第一特異点へのレイシフト前のブリーフィングで、ロマニはオルガマリーと名乗った存在のわかったことを立香やマシュなどに話した。
一つ、彼女は恐らく人間ではなくサーヴァントと似た存在であること。
二つ、彼女自身かなり記憶が曖昧なこと。
三つ、彼女はカルデアに協力する意志があること。
ロマニはアルトリア監視の下、オルガマリーとの会話を試みた。
ロマニが何かを聞くと、『わからない』『知らない』『覚えていない』の三つが殆どの有様。
会話はするが何も話したくない、そう受け取っても仕方がない話。
実際アルトリアは『そうか、よし死ね』と猛り、必死のクー・フーリンに止められていた。
「ドクター、サーヴァントと似た存在、と言うのはどういう事でしょうか?」
押し問答しているサーヴァント二体をよそに、マシュが質問を投げかける。
「ああ、それはね、カルデアが想定しているサーヴァントと違うからだよ」
本来呼び出されたサーヴァントは自身での魔力生成を行えないため、魔力供給が無ければ魔力切れで消滅する。
それを前提として通常の聖杯戦争で呼び出されるサーヴァントは、マスターからの魔力供給で存在を維持する。
ここカルデアではマスターからの供給ではなく、特殊な方法を用いて魔力をサーヴァントへと振り分けている。
アルトリアたちはその魔力を持って実体化しているのだが、彼女にはカルデアから魔力を
確かにフェイトを介してカルデアに呼び出されたが、システムが彼女をサーヴァントとは
「彼女は他の力を使わず自力で実体を維持しているんだ、呼び出されたその瞬間は霊体であったことは確認できているけど、どうやって実体化しているのか判別できなかった」
彼女の状態は現在不明であり、魔力を使って実体化しているのか、あるいは他のエネルギーを使っているのか。
少なくともカルデアのシステムが観測できない何らかの力を使っていると思われる。
「未知の力、ですか」
「恐らくね、従来のそれとはまた別の法則の可能性が高い。 もしかしたら過去に存在した、或いは未来のものなのかもしれない」
遥か過去の神代から現在に至るまで、伝わらなかったものが多くあり、西暦に移行して新たに見つかったものも多くある。
単純に知識などの形で伝わらなかったものから、法則の違いから伝えられなかったものもあっただろう。
彼女が実体化している術は伝わらなかったもので構成されている可能性もある。
さらには現在のカルデアは時間軸から外れているため、未来の法則である可能性も否定できない。
なんにしても彼女の実体化はどうやってしているのかわからないと言うことがわかった。
「……もう行っていると思われますが、どうして実体化出来ているのか直接聞いてみては?」
「……その事なんだけど、恐らく彼女が認識出来ていることはかなり少ないと思う」
二つ目のこと、彼女の記憶について。
「色々聞いてみたんだけど、全部が曖昧なことしか返ってこなかったんだ」
『わからない』、『知らない』、『覚えていない』。
不信を呼ぶ言葉ばかり、どこから来たのか、どうしてそんな風になったのか、それらの質問に明確な返事を返さない。
「その……、彼女自身が不明瞭な感じを受けるんだ。 例えば彼女の名前はオルガマリーなんだけど、ラストネームであるアニムスフィアでは反応しないんだ」
「反応しない、ですか?」
「うん、オルガマリーやマリーと呼べば反応してくれるんだけど、彼女の一部であるはずのアニムスフィアや彼女のことを示す所長と呼んでも自分の事だと認識していないようなんだ」
名前やその愛称を呼べば反応する、だがその他の彼女を示す名称には反応しない。
その他会話をしながら、ロマニは彼女の反応を見ていた。
医療部門のトップであるロマニは肉体の治療は当然ながら、メンタルのケア方法も学んでいる。
それに照らし合わせて観察した結果、PTSD、心的外傷後ストレス障害の可能性が見えてきた。
時間があれば詳しく調べるしメンタルケアもするが、残念ながら今のカルデアに悠長にしていられる時間はない。
とりあえず確かめてみるといい、そうロマニは彼女のことを呼んでみることを勧めた。
それに従いマシュは所長と、立香はアニムスフィアと彼女を見て呼んでみるが無反応。
続いてオルガマリー、マリー所長と呼べば二人に視線を向け。
「なにかしら」
一度立香とマシュは顔を見合わせて彼女を見た。
「貴女は本当にオルガマリー所長なのですか?」
「『しょちょう』と言うのはわからないけど、私はオルガマリーよ」
オルガマリーかと聞けばそうだと返ってくるが、オルガマリー本人かどうかの質問をすれば不明瞭な答えが返ってくる。
さらにはオルガマリーであることを主張しているが、アニムスフィアであることは主張しない。
それどころかアニムスフィアという言葉がどういった意味を持つか理解していないようにも見える。
それそのものが欠けているような、知ってて当然の知識や常識をまるまる無くしているような素振りだ。
そんな問題だらけと言うか、問題しかない彼女ではあるが、とくに敵対的ではないのもまた問題だった。
それどころか協力する意志すら見せている、しかもその理由はただ『呼ばれた』から。
人理修復とか人類絶滅とか外の世界は滅びていると言っても『……そう』で終わらせ、とくに感慨を見せない。
これがレフ・ライノールのように明確な敵意の一つでも見せてくれれば即座に排除を選ぶのだが、とロマニはため息を吐く。
「……本当に勧められたことじゃないけど」
フェイトの機能を信じ、戦力として彼女を運用する。
当然彼女を信用する材料は揃っていない、実際賭けのようなものだ。
正直言ってここでは決められない、だから第一特異点に送るのだ。
「……立香君、マシュ、くれぐれも気をつけて欲しい」
そうして多くの問題を抱えながら、人類最後のマスターとそのサーヴァントたちは時を遡って降り立つ。
西暦1431年、フランスのオルレアン。
その地にて、グランドオーダーの実証が始まった。
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