「えー、無事に金剛たちと再び同じ艦隊で戦えるようになったんだが……」
朝の食堂にて俺は艦娘たちに現状の報告をしていた。
「何かあったんデスか?」
俺は全員の顔を見回して重大な発表をした。
「……ここはつい最近まで廃墟だった佐世保鎮守府だろう?で、現在は必死に復旧作業中の箇所が多いのは知っているな?」
「それは知ってるけど」
「ぶっちゃける。
「「「「「「えっ」」」」」」
俺は手元の資料を艦娘たちに見せた。そこには『燃料300、弾薬350、鋼材200、ボーキサイト800』と書かれている。
((((((うわぁー))))))
「な、なんでこんなことになっているのでしょうか?」
「今の俺の司令部レベルが低いからだ」
秘書経験のある電と金剛が納得したような顔になる。司令部レベルとはその鎮守府の日々の戦果応じて上がるもので、資材の供給量にも影響するのだ。
「こればっかりは戦果を上げるしかない。というかそもそも遠征が出来ないのがキツい。建造ドックが壊れているから軽巡洋艦を建造することも出来ん」
「現在の解放海域はどうなんだい?」
時雨の問いに答える。
「皐月と電で通称1-1から1-6までを解放したところだな」
「く、駆逐艦二隻でそこまで突破したのデスか……」
「というわけで、これからどうしたら良いと思う?」
「提案デス」
金剛が手を上げる。
「言ってみろ」
「まず、ワタシが1人で出撃しマス」
「おう」
「資材節約のため通称2-1と2-2をワタシが単艦で突破しマス」
「……続けろ」
「2-3のオリョール海でワタシが片っ端から輸送船ワ級を捕まえマス」
「……」
「ワ級を解体して資材ゲットデス」
これは採用すべきなのだろうか。
「うぅーん……」
「司令官、悩まないでよ。ツッコミどころ満載だよ?」
皐月が言う。
「でも金剛だしそれくらい出来るだろう」
もちろん冗談だ。
「テートクの期待に応えマス!!」エヘン
金剛が胸を張る。
「でも確かにいけそうな気はするのですよ……」
「お姉さま、何か必要なものはありますか?」
「丈夫なワイヤーが欲しいデス」
「それなら鋼材を使えばなんとかなりそうですね」
(榛名が乗っただと……)
「ねえ、誰かツッコミを入れてよ」
(その通りだ皐月)
「じゃあ行ってくるデス」
俺は食堂を出て行こうとする金剛のフレンチクルーラーをつかみ、引っ張る。
「アイタタタ……!!テ、テートクゥ、何をするんデスか!?」
「せめて時雨たちを護衛につけろ」
「デ、デモ燃料が……」
「その分も集めてくればいいだろう」
「!……分かりマシタ!!」
「朝食をきちんと食べていけ」
朝食後、金剛は時雨と夕立と飛龍を連れて出て行った。
「さて、資材の調達をどうしたら良いと思う?」
「えっ?い、今、金剛さんたちが出発したよね!?」
「どうもアイツはケッコンカッコカリしてから頭のネジがゆるんでてな。冗談のつもりだったんだが行ってしまったな」
「榛名も冗談のつもりだったのですが……」
「止めなかったあたり、2人ともいい性格してるのですよ」
「時雨たちは……」
「心配だったのは本当だからな。まあ、多分諦めて帰ってくるだろう。ワ級を鹵獲しながら海域攻略とか出来んだろうし」
「うぅーん……」
「お姉さまなら出来そうですけど」
「……とにかく!何か考えるんだ!」
「そもそも軽巡がいれば解決するのですよね?」
「……そうだな」
「工廠の修理を早める人材を呼べばよいのです」
「……ちょっと元帥に聞いてみようか」
スマホを取り出し、元帥にかけた。
『……もしもし』
「もしもし、元帥にちょっと頼みたいことがありまして」
『なんじゃ?』
「工廠の修理を早めるための人材を派遣して欲しいんです」
『……忘れとったわい』
(おい……)
『今すぐ明石を送ろう。他には何かあるかの?』
「いや、大丈夫です。それよりも金剛たちの異動の手配についてはありがとうございました」
『ええわい、ところで金剛とはもうケッコンカッコカリしたのかの?』
「はい」
『おめでとう。彼女を大切にするんじゃぞ』
「……やっぱアレってそういう意味なのですか?」
『当人たち次第じゃな』
「そうですか……ではまた」
『うむ』プッ
元帥との通話を終える。
「明石が派遣されてくるらしいから問題は解決しそうだな」ホッ
「「金剛さん……」」
「お姉さま……」
「さて、今日の秘書艦は榛名だったな。皐月と電は鎮守府近海警備を頼む」
「「「了解です!」」」
「で、お前は何故俺の膝の上に座るのかね?」
今日の秘書艦は榛名です。現在榛名は提督の膝の上に座っているのですが提督の反応があまりよろしくありません。
(皐月ちゃんたちの時はこんな困ったような顔をしていませんでしたのに……)
「ダ、ダメでしょうか?」
「金剛の影響か?」
確かに金剛お姉さまの影響です。
「お姉さまがテートクのハートを掴むにはシンプルに下半身に向けて全砲門Fireだと……」
「絶対本気で言ってないから信じるな。というかぶっちゃけすぎだろう」
(確かに笑いながら言われましたが……今思えばニヤニヤとした顔だったような……)
「そうでしょうか?」
「お前は俺に襲われたいのか?」
突然そう言われました。
「えっ?」
「いやほら、お前サイズになってくると……」
「……あ、固いです///」モゾモゾ
(て、てててて提督の主砲が!)
「下りろっ!!」
「ははは榛名は大丈夫ですっ!!」
「そうじゃない!俺が大丈夫じゃない!!」ジタバタ
提督が暴れ出しました。それでも榛名が怪我しないように控えめに暴れているところがなんだか可愛く思えて下りる気が起こりません。ちょっとした好奇心から提督の主砲に手を伸ば───
「お前も頭のネジがゆるんでるだろ!」ゴツン
「あぅ」
(うぅ、痛いです。金剛お姉さまがいない時ぐらいいいじゃないですか……)
「執務だ、執務!さっさと仕事だ!!」
「はい……」
ーーーーーー
「時雨!ワ級は見つかりましたか!?」
現在私はオリョール海域でワ級を探しています。すでに何体かは確保して飛龍に曳航してもらっています。
「えー……、10時の方向に艦隊発見だよ……」
「了解ネ!」
「い、行ってらっしゃい……」
全速力でその方向へ進みます。敵の軽巡洋艦やら重巡洋艦やらが周りに見えますが関係ありません。私の目には帽子を深くかぶったような頭部に丸い体の深海棲艦の姿しか見えません。
「テートクのハートを掴むのはワタシデース!」
私は握り拳を構えて敵艦隊に突っ込みました。
ーーーーーー
「工作艦明石、ただいま着任しました!」
ピンクに近い色の髪にセーラー服、大量の工作機械を背中に背負い、顔に人当たりの良さそうな笑顔を浮かべた女性───工作艦明石が着任したのはすっかり外が暗くなった頃だった。執務室にて榛名とともに向かいあう。
「初めまして、この鎮守府の提督の飯野勇樹少佐だ。これからよろしく頼む」
「はい!」
「ここの事はある程度聞いているか?」
「ええ、最近噂になってますから」
「……ちなみにどんな?」
「着任早々に中将を演習で破った後、あの有名な横須賀第二支部のメンバーを全員引き取った謎だらけの新人っていうような噂です」
「その程度なら問題ないな」
「不正をしたんじゃないかとかも言われていますけどね」
「言わせとけ」
と、ここで突然皐月たちからの通信が入った。通信機へと近付き、音量を上げる。
『し、司令官、聞こえるかい?』
「おう、聞こえてるぞ」
『こ、金剛さんたちが帰って来たよ……』
「遅かったな。すぐに諦めて帰って来ると思ったんだが」
『はにゃーーー!?夕立ちゃんやめるのです!それを電に近付けないでください!こっちに来ないで欲しいのですーーー!!』
『こ、金剛さん、これ本当にどうすんの?たくさん穫ったデス?いや、それは見れば分かるけれどこれはちょっと……』
通信機から皐月たちの慌てた声が聞こえてきた。
「……一体何だ?明石、悪いが一緒に港まで来てくれ」
「は、はい」
「榛名も行きます」
俺たちは港へ向かった。
目の前の光景を何と言えばよいのだろうか。眼前を埋め尽くすように大量の敵輸送船ワ級がワイヤーでグルグル巻きにされて港に浮いている。右を見ても、左を見てもワ級、ワ級、ワ級───
「は……?」
「な、何ですかこれ!?」
明石が目を見開いている。俺だって同じ気持ちだよ。
「お、お姉さま……」
そこへこれをやった張本人がやって来た。
「テートクゥー!たくさん穫って来たヨー!!」
褒めて褒めて!とばかりに駆け寄って来た金剛を受け止める。
「お、おう……本当に穫って来たのか……」
「提督……僕はもう疲れたよ……」
「私も同感よ……」
遅れて時雨と飛龍が姿を見せる。2人ともかなりの疲労が顔に見てとれた。夕立はワ級をワイヤーで引きずりながら電を追いかけている。
「なんか本当にごめん……」
「もうね、ワ級を見つけるなり敵艦隊に単艦で特攻をかけて壊滅させることの繰り返しで敵が哀れに感じられたよ……」
「しかも引きずるのは私なのに金剛さんはどんどん先に行っちゃうし……」
「多分、当分の間オリョール海域にワ級は出現しないと思う……」
「テートク!ワタシ頑張りマシタ!!」
「うん、頑張ったなー、偉いなー、よしよし」ナデナデ
俺は遠い目をしながら金剛の頭をなでた。
「えへへへ……」ナデラレナデラレ
「何なのこの鎮守府!?」
(すまん明石、着任早々おかしな光景を見せてしまったな……)
「司令官、これどうするの?」
皐月はもうどうでもいいやという顔だ。
「とりあえず解体してみようと思う」
工廠に入りきらないほどワ級がいるが……
「さあ明石、ワ級の解体を妖精たちと頑張るんだ」
「嫌ですよ!!」
余談だがワ級を全て解体したところ、燃料6000,弾薬5000,鋼材7000,ボーキサイト5000が手に入った。思った以上の成果に思わず金剛が痙攣するまでなでまくってしまった。あとで榛名にめちゃくちゃ怒られた。
「羨ましいです!!」
そこかよ。
コメディ要素増えて来た……
最初がシリアスだっただけに差がすごいですね……ヒロインたちが可愛いのが原因。