ダンジョンに番長がいるのは間違っているのか?   作:ジャッキー007

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徹夜テンションでお送りしますので駄文やもです…

感想でも解る通り皆さん押忍番好きですねぇ…

しかし、この主人公…金剛ではないんすよ…


入団試験

ロキ・ファミリア

 

迷宮都市オラリオに存在するファミリアの中でも一、二を争う探索系ファミリアの拠点にある広場には、早朝であるにも関わらず多くの人が集まっていた。

 

人種、性別、年齢、背格好。

凡ゆるものが違えども、彼ら、彼女らの思いは共通していた。

 

 

 

今日はロキ・ファミリアの入団試験

 

 

 

 

 

 

 

 

轟剛士の、オラリオでの第一歩を決める日でもある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回も沢山の人が集まったね」

 

広場が見渡せる部屋から試験開始を待つ人々を眺めながら、ロキ・ファミリア団長…フィン・ディムナは笑みを浮かべる。

 

この中から、自分達と苦楽を共にする仲間が選ばれるのだ。

 

 

「しかし、あの坊主には驚かされたの」

 

フィンの隣に立ち、受験者達を眺めるガレス・ランドロックは人々から離れ一人佇む男…剛士を見つける。

 

喧騒の中、目を閉じて木に背中を預けるその姿を、他の受験者達は怪訝な表情で眺めているが、当の本人は気圧された様子を微塵も見せていない。

 

余裕…とは違う。

 

やれるだけの事を行い、万全の状態で挑むべく精神を穏やかに、しかし熱い覚悟を胸に秘めている。

 

 

「僕も驚いたよ…まさか、本当に1ヶ月で全てをマスターしたなんてね」

 

「私としては、乾いた海綿(スポンジ)のように吸収するものだから、教え甲斐のある生徒だったがな」

 

 

この日を迎えるまでの1ヶ月間、驚くことばかりだったフィンはさも当然とばかりにやってのける剛士の事を思い出して苦笑し…同時に、教師役を担い手塩をかけて教えたリヴェリアは生徒の成長に笑みを浮かべた。

 

「でも…彼にとって、本当の第一歩は此処からだ」

 

 

ロキは入団させる気であり、剛士の立場から他のファミリアに知られるわけにはいかないとは言え、試験を受ける以上贔屓目で見るわけにはいかない。

 

フィンの言葉に改めて、轟剛士の存在を見極めるべく3人は表情を引き締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…来たか」

 

定刻となり、拠点からフィンを筆頭にガレスやリヴェリアが現れた途端、周りの喧騒がたちまち水を打ったように静まり返る。

 

 

「これより、ロキ・ファミリアの入団試験を開始する。試験内容は1対1の模擬戦と面接、武器は此方で用意したものを使用してもらう…何か、質問は?」

 

リヴェリアによる開催宣言と簡単な試験内容の説明を受け、周囲の気配はより張り詰めたものへと変わっていく。

 

特に質問をする姿も無いことから、辺りを見回して確認したリヴェリアが合図を行い、サポートを任された団員達が、訓練用に使う木剣や棍を持って所定の場所に置いていく。

 

「では、名前を呼ばれた者から前へ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベート・ローガが轟剛士を見たのは、剛士がこの世界に訪れて2週間が経った頃の事だった。

 

ベートが剛士を見た時に感じたもの…それは、不快感だった。

 

 

入団もしていない、何処の誰とも解らない男がファミリアの中に居て…尚且つ、アイズ・ヴァレンシュタインと共に居た事がベートにとって何よりも耐え難いものであった。

 

 

 

身の程を弁えない奴、と突っかかろうとしたが、ロキに止められたうえに常にフィンやリヴェリアといった幹部達が共に居た為に手を出せず歯噛みするばかり。

 

「そんなに、アイツが気に入らんか?」

 

苛立たしげに顔を歪ませるベートにリヴェリアが声をかける。

 

「入団もしてねぇ、何も知らねぇ雑魚がロキに認められただけでファミリアに居るのが気にいらねぇんだよ」

 

 

胸に抱えた不快感と苛立ちを隠そうともせずに吐き出すベートの姿に、リヴェリアは小さく溜息を吐いた。

 

 

フィンが懸念したように、団員達の中にも剛士の事を懐疑的に見ており、不満を抱えている者が現れている。

 

ベートがその中でも最たる者だろう。

 

 

今はまだ抑えられている方だが…沸点の低いベートだ、いつ破裂してもおかしくない。

 

 

「…再来週に行われる入団試験、それにアイツも参加する。そこで、アイツが本当にお前の言う雑魚かどうか見極めてみろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ふん」

 

リヴェリアから言われた言葉を思い出し、ベートは小さく鼻を鳴らす。

 

 

見極めろ、とリヴェリアは言ったが所詮雑魚は雑魚。

本来なら、見る価値もないと一笑して終わる筈だった。

 

 

しかし。

 

 

 

 

 

 

ベートの中にある何かが、轟剛士という男から目を離すなと訴え続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(今回もあまり収穫はなさそうだね)

 

実技試験の試験官を行なっていた僕は、内心溜息を吐いた。

 

受験者達は僕の見た目や実技を終えた為か気が緩み、軽口を叩く者が現れ始めた。

それも、他の受験者達へと伝播し、悪い影響を与えている。

 

 

「次、タケシ・轟」

 

そんな時、リヴェリアによって次の受験者…彼の名前が遂に呼ばれた。

 

人を掻き分けて僕の前へと姿を現した彼…タケシの表情は周りの影響もどこ吹く風と言わんばかりに真剣そのもの。

 

その体から放たれる気迫は例えるならば、まだ未踏の階層へ挑もうとする冒険者に近く。

 

彼の気迫に気づいた者達は一人、また一人と静かになり…気づけば、あれだけ軽口を叩いていた受験者数は静まり返っていた。

 

 

 

 

(これは…)

 

改めてタケシを見て、小さく笑みを浮かべる。

 

これまで、僕達はタケシの行動に驚かされてきた。

 

 

たった3日で文字の読み書きを覚え、2週間が経つ頃には拙いながらも会話が出来るようになり。

最終日には、僕が出した難題を全てクリアした。

 

 

そして、今。

 

周囲を気迫だけで圧倒する姿に、僕は。

 

 

来歴やロキの手前なんてものを抜きにして

 

彼がオラリオ(この街)で僕達に何を齎し、何処へ行き着くのかを見たくなった。

 

 

 

 

「…では、両者構え」

 

リヴェリアも同じことを感じたのだろう。

笑みを浮かべそうになるのを抑え、号令をかける。

 

此方が棍を持っていることに対して、タケシは軽く腰を落とし、拳を構える。

 

徒手空拳による格闘戦…それが、彼のファイトスタイルなのだろう。

 

 

 

「始め!」

 

掛け声と同時に、地面を蹴る。

 

両者の間が縮まる中、僕は棍を持つ手に力を込めた。

 

 

正面から受けて立つ…その意思を込めた瞬間、視界を黒が覆い尽くした。

 

(目くらましか…!)

 

視界を覆ったもの…それが、タケシが普段着ていた衣服である事を確認して棍で叩き落とし、すぐさま彼の姿を確認する。

 

目の前には居ない事がすぐに解り、左右を確認しようとした…次の瞬間、前へと飛び出した。

 

 

直後に背後から風を感じた事から、後ろに回り込んだのは確実だ。

 

しかし、左右から音は無かった…となれば、方法は一つしかない。

 

「まさか、頭上を飛び越えて(・・・・・・・・)背後に回り込むとはね…驚いたよ」

 

「その割には、落ち着いてるじゃねぇか」

 

「まぁ、これでも踏んで来た場数が違うからね…!」

 

 

そこから先は、互いに言葉は不要だった。

 

左右の拳から連続で放たれる拳に、丸太のように太い脚から繰り出される蹴りは身体の大きさに反して速く、風を切る音からもその重さが伝わってくる。

 

体捌きも上手く、武器のアドバンテージを潰そうと、攻撃を恐れずに懐へ積極的に潜り込み、反撃もしっかりと見極めたうえで躱し、防御している。

 

 

そんな互いに一歩も引かず、有効打を与えられないで膠着した応酬に、この場に居る誰もが魅入っていた。

 

 

 

互いに再び距離を取り、構えをとる。

 

 

このままでは、後の受験者に響くという思いが過ぎり始める中、不意にタケシが構えを変えた。

 

特に大きな変わりはない…しかし、握りしめていた拳を解き、体に入っていた力が抜けている。

 

有り体に言うならば、自然体。

先程までの構えが「動」とするなら、今の構えは「静」と言える。

 

明らかに、何かがあるのは一目瞭然だ。

 

 

(でも…乗ってみるとしようか…!)

 

 

棍を握る手に力を込め、突きを繰り出した。

 

 

次の瞬間、視界が急転し

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は地面に倒れ、眼前にはタケシの拳が寸止めにされていた。

 

 

 

最初は何が起きたか理解出来なかったが、少し考え漸く分かった。

 

僕は…『自分の力に投げられた』。

タケシは僕の動きに合わせてほんの少し、手を添えただけ。

 

ただ、それだけだ。

 

「…参った」

 

恩恵を受けてない人間に本気を出す訳にいかないから、本気は出さなかったけど…全力で挑んだ。

そのうえで、僕はタケシという男に負けた。

 

 

嗚呼…悔しいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィンの宣言と同時に、張り詰めた緊張感が解けた瞬間…割れんばかりの歓声が広場に響いた。

 

辺りを見回すと、他の受験者達だけでなく、ファミリアの団員達までもが俺とフィンを賛辞していた。

 

 

あまり無い光景にたじろいでいたが、リヴェリアが場を鎮め改めて試験が再開される。

 

 

 

 

俺以降の受験者、そしてフィンまでもが気を引き締めて試験に挑んだ事で、滞りなく実技試験は終了した。

 

 

 

 

そして、次に行われるのは面接…なのだが

 

 

「まずは実技試験お疲れさん、こうも盛り上がったんは今までにないで!」

 

応接室で試験官として待ち構えていたロキがこれ以上ない笑顔を浮かべていた。

 

 

「今回は勝たせて貰ったが…実際のところ、何度も負けていても可笑しくない所があった」

 

「せやけど、勝った事に変わりない。そこは受け止めなアカンで?」

 

ロキの、我が子を諭すような言葉に小さく頷くと気を取り直したのか、閉じられていた目を微かに開いた

 

「ほんなら面接に移るけど、ウチからの質問は2つや…タケシ、アンタは冒険者になって何処を目指す?」

 

「最初に言った頃と変わらない…男の中の男、その頂点だ」

 

俺の答えに、ロキは嬉しそうに小さく何度か頷き…鋭い瞳で俺を見る。

 

「そか、そんなら…アンタにとって、それはどんな存在や?」

 

ロキの質問に、少し考える。

 

あの男の姿、その背中を思い出し…そこからイメージするものを紡いでいく。

 

「深く根を張り、山より聳え、困難に屈しない太い幹を持ち…その太い枝で来るものを受け止め、そして、支え育む大樹のようなものだと、思う」

 

 

「そか。ウチからの面接は以上や、後は合否発表までゆっくりしとき」

 

拙い表現だったが、ロキにとっては満足のいく答えだったのだろう。

 

顔を綻ばせるロキに一礼して、俺は応接室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員の面接を終え審議に1時間掛かっただろうか。

 

入団試験を受けた全員が、再び広場に集まっていた。

 

その表情は堅く緊張しており、合格か否か…結果に対する不安に彩られていた。

 

 

 

 

「今回の試験はこれまで以上に甲乙つけがたい者達ばかりだったが、全員合格という訳にもいかん…厳正な審査の結果、合格した者の名前を読み上げる」

 

 

総評を終え、進行を担当するリヴェリアが名前を読み上げる度に、受験者達は様々な表情を浮かべる。

 

歓喜、安堵、落胆…そんな表情を周りが浮かべる中一人、また一人と合格者が呼ばれていき、そして。

 

 

「…タケシ・轟。以上を以て、今試験の合格者とする」

 

剛士の名前が、静かに呼ばれた。




次回、迷宮番長!

【ステイタス】

「…俺の歴史に、また1ページ」
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