俺と先輩の同居生活   作:ムラマサ 同盟

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ムラマサの感情を意識して書いてみました。


和泉花の好きな人

その夜、俺は夕飯の準備を始めた。

妹と二人暮らしを始めて、妹が食事を作ってくれることになっている。そのはずだが、昼間の一件のせいで俺が作ることとなった。あの話には続きがあった…

 

********************

 

「もう!兄さんなんて知らない!」

「いや、ちょ…」

「もう出てって!今日は夕飯作ってあげない!兄さんが私の分まで作って!」

「まだ話が…」

「出てけーーーー!!」

俺は何も言えなかった。話したかったことがあったが妹に止められてしまった。

そして妹に身体を押されて部屋を出た。

「…ま、いっか。夕飯は作ってやるから、出来たら下に降りてこいよー」

「…」

返事はなかった。

俺は流されるままに階段を降りた。

 

********************

 

そんな事を思い返しつつ夕飯が完成した。

リビングの食卓に俺と妹の分を用意して並べ、あとは妹を呼ぶだけだ。

「花ー、夕飯出来たぞー」

…返事がない。

やはり昼間の一件があったからか、恥ずかしくて顔を合わせづらいのだろうか。あれは俺が悪いのか?と思うが、妹のことだ、仕方ない。

「俺が悪かったよー、早く食べないと冷めちまうよー」

今日の夕飯は妹の大好きなオムライスだ。

別に妹の機嫌を直そうとして作ったのではない。簡単に作れて時間も短く済むからだ。

うまく出来たかは知らない。

とにかく冷めてしまったらもったいないので、早く下に降りてきてほしい。

(ドンッ!)

天井から物音がした。

「なんだ?」

「部屋まで持ってきてェ!」

「は、はぁ…」

俺は実際何もしてないと思うが、妹には何かしら迷惑な行為をしたのかもしれない。妹のことだ、仕方ない。

出来立てのオムライスを妹の分だけ持って、開かずの扉の前まで行くことにした。

(こんこん)

「花ー、持って来たぞー」

「そこに置いといて!」

ここまで来てもやはり出てこないのか。どうしよう…このままだとこんな生活が続いてしまう。俺は勇気を出して、

「花!いや、千寿ムラマサ先生!」

「!?」

「さっきは急なことでビックリしただけなんだ!まさか妹が、俺の憧れのムラマサ先輩だったなんて知らなかったんだ!」

「なっ///」

「妹の正体が分かったからって、花に迷惑をかけることはない! 花が憧れの作家だとしても、血は繋がっていない関係だとしても、花は俺の妹だ!俺は花と家族になりたいんだ!これからも妹として大切にしていくつもりだ!だから聞いてくれ!」

「…」

「合作小説のイラストをエロマンガ先生に任せたいんだ!」

「え…」

「今、お前がアイツと喧嘩しているのは分かっている!でもどうか!アイツと一緒に最高に面白い作品を作らないか?」

「なんでそうなるの…」

(ガチャ)

扉が静かに開き始めた…

「兄さんはなんでそんな勝手なことを言うの!なんで私の気持ちを分かってくれないの!なんでそこまでしてエロマンガ先生に関わるの!」

扉が全て開き、妹と目が合った。以前味わった場面とはまた違う、少し怒りを感じるような…妹の目にはうっすらと涙が流れていた。

「せっかく兄さんと最高に面白い作品を作れると思ったのに…なんでそこにまたアイツが出てくるの!」

どうして妹は俺に反発してきてるのか分からなかった。そして妹が扉を開けた理由も分からない。

「アイツに聞いたよ…最近裏でも仲が良いらしいじゃないか!」

「そ、それは違うんだ!誤解だ!」

「うるさいうるさいうるさーい!」

「えぇ…」

いくらなんでもそれは酷すぎやしないか…

「代わりは私の担当絵師にでも頼んでおく!」

「ちょっと待ってよ…」

「とにかくそれでいいの!!」

…俺は何も言い返せなかった。

「…」

「…」

お互い無言の時間が続いた。いつもは気にしないことだが、今日は特別に長く感じた。

いつもは兄の言う事をきちんと聞いてくれる優しい妹で、多少の喧嘩でも話し合えばすぐに仲直りをするはずなのに、今回ばかりは上手くいかない…

なにか特別な理由でもあるのか?

そこで一つ気になったことを話した。

「なんでエロマンガ先生にそこまで対抗するんだ?」

「そ、それは…」

「妹のお前なら俺に仲良しの絵師が居たって気にすることないだろ」

「…」

正論を言ったはずだ。決して誤ったことを話してはいない。俺はそう思っている。

と、そこで俺はある一つの結論にたどり着いた。

「もしかして、お前エロマンガ先生に嫉妬しているのか?」

「!」

「兄がエロマンガ先生に取られたように思えて嫉妬しているのか??」

「!!」

妹は顔を赤くして下を向いていた。

「お、お前…」

「ち、ちがう!私が兄さんと近づきたいとか、そういうのではない!」

妹は赤いトマトのように顔をさらに赤くしていた。

「もう!違うと言っているだろ!決して兄さんのことが好きとかそういうのじゃないか、ら…」

自分では気づかなかったが、俺も顔を赤くしていた。それを見た妹は急に会話を途切らせて、

「に、兄さんの変態!今絶対変なこと考えた!」

「ち、違うって!痛ッ!」

俺は新品の10冊入りノートで叩かれていた。

「もう!今言ったことは忘れて!」

「ちょ、やめろ花!」

妹はやめなかった。

「いい?合作小説を執筆している間は絶対にアイツとは関わらないこと!」

「そ、そんな…」

「じゃないと兄さんとたくさん話せなぃ…(小声)」

「え、今なんて言ったの…」

「今日はもういい!出ていけー!」

「ちょ、ま…」

(バタン!)

俺はそのまま妹に部屋から追い出された。

まだ話を続けようとしたが、やめた。

今日は何を言っても無理だろう。

「あ、オムライス…」

肝心な妹の夕飯を渡し忘れてしまった。

「はぁ…ここに置いとくぞー」

妹の分を扉の前に起き、俺は階段を降りて、リビングで俺の分を食べることにした。

結局その日はもう何も無かった。

正直開かずの扉の前で起こった出来事は、はっきりとは覚えていない。俺も何を話していたのかも曖昧だ。ただ一つ、確実に分かったことがある。

俺の妹──和泉花は、エロマンガ先生を嫌っている。

(合作小説どうなることやら…)

そんなことを考えつつ、その日は眠りにつくことにした。




この話は次の章へと繋がります。
お楽しみに。

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