ダンジョンに番長がいるのは間違っているのか?   作:ジャッキー007

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アニメ、コミカライズしか知らないからキャラが掴みにくい事に悩むこの頃です

原作読むにも仕事で時間が作れないのが悩ましい…。


気づけばお気に入り1100オーバー、皆様誠に有難うございます
これからも拙いながら書いていきますので、お付き合い頂ければ幸いです


猛者

オラリオで一番の派閥を問えば、道行く人は皆ロキ・ファミリアかフレイヤ・ファミリアと答え、論争が起こる。

 

それほどまでに、この二つのファミリアが大きな勢力という事だろう。

 

 

だが。

 

このオラリオで一番強いのは誰か、と問うてみる。

 

するとどうだろう。

 

あれほど論争を繰り広げていた者達が皆、口を揃えてこう答えるのだ。

 

『オラリオで最強は、フレイヤ・ファミリアの【猛者】だ』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョンでの最初の戦いから1週間。

構造を把握してからは、一人で只管に一階層でゴブリンを相手に拳を振るっていた。

 

骨を砕き肉を潰す…命を奪う感触というのは、どれだけの時間を費やしても嫌な物である事は変わらない。

 

だが、俺は敢えてこの道を背負い進むと決めた。

 

「…」

 

腕に残った傷を見る。

 

忘れもしないあの日、俺が初めて殺したゴブリンから受けた傷は塞いで貰ったが痕は残している。

 

奪った命がたしかにあって、ソイツは骨も残らず消えたが、生きる為に抗った事を忘れない為に。

 

(さて…)

 

腕から目を離し、散らばった魔石…俺が倒したゴブリン達が唯一残していった物に向け手を合わせる。

 

 

奪った側の身勝手だが、また一つ強くしてくれた事への感謝と命を奪った事への謝罪…そして、来世での安寧を祈って合掌し、魔石を拾っていく。

 

時間を忘れる程に潜っていた為か、ダンジョンに潜る際にティオナに渡されたポーチが魔石で満タンになった事に気づいた俺は、踵を返して地上へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

地上へと帰るための階段は、沢山の冒険者が行き来する。

 

そんな中、俺の視線が不意に動いたのは単なる偶然だった。

 

 

ダンジョンへと降りていく冒険者達の中に、一人の男が目に入る。

屈強な身体に背負った剣。

頭部には、人とは違う形状の…猪の耳。

 

 

そして、周りに合わせているにも関わらずビリビリと肌を刺激する強者の気迫。

 

 

そんな男と、不意に目が合った。

ほんの数瞬、すれ違う際の僅かな視線の交差だ。

 

 

やがて、男は俺から視線を外して地下へと向かう。

その背中は、何処か…幼き日に見た、あの男と似ているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「石を買いたいぃ?」

 

太陽が頂点に登り切った昼、【豊穣の女主人】の店内に店主であるミアの訝しげな声が響いた。

 

事の発端は昼食を摂りに訪れた剛士がミアへ石を購入できる場所があるかを問うた事にある。

 

「あぁ…欲を言えば大きく、脆くない物であれば尚良いな。値段は言い値で構わないんだが…知らないか?」

 

「そりゃ、建材にも使われるから知ってるが…」

 

剛士の言葉を聞いて、ミアは唸る。

建物や構造物の建材として、確かに石は流通しているし購入出来ない訳ではない。

 

だが…目の前にいる剛士の意図が、ミアには測りかねていた。

 

「タケシ〜、そんな物買うより先ずは装備を整えるのが先じゃないかニャ?」

 

その横から、二人の話を聞いていた給仕のアーニャが声を掛ける。

よく見ればアーニャだけでは無い。

忙しい時間帯が過ぎ、少し落ち着いた店内で片付けをしていたクロエやリュー

いつからか顔馴染みとなった街の人たちもがアーニャの言葉に頷いていた。

 

 

 

更に言えば、剛士はこれまでもアドバイザーとなったエイナやファミリアの仲間達からも最低限の防具は揃えろと口酸っぱく言われ続けている。

 

「…いや、俺はこれで良い。これが良い」

 

それでも尚、剛士は折れる事なく着の身着のまま…改造学ランの姿でダンジョンに潜り続けていた。

 

それ故、その姿を見た他ファミリアの冒険者達からは【死に急ぎ】と揶揄されている。

 

 

 

「…一つ聞かせとくれ。アンタは石を買って、何をするつもりだい?」

 

剛士の一切折れない様子に深く溜息を吐き、ミアは問いかけた。

強情な男という事は、たった1週間の付き合いでも十分に理解出来た。

 

だが、目的と意図を知らなければ教える気も毛頭なかった。

 

 

「…慰霊碑を作る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当、不思議な人ですよね」

 

剛士が出て行った店内で、カウンターを拭きながらシル・フローヴァが口を開く。

 

その言葉を聞き、改めてミアは先程剛士の言った事を思い出す。

 

 

『命に貴賎無し。たとえ、ダンジョンから生まれたモンスターであれ一つの命を俺は殺めたし、これから先も奪う…其れを忘れず、奪った命を弔う為に奴らの墓を作る』

 

その言葉に、店内に居た誰もが何も言えずにいた。

誰一人として、剛士の言葉を嘲笑う事が出来なかった。

 

 

今まで出会ってきた冒険者も、自分達もモンスターは倒すべき敵であり収入源の一つとしか考えていなかったのだ。

 

だが、剛士の言葉を聞いた事で…冒険者であった者達は、自らの足元に築いたモンスターの屍の山を直視させられた。

 

果たして、今を生きる冒険者達の中に何人その事を理解し、受け止めている者が居るだろうか?

 

 

「モンスターもアタシ達と変わらない命の一つ、か…」

 

そんな中、レベル1の駆け出しでありながら命の重さと、其れを自らの為に奪う罪を自覚し背負う覚悟を決めた男の顔は16歳でありながら熟達した者のそれに劣らない。

 

 

「アイツは、いずれとんでもない大者になるよ」

 

そう言うと、ミアは剛士の歩む先に期待と、一つの願いを込めた。

 

どうか…あの男が女神の琴線に触れないように、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん…っ!」

 

ミアさんから石材屋の場所を聞き、探し求めていた物を購入しようとしたのだが…俺の要望に叶うものは今は無く、取り寄せる必要があるとの事。

 

頭金を渡し、届く日程を確認し終えた俺は再びダンジョンに潜り、拳を振るっていた。

 

 

一体倒し、次の一体に向かう度に修正点を見直し、最小限の動きを以て最大限の一撃へと近づけていく。

 

その最中、背後から感じた殺気に身体を捻ると、横を灰色の影が通り過ぎた。

 

 

視線を向けた先に居たのは、一体の異形。

 

姿形は人に近い見た目をしているが…その体を灰色の体毛が包み、更にはその頭部には本来ならば有り得ない、犬の頭が乗っている。

 

「コボルト、か…」

 

それも1体ではない。

壁が割れる音が聞こえるや、同じ姿が何体も姿を現し、気づけば10体のコボルトに囲まれる。

 

ゴブリンやコボルトは1体だけならば脅威足り得ず、駆け出しでも倒せる相手だと言う。

そう、あくまで1体ならば。

 

「少し、骨が折れるな…」

 

小さく呟き拳を握り締める。

 

一対一ならば、真っ向から立ち会えば済むが乱戦となればそうもいかない。

 

常に周囲の挙動に目を配る分体力だけでなく神経も消耗するため、僅かな気の緩みが命取りになり兼ねないのだ。

 

 

「だが…後には退かん」

 

一体のコボルトがその俊敏さを利用して肉薄、突き出してくる爪を躱し…手首を掴むと勢いを利用し投げる。

 

「ガァ…ッ!?」

 

コボルトは地面に背中を叩きつけられ息を洩らすが、回復する暇は与えない。

 

渾身の力を込めた拳を顔面に叩き込み、一撃でコボルトを絶命させる。

 

本来なら絶命させるほどの威力を出すなど不可能だが…恩恵を授かり、この1週間でステイタスの向上があった為か的確に急所を潰せば倒す事が可能だ。

 

「さて…」

 

残り、9体。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺がその男と出会った…いや、見かけたのは単なる偶然だった。

 

ダンジョンへと降る階段ですれ違っただけ…ただ、それだけだ。

 

黒い外套に帽子と言う、冒険者らしくない風貌の男と目が合う。

俺を知る者ならば、目が合うなり逸らすか、あるいはたじろぐか…畏れる者が多い。

 

だが…その男は、俺を知らないのか何処までも真っ直ぐな瞳で俺を見ていた。

それも、僅か数瞬。

互いに視線を外すと、俺達は別々の行き先へと足を進める。

 

「おい、今の…」

 

「あぁ、死に急ぎだ」

 

近くを通っていた冒険者が、先程の男を見て小さく呟く。

 

死に急ぎ…先程の姿を見て言い得て妙だ。

 

いくら金のない駆け出しでも最低限身を守る装備を整える。

だが、男には身に纏う衣服以外には武器や防具の類が一切見当たらない。

 

 

取るに足らない、そう感じた筈だった。

 

 

だが、その男の目が頭の隅に引っ掛かり独自に調べ、幾つかの事が分かった。

 

男の名は、トドロキ・剛士。

ロキ・ファミリアに入団したばかりの駆け出しの冒険者。

そして…全ての冒険者を超えると吼えた男。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その男の戦いを、俺は物陰から見ている。

 

数体のコボルトに囲まれ、数的に不利にも関わらず表情は至って冷静。

対峙している相手以外にも周囲への警戒は決して怠らず、最小限の動きで攻撃をいなし、的確に急所へとカウンターを叩き込む。

 

その動きは駆け出しにしては熟達している事からも、単なる腕自慢ではなく武を齧った事があるのだろう。

 

及第点…ではあるが、その程度。

そう思った矢先だった。

 

「…これは」

 

乱戦ともなれば、体力と神経の消耗から動きが悪くなるのが常だ。

だが…奴は。

 

一体倒す度に動きの中にあった粗さが無くなり、放つ拳はより鋭さを増している。

より洗練されていく動きは、まさに舞。

 

猛々しくも流麗なその舞を見ている内、気づけば最後のコボルトも倒れ、残ったのは奴の足元に散らばる魔石のみとなった。

 

 

 

「…そろそろ出てきたらどうだ?」

 

奴が此方へと視線を移す。

気付かれた、だと?

 

(馬鹿な…気配は確実に…)

 

「それだけ肌を刺すような気迫を出しときながら、隠れているつもりか…?」

 

その言葉に、俺は奴の戦いを見ている内…無意識に拳を握り締めていた事に気付かされた。

 

「…駆け出しの冒険者に此処まで滾るとはな」

 

「お前…確か、あの時の」

 

物陰から姿を現わすと、奴は俺を見て思い出したような表情を浮かべた。

 

「覚えていたか…トドロキ・剛士」

 

「…アンタからは、フィン達以上の…強者の気迫を感じたからな」

 

そう言うと、奴は魔石に向かうようしゃがみこむと手を合わせる。

 

「…何故武器を持たない?」

 

「どれだけ業物でも、担い手の才が無ければ鈍と変わらないだろ…師には、それにすら至らぬ木の棒と言われたがな。それに」

 

無防備な背中に言葉を投げかけると、奴は言葉を返しながら魔石を拾い集めていく。

 

「武器を使えばモンスターを倒しやすいし、防具を纏えば攻撃を防げる…それは確かだ。だが…それは、命を奪う重さを鈍らせる」

 

そう言っている内に魔石を全て集め終えた奴は踵を返し、俺の横を通り過ぎ…立ち止まる。

 

「たとえ、馬鹿だと嘲笑われようが…そう進むと決めた道だ」

 

「…一つ聞かせろ」

 

確かに、今の奴を死に急いでいる馬鹿だと揶揄する者は多い。

故に、この男がそうまでして進む先が気になった。

 

「この街に居る冒険者全てを超えると吼えたのだ…その先に欲する物は何だ?金か?それとも名声か?」

 

「そんなものに興味はない。俺が目指すのはただ一つ…漢の中の漢、それだけだ」

 

そう言って、トドロキ・剛士は地上へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま戻りました」

 

「そう…あら?」

 

ファミリアの拠点に戻り、主神であるフレイヤ様に報告すると彼女は俺の顔を見て少し驚いたような…何かに気づいたような表情を浮かべた。

 

「どうかなさいましたか?」

 

「いえ、貴方が久しぶりに笑っているのを見たから…余程、いい事があったのね」

 

 

フレイヤ様にそう言われ、顔に手をやると俺の顔…口元は、たしかに吊り上がり笑みを浮かべていた。

 

 

 

「…ダンジョンで、駆け出しの冒険者に会いました」

 

「そう…その子は、貴方の目に適ったみたいね」

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ…そう遠くない先、好敵手(とも)として立ちはだかるでしょう」

 




次回、迷宮番長!

【休日】

「…俺の歴史に、また1ページ」
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