ダンジョンに番長がいるのは間違っているのか?   作:ジャッキー007

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ども、夜勤の関係で徹夜したテンションで書き上げました。
色々変かもしれませんが…大目に見ていただければ幸いです。


漢の決意

「アンタの居ったニホンっちゅう国は、この世界にはない」

 

 

轟剛士がロキから齎されたのは、俄かに信じがたい真実だった。

 

それもそうだろう、憧れていた男と決闘を行った末に川に落ち、目が覚めたら其処は異世界だったなど三文芝居のような話だ。

 

だが…剛士自身は何処か納得した表情でロキの話を聞いていた。

 

「…思ったより冷静やな」

 

「此れでも驚いている…だが、目が覚めたら見慣れた車やビルもない。更には全く言葉も通じない…となれば、違う世界に来てしまったと考えれば納得もいく」

 

驚きの余り茫然自失となる事を予想していただけに、剛士の反応にロキは肩透かしを食らった。

 

 

「何や、他の国に来たっちゅう考えは無かったんか?」

 

「それなら、漂着する前に溺死している可能性の方が高いだろうな…」

 

ロキが提示した可能性を否定すると、剛士は改めてロキへと口を開いた。

 

「それで…俺が元の世界へ帰れる可能性は、どのくらいある?」

 

「…」

 

剛士の質問に微かに目を開けたロキは、少し考える素振りを見せると、言いにくそうに言葉を紡ぐ。

 

「…現時点では、ゼロやな。ウチも下界に降りて来て其れなりに長く暮らしとるけど、此処とは全く違う世界から来た人間っちゅうのはアンタが初めてや」

 

ロキの答えに剛士は考える。

脳裏に過るのは、日本に居る家族や、自分を慕ってくれた男達

 

彼らは、きっと自分を心配して探して居るだろう。

気づかない内に、剛士の中には帰れないかもしれない、という事への焦りが生まれていた。

 

「其処で、や。タケシ…アンタに一つ提案がある」

 

その心情を察してか、ロキは剛へと笑みを浮かべて声をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

「元の世界に帰る方法が見つかるまで、ウチのファミリアに入らへんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ロキも人が悪いね」

 

「ん〜?何の事や?」

 

明日、改めて答えを聞くと剛士に伝え其々の部屋へと戻る途中。

ロキの背中へとフィンが声をかけた。

 

「帰る方法が見つかるまで、それって言い換えたら『いつ戻れるかは解らない』って事だよね?」

 

「方法を探すのは嘘やないからなぁ…それに」

 

フィンの鋭い指摘に対してもロキは飄々とした態度を崩さない。

それどころか。

 

「全くの異世界から来た人間や、そう簡単に手放したないやん?」

 

そう言って嗤うロキは、まるで新しい玩具を与えられた子供のように目を輝かせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロキからの提案を聞いた俺は、一人ベッドに寝転がって考えていた。

 

彼女は、俺が元の世界に帰る方法を探してくれると言ってくれた…だが、それは何時になるかは解らない。

 

その間、ファミリアの一員としてこの世界で暮らしてはどうだ、と言われたのだが…そんな悠長に構えていて良いのだろうか。

 

もし、何十年も先と言われたら…。

そんな一抹の不安を胸に、俺の意識はゆっくりと沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ぃ…」

 

 

なんだ…?

 

「…、ぉ…」

 

 

 

誰かの声が聞こえる。

いったい、誰の…?

 

「…おい」

 

嗚呼…この声は。

忘れるわけがない、この声は…俺が憧れた、あの男の…!

 

 

 

「…漸く目を覚ましたか」

 

目を開けると、薄暗く、何もない場所に俺は立っていて。

俺の目の前には、目標としていた男が立っていた。

 

だが、その姿は最後に見たときとは違う。

 

あの時、スーツを着ていた男は今、俺が着ているような改造学ランに身を包んでいる。

 

 

 

「…お前さんは、何時まで燻ってるつもりだ?」

 

俺の前に立つ男は、静かに…だが、確かめるような口調で俺に問いかける。

 

「俺は言った筈だぜ、俺を超える漢になってみせろって」

 

そう言うと、男は俺の横を通って何処かへと歩いていく。

 

光に照らされた先へと向かう途中、男は少しだけ俺の方へ視線を向け

 

「…頂点(てっぺん)で楽しみに待ってるぜ」

 

小さく笑みを浮かべ、やがて光の中へと消えて行った。

 

 

 

 

「…そうだったな、アンタは立ち上がるのを待つような男じゃあねぇ」

 

一人だけ残された俺は、小さく呟く。

 

「俺がこうしてる間にも、アンタはどんどん先に行っちまうんだよな…だったら…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺も、止まる訳にはいかねぇよなぁ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長い夜が明け、朝日が昇った頃。

ロキを筆頭にフィン、リヴェリア、ガレスの計四人は剛士の部屋を訪れていた。

 

 

「ほぉ…」

 

一晩空け、改めて剛士の顔を見たロキは感心したように声を洩らす。

 

剛士の目には既に昨日にはあった迷いや焦りはなく、その瞳は力強くロキ達を見据えている。

 

「ほんなら、答えを聞かせてもらおか?」

 

「…俺は、アンタのファミリアに入る」

 

その答えを聞いたロキは小さく頷く…が、次の瞬間、鋭い瞳で剛士を見つめた。

 

「ならウチもアンタが帰る方法を探すけど…何時になるかは解らんで?」

 

「構わない…俺が帰るのは、少なくとも今じゃないからな」

 

剛士の言葉に満足したように笑みを浮かべながら、ロキは再び言葉を紡いだ。

 

「なら、これが最後の質問や…アンタがウチのファミリアに入って、冒険者になる目的は何や?」

 

ロキの質問に、剛士は内心遂に来た、と呟く。

昨日、ロキからこの世界について話を聞かされた時、話の中にあったのだ。

冒険者は、其々に目的がある事を。

 

其れこそ、金や名誉などの欲望から、種族の再興といった願いまで様々だ。

 

昨日までなら、剛士は己の目的を口にする事は出来なかっただろう。

 

 

だが、今は違う。

 

 

ゆっくりと息を吸い、吐き出すと剛士は決意を固めた表情でロキを見据え

 

 

 

 

「…日本にいる、ある男との誓い…男の頂点に立ち、その背中を超える為だ」

 

 

力強く、そう口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

剛士の目的を耳にしたロキは、目を丸くした。

 

此れまで出会った人間達は、金や名誉を欲する者、己が種族の再興、只偏に強くなる為といった目的を口にした。

 

だが、この男は!

 

 

もしかしたら帰れないかもしれない世界にいる誰かとの誓いの為に!

 

 

男の頂点という、何処まで歩けば辿り着くかも解らない路を歩もうとしている!

 

 

それを理解したロキは、小さく身体を震わせ…やがて、己の中のダムが決壊したのか大きな声で笑い始めた。

 

 

「面白いやん!アンタが目指す場所への歩み、ウチらが見届けたる!」

 

 

 

そう言いながら、期待を込め、目を輝かせる彼女は剛士へと高らかに叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ!ロキ・ファミリアへ!」




次回、迷宮番長!


『特訓開始!』
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