天使達の鎮魂詩   作:おかのん

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第5弾 リンダ編

「・・・私には、帰る場所がありません」

 

マルス様に助け出された時に、待っている人のところへお行きという彼に告げた言葉。

 

お父様が、私の帰る場所だった。

お父様は、ガーネフに殺された。

 

仇を、討つ。

それは当然の誓いだった。

 

だがしかし。

 

その思いが強くなればなるほど、満ち溢れていた彼女の魔力が消えてゆく。

 

どうして!?

 

必要なのに。

ヤツを殺すために必要なのに!!!!!!

 

 

オーラには、ミロア大司祭の施した『制約』があった。

『復讐』の心に反応して、光を失う制約だ。

ガーネフは、ミロアと共に大賢者ガトーの弟子。

オーラの後継者に選ばれなかったことに憤り、復讐心でマフーをあみだし、メディウスを復活させた。

 

だからこその、制約。

 

これで、オーラは悪用はされない。

少なくともガーネフには使えない。

 

 

が・・・・・・

 

 

その制約は、オーラを授けた愛娘の力になることも不可能にしてしまった。

愛した父の仇を討つ。

その思いが強くなるほど、制約は強まるのだ。

不幸なことに、リンダはその制約を知らなかった。

 

 

リンダはオーラが使えない原因を、自らの修行不足だと信じて疑わなかった。

奴隷として身を隠すうちでも、精神を磨くのを怠らなかった。

 

父の仇を討つ。

その思いが光を遠ざける。

 

それだけ大切だっただけなのに。

 

 

彼女にも責はある。

ミロア大司祭はリンダを逃がすために死んだようなものだ。

責はそこではない。

ミロアは今際のきわに、リンダに告げた。

 

「神よ。この子に・・・ ご加護がありますように」

 

最後まで光であろうとした、誰かの幸せを願った、父のようにあろうとすれば。

自らのもつ力を、そのためにと誓えば。

正に全能の魔導『オーラ』は、どれほどこの戦いの助けになっただろう。

 

その瞬間までそうしてきたはずであった。

 

「おとうさまみたいに、みんなのひかりになるの!

しあわせのまほうをつかえる、だいしさいに!」

 

彼そのものが自分のせいで失われた時、それを忘れた。

だれが責められるだろう?

 

だが結果、それが・・・

オーラが継がれなかった理由なのだ。

 

 

魔法の使えない魔導士は、研究者であることも手伝ってか、戦いに関しては一般人以下の能力だ。

彼女は、策はあるとうそぶいて囮をかってでる。

握り締めたオーラの魔導書の切れ端。

追い詰められ、命の危機でも訪れれば、力が戻るかもしれないと、それにかけた。

今、彼女は、数ヶ月の孤独な研鑽と復讐心に沿う集中力で、ただのファイアーでさえボルガノンに匹敵する力を出せただろう。

 

オーラでさえ、なければ。

復讐でさえ、なければ。

 

そして、神は修羅と化した娘に加護を与えようとはしなかった。

 

「・・・・・・ッ!!!!」

 

気付いたときには遅かった。

 

戦場に降る岩の塊。滅多なことでは当たらぬはずの、シューターの一撃。

それがただの物理法則に従い直撃し、少女を骸に変えた。

 

ぐしゃり、という、彼女の内にこそ響く、骨の砕ける音。

血だまりと化した、聖者の娘。

 

「あ・・・・ぁ・・・ おとぅ ・・・さま・・・」

 

ミロアと懇意であり、リンダを守ってあげたいとマルスに告げたニーナ姫は、その亡骸と共に臥して泣いた。

 

父を殺した魔王が許せなかった。

それの何がいけなかったと言うのか。

 

だが、その思いは、彼女自身を大切に思う人の心を無視したものだ。

そう。

愛した父の心さえも。

 

「この子に、ご加護がありますように」

 

子は、父を愛していた。

しかし、父の思いは子に伝わらなかった。

 

愛して、いた。

 

 終

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