東方陰陽玉   作:咏夢

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 えーと……はい。話が進まなくてスミマセン。

 先に言っておくと、次回はフラン戦になるかと。


翔符「飛翔韋駄天」

 遂に、この時が来てしまったのか。

 それとも、自分がただ逃げ続けていただけなのか。

                     .

 咲夜は、グッと唇を噛み締めた。目の前の敵を直視出来ずにいる自分の弱さを、どうせなら笑ってほしい。そして叶うなら、いつものように――

 

「~っ……」

 

 また余計なことを考えた。ナイフを握り直して、咲夜はキッと相手を睨み付けた。彼女の周りには、幾つもの光弾が待ち構えている。迂闊には近づけない。

 いや、それでいい。自分の戦闘スタイルは、ナイフの投擲による遠距離攻撃だ。咲夜は懐中時計も構えた。

 

「いくわよ、美鈴。」

 

 でも、もし叶うならば、もう一度話がしたい。

 心の何処かでそう願う咲夜に呼応して、時が止まる。

 

―――――

 

「わあああぁぁああ!?」

「ああっ、もう!そこ入って右!!!」

 

 紅魔館一階の食堂。高貴な装飾の施されたインテリアが、次々と壊れていく中で、響き合う……正確には叫び合う声が二つ。そのうち一つは咏夢、一つは橙だ。

 息をつく間もなく押し寄せる弾幕に、咏夢は先程から意味もなく悲鳴を上げながら危なっかしく避けている。橙は、それを見るに耐えずに此方も先程から、喚き声で指示を出している。弾幕ごっこにおいての先輩である橙の指示が功を奏し、フランのスペカ"かごめかごめ"に、咏夢はまだ一弾も当たっていない。

 

 しかし、その中で橙はある事を痛感していた。

 一つは、今の状況の厳しさ。

 今のフランの弾幕は、スペルカード、通常弾、彼女の能力が入り乱れている。直接の能力の使用はまだ見られないが、戦況は圧倒的に彼方が有利だ。

 そしてもう一つは、彼女――咏夢の身体的能力。

 慣れない状況下で無駄に叫んではいるが、息が切れる様子もなく、一度教えたパターンは明らかに覚えている。体力面においては日頃の鍛練の成果だろうし、彼女はきっとスペルカードルールに向いている。

 

「橙、これ何時まで続くの~?」

「分かるワケ無いでしょそんなの!」

「だって、あまりに長いからさぁ。何かないの?」

「何かって……また適当な事を……」

 

 正直、スペルカードで相殺することも不可能ではないはずだ。が、その場合は咏夢を先に行かせる事になる。幻想郷に来て一日も経っていない彼女を、橙は自分の前には出したくなかった。自分達がどうしたら良いのか、それを教えてくれる者はいない。つまり、これは自分で考えるべきなのだ。主の命に沿えない事など、式としてあってはならない。橙は知らず知らずの内に追い込まれていた。

 

「ん~……よしっ、突っ込もう!」

「……咏夢、バカなの?」

「バカじゃないと、思いたいけど……」

「だって……!だって、そんなことしたらっ」

 

 貴女は死んでしまうかもしれない。

 橙は、衝動的に叫びたくなるのを堪えて、前を向いた。深呼吸をして、遠くを見据える。

 

「……あと10秒で、このスペルカードが切れる。」

「うん。」

「そこを私が抑えるから……」

「うん。」

「咏夢は……」

「うん。」

 

 自分に向けられた信頼も、秘められた決意も、全てが苦しく感じる。無理に笑って言ったのは、ほんの僅かな願いだけど。橙は、信じている。

 

「まだ、決着着いてないから……!」

「うん。帰ってきたら……!」

 

 また、弾幕ごっこをしよう。

 

 その時は、決して手加減なんてしてやるものかと、橙はニヤリと笑った。

 そして、読み通りパターン化した弾幕が途切れる。

 

「"飛翔韋駄天"!!!」

「やああああああっ!!!」

 

 少女たちの闘いは、今始まる。

 

 

 

 




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