{チキよ・・・
遥か昔滅び去った神竜族の王女よ。
この神聖なるラーマンを侵そうとする愚か者がおる。
貴様の神の息吹で、そやつらを!
骨も残らず焼き尽くせ!!!
メディウスより救い出してやったのは、この私だ。その恩に報いるがいい。
ククククク・・・・・
クハハハハハハハハハハハ・・・・・!!!}
ガーネフの術が、意識を乗っ取る。
すべてを理解しながら、その身が狂う。
「オカスモノ・・・
テキ・・・・
テ・キ・・・・・・・
ヤキツクス・・・・・・・・
ッヤ・キ・ツ・ク・ス・・・・・!!!!!!!!」
(嫌ッ・・・・!!!!!!!)
・
かつてラーマンはドルーアに攻められた。
番人であったバヌトゥは、ラーマンで最も大切な秘宝、チキを・・・・
マムクート・プリンセスを連れ出した。
バヌトゥは火竜族。チキは神竜族。
血のつながりどころか、相手は神で姫。
だが同時に、何一つわからぬままそこにいる少女でもあった。
彼女に、貴方様は天涯孤独の身です。などと言える訳がなかった。
呼ばれるままに『おじいちゃま』となり、不遜ではないかと思いながらも、叱る時は叱った。
世のすべてに感謝して物を食め。
もう出会うこと無き者と思いて礼を尽くせ。
情けをかけるは己の為ぞ。
数年のことだったが、チキは彼の言うことを良く聞いた。
誰かと関わり、ともに生きているということ。
それは彼女にとって、甘露であった。
とてもとてもくらい、いしのへや。
ずっとずぅーっと、そこですわっていた。
苦しみさえない、無という地獄。
それすらない闇を越える 無。
誰かを愛したい。愛されたい。
ううん。
そばにいて。
声を聞いて。
誰か。
誰か。
・・・・・・・・・・・
おまごさんかね。かわいいねぇ。
おや嬢ちゃん。お使いかい。
おねえちゃん。髪飾りかわいい!
おっとごめんよ。だいじょうぶだったかい?
子供の来るとこじゃねえよ。
攫われないうちにかえんな。
あと10年たったらうちの店にきなよ。
すべての言の葉が、宝石だった。
自らに向けられるそれが、どれだけいとおしかったか。
バヌトゥとはぐれた事。
それがすべてを狂わせた。
・
(嫌、嫌、嫌ッ・・・・・!!!!!!!!)
身体が言うことを聞かない。
剣を持った美丈夫が、手から火を生む青年が、自分を殺そうと睨み付ける。
波動でわかる。
みな、優しい人たちだ。
歪んだ人もいる。
立ち向かえぬ人もいる。
でもみな・・・
あの『言葉』というものが聞ける。
語りかけてもらえる。
そういう人たちだ。
なのに!!!!!!!
なぜ、私は、
殺そうとしているの!!!!!!!?????
(私に近寄らないでぇッ!!!!!!!!!)
発狂しかけていた。
届かない。
届かない!!!!
助けて。
助けて!!!!!!!!!!
お願い。
お願いだから!!!!!!!!!!
死なないでッ!!!!!!!!!!!!!!
一つだけ。
叶う。
彼女が誰かを殺すことはなかった。
・・・霞む意識の中、懐かしい人を見た。
「おじいちゃま・・・?」
そういえば、
チェスという遊びが好きな人だった。
(一度、やってみたかったかも)
彼女の思いは最後まで、
誰かとの繋がりを求めたものだった。
だれか。私を見て。
私もきっと、好きになるから。
最後の神竜族にして、マムクートの姫。
彼女は、聖なる神殿で一人息絶える。
横たわる白銀の竜は、獣と呼ぶには・・・
あまりに、美しすぎた。
終