ダンジョンに番長がいるのは間違っているのか?   作:ジャッキー007

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本当に、ありがとうございます。
ダンジョンに入るまでに10話使った作品が他にあるだろうか…?


話は変わりますが、アルゴノゥト前章クリアして5凸完了…更にガチャキャラも無事コンプしました
…が全員5凸は石が足りない…!


地下迷宮

「それでは、新しい入団メンバーを歓迎して…乾杯!」

 

オラリオには、様々な酒場が存在する。

 

値段の設定も様々で、そこに集まる人々も、また様々。

 

そんな酒場の中でも、『豊穣の女主人』を知らない者はオラリオを訪れたばかりの新参者くらいだろう。

 

元Lv.6の冒険者であった店主を始めとして、店員として住み込みで働く者達は皆並みの冒険者では歯が立たない強者揃い。

 

その実力者揃いの営む酒場はいつからか、【オラリオ1治安の良い酒場】と呼ばれている。

 

そんな豊穣の女主人の一角。

 

入団試験から1日が経った夜。

ロキを筆頭としたファミリアの幹部陣と、新たに入団を果たした剛士達で歓迎会が行われていた。

 

 

 

その喧騒は、他のテーブルにも負けず劣らず。

 

皆思い思いに酒や食事に舌鼓を打っている。

 

 

「なぁなぁ、タケシは呑まへんのか?」

 

そんな中、すっかり出来上がっているロキが剛士の下へとジョッキ片手に寄ってきた。

 

「…俺が居た場所では20歳未満は未成年で、飲酒や喫煙は法律で禁じられている」

 

 

ロキの様子に僅かに辟易したような表情を浮かべると、剛士は水の入ったグラスを傾ける。

 

剛士としては、法律もあるが何より未成年による飲酒や喫煙が発育に悪いことから、自身の成長を妨げる行為を避けている所が大きい。

 

 

現に、今手をつけている食事も数多く並ぶ皿の中から、現在の体つきや成長に合わせ必要な分という徹底ぶりである。

 

 

 

「なんやつまらんな〜…」

 

 

一切折れる様子が欠片も見られない姿にロキは唇を尖らせるが、仕方ないとエールを呷る。

 

そんな時だった。

 

「はいよ、お待ちどう」

 

ロキと剛士の前に、頼んだ覚えのない皿が置かれた。

 

「ん〜?ミア母ちゃん、ウチら頼んだ覚えないで?」

 

「アタシからのサービスさ…黒い服に帽子、聞いた通りの男だね」

 

ロキの言葉に豪快な笑みを浮かべて料理を運んだ女性…ミア・グラントが剛士を見る。

 

「昨日ウチに来た客にアンタのファミリアのテストで落ちた連中が居てね…それで気になってたのさ、これまでテストに落ちた奴らを見てきたけど、そんな奴らが真っ直ぐな目で話していた男がどんな奴かね」

 

そう語るミアの瞳は剛士を見極めんとしており、それに対してロキから何も言う事は無かった。

 

ミアが持つ人を見る目の確かさと…これまで、自身のファミリアに所属する一級冒険者を贔屓目抜きで認めさせた剛士ゆえに、今回も大丈夫だと思ったからだ。

 

 

「アンタ、名前は?」

 

「トドロキ・剛士だ」

 

「そうかい…タケシ、アンタはこれから何を成す?」

 

 

剛士を見据えるミアの視線に鋭さが増す。

その気配を感じ取ってか、つい先程まで騒いでいたファミリアの面々だけではなく他のテーブルに座る冒険者、果てには従業員の少女達すら手を止めて二人を見ていた。

 

 

「…ある男を超え、漢の頂点に立つ。その為に…まずは、この街の冒険者全員を超える」

 

剛士の言葉が静まり返った店内に響き渡る。

 

「…っ、あははははは!」

 

どれだけの時間が過ぎたか分からない。

が、シン…とした店内にミアの笑い声が聞こえた。

 

「〜はぁ…、この街の冒険者全員を、ね…大きく出たもんだよ」

 

未だに可笑しいのか笑い混じりにミアは剛士の言葉を反芻する。

 

オラリオには、多くの冒険者が居る。

だが、全員が一朝一夕で強くなったわけではない。

 

挫折と辛酸を味わい、それでも歩みを止めなかった結果今の場所に立っているのだ。

 

「今のアンタじゃ足元にも及ばない奴らがごまんと居る…それを解ってて、その道かい?」

 

「あぁ」

 

ミアと剛士、二人の視線が重なる。

険呑とした空気が漂い、店内に居るロキ以外の全員が固唾を飲んだ。

 

「ロキ…今日の宴会、アタシの奢りだ」

 

「…ええんか?」

 

 

たった数秒…店内では、数時間にも感じるやり取りを終えたミアが厨房へと向かいながらロキへと告げる。

 

「未来への投資ってヤツさ。その代わり、今後もウチを宜しく頼むよ?」

 

剛士を見やり、小さく笑って厨房へと戻るミアを見送り、ファミリアの面々は互いに顔を見合わせた後にロキへと視線を移す。

 

全員の視線を集めたロキは剛士、そして団員達を見るや手にしたジョッキを高く掲げた。

 

「っしゃぁああ!今日は飲むでぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日から、タケシにもダンジョンに入って貰うよ」

 

歓迎会の翌日、朝食後フィンに呼ばれた俺は彼の部屋を訪れていた。

 

今日からダンジョンに潜るのは良いとして…何故、俺一人が部屋に呼ばれたのかが分からないでいると、用事があって訪れていたらしいガレスが言葉を引き継いだ。

 

「お前さんはオラリオに関する知識は得たが、ダンジョンがどういった構造かはしらんじゃろ。万が一ファミリアの新入りが迷ったりせんよう、道案内として一人ついて貰うことにした」

 

ガレスの言葉に、成る程と頷く。

 

地下迷宮、と言うだけあってダンジョンの中はまた入り組んで迷いやすいのだろう。

 

この街については事前に勉強をしたとは言え、目標への一歩目から躓いたのでは話にならない。

 

故に、俺はフィン達の厚意に甘える事にしたのだが…。

 

 

 

「久しぶりだね!」

 

まさか、その相手が…この世界で最初に目にした人物とは、思ってもいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「高いな…」

 

オラリオの中央に天高く聳え立つ塔…バベルを改めて、近くで見上げて小さく呟く。

 

 

日本にも高層ビルや、日本を代表する電波塔などがあったから真新しさ…と言うものはあまり無いが、中世のような街並みに天高く伸びる建物は壮観と言える。

 

 

「こっちだよ〜」

 

そんな俺を見て、同伴の相手…ティオナが声を掛けてきた。

 

「…こうして話すのは、初めてか」

 

「そうだね。アタシもダンジョンに潜ってたからあまり関われなかったから…でも、今度からはちゃんと言葉も解るし話もできる」

 

ダンジョンへと続く階段を下りながら、先行するティオナの背中へ言葉を投げかける。

 

最初に会った時は、 互いに何を話しているのか解らず。

二度目は筆談しか出来なかったから、読み解くまでに時間が掛かった。

 

だが…今はもう、互いに何を話しているのかが十分に理解出来る。

 

それが解ったからこそ、ティオナは改めて俺に向き合い笑顔を見せた。

 

「同じファミリアの仲間同士、これからよろしく!」

 

「あぁ、宜しく頼む」

 

助けてくれた礼を込め、俺はティオナと握手を交わす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此処から先は安全圏じゃないから、注意してね」

 

ティオナに先導されて降りた第一階層。

迷宮という名前から想像していたものとは違い、印象としては洞窟の内部に似た雰囲気が漂っていた。

 

(それにしても…)

 

辺りをちら、と一瞥する。

 

見渡してみた所、人の気配はあれどモンスターは1匹も見当たらない。

 

そんな時、背後から亀裂が入る音が聞こえてきた。

 

振り返ると、壁しか無かった筈の場所から一本の腕が生えている。

否…腕だけでは無い。

壁の一部が崩れるにつれ、その体が顕になり。

 

気づけば、俺の目の前には1匹の異形が立っていた。

 

体そのものは小さく、人間の子供程度だろう。

燻んだ緑色の肌をしたその姿は醜悪とも取れ、忌避感すら感じる

 

「ゴブリンかぁ…今のタケシなら、十分倒せる相手だよ」

 

背後にいるティオナはそういうが、内心…俺にとって未知な存在への、僅かな思いがあった。

 

「ふ…っ!」

 

だが、そんな事はモンスターには関係ない。

俺を視認するや襲い掛かってきたゴブリンの爪を躱し、そのがら空きの胴体に拳を叩き込む。

 

一撃を受けたゴブリンは数mほど吹き飛ぶがすぐさま襲い掛かってくる。

その様子からは強い殺意すら感じ取れた。

 

 

 

 

改めて、フィンやエイナが言っていた言葉を思い出す。

ダンジョンに棲むモンスターは、冒険者の事情など御構い無しだと。

僅かな気の迷いすら、命を落とす原因だと。

 

まだ思う所はあるが、今は。

 

歯を食いしばり、再びゴブリンへと拳を振るう。

 

何度も、何度も。

 

最初の何度かは倒れるも立ち上がり、襲い掛かってきたが…終いには、倒れたゴブリンの体に馬乗りになって拳を叩き込んだ。

 

 

ゴブリンも暴れ、爪を振るい、腕に噛みつき、牙を突き立ててきたが…その力も次第に弱くなっていき、やがて力無く腕を地面に投げ出した。

 

瞬間、ゴブリンはその体を塵に変える。

残ったのは、指先よりも少し小さな小石が一つだけ。

 

だが…一つの命を奪った感触は、いつまでも拳に残り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、あの調子か…」

 

タケシがダンジョンに潜って1日目を終えた夜、ティオナから事の顛末を聞いた私は遠目にタケシの姿を見ていた。

 

普段ならば、食事を終えると軽いトレーニングを行っているのだが、今日はダンジョンから戻り軽く食べて以降、ベンチに座って自身の右手を見続けている。

 

(奪った命の重み、か…)

 

ロキから聞いた話では、タケシが暮らしていた世界は大きな争いもなく、モンスターも居ない世界だったという。

 

そんな、平和な世界で暮らしてきた人間が初めて…自らの手で他の命を奪ったのだ。

 

その重みというものは、我々には分からないものだろう。

 

 

だが…。

 

「タケシ」

 

「…リヴェリアか」

 

拳を見つめていたタケシの元へ歩み寄り、声を掛ける。

 

私の声に反応しチラ、と肩越しに此方を一瞥するがタケシは再び視線を拳へ移し、閉ざしていた口を開いた。

 

「この拳を今まで、何度も振るってきたが…自分の意思で、殺したのは初めてだ」

 

ポツリと小さく呟くと、タケシは握りしめていた右手を左手で包み込む。

 

その拳には、未だにゴブリンを屠ったときの感触が残っているのだろう。

 

「…お前の居た世界についてはロキから聞いている。それで、お前はどうする?」

 

「俺は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リヴェリアー!」

 

部屋へ戻る途中、寝間着へと着替えたティオナに声を掛けられる。

 

何の用か…など、聞く必要もないか。

 

「タケシなら大丈夫だ」

 

「本当?!良かったぁ…」

 

手短に結論を告げると、ティオナは安心したように顔を綻ばせる。

 

今日一日、タケシの変化を身近で見たから心配だったのだろう。

 

「アイツは強い…力も中々だが、何より心がな」

 

そう言って、私は先程…タケシが口にした言葉を思い出した。

 

『俺は…進み続ける。モンスターであれ、命を奪った事に変わりはないし感触にも慣れねぇ。慣れろ、とか割り切れとか言う奴も居るだろうが、コレだけは慣れちまったらいけねぇんだ』

 

(モンスターでも一つの命。それを奪う重さに潰されず、振り払わず…背負って進むか)

 

モンスターが居て、それを倒すのが当たり前な世界に生きてきた私達とは違い、改めて辛く厳しい道を選んだ男…トドロキ・剛士。

 

その吹っ切れた横顔は力強く…思わず見惚れてしまった事は、誰にも言わないでおこう。




次回、迷宮番長!

【猛者】

「…俺の歴史に、また1ページ」
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