金剛
ーーーーー4年前 横須賀第二支部
その人と出会ったのは4年前のことでした。
「……え、えっと、本日より横須賀第二支部に提督として着任した野木勇だ!階級は少佐だ。よろしくお願いし…よろしく頼む!」
着任早々に締まらない挨拶をした彼は30代前半くらいの男性でした。眼鏡をかけた冴えないおっさんという感じでしたが優しそうな男性でした。そんな彼は私たちをキョロキョロと見回して赤くなっていました。時雨と飛龍がクスクスと笑っていました。
「どうかしたのデスか?」
「い、いやこんな美少女たちの中に俺が男1人だと思うと落ち着かなくて……」
「夕立たち美少女っぽい?」
「えっ?び、美少女だと思うんだが」
「えへへ」
「僕たちは兵器だ。見た目なんて気にしなくていいよ」
「そうよ」
「……いや、俺はお前たちを兵器として扱わない。人間以外の何者でもないよお前たちは」
「そこまでハッキリ言うなんて変わった人デスネ」
「そうか?」
「でも、とっても嬉しいネー!」ガバッ
「うえっ!?な、何故抱き付くんだ!?」
「ただのスキンシップデース!」ギュー
「くそっ!妹よりも大きな胸が……!」
「ははは、どうやら金剛に気に入られたようだね」
「み、見てないで助け……」
「役得じゃない」
「ぽいっ!夕立も!」ダキッ
「おわーーーっ!?」
彼は慌てていましたけれど、同時に何かに安心しているように見えました。
「じ、自己紹介をしてもらっていいか?まずお前から」
私はパッと彼から離れると、笑顔とともに彼に自己紹介をしました。
「英国で産まれた帰国子女の金剛デース!ヨロシクオネガイシマース!」
ーーー野木提督着任から4ヶ月後
色々あって始まった彼と私たちの日々ですが、彼は提督として着任したのにもかかわらず何故か週に2,3日しか仕事場にやって来ませんでした。重要な作戦などの時にはきちんとやって来るのですが……何か別の仕事でもあるのでしょうか?
「Hey!テートク、聞いてもいいデスかー?」
「ん?何だ金剛?」
彼に紅茶を淹れながら聞いてみました。
「先に紅茶をどうぞデス」コトン
「ありがとう。聞きたいことがあるのか?」ズズ
「テートクって何か別の仕事もしてるんデスか?」
「別の仕事?」
「ハイ。テートクってあんまりここに来ないじゃないデスかー」
「あー、それか。まあ確かにそのようなものがあってここには毎日来たりすることは出来ないな」
「テートクが来ない時は代理の提督たちが来てくれていマスが、やっぱり寂しいデース······」
「……すまんな、今はまだこっちに専念出来ないんだ」
「ここに来ていない時は何をしているんデスか?」
「えーと、勉強っていうかなんていうか······」
「勉強?テートクはすでに士官学校を卒業してここにいるハズデース。一体何を勉強するのデスか?」
「あっ、いや、秘密だ」
焦ったように提督が言いました。
「ちょっ!?教えて欲しいデース!」
「秘密だ秘密!いつか教えてやるよ」
「秘書艦の特権で教えてくだサーイ」
「ダメ」
「何でデスかー!」ブーブー
「人に秘密の一つくらいあったっていいだろ」
「ワタシはもっとテートクのことを知りたいんデース!」
「俺のことを知ってどうするんだ?」
「テートクともっと深い仲になれマース」
「は?」
「テートクって独身デスヨネ?」
「それがどうした?」
「ワタシがテートクのお嫁さんに立候補シマース!!」
「えっ……マジで?俺はこんな冴えない中年のおっさんだぞ。鏡でも自分の姿を見ているがもっといいヤツが他にいくらでもいるだろう」
「テートクは見た目よりも言動が若いしおっさんという感じがしないデス」
「ふーん」
「……冗談ですよ、兵器である私が提督のお嫁さんになれるわけがありません。私たちは艦娘、提督は人間なのですから」
そう言った瞬間、提督の顔が険しくなりました。
「金剛!!」
「すみマセン。さっ、お仕事を片付けるのデース」
(あなたは本当に心からワタシたちを人間扱いしてくれるんデスね……)
ーーー野木提督着任から1年後
「うちも段々と鎮守府としての箔が付いてきたんじゃないか?」
「そうデスか?横須賀第二支部はまだ認知度も低いデスし艦娘も四隻しかいマセン、まだまだだと思いマスが」
「確かに四隻しかいないがうちは少数精鋭だからいいんだよ」
「ワタシ、未だに砲撃が下手っぴデース」
実際、私は砲撃が下手な戦艦でした。1年経ってもそれは変わりませんでした。みんなの足を引っ張ってばかりです。
「そ、そのうち当たるようになるさ」
目を逸らされました。
「うう、どうして当たんないんでしょうか?」
「か、艦娘には個体差があるから……」
「ワタシ、役立たずデスネ……」
「そんなことはない。ここのみんなが毎日を明るく、そして楽しく生きることが出来るのは金剛のおかげだ。今だって秘書艦として俺を支えてくれているじゃないか」
「……そうカナ?」
「ああ、お前はうちの艦隊になくてはならない存在だ。そんなこと一々気にするな」ナデナデ
「テートクは本当に優しいデース……」ナデラレナデラレ
普通ならこんな役立たず、すぐに解体なのに······
あなたは本当に優しい······
ーーー野木提督着任から1年と数ヶ月 大規模作戦中
「夕立、突撃するっぽい!」
大規模作戦中、命じられた主力艦隊への援護のため出撃した私たちは悪魔と遭遇しました。水着にパーカーを着た小柄な子供のような外見に尻尾の生えたその悪魔は戦艦レ級と呼ばれる存在でした。
「っ!待つんだ夕立、僕たちの役目はあくまで主力艦隊の援護だ!こんなところで時間を使うわけには……」
「なんでこんなところにレ級がいるのよ!」
「……偶然か、それとも読まれてたのかな?」
全員の顔に浮かぶのは焦り。
「どちらにしろ早く主力艦隊のところに行かないとマズいっぽい!」バッ
「……キヒヒッ」ジャキッ
「待ちなさい夕立!……っ!金剛、サポートお願い!」
「わ、分かったデース!」
「コイツ硬いっぽい!」ドオンドオン
「艦載機も操るなんて本当にチートなヤツだね!」バシュッ
「……キヒ」ブウーン
「全砲門!Fire!」ドオオオオン
「僕らで勝てるのか……?」バシュウウッ
「……キヒッ♪」
目が覚めると見慣れた天井でした。
「ここは……」
「っ!気付いたか!?」バッ
「テー……トク?」
「一体何があった!?時雨たちも高速修復材を使ったんだが目を覚まさないんだ!!」
提督が必死な顔で私に言います。ボロボロな状態で見つかった私たちはすぐにドックへ運び込まれましたが時雨たち3人の損傷はかなり酷く、未だに3人は目を覚ましていないということでした。
「え……」
必死にあの後のことを思い出します。飛龍が航空機を抑えて、夕立と時雨が砲撃と魚雷でヤツの足を止めて私が砲撃して……でも倒しきれなくてヤツが反撃してきて私は飛龍を庇って……最後に見たのは魚雷を持って突撃した夕立の姿でした。
「レ級デス……」
「何!?」
私の話聞いた提督はとても驚き、聞き終えると私を抱き締めてきました。
「良かった……生きてて本当に良かった……!」
提督は泣きながら何度も「良かった」と繰り返しました。
「野木提督、大将殿がお見えになっております」コンコン
「……分かった」グイッ
提督は涙を拭うと扉へ向かいます。提督が部屋を出た後、私は痛む体を引きずりながら彼を追いました。提督が入った部屋の扉を少しだけ開けて中を覗きました。
「……今回の大規模作戦、何故君の艦隊は援護に来なかったのだね?」
「はっ!恐れながら我が艦隊は援護に向かう途中で戦艦レ級と交戦した模様です」
「戦艦レ級だと?」
「はい、彼女たちの傷の具合を見ても間違いありません」
「何故ヤツが……まあ理由は分かった。ヤツと出会って艦隊が全滅しなかっただけでもたいしたものだ」
「……主力艦隊の方はどうなったのですか?」
「こちらはかなりの被害を出しておきながら姫を取り逃がしてしまった……」
「そうですか……」
「君のところの夕立と時雨の夜戦火力には期待していたのだが……悪魔に会ったのならば仕方のないことだな」
「申し訳ありません……」
提督が大将に頭を下げました。
ーーー違う、悪いのは提督じゃない。
「ひとえに我が艦隊の練度不足が原因です。全て俺の指導に問題がありました」
ーーー違う!悪いのは、悪いのはーーー
「良い、悪魔はそれだけの存在なのだ。今回の件は不問とする」
「ありがとうございます……」
会話が終わり大将が部屋を出ました。大将を隠れてやり過ごした後、私は部屋へと入りました。
「金剛!?寝てなくてはダメだろうが!!」
「テートク、どうしてテートクが謝るんデスか?」
「聞いてたのか?」
「ハイ」
「レ級に遭遇したとはいえ、主力艦隊がもう少しで姫級を討伐出来るというところに助力出来なかったのも事実だ。だから謝った。お前たちを十分に育てていなかった俺にも責任があると思ったからな」
「たった四隻でアイツに勝てるわけがないデス!」
「……お前たちは頑張ったよ。こうして全員で帰って来てくれた」
「ワタシは違いマス!!」
「金剛······?」
「飛龍はアイツの艦載機からワタシたちを守りました。夕立と時雨はアイツの足を砲撃と魚雷で止めました。……デモ、ワタシはアイツにロクに攻撃を当てることが出来なかったんデス!一番の火力を持つ戦艦なのに!ワタシがダメだったからアイツに反撃の機会を与えたんデス!」
「……」
「ワタシがきちんとアイツにダメージを与えていれば、アイツをすぐに撤退させて主力艦隊の援護に行くことも出来たかも知れなかったんデス!!時雨たちが負傷することもなかったはずデス!!」
「……」
提督は黙って聞いていました。
「……テートク、強くなりたいデス」
「……」
「大切な誰かを守れるように、悲しませないように……」
「……ああ」
「ワタシは今のままじゃダメなんデス。ワタシが強くなれるよう助けてくれマセンか?」
提督は力強く頷いて言ってくれました。
「……ああ、任せろ。お前の期待に応えてやる!」
それから私と提督の特訓が始まりました。
ーーー野木提督着任から2年半後
砲撃の嵐の中を私は進みます。空では艦載機たちが激しい攻防を繰り広げ、時雨たちは周囲の敵を引きつけてくれています。
私は進みます。前方に見える敵を目指して。
「フゥー」スッ
提督は私にある技術を授けてくれました。特殊な体の動かし方によって動き出しの動作を分からなくして、相手の意表を突くための体術です。さらに私はこれまでの戦いの経験を基に、高いレベルで相手の動きを予測して戦うようになりました。「砲撃が当たらないのなら当たる距離まで近付いてしまえばいい」それが提督の考えでした。戦艦が敵に接近して戦うなんて普通じゃないし、近付くほど危険も大きくなります。提督は乗り気じゃなかったけど、私の強い意志に折れてそのための技術を教えてくれました。
「キヒヒヒッ!」
進む少し先には赤いオーラを纏うあの悪魔の上位種がいます。
私は相手の砲撃の角度と狙いを予測しタイミングを合わせて飛んできた砲弾を手ではじきました。これも提督にコツを教えてもらって苦労して手に入れた技術です。
ドゴッ!!
砲弾が遅れて爆発します。
「キヒッ……!?」
そのまま悪魔を目指して私は進み続けます。回避、回避、回避、はじいて、回避。
とうとう私は悪魔の目の前までやってきました。
「この距離ならはずすことはありえないデス」ジャキッ
「キ······!?」
悪魔が目を見開いて私を見ました。たっぷりとくらいなさい……!
「バーニング、ラアァァブ!!」ドオオン
砲弾が撃ち出され悪魔が爆炎に飲み込まれます。炎が消えた頃、そこには何も残っていませんでした。
「テートクゥー!戦果Resultが上がったヨー!」バアンッ
「扉を乱暴に開けるなと言ってるだろうが」
「ノープロブレムネー!」
「問題大有りだバカ!」
「任務通り敵艦隊を殲滅してきたヨー!」ニコニコ
「はぁ……まったく」
「……ん」スッ
「頭を差し出してどうした?」
「ご褒美になでてくだサーイ!」
「はぁ……」ナデナデ
提督が優しく私の頭をなでてくれます。
「テートクのナデナデは最高デース!」ナデラレナデラレ
提督のナデナデは気持ちがよくて、この瞬間は彼の優しさを存分に感じることが出来たので、私はこの時間が何よりも好きでした。
「……甘えん坊め」
「ワタシはテートクにゾッコンデスからネー!」
「……」グイッ
突然提督が私の髪を引っ張りました。
「本当にどうなってんだこのフレンチクルーラー」
「フ、フレンチクルーラーじゃないデス!!」
「……」グイグイ
「イタタタタ……!テ、テートク、髪を引っ張らないでくだサイ!髪がもげちゃ……アッーーーーーー!?」
ああ、あなたとの日々はとても楽しい
「テートクゥー!スコーン作ってきたので一緒に食べるデース!!」
「スコーンは美味しいんだけどさ、お前ってスコーン以外に作れる物あんの?」
「私はスコーン以外作れマセン」
「」
提督は口をあんぐりと開けて私を見ました。
「テートク?」
「……今度料理を教えてやるよ」
「What!?テートクは料理が出来るんデスか!?」
「人並みにはな」
「Oh……」ガクッ
「どうした?」
「いえ、ちょっと自分が情けなくなっただけデス……」
「ちゃんと教えてやるから安心しろ。ほら、スコーンを食べるんだろ?紅茶を入れてくれ。俺はお前の淹れる紅茶が好きなんだ」
あなたはとても優しい
「テートク!You've got mail!Love letterは許さないんだからネー!」
「俺にそんなもん来ないっての……どれどれ」
「何て書いてあるんデスか?」
「『すまん。お前の妹がとうとう士官学校に入学してしまったのでこれを報告する……じいちゃんより』……あの人まだ粘ってくれていたのか、本当にいい人だな」
「テートクのsisterさんデスか?」
「ああ、よほど海軍に入った俺のことが心配らしい」
「いつかご挨拶に行かなければなりマセンネ」
「えっと、何故?」
「ワタシはテートクの家族じゃないデスかー!」
「ああ、艦娘としてお世話になってますっていう」
(……そうじゃないデース)
「……」スタスタ ポスッ
「何故俺の膝の上に座る」
「別にいいじゃないデスかー」
「まったく……」ナデナデ
「……ふにゅう」ニヘラ
私は艦娘であなたは人間なのに
「うぅ……テートク、艦隊が帰投したヨー」ボロッ
「おう、お帰……ぶはっ!?お、お前、その頭は一体どうした!ア、アフロみたいになってん、ぞ……ぷっくく」
提督はコーヒーを吹き出し、笑いをこらえて私を見ていました。
「うぅ……砲弾をはじくのに失敗したデース」アフロ
「も、もう無理……ぶわっはっはっは!!」ゲラゲラ
「わ、笑わないでくだサーイ!!」
「アフロ!まんまアフロだ……腹が痛い!」ゲラゲラ
「テ、テートクのバカー!!」バシーン
「ごはっ!?」
あなたの存在が私の中でどんどん大きくなって……
「そういや、最近のお前らが何て呼ばれているか知ってるか?」
ある日突然提督がそう聞いてきました。
「いえ、知りマセン。何て呼ばれてるんデスか?」
「〈大天使時雨〉、〈悪夢の夕立〉、〈天の飛龍〉、そして〈鬼の金剛〉だ」
「D、Demon!?」
正直、かなりショックでした。
「いやお前、戦艦がわざわざアドバンテージ捨てて近付いて来て、その上、近距離で主砲ぶっぱなすとか怖がられても仕方ないだろ」
「ワタシは鬼じゃないデス!!
「嫌なら通常の距離からの砲撃の命中精度を上げろ」
「最近はちょっとずつ当たるようになってマース!」
「それが普通だろうが」
「テ、テートクもワタシが怖いデスか?」
「いや、お前たちのことはいつでも普通の女の子だと思っているよ」
「テ、テートク……バーニングラァーブ!!」ガバッ
「のわぁっ!?」
本当に好きになってしまったじゃないですか……
ーーー野木提督着任から3年後
「ケッコンカッコカリ……デスか?」
「ああ、なんでも艦娘と強い絆を結ぶことで今まで以上に強い艦娘を生み出す事が出来るらしい」
「……」
「にしてもケッコンカッコカリって……もうちょっとマシな名前はなかったのかあのじいさんは」
「指輪……デスネ」
「そうだな」
(これなら艦娘であるワタシが合法的に人間の提督と結ばれることが可能デス!!)
「テートク!ワタシ指輪が欲しいデース!!」
「お前練度足りないだろ」
「すぐに上げてみせるデス!!!」
「無茶だけはするなよ」
「早く欲しいんデス!」
「まったく、落ち着けって」ナデナデ
「えへへへ」ナデラレナデラレ
……それが提督に会った最後の日でした。
ーーー野木提督着任から3年と2ヶ月後
あの日以降、彼は横須賀第二支部に全く来なくなりました。
「うぅ……テートクがここに来なくなってもう2ヶ月デース」
「大丈夫ですか?金剛さん」
「代理提督さん、テートクは今どうしてるんデスか?」
「彼は今、もう一つの方の仕事が忙しくて手が離せない状況だと聞いています」
「もともと毎日ここに来る人ではなかったデスケド、2ヶ月も来なくなるなんて今までなかったデス……」
「きっと大変なお仕事なのでしょう」
「テートク……」
ーーー野木提督着任から3年半後
「テートクに会わなくなってもう半年デス……」
「……」
「テートク、もうワタシ、ケッコンカッコカリ出来る練度になったんデスヨ?」
「金剛……」
「……やっぱり艦娘であるワタシが人間であるテートクと結ばれたいと願ってしまったのがいけなかったのデスか?それとも……テートクはワタシたちのことが嫌いになってしまったのデスか?」
「金剛、もう部屋に入ろう。ここにいては風邪を引いてしまうよ」
「時雨、艦娘であるワタシたちは風邪を引くことはないデス」
「……」
「……ゴメンナサイ、時雨たちも辛いのは一緒なのに」
「……いいよ。部屋に入ろうか」
時雨は寂しそうに笑っていました。
「ハイ……」
ーーー野木提督着任から3年と8ヶ月後
「金剛さん、一緒にお酒でも飲まない?」
これは飛龍なりの気遣いだったのでしょう。
「飛龍、今はそんな気分じゃないデス……」
「お酒を飲めば多少は気も紛れるかもしれないよ」
でも……
「ゴメンナサイ……」
ーーー野木提督着任から3年と10ヶ月後
「金剛さん、ここにご飯置いておくっぽい」
「……」
「ぽい……」ガチャ
バタン……
「テートク······」
私は日に日に無気力になっていきました。
ーーー野木提督着任から4年後
「それじゃ、僕たちは任務で他の鎮守府で派遣されることになったから金剛は留守番をよろしくね……」
「わざわざ私たちを指名するなんて物好きもいたものね……」
「ぽい……」
「……」
ーーー時雨たちが出発してから2週間と数日後
「ただいま金剛、今戻ったよ」ガチャ
「ただいまー」
「ただいまっぽい!」
その日は違和感がありました。
「…………?」
何故か時雨たちは出発前のあの暗い雰囲気がなくなって帰って来ました。それに加え、3人は笑っていました。彼女たちの笑顔を見たのはいつぶりでしょうか。
「みんな、笑って……」
「ああ、それはね……」
「素敵な提督さんと親友に会ったっぽい!」
「僕たちの派遣先の鎮守府の提督なんだけど、艦娘を完全に人間として扱う変わった人だったんだよ」
「あそこは居心地がいいっぽい!」
「提督はなかなかいい人だったわよ」
「まだ艦娘が2人しかいない鎮守府だけど良い所で、野木提督がいた頃のような時間を過ごすことが出来たよ」
「確かに雰囲気が彼にそっくりだったわね」
「……テートクに?」
「あ、そういえば彼から金剛への手紙を預かっているよ」
「ワタシに……?」
「金剛に渡してくれって頼まれたんだ」
そう言って時雨は一通の手紙を差し出してきました。私は手紙の封を切って中身を読みました。
『 鬼の金剛様へ
あなた個人に演習を申し込みます。相手をするのはこちらの艦娘から1人です。日時はいつでも構いません。来なかったらお前のフレンチクルーラーをもいでやる。』
「な、何これ?金剛さん個人に演習の申し込み?いやそれよりも最後の一文は何!?」
「フレンチクルーラー……」
「なんか美味しそうっぽい」
時雨たちが何か言っていましたが、私はそれどころではありませんでした。手紙の文字から目が離せません。
「こ、この筆跡……」
手紙を持つ手が震える。私は思わず時雨たちに詰め寄っていた。
「こ、この手紙を渡してきた方はどんな姿だったんデスか!?」
「えっ?士官学校を出たばかりの青年だよ。黒髪黒目でちょっと幼さが残るような……でもちょっとかっこよかったかな」
あの人と全く一致しない……でも!
「眼鏡はかけてたんデスか?」
「か、かけてなかったよ」
確かめる必要がある。そんな気がしました。
「みなさん、今からちょっとワタシと訓練に付き合ってくだサイ!!」
「えっ!?部屋から出る気になったのかい!?」
「やっぱりフレンチクルーラーのせいなの!?」
「夕立は手伝うっぽい!」
私は時雨たちとともに久々に体を動かすことにしました。
ーーーーー佐世保鎮守府
「あっ」
「……どうしたんだい司令官?」
「……筆跡を直さず送っちまった」
「?」
再会まで後少し
主役は遅れてやってくる。金剛は乙女で可愛い。
……やっとバーニングラブが出せました!