ダンジョンに番長がいるのは間違っているのか?   作:ジャッキー007

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ども、ジャッキー007です。

かなりの時間が空いた最新話です


…休みも少ないなか久しぶりに書いたので、お目苦しい出来ですみません


特訓開始!

「ちょっと待ってくれないか?」

 

剛士の思いを聞き、ロキはそれを歓迎しファミリアへの加入を決めた。

 

だが…そんな歓迎ムードに水を差すような声が、部屋に響いた。

 

「なんや、フィン…タケシがファミリアに入るんは反対か?」

 

そう呟き、ロキは待ったをかけた存在…フィンへ視線を向ける。

その表情はまるで好物に有り付こうとしたのに待ったをかけられ不服そうな、ムスッとした表情だが…しかし、普段は薄く閉じられている瞳は鋭くフィンを射抜く。

 

僕個人(・・・)としては、彼の事情も解っているから寧ろ歓迎だよ…でも、そうだね。ファミリア団長(・・・・・・・)としては、彼の加入はまだ反対だ」

 

「…聞かせてもらおか」

 

自身の視線に臆する事なく向かい合うフィンの言葉に含まれた真意をロキだけでなく、リヴェリアやガレスも既に見抜いている…だが、敢えて。

ロキはフィンへと続きを促した。

 

「仮に今、彼をファミリアへ入れたとする…でも、今の彼はコミュニケーションが取れる相手はロキだけだし、オラリオの文化や文字、ましてや常識を知らない」

 

「そんな人間を「神が認めた」という理由だけで加入させて、団員や入団を希望する者達が納得すると思うかい?」

 

 

フィンの言葉はファミリアの団長として尤もな意見であった。

 

ロキ・ファミリアと言えばオラリオでも二大勢力と噂される程に大規模な探索系のファミリアで、それ故に入団を希望する者も後を絶たない。

 

更に言うなら、彼らの行う遠征は深層というダンジョンでも深く、より強いモンスターの現れる場所。

 

そんな場所において…いや、たとえ上層だとしても、コミュニケーションが取れずオラリオの事を知らない剛士が一人加わるだけで連携に支障を来し仲間の命を危険に晒すリスクが高い。

 

それに、ロキが認めたからという理由で仮に入団しても団員や入団希望者達からは快く思わない人間が少なからず現れるだろう事は想像できる。

 

 

「やったら、どうするんや?」

 

 

ロキは、それを解っていて、剛士をファミリアへと誘った。

そして、それに対してフィンが反対する事も。

 

その上で、ロキはフィンに問うた。

 

 

団員や入団希望者、他のファミリア達が納得できるような、剛士が入団する資格を持つ人間であると知らしめる為の条件を。

 

 

「…彼の来歴、思いは解った。そうしたら…そうだね、彼の覚悟を試そうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来月に行われる入団試験…それまでに、オラリオに関する事、読み書きから会話を含む全てを覚えて貰おうかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…それで、アレ…というわけね」

 

剛士とロキ達の話し合いから、更に1日が過ぎ。

 

彼を最初に発見し、保護したアイズ達にはリヴェリアから剛士の今後について話がされた。

 

 

そして…今。

 

剛士に用意された部屋のドアから中を覗くアイズとヒリュネ姉妹、レフィーヤの眼前には、無数の本に埋もれ机に向かう剛の姿があった。

 

彼の両隣にはそれぞれ教師役のリヴェリアと唯一言葉が解り、コミュニケーションが可能なロキが立ち、本に書かれた内容や文字を教えている。

 

積み上げられた本も、内容は様々で一般的な教養を教えるものから、幼い子供が読む御伽噺まである。

 

 

 

「でも、フィンも酷いよね。タケシに一ヶ月で読み書きから会話、オラリオの事まで全部覚えろってさ」

 

一心不乱に本を読む剛士の姿を見ていたティオナがポツリと呟く。

彼女自身、幼い頃に勉強をして数ヶ月で共通語の読み書きが出来るようになったからか、その頃の自分と今の剛士を重ねて見ていた。

 

だが、僅か数ヶ月で読み書きを覚える事が出来たのは、読み書きは不可能でも会話が可能という下地があったからである。

 

それにひきかえ、剛士は読み書きはおろか会話も出来ない。

そもそものスタートラインが違うのだ。

 

「馬鹿、リヴェリアが言ってたでしょ?団長は本当に1ヶ月で全部覚えれるとは思ってないって」

 

想い人(フィン)を悪く言われたからか、口を尖らせるティオナを軽く睨みながらティオネが言葉を返す。

 

ティオネの言った通り、実際の所フィンは剛が僅か1ヶ月で全てを覚えられるとは考えていない。

 

それはフィンだけではなくリヴェリアやガレス、ロキも同様だ。

 

では、何故フィンがこのような条件を出したか…それは、先に言ったように剛士の覚悟を試す事が目的である。

 

 

敢えて極端に短い期間の中で、どれだけの事を学び、覚えようとするか。

 

神の前では嘘は言えない…だが、それが真実であれ、本気で取り組むか否かは神すら分からない。

 

故に、この機会に剛士が入団…否、オラリオで生きていく事に対して本気かを測ろうとしている。

 

 

 

と、不意にドアが開かれ中からロキとリヴェリアが出てきた。

 

「お前達…覗きとは趣味が悪いぞ」

 

「あ、あはは…」

 

 

リヴェリアの言葉に、ティオナ達は思わず後ずさる。

 

そこまで強く睨まれた訳ではないのだが、悪戯が見つかった子供のように視線を右往左往させるばかりだ。

 

「リヴェリア」

 

そんな中、アイズがリヴェリアへと声をかけた

 

「あの人は…どう?」

 

「…まだ初日だから、と言うのもあるが難航しているな。だが…」

 

アイズの言葉にリヴェリアは自身が出て来た部屋へ視線を移す。

 

「学ぼうとする姿勢や意欲は十分…これからどうなるかは、アイツ次第だな」

 

少し空いた隙間から見える、自身が休憩を言い渡したにも関わらず書物と睨めっこを行う剛士の姿に小さく笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロキと…たしか、リヴェリアだったか。

 

彼女たちから与えられた本を読む…と言うよりも眺めていた俺は、視線を外し力の入っていた目を休めようと目頭を揉む。

 

(異世界…と言うだけあって、まるで解らんな)

 

書かれた言葉の中から単語を抜き取り、意味をロキから教わり紙に写す。

 

そんな単調な作業だけで今日が終わってしまった。

 

フィンという男から言い渡された期日は僅か一月。

 

 

それまでに、読み書きからロキ以外との意思疎通…そして、この世界について知らなくてはならない。

 

 

匙を投げたくなる気持ちは僅かにある…だが。

 

 

「高い壁ほど乗り越えがいがある…そうだろ?」

 

窓の外に広がる星空

 

こことは違う世界だが、同じように高く先の見えないものへと歩み続ける背中を思い浮かべ、俺は再び本へと視線を移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なんだ、この騒ぎは」

 

剛に文字の読み書きを教え始めて3日目の朝。

 

朝食を摂ろうと食堂へ来たリヴェリアは目の前に広がる光景に驚いていた。

 

そこには、既に朝食を摂りにきた他の団員達がアイズ達の集まるテーブルに集まっている。

それならば、何時もの見慣れた光景の一つ…なのだが。

 

その中に、明らかに異色な色が混ざっていた。

 

 

 

周りと比べて一回り大きく筋肉質な身体に黒い衣服を纏う男…轟剛士が、アイズ達と食卓を囲んでいるのだ。

 

「あ、リヴェリアー!」

 

ふと、自身の視線に気づいたのかティオナが振り返り此方へ手を振る。

 

周りから集まる視線に軽くたじろぎながらも、平静を取り戻したリヴェリアは集まる団員達の間を縫ってティオナ達の座るテーブルへと足を進めた。

 

「これは、いったいどういう状況だ?」

 

「?どういうって…タケシと話してたんだ」

 

 

 

 

 

 

その言葉を聞いた当初、リヴェリアはティオナが発した言葉が理解出来なかった。

 

何故か…それは、リヴェリア自身が一番理解している。

 

 

剛士が共通語の読み書きを開始したのは、ほんの3日前。

簡単な単語を教え、その読み書きだけでも精一杯だった彼がティオナ達と会話など、まだ不可能なのだ。

 

 

改めてテーブルを見てみると、テーブルの上には食事と、他にあるものと言えば紙とペンだけ。

 

そこで、リヴェリアは気づいた。

 

 

 

紙には、いくつもの言葉と単語が書かれている。

その文字も、それぞれに癖があり…中でも一際拙い筆跡の単語が目に付いた。

 

「まさか…筆談を、していたのか?」

 

「凄いよね。リヴェリアに文字を教わってからずっと、こうして字を書いて練習してたんだって…ほら」

 

呆気に取られるリヴェリアに、ティオナは10枚以上もある紙束を渡す。

 

 

そこには、何十…否、何百回と同じ単語が繰り返し、所狭しと書かれていた。

 

裏返してみると、また別の単語が。

それが1枚のみならず何枚も…中には、文章の組み立て方が滅茶苦茶な物もあったが、それも次第に改善されている。

 

 

(これだけの量…私とロキが付いて教えた時間以外でも、ずっと読み書きを続けていたと言うことか)

 

僅か2日で教えた言葉は、日常で使うため特に教える必要のあった単語だけで、文法はまだ教えていなかった。

 

だが、剛士はそれこそ寝る間も惜しんだのだろう。

本を読み続け、教わった単語を照らし合わせた結果、未だに粗さはあるが自分の力で文章を組み立てる事をやってのけた。

 

 

(フィン…私達の予想は、外れるかもしれんぞ)

 

紙束から視線を外し、ティオナ達と拙い筆談を行う剛士を見たリヴェリアは、これから先…自分達の予想を裏切るであろう男の姿に笑みを深めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言葉の組み立て方が英語に似ている事に気付き、時間は掛かるが意思を伝える事が可能となって以来、リヴェリアの授業はより密度を増した。

 

名詞や動詞といった単語を教わるのみだったのが、接続詞や疑問形、否定形が加わった事でより実践的な文章の作り方となり、それと並行して会話の訓練も開始された。

 

 

 

読み書きが出来ても会話が出来ない、と言うのは諸外国の言葉を覚えた時と同じだが、これまでとはまた違う発音の仕方や口の使い方だったため、読み書き以上に時間がかかってしまった。

 

 

「いや、それでも2週間で話せるようになるんは早すぎるて」

 

とはロキの言葉だが、言葉が通じない環境に立たされれば、人間は環境に適応しようと躍起になるものだ。

 

 

 

 

会話が可能となってからはリヴェリアの授業は終了となり、残り2週間はフィンからオラリオの事について教わった。

 

貨幣価値については…日本円に換算してしまいがちになる不安もあるが、そこはまぁ、なんとかなるだろう。

 

 

 

 

ファミリアの主な収入源は、依頼(クエスト)の報酬とダンジョンに巣食うモンスターが落とす核…魔石やドロップアイテムらしい。

 

まるでRPGのような話だが…此処は現実。

欲を出し命を落とす者も少なくないというフィンの忠告は忘れないようにするべきか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、長いようで短い怒涛の1ヶ月が過ぎ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついに、ロキ・ファミリアの入団試験を迎えた。




次回、迷宮番長!

『入団試験』

「タケシの歴史に、また1ページ!」
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