ダンジョンに番長がいるのは間違っているのか?   作:ジャッキー007

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息抜き目的の短編だったのに、意外にもシリーズ化希望の声が…皆さん、そんなに熱苦しい漢が好きですか


漢の宿題

太陽が西に傾き、人の通りも疎らとなった河川敷

 

ビルの谷間へと沈みゆく夕陽に照らされていること其処に、二人の男が居た。

 

鍛え上げられた、分厚い筋肉質な身体つきという一見同一人物にも見える二人を唯一区別できる要素と言えば、彼らの着ている服がそれぞれ学生服とスーツという違いくらいか。

 

 

川の流れと風が揺らす草の音以外、静寂に包まれるなか、男たちは互いに向かい合い、その眼を見据えている。

 

逸らしたら負け…今この時も勝負だと言わんばかりの鋭い眼光だ。

 

 

 

 

 

 

二人が向かい合い、既に10分が経とうとした頃か。

 

彼等の立つ位置から10m程離れた場所に生えた木から、一羽の鴉が飛び立った瞬間。

 

男たちは、どちらとも無く駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

『っオォォォォリャアァァァッ!』

 

互いに手を伸ばせば顔に触れられる距離へと近づくや、両者は気迫と共に拳を叩き込む。

 

同時に放たれた拳は互いの顔面に突き刺さる事なく、互いの間でぶつかり合い

一拍の静寂に包まれた…その瞬間。

 

轟っ!

っと突風が吹いた。

 

其処からは、息も吐かせない程の応酬だった。

 

学生服を着た青年が石のように無骨な拳を放てば、スーツ姿の男がお返しとばかりに丸太のように太く鍛え上げた右脚の蹴りを放ち。

 

青年が男の蹴りを抱え込むように受け止め、大木を引き抜くように己の膂力を持って投げ飛ばせば、男はその体躯に見合わない軽やかさで受け身を取りながらも着地し、すかさず拳を青年に叩き込む。

 

 

その闘いは、泥臭く。

それでいて、見るものを惹きつける何かがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男達が互いの力をぶつけ合い、1時間が経った。

 

その間、二人は休む事なく動き続け、互いの身体を痛めつけた。

 

男は、青年の全力を試すように。

青年は、男に答えるように。

 

その応酬は、男に青年が答える度に激しさを増していった。

 

だが、始まりがあれば終わりもあるのが世の常。

 

何発目かも解らない男の拳が顔面に叩き込まれた時、青年はついにその膝を地面に着けた。

 

 

 

 

 

「…子鹿みてぇだった子供が、随分と成長したじゃあねぇか」

 

傷だらけになりながらも、その瞳に未だ闘志を燃やし続ける青年を見据え、男が呟く。

 

男の視界の先…地面に膝をつく青年の姿は、彼の目には、初めて出逢った頃のまだ幼く、線の細い少年が重なって見えていた。

 

「…俺は…虐められていたのを助けて貰ったあの日から、アンタに憧れて生きてきた」

 

ゆっくりと、ふらつきながらも立ち上がった青年は、男を強く見据えたまま口を開く。

 

「身体の弱さも、周りからの侮蔑も…乗り越えてきた…全ては、憧れたアンタの背中に追いつくために」

 

「あぁ。其れが決して楽じゃねぇ道のりだってのは、よく解る…だがなぁ」

 

 

 

青年の吐露に、男は感慨深そうに深く頷く。

まだ幼く、小さかった身体が大きく、逞しく成長するのはとても困難な道のりだったはずだ。

だからこそ、男は問いたかった。

 

 

 

「俺に追いついたとして…それから、お前さんはどうするんだ?」

 

青年のその先を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男の問いかけに、青年は目を見開いた。

 

憧れの背中に追いついた先…そんなもの、青年の頭の中には欠片も考えていなかった。

 

青年にとって、これまでの人生は男の背中に追いつく…その為だけに全てを注いできたからだ。

 

 

 

「お前さんはたしかに強くなった…だが、俺に追いつく事を考えてばかりじゃ、まだまだだ」

 

男は、諭すように青年へと語りかけながらも弓を引き絞るように拳を構える。

 

その周囲の空気が歪み、揺らいで見えるのは、それだけ男が込めた闘志が高まっている証拠なのだろう。

 

「コイツは俺からの宿題だ…!」

 

そう言って、男は青年の胸板へと拳を叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぅ…っ?!」

 

鋭い衝撃が青年の身体を襲う。

 

男が最後に放った一発は、今迄受けてきたどんな攻撃よりも重く、鋭かった。

 

どれだけ己を鍛えれば。

どれだけの思いを乗せれば、此れだけの一撃になるのだろう。

 

僅かな浮遊感と、直後の冷たい感覚に包まれながら男は意識を手放した。

 

 

 

 

だが、意識を失う瞬間たしかに聞こえた。

 

 

「お前さんも男なら…俺を超えてみせろ」

 

自分に背中を向ける男の声が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、迷宮都市オラリオ。

天高く聳える塔…バベルの下に広大な地下迷宮を持つこの街を、四人の少女が歩いていた。

 

 

 

「ん〜っ…今日の冒険者依頼も疲れたぁ!」

 

「早くシャワーを浴びたいわね」

 

 

疲労の溜まった身体を伸ばし、今後のことを話すのは、褐色の肌を持つ二人の少女。

 

ティオナ・ヒリュテとその双子の姉ねティオネ…女性で構成された武闘派部族、アマゾネス出身の姉妹だ。

 

その隣を歩くのは白を基調とした服の少女と、杖を携えた少女。

 

アイズ・ヴァレンタインとレフィーヤ・ウィリディス…その二人を含めた四人は、自分達の所属するロキ・ファミリアの拠点『黄昏の館』に向けて足を進める。

 

 

「…?」

 

 

あと少しで拠点へと到着する距離まで接近したときだ。

 

不意に、道沿いに建ち並ぶ開店前の二つの店…その間にある細い路地へと視線を移したアイズは、あるものを視界に捉えた。

 

 

 

 

「アイズさん、どうかしましたか?」

 

「あれ…」

 

 

 

思わず立ち止まったアイズを見て、隣に控えるように歩いていたレフィーヤも立ち止まり小さく首を傾げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小さく呟きながら、アイズが指差す方へとレフィーヤは視線を移す。

それにつられてか、先を歩いていたティオネ、ティオナの姉妹も二人の元へと駆け寄り、アイズが指差すものを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

アイズ・ヴァレンタインが指差す細い路地。

そこには、濡れた衣服をまとう傷だらけの男が倒れていた。




※BGM:次回予告(押忍!番長OSTより)

次回、迷宮番長!

『番長、異世界に立つ!』

「…俺の歴史に、また1ページ」
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