というか逆に増えてました
楽しんでくれたら嬉しいです!
山々の間から朝日が昇ってきた。
朝日が3人を照らす。その後ろからボロボロの布切れを纏い、顔中ススだらけの集団が光を鬱陶しそうに見つめている。
「行くか……」
「はい……行きましょう、かの地へと勇気の旅へ……」
「ねぇ、やっぱりやめない? ほら、今日は仏滅だし、なんとなく気乗りしないじゃない? 全力で土下座して謝れば村の人達も許してくれるわよ! ほら帰りましょう! ……いぎだぐないのぉぉ! 鬼ヶ島なんていぎだぐないのよぉぉぉぉ!お願いよぉぉガズマざまぁぁ! 考え直してよぉぉぉぉ!」
暁光の中で3人のうちの1人が喚き散らして男に泣きついている。
その姿を後ろから見たらさぞかしイラついてしまうのだろう。実際に村人の立場になって考えて欲しい。
村を焼かれ、全てを失った状態で、事件の張本人は責任を取りたくないと喚き散らす。
常人ならもう、ぶちぎれる3秒前ぐらいでもおかしくはない。
ただ唯一、3人組が幸運だったのは村人達がとても寛容で器の広い人達ばかりであったことだろう。
「うるせぇ! 今更そんなこと言ったって遅ぇよ! そもそもあの時桃なんて持ってこなかったらこんなことにはなってなかっただろ!」
「ああああ! ガズマが言っちゃいけないこと言ったぁぁ! ガズマが、ガズマがぁぁ!」
「もう! 2人ともやめてください! 名義上一応、親なのですよ! あなた達は」
「というか、元といえばお前が裸を恥ずかしがって村一個吹き飛ばしたせいだろがぁぁぁ! このマセロリ!」
「そうよ! あなたが全裸で桃から出てこなければ何事もなく済んだのよ!」
「なんで私がこんな事言われなきゃいけないんですかぁ! 私もこんな親嫌ですよ!」
「「「早く行け!」」」
なぜこんなことになったのか。それは大体、20時間前に遡る……。
「で、でもさぁ、鬼ヶ島なんて無謀過ぎないか? 俺たちは行きて帰ってこられないかもしれないだろ」
「ああ、その通りだな」
「ま、まさかとは思うんだけど、俺たちに、死ね、と」
「…………ああ」
瞬間的に、3人の表情どころか空気まで固まってしまう。申し訳無さそうに俯きながら相槌をうつしげぞうを一点に見つめる。その視線は様々な感情が練りこんであるようにゆらゆらとゆれていた。
「いやよぉぉ! 丸腰で鬼に殺されにいけっていうの!? この鬼畜! 本当の鬼はあなたの心の中にいるんだわ!」
「そんなこと言っても仕方ないだろぉ! お前らが! どれだけ! 俺たちに迷惑をかけてきたと思ってんだ!」
「うっ……た、確かにそうだけど! さすがに死ねだなんて……人の所業じゃないわよ!」
「どの口がそんなこと言うんだ! お前こそ人じゃないぞ!? 寺や神社に向かって石を投げつけたり、賽銭を盗んだり、柱を壊したり、何か怨みでもあるのか!」
醜い怒鳴り合いが繰り広げられる中、1人ため息をつくお爺さん。何かを思案するように顎に手を置く。
「あの……そろそろ、何か着るものが欲しいんですけど……」
「 ……………………」
「いや、聞いてますか……?」
「………………………………………………」
「爆裂しますよ」
「ヤメロォォォ! 悪かった! わざとじゃないんだ! ちょっと考え事をな……」
「どうかしたんですか? あ、ありがとうございます」
空気を読んだのか、村の女性が大きめの布切れを差し出す。礼と会釈をし、それを受け取るロリ。
そして何かを思いついたのか、口をぽっかりと開け、目を見開いて空中を見つめるお爺さん。
「これだ! これならいける!」
「何ですか、何か思いついたんですか?」
「ちょっとカズマァ! こいつに言ってやんなさいよ! 私は家事全般をこなし、夫にも優しく、まるで女神のようだって!」
「だまれ。それより2人とも耳をかせ!」
「何よ」
「何ですか」
「ゴニョゴニョゴニョ」
3人は顔を近づけ、お爺さんの話に耳を傾けた。
話を聞き終わり、
「どうだ……? これならいけるだろ?」
「はぁ……。まぁ、出来ないこともないと思いますけど……」
「いい思いつきねカズマ! それに成功すれば一攫千金、大金持ちになれるなんて……!」
「その通り、まぁ成功すればの話だけど……こっちには村一つ吹き飛ばすことが出来る兵器がいるんだぜ? 成功は確実だろ!」
「人を兵器呼ばわりしないで下さい!」
どうやらお爺さん達の話はまとまったようです。
「なぁ、1つだけ提案いいか?」
「なんだよカズマ?」
「ああ、鬼退治の件なんだが……俺たちには必ず成功させる自信がある。成功すれば、鬼から取り戻した宝でこの村を再建できる。これでみんな万々歳ってわけだ」
「は? お前らがどうやって鬼なんか倒すんだよ……って、そうか……! その手があったか……」
「気づいたか。そう、この村を吹き飛ばした張本人に島ごと吹き飛ばしてもらおうって事だ。しかしだな、ここで1つ問題が生じるんだ」
「なんだ? できる事なら手助けしてやらんでもないぞ」
「本当か!? 頼みたいことがあるんだが、今更聞かないってのは無しだぜ?」
「無理難題は流石に出来ないが、ボロボロの村でも出来る事なら手伝うぞ」
「そうかそうか、まぁつまり言いたいことはだな。この状態で、俺たちが鬼に立ち向かうわけなんだが、 そこで俺たちがやられたら元も子もないだろ?」
村人代表のしげぞうがうなづく。
その反応を見て、お爺さんは勝負をかけるように大きめの声で訴えかけた。
「俺たちの武器や防具を作って欲しいんだ!」
土下座しながら手を合わせて頼み込むお爺さん。それを見て
「武器や防具か……そうだな……お〜い! そっちになんかあったかぁ〜!」
しげぞうは焼け跡から出てきた人物に声をかける。どうやら彼は使えそうなものを探していたみたいだ。彼は何かを抱えながら足早に近づいてくる。
「一応、刀とか鍋とかはあったぞ」
「そうか、探してくれてありがとうな」
焦げたあとのある鍋と刀を何個か受け取る。破損などが無いか、隅々までしげぞうは確認する。
「まぁ、このぶんなら刀はそのままで、鍋とか釜は洗えば使えるな。刀はお前らが持ってけ」
「ああ、ありがとう」
お爺さんは刀を一本受け取った。鞘はところどころ傷や煤がついてるものの、刀身は十分使える様だ。
「よし……! おぉ〜い! 女達は今から残ってるもんで仕出し、男は瓦礫の片付けに他の使えそうな物探してくれ!」
しげぞうの大きな声に若干気怠げな表情をした村人達だが、その内に皆動き始めた。
「お前らも手伝えな?」
「あ……はい……」
「仕方ないわね、この高貴なアクア様が手伝ってあげるわ!」
「お前は自分を何様だと思ってるんだ……」
そんな訳で彼等の作業は日をまたぎ、朝焼けが彼等の寝不足気味な顔を照らす。
女達はどうにか残っていた材料で、きびだんごを作り、男達は使えそうな資材で器用にも鎧まがいの物を作った。
そして今に至る訳で————
「グスンッ……グスッ……だって、こんなの私達だって、死ぬかもしれないじゃないぃ!」
「そんなこと言っても仕方ないではありませんか! ……それにここまで村の人々にさせておいて、今更行かないとなると……」
「そうだぞ、アクア。まだ爆裂ロリの方が大人じゃねえか! 覚悟を決めろよ! ……それにだな、成功すれば……金銀財宝が手に入るぞぉ……」
「ロリちゃうわい!」
「金銀財宝……! さあ、行きましょう。神は私達の味方よ!」
「お前は本当にがめついな」
「なんですってぇ! いいわよ、いいわよ! 私の手に入れたお宝は分けてあげないんだからっ!」
「言わせておけばぁ! だいたいお前はぁ!」
「何よぉ! カズマだって同じでしょお!」
「やれやれです……」
2人の喧騒にロリは呆れながら、道を進んでいく。この先に何が待ち受けてるかも分からないまま……。