この小説もラストに近づいて行きます。(早すぎるけどw)
「考えられるのは一つだけしかないじゃない!」
エルフはびしっと俺に人差し指を向けて、
「あんたの妹が千寿ムラマサってことよ!」
ありえない考えを口にした。
「花ー、話があるんだけど」
開かずの間のドアを軽くノックしてから話しかける。
…………返事はない。
まあ、こうなるだろうとは思っていた。だから秘策は練ってある。
「……花、これ知ってるか?」
ドアの隙間から紙を通す。秘策って言うには大げさすぎな気もするけど。
言わずもがな、この紙は例の「幻想妖刀伝5周年大規模プロジェクト」の企画書ってわけ。
そう、もちろん堂々と「関係者配布用」って書かれた、関係者しか持ってるはずのない企画書だ。
「花の部屋から出てきたんだけど…」
そうしてまた少し時間が経ったかと思うと──
ガチャ。
──ゆっくりとドアが開き、頬を紅潮させた妹が顔を出した。
血の繋がらない俺の妹、花。
「そうだ。私が千寿ムラマサだ」
そんな彼女の正体は、俺の宿敵、千寿ムラマサだった。
今俺は、妹の部屋にいる。
妹は妹で「話がある」らしい。
「べ、別に隠していたわけじゃない。言う機会がなかっただけ……」
最初に口を開いたのは妹のほうだった。
「あ、ああ、まあ驚いたけど。それでさ、実は俺も……」
「話があるって言ったでしょ! それは後にして」
「は、はい!」
兄貴もくそもない会話である。
初めて妹の部屋に入って緊張しっぱなしなのに、あんな剣幕で怒られたら萎縮しちゃうのも仕方ない、か。
「それで、話ってのはそのことなんだけど」
妹はドアの近くの紙に目を向ける。
どうやら「幻想妖刀伝5周年大規模プロジェクト」のことで、話があるらしい。
「そこに書いてある企画……人気ラノベ作家との合作小説ってあるけど、一緒に小説を書いてほしい」
ん?
俺はそのセリフに違和感を覚える。
「妹からの、いや、ライバルとしてのお願いだ」
ぴんと伸ばした背中を曲げて頭を下げてくる。
「和泉マサムネ先生、一緒に小説を書いてください」
大人気ラノベ作家、千寿ムラマサの誠実な一声だった。
「千寿ムラマサ先生、一緒に小説を書きましょう。こちらこそ、よろしくお願いします」
合作小説。
新鮮な響きの、そして俺の創作意欲をくすぐる言葉だった。
宿敵としてではなく、同じような作風をもつ同業者として一緒に小説を書きたい。
心からそう思った。でも。
これで妹と、少しでも仲良くなって、家族に近づけたらいいな。
そんな気持ちもあったのかもしれない。
「ところで何で俺の正体を知ってるんだ?」
「!!」
妹の顔は一瞬にしてバレてはいけないことがバレたような顔になる。
実際その通りだったのだが。
「まさか、俺の部屋に置いてた小説に読んだ形跡があったのって……」
反応から察するに、妹は俺がいない隙をみはからって、俺の部屋に忍び込んでは小説を読んでいたらしい。
そりゃあ当然、正体を知ってるわけだ。
「だってっ、兄さんの小説が世界で一番面白いから仕方ないのーっ!!」
俺の妹──和泉花は、開き直って大声でそう叫んだのだった。
続きが気になりますね。