頑張ろう…と言ったものの、雨宮くんのことが頭から離れず授業も上の空。単位は取れるのだろうか…。そういえばさっきの着信、確認していなかった。電源をいれてみると、雨宮くんからだった。
「ライン、追加しておくね。よろしく!」
…どこから私のラインを入手したんだろう。謎に包まれている。
シャーペンを手に取り頬杖をつきながら少し眠そうな顔で、頭に入らないような講義を受ける。大事なことはメモメモ…と。
「わろし というのは よくないという意味で」
“私の気持ちはわろし”とか、1人でくだらないことを考えていた。
でも雨宮くんはなぜ私を誘ってきたんだろう。
「雨宮くん、会いたいなんてどうしたの?」
既読がすぐつく。お前は暇人か…笑
「今、東京にいるんだけどな、本当にお前に会いたくなって。」
会いたいなんて臭いことをよくいうものだ。バスケ部キャプテンなら、彼女がいてもおかしくない…と思いつつ中学時代を思い返す。
…あの時、何があったけ
中学校は、というより高校まで、私はずっと田舎の校舎に通っていたものだから同級生の名前や顔を覚えていないわけではない。少しぼやぼやしていたりはするけど…そんな中、雨宮くんはなぜこんな田舎に転校してきた、と思うくらい不思議でたまらない転校生であった。私が彼と恋に落ちていたわけでも、犬猿の仲だったわけでもない。じゃあなぜ。いくら考えても会いたい答えが見当たらない。そしてなぜ私なんだろう。更衣室で恋バナをしていた女子が
「雨宮くんかっこいいよね!」
と、言っていたのを私は遠くから聞いていただけで、話に参戦していたわけでもない。
不思議な男だ…
あ、雨宮くん東京住みだっけ…一緒だねと返信せねば。
「東京住みなんだね。私もだよ。東京の…」
既読つくのが早い。
「お!なら話が早いな!明日、池袋の猫カフェにでも行こうぜ!お前、猫好きだろ。予約は俺がしとく!んじゃ、よろしくな!」
打つの早い。なんなんだこの人。んー……猫カフェか。なんで私が猫好きなのも知ってるんだろう。オレオレ詐欺とか疑ったけど、次はストーカーなのかと疑いそうになる。
「うん、わかった。」
それだけ打って話は終わり。
猫に会えるのか…ちょっと嬉しくなった。今までそのようなことをしたことがなく、猫と戯れるなんて野良猫か丸山さんが飼ってるタマか、くらいである。雨宮くんは空気に感じるかもしれないが、感謝はしているつもりだ。明日伝えよう。
こんなことを考えていると、授業もすぐ終わってしまった。あまり接したことのない雨宮くんの前で、猫好きがバレるというのは少々精神が削れそうだが…楽しみだ。