皐月と提督とバーニングラブ×2   作:TS百合好きの名無し

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30話目を飾るのは暁の回。糖分は……あると思いたいです。


暁よ、一人前のレディーとして扱ってよね!!「暁とのケッコンカッコカリ」

 

 

 

「暁、こっちの書類頼めるか?」

 

 

 ドンッという重たい音と共に置かれた分厚い書類の束に私は冷や汗を流す。私───暁は本日の秘書艦だ。

 

 

「え……こんなに?」

 

 

「うーん、やっぱり他の娘に変わってもらうか?お前は今日が秘書艦初日なのにこの書類の量はちょっとな……」

 

 

 いつもこんなに多くないんだが……と勇兄が困ったように言う。

 

 

「だ、大丈夫!暁に任せない!」

 

 

「適当にやっちゃだめだぞ?」

 

 

「真面目にやるから大丈夫!」

 

 

「活字ばかりだが寝るなよ?」

 

 

「ね、寝ないし……」

 

 

「頑張ったらプリンあるからなー」

 

 

「……」

 

 

「トイレに行きたくなったら素直に言えよ?」

 

 

「さっきからなんなのよ!?」

 

 

「お前変にプライド高いから俺が仕事終えるまで我慢しそうだろ?あと、いじると楽しい。それだけ」

 

 

「レディーをからかうなんて最低ね!」

 

 

 本当にこの人はいつも私をからかってばかり!

 

 

「可愛いレディはいじめたくなるのさ」

 

 

「か、かわ……いや、納得いかないわ!子供扱いしてるだけよね!?」

 

 

「そうとも言う」

 

 

「こ、この!」

 

 

「おや?レディともあろうお方がこんな事で怒るのか?」

 

 

「怒らせたのは勇兄でしょ!」

 

 

「ふっ、俺は事実を言ったまでだ」

 

 

「そこへ直りなさい!」

 

 

「俺はもう椅子に座っているぞ」

 

 

「床・に・正・座・よ!レディーの扱い方をきちんと教えてあげるわ!」

 

 

「仕事しろよ」

 

 

「勇兄に言われたくないわよ!」

 

 

 

 

 

 

「提督ー!昼食の準備が出来たよ」

 

 

 なんやかんや仕事を始めてからしばらくして執務室に川内さんがやって来た。 

 

 

「あー、もうそんな時間か。全然気付かなかった」

 

 

「うわ、朝からこんなにたくさんの書類を処理してたの?」

 

 

「もうだいぶ終わったがな」

 

 

「早すぎでしょ……秘書艦いらないんじゃない?」

 

 

「その分疲れるんだよ……」グッタリ

 

 

 机に突っ伏する勇兄。

 

 

「そりゃあんな速度で仕事したら疲れるわよ」

 

 

「意外にお前の処理能力が高くてびっくりした」

 

 

「ふふん、当然よ!」

 

 

「途中何回か寝そうになってたけど」

 

 

「……何の事かしら?ちょっと目が疲れただけよ」

 

 

「よだれの跡ついてるぞ」

 

 

「えっ、嘘!?」

 

 

 慌てて口に手をあてる。

 

 

「嘘だ」

 

 

「」

 

 

「んじゃ食堂に行くか」

 

 

「ほーい」

 

 

「む、無視しないでよ!」

 

 

 彼と川内さんと一緒に食堂へ。今日の料理当番は電だったかしら。

 

 

「あ、司令官さんと暁お姉ちゃん」

 

 

 食堂ではひよ子のプリントのなされたピンクのエプロンと同じくピンクの三角巾、手には鍋つかみといった格好の電がいた。うん、私の妹はやはり可愛い。

 

 

「おっ、肉じゃがかな?」

 

 

「はい!朝に作って冷ましておいたので味もばっちり付いてるのです!」ニコッ

 

 

 ここで電の天使スマイルが炸裂。

 

 

「もうこの笑顔だけでお腹いっぱいよ」

 

 

「……俺もだ」

 

 

「電ちゃんって天使みたいな娘だよねー」

 

 

「はわ!?ちゃ、ちゃんと食べて欲しいのです!」

 

 

 鍋つかみを着けたまま慌てた表情でパタパタと手を振る姿もまさに天使。なんでこんなに私と違うのかしら?

 

 

「ちゃんと食べるから落ち着きなさい」

 

 

「もうすでに他の料理も並べてくれてあるみたいだし、すぐにいただこう」

 

 

 席に着いて3人で手を合わせる。

 

 

「「「いただきます」」」

 

 

「ふふっ、どうぞなのです」

 

 

 さっそくじゃがいもを箸で掴んで口の中へ。

 

 

「美味しい……」

 

 

「ああ」

 

 

「ちょっと濃いけど私も好きだなー」

 

 

「なんか私が知ってる肉じゃがよりコクがあるけど何を入れたの?」

 

 

「えへへ、ちょっとお味噌を入れてみたのです」

 

 

 そう言って電がはにかむ。 

 

 

「えっ!?味噌入れたの?」

 

 

「なるほど……」

 

 

「へー、味噌でこんな味になるんだ。私は提督が作る肉じゃがも好きだけど」

 

 

「俺の場合はポン酢を入れてまろやかな味にしてる」

 

 

「電も司令官さんの肉じゃがが大好きなのです!」

 

 

「ありがとう」

 

 

 明るい雰囲気で会話をしながら昼食を食べ続ける私たちだったけど、突然電が今一番私が気になっている話題を出してきた。

 

 

「……あ、あの、司令官さん」

 

 

「ん?」

 

 

「どうして暁はお姉ちゃんはまだ指輪を着けていないのですか?」

 

 

「あ、私もそれ気になってた。もうとっくに指輪届いてるんでしょ?」

 

 

 電と川内さんの発言に勇兄が固まった。

 

 

(え……私そんなの知らない)

 

 

 あれから勇兄が何も言ってこないので、まだ届いてないものだと思っていた。

 

 

「私、指輪がもう届いてるなんて話初めて聞いたんだけど……」

 

 

「「えっ」」

 

 

「……」

 

 

「ど、どういう事なのです司令官!」

 

 

「暁に知らせてなかったの?」

 

 

「……忘れてた」

 

 

「それはちょっとひどいのです……」

 

 

「フォローのしようがないね」

 

 

「……忘れてた?」

 

 

「い、いや正直に言うと忘れてはないんだが……決心がつかなくてな」

 

 

「ガツンといくべきなのです!暁お姉ちゃんが司令官さんとケッコンすれば電は司令官さんの義妹という地位が手に入るのです」

 

 

「電はそれでいいんだ……」

 

 

「妥協したのです!」

 

 

(ゆ、勇兄とケッコン……)

 

 

 勇兄と再会した時の私はかなり大胆に迫っていた気がするが、今の私はというと……

 

 

(ど、どうしよう、恥ずかしくなってきた……)

 

 

 いざそうなると余裕なんて無くなっていた。

 

 

「……今日中に渡すよ」

 

 

 勇兄は覚悟を決めたらしいが私はそれどころではない。

 

 

(み、身だしなみってこのままでいいの?なんて言って指輪をもらうの?全然考えてなかったわ!)

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

 結局その後の食事は私も勇兄もお互いに一言もしゃべらず終わった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

 昼食の後から私と勇兄は一言も会話をしていない。執務室に響くのは彼がペンを走らせる音と私が判子を押す音だけで他には何もない。

 

 

「……」

 

 

 判子を押しながらチラリと勇兄の様子を窺うと目が合った。慌ててお互いに目をそらす。

 

 

(どうしよ……まともに顔が見れなくなってきちゃった)

 

 

 ケッコンカッコカリ……別に結婚じゃなくて単なる戦力強化なのだけれども、媒体が指輪である以上そういう事を意識してしまう。彼もまた同じなのだろう、先ほどから私と目が合う度に気まずそうな顔をしている。

 

 

(な、何か話さないと……!)

 

 

 必死で話題を探すが見つからない。諦めて何か行動出来る事はないか考えてみた。

 

 

(そうだ!お茶を淹れてこよう、そこから自然に会話へと繋げば……)

 

 

「ちょ、ちょっとお茶を淹れてくるわね!」

 

 

「お、おう……」

 

 

 執務室奥にあるエリアでお茶を淹れて戻って来る。

 

 

(さて、ここからどう繋ごう……書類に分からない所が~とでも言ってみる?うん、無難そうね)

 

 

 まずはお茶を渡そうと勇兄に湯飲みを差し出す。

 

 

「はい」

 

 

「あ、ありがとな」

 

 

(渡し終えたら会話を…………あっ) 

 

 

 けれども湯飲みを受け取ろうとした彼と私の手が触れた瞬間、私の脳はフリーズしてしまった。

 

 

「す、すまん!」

 

 

「う、うん……」

 

 

 顔が熱い……そういう風に意識すればするほど彼の顔が見れなくなってしまう。こんな経験は初めてだし、頭の中はもうめちゃくちゃだ。

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

(昼食の後から暁と会話出来なくなった……)

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

 どうしても暁の事が気になり仕事に集中出来ない。

 

 

(暁と結婚……いや、ケッコンだけど、どう捉えたら良いものか……)

 

 

 俺にとっての暁は可愛い妹のような存在であり部下だ。しかし再会したあの日、俺は暁に女の部分を見てしまった。

 

 

『暁も指輪が欲しいわ……』

 

 

 そう言ってこちらを見つめてきたあの時の彼女は確かな魅力を持った女の子だった。だからその時に考えてしまった。

 

 

 彼女は俺を異性として見ているんじゃないかと。

 

 

 見た目は中学生ぐらいの少女とはいえ、暁は女の子である。俺を心から信頼してくれ、なでれば照れくさそうにしながらも喜び、からかうとぷんすか怒り、寂しくなるとプライドを捨てて積極的に甘え出す……そんな娘だ。時折見せるギャップも魅力的と言えるだろう。

 

 

(……っ!)

 

 

 ふと暁と目が合う。お互いサッと目をそらす。書類にサインを入れながら彼女の顔を窺うとうっすらと頬が赤くなっていた。

 

 

(俺はロリコンじゃないはずだ……)

 

 

 暁を1人の女の子として見そうになっている俺は異常なのだろうか。

 

 

「ちょ、ちょっとお茶を淹れてくるわね!」

 

 

「お、おう……」

 

 

 こちらを見ずに暁がそう言い出し、執務室の奥へと消える。

 

 

(いかんな、俺がこれでは暁を不安がらせてしまうかもしれない。暁が戻って来たら話しかけてみよう)

 

 

 奥から湯飲みにお茶を入れた暁が姿を現す。

 

 

「はい」

 

 

「あ、ありがとな……」

 

 

 湯飲みを受け取る瞬間、彼女の手が俺の手に触れる。跳ねそうになる心臓。

 

 

「す、すまん!」

 

 

「う、うん……」

 

 

 一瞬だが触れた彼女の手はとても柔らく温かかった。真っ赤な顔で彼女が軍帽を押さえて俯く。

 

 

(金剛の場合は好意を向けられていた事をずっと知っていたから心の準備というものが出来ていた……榛名もあの時の勢いに任せたところがあるがすんなり受け入れる事が出来た。だが、暁は違う……つい最近まで妹のように思っていた娘から思いもよらぬアプローチをかけられた。正直今でも混乱しているからな……)

 

 

 見た目中学生ぐらいの女の子と契りを結ぶ……すごい犯罪臭がする。

 

 

「……暁」

 

 

「にゃっ、にゃに!?」

 

 

「お前は……俺の事をどう思ってる?」

 

 

「えっ?……あ、温かくて頼れる人かしら」

 

 

「異性として見ているのか?」

 

 

「……分かんない」

 

 

「分からない?」

 

 

 意外な答えに驚く。

 

 

「その……ね、勇兄は私にとって大好きなお兄ちゃんみたいな人だって再会するまでずっと思っていたの」

 

 

「……」

 

 

「でも、一年振りに勇兄と会った時にこうも思ってしまったの……もう離れたくない、私をもっと見て欲しい、この人の特別になりたいって。これって妹が兄に抱く思いではないわよね……」

 

 

「……」

 

 

「頭の中は今もぐちゃぐちゃよ……兄なのかそうでないのか結論がずっと出ない」

 

 

「今も出そうにないのか?」

 

 

 しばらく沈黙が流れ、やがて暁が小さく呟いた。

 

 

「そっち……行ってもいいかしら」

 

 

「えっ?あ、ああ、いいぞ」

 

 

 こちらへ近寄って来た暁は無言で椅子に座る俺の膝辺りに視線を向けている。

 

 

(……なんだ?)

 

 

「椅子、引いてくれる?」

 

 

 椅子を机から離すと、暁がそのままこちらに背を向ける形でストンと俺の膝の上に乗ってきた。もぞもぞと動き、俺の胸にもたれかかる。

 

 

「どうした?」

 

 

「こうすれば分かるかなって。……落ち着くわ」

 

 

 子供特有の体の柔らかさを感じると同時に判子をずっと押していたからだろう、朱肉の匂いと一緒にふわりと甘い女の子の匂いが漂ってくる。

 

 

「不思議だな、今の状態でお前にこんな事されたら冷静でいられなくなると思っていたが……何故か俺も落ち着いているよ」

 

 

「……ついでに抱き締めて欲しいわ」

 

 

「こういう時のお前は本当に甘えん坊だな……」

 

 

 そっと暁の体を抱き締める。子供というのは何故こんなにも体温が高いのだろうか。

 

 

「あったかいな」

 

 

「……私も」

 

 

 不思議と安心感を感じる。

 

 

「……優しくしてくれてありがとう」

 

 

「ん?」

 

 

「ずっと言えてなかったから……今までの事、感謝してるわ」

 

 

「俺が好きでやってるだけだ」

 

 

「この世界に甦った時、実はちょっと期待してたの……人と触れ合う事も今の私なら出来るんじゃないかってね。でも、妖精さんに聞かされたのは私は量産された艦娘という兵器の1人だという事実。それを聞いてね、ああやっぱり私は姿が変わっても兵器のままなんだって寂しく思ってた」

 

 

「……」

 

 

「士官学校で戦艦も空母も重巡も無視して私に声をかけてくれた時は本当に嬉しかったわ。私を選んでくれたあなたの力になれればそれで良いって思った。それ以上は望んでなかったのに……私を人間として……妹みたいに接してくれてもっと嬉しくなった」

 

 

「……」

 

 

「あなたの側はとても居心地がいいわ。自分が兵器である事実を忘れてしまうほどね……」

 

 

「……兵器はさ、笑うか?」

 

 

「……?」

 

 

「勝利すると笑顔で喜んで、負けると泣いて悲しんで、努力を重ねて上官のために頑張って……日々成長するお前たちははたして兵器だろうか?」

 

 

「……」

 

 

「戦場に出るのは怖いだろう?」

 

 

「え?」

 

 

「被弾する度に痛い思いをしてるだろう?」

 

 

「……うん」

 

 

「心があるだろう?」

 

 

「……うん」

 

 

「そんなお前たちは人間以外の何だというんだ」

 

 

 生まれ方なんて関係ない。

 

 

「……あなたに会えて本当によかったわ」

 

 

 ぎゅっと暁が俺の腕を抱く。

 

 

「はは、そう言ってもらえると嬉しいよ」

 

 

「……だいぶ気持ちの整理が出来てきたわ」

 

 

「……」

 

 

「指輪……着けてくれる?」

 

 

(男は度胸……だな)

 

 

 暁を膝の上に乗せたまま机の一番上の引き出しを開け、小箱を取り出して開く。

 

 

「カッコカリとはいえやっぱり緊張するなこれ。全然慣れないぞ」

 

 

「慣れるどころか私は初めてなんだけど」

 

 

「すまん」

 

 

 暁の左手に右手に持った指輪を通そうとするが……

 

 

「おい、何故手を隠す」

 

 

「ど、どこの指に着けるか悩んでて……」

 

 

「気持ちの整理が出来たんじゃなかったのか?」

 

 

「そ、そうだけど」

 

 

「どこがいい?」

 

 

「……薬指でお願い」

 

 

 ゆっくりと指輪を暁の左手に着ける。残念ながら彼女は背をこちらに向けているので顔がよく見えない……一体どんな顔をしているのだろう。

 

 

 

 

 

 

 うう……ニヤケ顔が直らない。こんな顔見せられないわ。

 

 

(背中を向けた状態で助かったわ……)

 

 

 銀のリングを薬指に着けた瞬間、体が若干軽くなったような気がした。強化は無事に成功したらしい。

 

 

「……」

 

 

 彼との確かな絆を結ぶ事が出来てとても嬉しい。一番じゃなくても大切にしてもらえればそれで……

 

 

「暁……?」

 

 

 心配そうな彼の声。……指輪をもらったのだ、こういう時は何か言うべきなのだけれども良い言葉が全然思いつかない。

 

 

(……あ、別に言葉じゃなくてもいいじゃない)

 

 

 上体を彼の方へと向けると今にも触れそうな距離に彼の顔があった。戸惑っている様子の彼を無視してそのまま顔を近付けた。

 

 

「……」

 

 

「……!」

 

 

 彼の頬に優しくキス。あ、彼の顔が真っ赤になった。

 

 

「……口は恥ずかしいからこれで」

 

 

 我慢出来なくて顔をそらす。心臓が早鐘を打ち、胸がキュッと苦しくなる……けれどもそれを心地良くも感じる。……ちょっと心臓の音がうるさいけれど。

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

(……この後どうしたらいいの?)

 

 

 再び顔を合わせられなくなり沈黙……また最初に戻ってしまった。

 

 

(だ、誰か執務室に来てくれないかしら。この空気をなんとかして欲しい……ん?)

 

 

 ドタドタドタ!

 

 

 誰かが廊下を走っているようだ。

 

 

(……執務室の前で止まった。って!早く下りないと!!)

 

 

「2人ともーー!!指輪は渡し終わったかな?」バンッ

 

 

「お、おう!川内か……ちゃんと渡したぞ」

 

 

「え、ええ!受け取ったわ」

 

 

「ほうほう……2人とも顔が真っ赤だねえ」ニヤニヤ

 

 

「も、もう終わった事よ!……と、とにかく!ケッコンしたんだから勇兄はこれから私の事をもっとレディーとして扱ってよね!」

 

 

「ぜ、善処する……お、俺、今日の夕食当番だからもう行くぞっ!」

 

 

 誤魔化すように部屋を出て行く勇兄を見て川内さんが笑う。

 

 

「……もしかして邪魔しちゃった?」

 

 

「いいえ、助かったわ川内さん……」

 

 

「ふーん、ま、おめでとさん!」

 

 

「……うん」

 

 

「……口にしちゃえば良かったのに」ボソッ

 

 

「!?」ボンッ

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

「それでは、ちゃんと暁に指輪を渡せたのデスネ」

 

 

「そうなんだが……なんというか犯罪臭がすごくないか?」

 

 

「恋に年齢は関係ありマセンヨ」

 

 

「そういうものか……あ、胡椒を取ってくれ」

 

 

「ハイ」

 

 

「サンキュ。しかし、お前は気にしてないのか?暁とのケッコンもあっさり許してくれたが」

 

 

「暁とケッコンしたらもうワタシは要りマセンか?」

 

 

「そんなわけないだろ」

 

 

「フフ、別にワタシが捨てられるわけではないデスし、ワタシはテートクの一番を譲る気はありマセン。いくらでも受けて立ちマス」

 

 

「……ホント器の大きい女だよお前は」

 

 

「そうデスか?」

 

 

「おう、俺は暁と今日の夕食を食うからよろしく」

 

 

「Hmm……今度ワタシとも2人っきりのディナーをお願いシマス」

 

 

「……考えとくよ」

 

 

 

 

 

 

「お帰り……ってなんで料理持ってるの?」

 

 

「せっかくだからここで一緒に食わないか?お前そういうの好きそうだし」

 

 

「2人だけでディナーって事?」

 

 

「ああ、来客用の机と椅子を出してくれ、奥に置いてあるから」

 

 

 奥に消えた暁が机を持って戻って来る。俺は彼女が用意した机の上へ手に持ったトレーから料理を移していく。

 

 

「一応だが酒も用意したぞ」

 

 

「珍しいわね、勇兄がそんな物を用意するなんて」

 

 

「今日はお祝いだろレディ」

 

 

「そうね、お酒はレディーのたちにゃみよね!」

 

 

「……」

 

 

「たしなみよね!!」

 

 

「やっぱり止めとくかなあ……」

 

 

「なんでよ!?」

 

 

「……まあ座れ、注いでやるから」

 

 

 持参していたワイングラスに用意していた酒を注ぐ。

 

 

「それってワインよね、今じゃそういうのって希少なんじゃない?」

 

 

「まあな、元帥からの貰い物だよ。俺はワインなんて詳しくないんだがな」

 

 

 グラスに注がれた赤い液体からチェリーのような魅惑的な香りが漂ってくる。

 

 

「いい香り……」

 

 

「名前はピノ・ノワールか、すごくいい香りがしているが香りを楽しむワインなのかこれ?」

 

 

「早く乾杯しましょ?」

 

 

 暁とお互いにそれぞれのグラスを取る。

 

 

「それじゃ」

 

 

「暁とのケッコンカッコカリを祝して」

 

 

「「乾杯」」

 

 

 チンッ!っと心地よい音を鳴らし、ワインを一口。

 

 

(ほう……)

 

 

「……酸味が効いてて美味しいな、ワインをもっと勉強してみるかな」

 

 

「んくっ!これで大人の階段をまた一つ登ったわ!いけるわねこれ!」

 

 

 キラキラとした顔の暁もどうやらワインがお気に召したようだ。

 

 

「酔ったら介抱してやるよ」

 

 

「こ、これくらいで酔わないわ……多分」

 

 

「どうかな。さて、料理をいただくか」

 

 

「ええ…………ん?」

 

 

 気合いを入れて作ったから絶対美味しいはずだ。暁も満足してくれるだろう。

 

 

「……」

 

 

 と、ここで俺は暁に手を動かそうする様子が全く見られない事に気付く。彼女の視線は料理のある一点に向けられていた。

 

 

「……どうした、食べないのか?」

 

 

「ねえ勇兄、一つ聞いてもいいかしら?」

 

 

「なんだ?」

 

 

「どうして暁のピラフに旗が立ってるの?」

 

 

 そう言って暁は膨れっ面で俺を睨むのだった。

 

 

 

 

 

 




そりゃお子様ラ……

とりあえず暁の回でした。

暁可愛いなホント、私にはこれが限界だ……
今すぐ激苦ブラックコーヒーが飲みたいです。


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