へと駆け出した。
残った200近い天馬の群れに向かって、パオラは呼びかける。
「人質をとられてる子も、二階級特進してでも恩給を渡したい相手がいる子もいるわよね。
止めないわ。
でも、生きていたいなら。
私は、生きてて欲しいから。
出来れば、逃げて。
そしてみんな、さよなら」
皆が、敬礼をした。
千人規模の部隊であったマケドニア白騎士団。
その誰一人として、パオラの世話になっていない者はいなかった。
カチュアが理想の戦友、エストが妹系アイドルなら、母性としてのカリスマを一手に引き受けていたのはパオラであった。
彼女が見限ったのなら、もう誰一人マケドニアに未練は無い。
他のなにかがある数十名以外はみなちりぢりに別れていった。
「ほら。いいの?」
カチュアは、このことを聞かされていなかった。
だから、戸惑う事しか出来なかった。
しかし、皆が身を翻しているのを見て、気付いた。
お別れなのだ。
また数人かとは逢えるかもしれない。
でもきっと、全員は無理だ。
・・・何を言えばいいのかわからない。
でも、このままでは伝わらなくなってしまう。
だから、知っておいて欲しいことだけ叫んだ。
言葉にしたから残ることもある。
「ありがとぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおっ!!!!!」
傍にいてくれた。
あの人のために、
あの国のために、
一緒に戦った。
私の、ちょっとだけ固めのごはん、みんないつだって食べてくれた。
こんな日は果物があるといいのにってこぼしたら、近くの村までもらいにいってくれたクミン。
『マルス王子でしょ?』って当ててきたレシ。
『強く、なろう』ティーが戦死した時、隣で一緒にずっと泣いたミーア。
「大好きぃぃぃぃぃぃいいいいっ!!!!!!!!!」
グラの方へ飛んだ子達にも届いたろうか。
パオラは、ずっと笑っていた。
ぐしゃぐしゃの顔になったカチュアを抱いて。
カチュアが落ち着いてきたところで、パオラは真っ直ぐに妹を見つめた。
母の笑顔ではない。
一緒に天馬騎士を目指す事を決めた時の・・・
戦うと決めた、姉さんの顔。
「行くよ。カチュア」
どこへ、とは聞かない。
カチュアも解っているから。
ミネルバ様はもういない。
マリア姫もだ。
ミシェイル王子には愛想が尽きた。
マケドニアに未練なんかない。
私たちは、自由だ。
どこにだって行ける!
だから!
パオラはあえて言葉にした。
それでこそ繋がることもあるから。
「エストを、迎えに行く!!!!」
妹を、取り戻す。
これは、決定事項だ。
絶対だ!!!!!!!!!!!!!!!!
続く