ダンジョンに番長がいるのは間違っているのか?   作:ジャッキー007

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ども、ジャッキーです。

最後の更新からかなり時間が空いてすみませんでした。
副主任へとクラスアップしたのに併せ、色々と仕事の中で変わったり任された物が増えて中々書けずじまいでした。

ゆっくりとですが、これからも更新は続けますのでよろしくお願いします


番長、語る

ティオナ・ヒリュテは困っていた。

 

彼女の目の前に居るのは遡ること3日前、同じファミリアのアイズ・ヴァレンシュタイン達と発見した1人の青年。

 

この青年…名前を『轟 剛士』と言うのだが、ティオナがまだ剛士の名を知らないため、此処では青年と呼称しよう。

 

 

濡れた衣服を纏い、気絶していた青年を担ぎ、自分たちの拠点である黄昏の館へと辿り着き、保護すると彼女達4人にある命令が下される。

 

「青年が目を覚ましたら、彼のことについて少しでも情報を聞き出すように」

 

そう言ったのは、ファミリアの団長である小柄な少年…否、少年のような見た目をした1人の男。

 

フィン・ディムナ…小人族出身の冒険者で、オラリオでも数少ないレベル6。

 

彼から下された命令に、双子の姉であるティオネは俄然やる気になっていたが、ティオナ自身も興味がないと言うわけではなかった。

 

それからと言うもの、青年を発見したアイズ、レフィーヤとティオナ、ティオネの姉妹は交代で青年の様子を確認して、まだ目が覚めていない事をフィンへと報告する日々が続いた。

 

 

それから3日後、ティオナが様子を確認する番になり青年が眠る部屋に向かった時…事態は進展する。

 

 

 

今迄ずっと、眠ったままだった青年が遂に、目を覚ましたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

だが…ここで、一つの問題が発生した。

 

青年の言葉が、ティオナには理解出来なかったのだ。

 

話の内容に、ティオナがついていけなかった訳ではない…単純に、青年が何を話しているかが解らないのだ。

 

ティオナの頭が悪い訳ではない。

彼女の趣味は、こう見えても読書…中でも英雄譚を好んでいる。

 

そのために、ティオナは読み書きの他にも多少、共通語以外の言葉も理解出来るように学んだ事がある。

 

 

だが、件の青年の口から出た言葉は、自分が理解出来ないものだった。

 

その言葉がどのように発音され、どのような意味を持つのか

その一切が、解らなかった。

 

これでは、青年が何者なのか解らないではないか。

 

純粋に、青年に対して好奇心を抱いていたからこそティオナは悩んだ。

 

 

 

悩んだ末、ティオナはふと思いついた。

 

自分で解らないのならば、年の功…先達に知恵を借りよう、と。

 

 

 

 

「フィン!」

 

青年の居た部屋を飛び出し、とある一室へと走ったティオナは、扉を開けるや中に居る人物へと声をかける。

 

ティオナが訪れた部屋の中、その正面にある机に座り、書類を眺めている一人の少年。

 

否…少年と見紛う容姿をした男こそが、このロキ・ファミリアの団長

 

フィン・ディムナその人である。

 

 

「どうしたんだい?そんなに血相を変えて」

 

 

息を切らしながら部屋へと入って来たティオナへと、書類から目を話したフィンは声をかける。

 

普段から明るく快活な性格をしたティオナの、普段とは違う何処か慌てている様子に疑問を感じてのことだ。

 

「それがね…」

 

フィンに尋ねられたティオナは、どのように切り出せば良いものか悩みつつ、頭の中でこれまでの事を思い出しながらこの部屋へ来るまでの顛末を話し出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…それは、本当かい?」

 

 

ティオナから全ての話を聞き終えたフィンは、その瞳を鋭いものへと変えて思考する。

 

ティオナ曰く、自分達の言葉が通じない件の青年は、これまで眠っていた部屋にまだ居るようだ。

 

ティオナがこのような嘘を吐く娘ではない事は、フィンも理解している。

だが、彼女の口から語られた話は些か信じられるものではなかった。

 

 

フィンやティオナが話す言葉は、彼らの住む世界で言う共通言語。

他国では違う言葉を話す者も居るという話は聞いた事があるが、共通語の教養くらいは受けている筈。

 

だが、その青年はまるで「共通語を理解出来ていない」。

 

 

「…こればかりは、直接会わなきゃ解らないか」

 

本当に、ティオナの言うとおりに青年は共通語が理解出来ていないのか。

それを確かめるべく、フィンは席から立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

そして、僅かに時は流れ。

 

 

 

「彼が、ティオナが言っていた青年か」

 

「ふむ、俄かに信じられんのぉ」

 

青年が居る部屋には、フィンとティオナの他に、エルフの女性とドワーフの男性が訪れていた。

 

 

リヴェリア・ヨルズ・アールヴとガレス・ランドロック。

フィンと同じ、ロキ・ファミリアに古くから所属するメンバーで、最も信頼出来る者たちだ。

 

彼らは、フィンから事のあらましを知り、自らの目で確かめるべく集まったのだが…。

 

「見事なまでに、我々の言葉が分かってない様子だな」

 

「そうみたいだね…」

 

フィン、リヴェリア、ガレスと其々が交代して青年にいくつかの質問をしてみたのだが、青年はその質問に対して答えてはくれなかった。

 

それ以前に、言葉を理解していないと言わんばかりに首を傾げるばかり。

 

「何かを言っておるのは分かるが、その意味が解らんと言った表情じゃな」

 

「それに、彼が話す言葉…それすら、我々には何を言っているのか解らないと来たか」

 

困惑の表情を浮かべながらも、口を開いてくれた青年の事を思い出してガレスは腕を組み、リヴェリアは顳顬に指を当てながら小さく溜息を溢す。

 

 

 

ここまでか、と四人が半ば諦めかけていたその時だった。

 

「なんや、皆こんな所に居ったんか」

 

何処か軽い口調で一人の人物…否、神物が部屋の入り口から顔を覗かせた。

 

 

「あ、ロキ!」

 

ティオナが名前を呼ぶ彼()こそ、ロキ・ファミリアを興した主神。

北欧では姦計と知略の神として知られているロキ、その(ひと)だ。

 

 

「お、コイツか〜?アイズたん達が拾ってきたっちゅう男は?」

 

フィン達に囲まれている青年に気づいたロキは、部屋の中へ入ってその姿を上から下へと見ていく。

 

その姿を見ていたフィンは、「もしかしたら…」と小さく呟くと意を決したように口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「言葉が全く通じないぃ?」

 

フィンから話を聞いたロキは、「んなアホな」と言いたげな表情で四人と青年を交互に見る。

 

「困った事に、僕たちじゃ彼が言っている言葉が解らなくてね…超越存在(デウスデア)であるロキなら、解るんじゃないかい?」

 

「そうは言ってもな…コイツが嘘ついとる可能性もあるやん?」

 

肩を竦めるフィンの言葉に、ロキは心底面倒そうな表情を浮かべ、改めて青年を見る。

 

少なくても、オラリオでは見た事のない衣服を纏った件の青年が他所の国から来た事は確かだろう。

 

「それを確かめるべく、ロキに頼んでいる」

 

「神の前では、儂等は嘘を吐けんからな」

 

フィンとの会話を聞いていたリヴェリアとガレスの言葉に、ロキは少し考える。

 

彼らの言うとおり、超越存在である神に、子供である人は『嘘を吐くことが出来ない』。

こう言った問題に関しては、この場ではロキ以外に解決出来る者は居ないのだ。

 

「…しゃあないか」

 

面倒そうな表情でボリボリと頭を掻きながらも、ロキは青年の前に立つ。

なんだかんだ言いつつも、子に頼まれたら応えてやりたいのが親なのだろう。

 

「なぁ、アンタ」

 

目線を合わせるように顔を近づけ、ロキは青年へと声をかける。

 

「ウチの言葉が解るか?」

 

「…!」

 

短い、たった一言の質問。

その問いに、青年は目を見開いた。

 

微かに緊迫した空気を醸し出す二人を、固唾を呑んで見守る四人。

たった数秒の沈黙すら、数時間に感じる程の何かが、其処にはあった。

 

「」

 

やがて、ゆっくりと青年の口が開かれる。

誰もが、次に発する言葉を聞き洩らすまいと耳を傾ける。

 

「…◼️◼️◼️◼️、◼️◼️◼️◼️」

 

青年の口から紡がれたのは、先程と同じ。

フィン達四人の頭を抱えさせた、未知の言語だった。

 

「…ロキでも同じかぁ」

 

小さく、落胆したようにティオナは溜息を吐いた。

ロキならばと期待があった分、その気持ちが大きいのだろう。

 

だが、他の者達はそうでは無かった。

 

「…ロキ?」

 

一番初めに気づいたのは、フィンだった。

ロキは、普段は薄く閉じている瞼を微かに開き、鋭い瞳で青年を見つめている。

 

そして、幾度か声を出して何かを確認するとロキは青年に対して再び口を開き

 

「◼️◼️◼️◼️、◼️◼️◼️?」

 

先程青年が発したものと、同じ言語で言葉を紡いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「コレなら、解るか?」

 

そう言って、『日本語』で問いかけてきた女性の姿に、俺は驚きを隠せなかった。

 

つい先程まで、これまで俺に話しかけてきた人達と同じ言葉を使っていた人間が、急に日本語を使ったんだ…驚かない訳が無いだろう。

 

それに…訳の解らない言葉を使って何かを質問してきた時。

 

 

何故かは解らないが、この人に対して嘘を吐くことは不可能だと理解出来た。

 

「あぁ…解る。アンタは、日本人なのか?」

 

「ニホン?っちゅう所が何処かは知らんけど、ウチはアンタの言うのとは違うで」

 

 

女性の答えに「そうか…」と小さく呟き小さく肩を落としながらも、念の為確認を頼むと、彼女は近くに居た金髪の少年らしき人に声をかけ、何かを話し始めた。

 

そして、その人が部屋から出るのを確認するや再び俺へと視線を移し

 

「さて、それじゃあ話してもらおか?アンタが一体何処の何者なんか」

 

薄く、それでいて鋭く俺を見据えながら、そう口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうか」

 

ロキが青年と会話を始め、数分が経過した。

 

フィンはロキから「ニホンという地名を地図で調べてくれへんか?」と頼まれた為、今部屋に居るのは青年を除くとティオナとリヴェリア、ガレス、そしてロキしか居ない。

 

「それで、何か解ったのか?」

 

二人の会話を見守っていたリヴェリアが、ロキへと硬く閉ざしていた口を開く。

 

「まぁな、正直ウチもこういったのは初めてなんやけど」

 

リヴェリアの質問にロキは答えるが、その表情は何処か整理しているような、悩んだ表情を浮かべている。

 

「まぁ、話すのはフィンが戻って来てからで….」

 

「それは問題ないよ、ロキ」

 

未だ確証を持っていないようなロキの物言いに三人は怪訝な表情を浮かべるが、部屋に入ってきたフィンの姿に注目する。

 

「おかえり〜…で、どうやった?」

 

「ロキに頼まれたとおり、ニホンという地名を調べてみたけど…どの地図にも、そんな名前の場所は無かったよ」

 

漸く帰ってきたフィンへと確認をとったロキは、予想通りの答えに額に触れながら天井を見上げた。

 

「ねぇ、私たちにもそろそろ教えてよ」

 

「お主だけで納得されても解らんぞ」

 

その様子に不満の声を洩らすティオナとガレスの声に、ロキは「わかった」と呟いて口を開いた。

 

「まず、コイツの言葉が解らんかった理由についてやけど…それは当然や。コイツ…タケシっちゅうんやけど、タケシの言葉は『この世界の言葉やない』んやからな」

 

ロキの発した言葉にティオナとガレスは首を傾げるが…フィンとリヴェリアは、何か気づいたようや表情でロキを見る。

 

「…それは、フィンに頼んだ事と関係があるのだな?」

 

「流石リヴェリアやな…タケシが居ったっちゅうニホンってのは、海に囲まれた国らしいけど」

 

「でも…そんな国は、地図には無かった」

 

リヴェリアの言葉に頷きながらロキはフィンを見やると、彼は答えるように小さく頷く。

 

「それに、オラリオやダンジョン…ましてや、ファミリアの事を何も知らんやった」

 

そう言うとロキは一旦話を区切り、四人を見て再度口を開き

 

「全ての話を聞いてウチが出した結論はこうや…タケシは、此処とはまるで違う世界」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「言うなれば…異世界から来た人間っちゅう事や」




次回、迷宮番長!

『漢の決意』

「…俺の歴史に、また1ページ」
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