ダンジョンに番長がいるのは間違っているのか? 作:ジャッキー007
みなさま、ありがとうございます
剛士は困惑していた。
彼の目の前に居るのは、褐色の肌をした1人の少女。
少女は、向日葵が咲いたような眩しい笑顔を浮かべ、剛士に話しかけている。
だが…。
「◾️◾️◾️◾️◾️?」
「…ぬぅ」
少女が話している言葉が、全くもって理解出来なかった。
時間を遡ること、数分前。
呆然と窓から見える景色を見ていた剛士の耳が、扉が開く音を捉えた。
振り返った先に居たのは、1人の少女だった。
髪を短く切り、民族衣装のようなものを身に纏うその少女は、剛士の姿を見るとパアッと笑顔を浮かべる。
やがて、その少女…ティオナ・ヒリュテは剛士のもとへと駆け寄って
『気分はどう?』
小さく首を傾げた。
ティオナの口から出たのは、発見してから
だが、此処…オラリオのある世界は、剛士が暮らしていた世界とは全く違う異世界だ。
故に
「◾️◾️◾️◾️◾️?」
剛士には、何を言っているかが理解出来ていない。
『男たるもの学び、挑む事を怠るな』をモットーに憧れた背中へと追いつく為、剛士は体を鍛えるだけではなく勉学にも励んだ。
元々真面目な性格もあり、外見に似合わず剛士は英国を始めとした4ヶ国語を理解出来る。
だが、それでも少女の言葉は理解出来なかったのだ。
自分の知り得る記憶を片っ端から漁り、剛士はティオナが話す言葉が何処の言語かと考えるが、彼の記憶に存在する言語に該当するものは見当たらなかった。
(見覚えのない風景から、日本ではないと思っていたが…)
まさか、言葉そのものが違うとは。
「◾️◾️◾️◾️◾️?◾️◾️、◾️◾️◾️◾️◾️?」
眉間に深く皺を刻み、思考を巡らせていた剛士の視界いっぱいに、ティオナの顔が映る。
「っ?!」
なんて事ない。
眉間に皺を刻み難しい表情を見せる剛士の姿を心配したティオナが、剛士に近づいて顔を覗き込んだだけだ。
だが、これまでそう言った経験のない剛士にとってティオナの行動は予想以上の出来事だった。
「なんでもない…だから、もう少し離れてくれ」
ティオナから視線を逸らし、無意識に声をかけるが…とうのティオナ本人は、剛士の言葉が理解出来ていないのだろう。
「?」
小さく首を傾げていた。
「…はぁ」
通じないだろうが、仕方ない。
「…俺の言葉が、分かるか?」
「???」
ティオナへと再び視線を移し、剛士は改めて口を開いた。
対して、ティオナは小さく首を傾げたまま。
つまりは、そういう事なのだが、剛士は自身が覚えた他国の言葉を用いて同様の質問を繰り返してみた。
だが、ティオナの反応が変わることはなかった。
目の前で耳に指を入れる姿を見たのには驚いたが、言葉通り耳をかっぽじって剛士の言葉を一語一句聞き漏らさんとする意志が感じ取れる。
だが、それでも。
剛士の言葉がティオナに通じることは無かった。
『……』
二人同時に腕を組み、首を捻る。
互いに何を言っているか解らない…それが解決しない事には、意志疎通など夢のまた夢なのだから。
「!◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️!」
「あ、おい!」
不意に、何かを思いついたような表情を浮かべたティオナは、剛士に声をかけると部屋を飛び出す。
その時に見せた両手のひらを此方へと向ける仕草…それが、恐らく待っててくれという事だけは剛士には理解出来た。
それから数分が経ち。
再びやってきたティオナ…いや、その後ろを見て剛士は微かに口角をひくつかせた。
「◾️◾️、◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️」
「◾️◾️、◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️」
「◾️◾️◾️◾️、◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️」
彼女の後ろに居るのは、尖った耳が特徴の翠髪の女性と髭を蓄え、鍛えられた恰幅の良い体つきの男。
そして…その二人に挟まれて居ながらも萎縮した様子を見せず、冷静な少年。
彼等の姿を見て、再び同じ試みを行うのか…剛士は、理解出来ない言葉を話す三人の姿に途方にくれた。
次回!迷宮番長!
『番長、語る』
「…俺の歴史に、また1ページ」