ダンジョンに番長がいるのは間違っているのか?   作:ジャッキー007

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非常にお待たせして申し訳ありませんでした(土下座)
…というより、今尚待ってくれている方が居てくれるか不安ですが

地元で再就職して2ヶ月で今の騒ぎが始まり、非常にバタバタとして余裕が出来ず、筆を取ってもなかなか乗らずああでもないこうでもないとやってた結果…こんな出来です。


神会

ロキ・ファミリアに所属するレベル1の冒険者がミノタウロスを打倒した、という話は瞬く間にオラリオの隅々まで知れ渡った。

 

その反応は様々で、彼を知らぬ者は眉唾だろうと鼻で笑い

噂を聞いた事がある者は急速な偉業の達成が面白くない、と苦虫を噛み潰し

 

そして、彼を知る者達は両手を挙げ我事のように喜んだ。

 

だが、それも束の間。

件の冒険者が瀕死の重傷を負った事を知るや、彼を知り、関わった者達がロキ・ファミリアの本拠へと押し寄せたのだ。

 

親に連れられた子どもから、杖をつく老人まで、性別や年齢、果てには種族もバラバラなオラリオに住む人々が、毎日絶えることなく各々見舞いの品を手に本拠を訪れ、彼の快復を祈り後にする。

 

そんな光景が3日程続く中、ロキ・ファミリア本拠にある一室では件の冒険者…轟剛士が眠っていた。

 

 

微かに開いた窓から穏やかな風が吹き込む音と、剛士の呼吸する音の中…傍らには、ファミリアに足繁く通うようになった花屋の娘であるアンナが、椅子に座って剛士の様子を見ていた。

 

 

 

 

ダンジョンから帰還した時の剛士の状態は決して良いものとは言えなかった。

 

両手は赤黒く腫れ上がり、身体中には裂傷や打撲痕が複数刻まれ無傷な箇所を探す方が困難な程。

更に言えば、臓器も損傷しており普通の治療を行うとなれば一刻を争う状態だった。

 

だが、そこはオラリオでも上位のファミリア、フィンを筆頭に救援に来たパーティに地上へ運ばれるや迅速な治療が施された。

 

地上ではロキから話を聞いていたリヴェリアが贔屓にしているディアンケヒト・ファミリアの団員を連れて待機しており、即座に治療院へ搬送。

 

傷も癒え、一命を取り留めはしたものの、剛士は眠り続けていた。

 

 

 

 

 

「タケシさん…貴方に助けられた皆、タケシさんが目を覚ますのを待ってますよ」

 

風に揺れる剛士の髪を梳くように指先で撫でながら言葉を紡ぐ。

 

 

「それだけじゃありません…フィンさんも、リヴェリアさんも、ロキ様も…ファミリアの方々も、タケシさんを待ってます」

 

穏やかな声音で語るも、アンナの声は微かに震えている。

 

このまま、目を覚さないのではないか…そんな不安と恐れが胸を締め付けた。

 

「だから…っ」

 

溢れそうになる涙を堪えながら言葉を紡ぐアンナだったが、その言葉が途切れる。

 

 

「…っ」

 

布団から出た右手…砕けた骨も、裂けた皮膚も完全に癒えたそれの指先が微かに動いたのだ。

 

そして、閉じられていた目蓋がゆっくりと開かれ

 

 

「…アンナ、か…」

 

地下迷宮で繰り広げられた死闘から3日経ち…轟剛士は、漸く眠りから覚めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オラリオの中心に聳え立つ塔…バベル。

 

地下にはダンジョンが広がっているが、その上

塔には、冒険者達の生命線とも言える武器や防具を製作している【ヘファイストス・ファミリア】の店の他に上層には神が住んでいると言われている。

 

 

そのバベルにある大広間に、オラリオに降り立った神々は集まっていた。

 

 

神会…神々によって開かれる会合であり、其処では昇格を果たした冒険者の二つ名を決める「命名会」も行われる。

 

そんな神会の行われる会場に、ロキは居た。

 

 

「ロキ」

 

広間に設けられた席に座り、小さく欠伸を噛み殺すロキの下へ1人の神物がやって来る。

 

赤い髪に眼帯を着けた女神…ヘファイストス

オラリオに存在する鍛治系ファミリアの中でも1、2を争うファミリアの主神であり、剛士の世界において鍛治の神として知られている存在であった。

 

 

「お〜、ファイたん。久しぶりやな」

 

「えぇ、貴女も元気そうね」

 

互いに笑みを浮かべ、ここ最近会えなかった友神との再会を喜ぶ2人。

 

 

「貴女のとこの子、目を覚ましたそうね。私のファミリアで世話になった子が話していたわ」

 

「漸くや…まったく、毎日見舞いに来る子がぎょうさん居って大変やったわ」

 

へファイストスの言葉に呆れたような愚痴をこぼすも、ロキの顔には安堵の表情が浮かぶ。

それから、彼女が如何に件の団員を目にかけているかを読み取り、変わらぬ情の深さにへファイストスは笑みを浮かべ口を開く。

 

「そう…だったら、よりそんな子に合う【二つ名】を決めなきゃね」

 

「ゔ…そうやな」

 

へファイストスの言葉に言葉を濁すロキ。

神会の中でも命名式は神々が特に悪ふざけをする。

 

要するに、痛々しい二つ名を与えられる恐れがあると言う事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二つ、名?」

 

目を覚ました俺は、意識を失っている間に起きていた事をアンナに呼ばれたフィンやリヴェリアから聞いている。

どうやら…俺の記憶ではつい先程の出来事なのだが、ミノタウロスとの戦いから数日が経っていて、その時にランクアップを果たしレベルが上がっているらしい。

 

「あぁ。ランクアップをした冒険者は、ファミリアの主人達の集まり【神会】で二つ名を付けられる…僕の【勇者(ブレイバー)】やアイズの【剣姫】のようにね」

 

 

フィンの言葉を聞くに、二つ名というのは所謂通り名。

ソイツの代名詞とも言われるものらしい。

 

(通り名…【狛枝の狂犬】みたいなものか)

 

通り名、と言えば日本に居た頃に出会った奴らの中にも通り名みたいなのを持ってたのが何人か居た事を思い出した。

 

そういったのを持った奴らは、確かに腕っ節が強い奴や何かしらの逸話を持った奴が多かったが…。

 

「…あまり興味は無さそうだな」

 

 

他人事のように話を聞いていた俺に気づいたリヴェリアが、呆れたような目で此方を見てくる。

 

「どのような名で呼ばれようが、目指す先は変わらない…ただ、自分の道を進むだけだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファミリアに属する子がランクアップを果たした日、神々はその祝福として二つ名を与える。

 

 

しかし、娯楽に飢えた神々にとっては、それすらも娯楽の一つ。

 

ましてや、その感性は現代日本の人間に近しい所が多い…それの意味する所は

 

 

「そんじゃ、ヘリオスのとこの子の二つ名は【爆熱火炎剣(バーニングファイヤーソード)で!」

 

「ふざけるなぁぁぁ!」

 

悪ノリした挙句、痛々しい(とんでもない)名前をつけられてしまう事も、少なくない。

 

 

神会の行われていた会場は今や笑い声、悲鳴、怒鳴り声が飛び交う混沌と化し、其れを眺めていたへファイストスは呆れたように溜息を吐き、ロキは腹を抱えて大笑いしている。

 

「笑い事じゃないでしょ?タケシ、だったかしら。その子にもあんな名前を名乗らせるの?」

 

「タケシのヤツやから多分、二つ名に頓着せぇへんやろうけど…ウチは勘弁やな」

 

へファイストスの言葉に数ヶ月ながら剛士と関わり、その在り方を見てきたロキは返すが、もし彼があんな名前…日本でいう中二どころか小学生が思いつくような名前を背負った姿を想像して身震いする。

 

 

 

「さて、次は…?ロキ・ファミリアのトドロキ・剛士、レベルは2。為した偉業は…単身、素手でミノタウロスを討伐ぅ?!」

 

剛士の名と、打ち立てた功績を聞いた神々は騒めいた。

彼を知らぬ神はその報告が偽りではないか、ロキが何かイカサマを行ったのではないかと疑い。

 

「そうか、彼が…」

 

「目を覚ましたって、ルノアが言っていたわね…今度、お見舞いに行こうかしら?」

 

「いつか大きな事を為すと思っていたが!」

 

 

彼を知る神々はその偉業を手放しで祝福し、中には気遣う様子を見せる者も居た。

中でも医神、豊穣の女神、街の治安を担う象神の様子を見た進行を担当する神は目を見開いた。

 

ファミリアに入団して僅か数ヶ月の団員が、名を挙げる以前から数人とはいえ神に認められている事。

何より、その神というのが地上に降り立った神々の中でも有数の神格者である事に。

 

 

 

だからこそ、剛士の二つ名決定は難航した。

 

ふざけた名前を与えようとすれば彼の神々から無言の圧が掛かり、彼に相応しい名を、と考えればいくつもの候補が挙がり決定に至らない。

 

 

そうこうしていた時だった。

 

 

 

飛翔(イカロス)、なんてどうかしら?」

 

シン、と静まり返った会場内に声が響いた。

 

神々が視線を移した先に居たのは、1人の女神。

 

長い銀髪に誰もが惹きつけられる美貌を持つ、その女神の名はフレイヤ…現在、オラリオの2大巨塔として名高いファミリアの主神であった。

 

 

飛翔…ただ一つ、遥か遠くの求めるものへと進んでいく様はそう例えられても良いだろう。

 

賛同する神の多いなか、ただ1人…ロキだけが、薄く開かれた目でフレイヤを睨んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【飛翔(イカロス)】…か」

 

神々の集まりから戻ったロキから、決定した二つ名を聞かされた俺は小さく呟いた。

 

この場には、俺とロキの他にフィンやリヴェリア、ガレスが集まっており、全員の視線が集中する。

 

 

「最初はあのフレイヤがどないつもりか気になっとったけど…その名前、タケシは何か知っとるんか?」

 

そう尋ねてくるロキの言葉、世界の成り立ちから恐らく…神々の存在は信じられてきたが、神話などに相違点があるのだろう。

 

俺は、小さく呟くと簡潔にだが語る事にした。

 

迷宮に父とともに幽閉され、蝋で固めた翼を以って其処から脱出した男の話を。

自らを過信し、父の忠告を無視し太陽へと近づきすぎた結果、翼を固めていた蝋が溶け、墜ちたその結末に至るまでを。

 

 

「なんやそれ…アイツ、タケシが墜ちるとでも言いたいんか!?」

 

話を終えた時、部屋の中は静まり返り、ロキは怒りを露わに椅子から立ち上がる。

ロキほどとはいかなくとも、フィン達の表情は僅かながら不満と言いたげだ。

 

「…落ち着け。この世界にその話が伝わってない事から、その名前は偶然だろう」

 

「しかし、お前は良いのか?」

 

 

 

俺の言葉にロキは小さく溜息を吐いて怒気を沈め、リヴェリアが一瞥してくる。

 

「昼間も言ったが、俺はどのような名を与えられようが自分の信じた道を進む。寧ろ自戒として受け取ろう」

 

そういうと、俺は此方を見る面々に不敵な笑みを浮かべ口を開いた。

 

 

 

 

「イカロスは驕り、地に墜ちた…だったら、俺は驕る事なく頂まで飛んでやる」




次回予告は今回はお休みさせていただきます
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