ダンジョンに番長がいるのは間違っているのか?   作:ジャッキー007

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番長、異世界に立つ!

今でも尚、忘れることのない記憶。

 

夕陽に照らされた公園…その中央で、数人の少年たちが固まって、ひとりの少年を囲んでいた。

 

その中でも、一際体格の大きい少年が、囲んでいた細い少年を蹴り飛ばす。

 

さらに、それに続いて他の少年たちが、倒れていた少年へと手を挙げた。

 

腹を、背中を、庇う腕の上から顔を蹴り続ける。

 

口の中が切れ、鉄臭い血の味が広がる。

蹴られるたびに痛みが襲うが、少年は其れに耐え続ける。

 

 

 

 

 

 

少年たちが居る公園は、人通りの少ない町外れにある。

更に、夕方と言うこともあり人の気配は感じられない。

 

一人の少年を虐め、痛めつけるには格好の場所だった。

 

 

 

少年が痛みに耐えるのは、誰かの助けを待つためではない。

自分を蹴り続ける少年たちが飽きるのを待つためだ。

 

其れが、一時凌ぎでしかない事は理解している。

 

泣きもせず、ただ痛みに耐える少年に苛立ちが募ったのだろう。

 

リーダー格の少年が髪を掴み、拳を振り上げた時だった。

 

 

「男が寄ってたかってみっともねぇ真似してんじゃねぇよ」

 

低く、鋭い男の声が響く。

 

 

 

その日を、少年は忘れない。

 

学生服に隠された、鍛えられ引き締まった大きな背中を。

 

鋭く、獰猛な獣を彷彿とさせながらも、一切の澱みのない真っ直ぐな瞳を。

 

そして…男の姿を見た時、胸に湧き上がり、この身を燃やし尽くすような熱い感情。

 

 

男に対する、憧れを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む…っ…」

 

瞼の上から刺激を与えてくる朝の日差しで、青年はその目を開ける

 

ぼーっとする頭で辺りを見回し…次第に、此れでの事を思い出した。

 

自身が憧れた背中へ挑み、そして、敗北した事を。

 

 

「負けたのか…」

 

ぽつり、と青年の口から言葉が洩れる。

 

何度も心が折れそうになり、血反吐を吐いても、そこから立ち上がり這い上がってきた。

 

其れでも尚、男の立つ場所には至らなかったのだ。

 

「…遠いな」

 

 

 

 

 

悔しさの混じった声を洩らすが、その瞳は悲観に染まっていない。

 

新しい目標…男が課した宿題が、再び青年の胸に闘志を燃え上がらせたからだ。

 

だが…漸く意識がハッキリとしたのか、辺りを見回しはて、と青年は首を傾げる。

 

それもその筈。

青年が起きた場所は、自身が住んでいる場所とまるで違うのだから。

 

 

 

 

 

 

青年が住んでいるのは、六畳一間、風呂トイレが一緒のユニットバスが特徴的なアパートだ。

 

 

だが、今青年の眼前に広がるのは、木造の、洋風な部屋だった。

 

それどころか

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ…あれ」

 

青年は、己の視界に映るものに目を見開いた。

 

そこに見えたのは、一つの塔。

 

天高く聳えるその塔は、鉄製の電波塔とは違う。

石造りの塔だった。

 

 

此れまで、青年が生きてきた人生で見た石造りの塔なんてものは、異国の風景を収めた写真でしかない。

だが、それでも。

 

その写真で見たものよりも、彼の目に映る塔は高かった。

 

 

 

 

 

見た事もない塔、知らない部屋

青年の思考は、整理をしようにも更に混乱していくばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、そんな中でもたった一つ。

 

今いる場所は、青年…轟 剛士が住んでいた日本ではない。

 

それだけは、漠然と理解する事が出来た。

 

 




次回、迷宮番長!

『番長、悩む』

「…俺の歴史に、また1ページ」
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