報を聞いて愕然とした。
「ミネルバ様が・・・!?」
ディールでの、主人ミネルバの死の報告。
しかも、マリア姫様も殺されたという。
牢の窓から落とされ、見る影も無い姿にされて。
ミネルバを殺したのはウルフというオレルアンの猛者。
オレルアンはマケドニアに滅ぼされかけた国である。
アカネイア同盟の主軸であるオレルアンのゲリラ達の中には、ミネルバに恨みを持つものは多かったろう。
マリアをやったのはアベルという騎士。
レフカンディで見たきりだが、エストはカッコいいとはしゃぎ、姉パオラも見惚れていた美丈夫だ。
こちらがどんな感情を抱こうと、向こうにとってはただの敵だ。
それが年端のいかぬ少女であろうとも。一生を捧げると誓った主君であろうとも。
・・・ミネルバの戦死により、マケドニア白騎士団は改変せざるをえなくなる。
しかもミシェイル王子の竜騎士団に統合されるとなれば、ミネルバの子飼いであった3姉妹の扱いは難しかった。
・
カチュアは、ミシェイル王子に呼び出された。
「ミネルバの仇を討つ気はあるか?」
開口一番の質問がそれだった。
答えるカチュアの声は、押し殺し気味のものになる。
「それは、実行犯を殺せという命でしょうか?
それともその人物の属した一軍を潰すという作戦の参加の是非でしょうか?
もしくはミネルバ様を追い詰めた人物への報復ということでしょうか?」
すべて自分自身への皮肉だった。
ミネルバ様のためにと思ってやった事がすべて裏目に出た。
それは彼女を追い詰め、死に追いやった。
悔やんでも悔やみきれなかった。
「・・・く」
・・・?
「・・・・くく。くはは。くははははははは。
ふはははははははははははははは。
あはははははははははははははははは!!!!!!」
「・・・ミシェイル殿下?」
「カチュア。・・・俺を殺せ」
もう訳がわからなかった。
ミシェイルは自ら、愛用の白銀の槍をカチュアに渡す。
彼の瞳には、光はもう見えない。
カチュアはその場で跪き、槍を返す。
「カチュア」
諭すような、懇願のような。
そんな声。
カチュアは、答えた。
「殿下は死するべきではありません」
もしここでミシェイルが死んだら、2人の死は本当に無駄になる。
人生の半分を牢で過ごしたマリア姫。
その妹を助けるため羅刹と化した主人ミネルバ。
その死を無駄にしないためには、覇を唱えた王子が死んではならない。
「失礼します」
何の反応も示そうとしないミシェイルに一言ことわって、退室する。
廊下を暫く歩いた時、またあの笑いが聞こえた気がした。
・
マケドニア白騎士団はルーメルを目付けとして、リュッケ将軍が編成しなおす事になった。
パオラが間を取り持っての再編。
カリスマであるミネルバを失った団の者達は、全くリュッケになじめない。
ミネルバが率いるからこそのその強さは、今後取り戻される事はないであろう。
カチュアは、今日も涙した。
どうしてこんなことに。
それだけだった。
そして、ふと気付く。
ミシェイル王子も、きっと同じ気持ちだと。
続く