東方陰陽玉   作:咏夢

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さて……ようやく、ですね。

伏線回収が何となく雑になっちゃってスミマセン。
あと、先に言っておきましょうこれ。

もう、こんなんチーターや!(嘘)


複製「レーヴァテイン」

(どうすれば……どうすればいい?!どうすれば……)

 

 皆を救える?この子を正気に戻せる?

 綺麗事ではない。本気で、咏夢はそればかり考えていた。姉の性格からはあまり考えられない事ではあるけれど。

 

「どうすれば……ッ!」

「キャハ♪楽シイ?ウン、楽シイ!モット~……コウシチャオッカナ!!!」

「うぁっ!?」

 

 二度目の被弾?いや、違う。咏夢は、自分の張った結界が壊されているのに気づいた。そう、壊されている。

 

「ついに、本気だっていうの……?」

「アハ、アハハハハ?アハハハハハハハハハハ!!!」

 

――――――

 

 レミリアは、非常に悩んでいた。

 

「何故フランが来ない……?!」

 

 フランの抑え付けている狂気が暴発して、最悪彼女が亡ぶ、なんてことは許されない。だから、美鈴を利用して部外者を排除した。パチェはあまり乗り気じゃない、けれどやるしかなかったのだ。そして今、自分が把握している現状は、非常に不可解な点が多い。

 

 一つ、咏夢が見当たらないこと。

 

(これは恐らく、スキマ妖怪と咲夜の所業。まぁ全てが終わった後、あのババアを磔刑にするわ。)

 

 一つ、咲夜と美鈴の様子が視えないこと。

 

(これも……まぁ、大丈夫かしらね。大方戦闘を続けているでしょうし。)

 

 一つ、パチェはどうした?

 

「うーー!!!これよ、これなのよ!」

 

 一体何やってんのよアイツはぁぁぁ!!!と、叫んだ所で変わらないのが現実の非情さ。レミリアは再び頭を抱えた。仕方ない、少し計画は違うが、自分から出るしか……そう思った時だった。

 

「動かないで。」

「……パチェ、何のつもり?」

「そうね。吸血鬼ハンターよりか上等なつもりだけれど」

「退いてちょうだい。私は、予定通りフランの相手を」

「それは、残念ながら無理ね。」

 

 少し妖力の高まったレミリアの言葉を受け入れる事なく、魔方陣片手に立ち塞がるのはパチュリー。単体で、しかもまだ魔力さえ発していない親友の姿に、何故か――一瞬ではあるが、圧倒されたレミリア。その隙に、青白い光が放たれる。

 

(水属性――!)

 

 赤いエナメルシューズが、同じ色のカーペットを強く蹴ったと同時に、そこには流水のレーザーが突き刺さった。それよりも冷たく響く声が、決意したパチュリーに浴びせられる。

 

「貴女のそれは、敵対と取っていいのよね?パチェ」

「……えぇ。構わないわ、レミィ……いえ、」

 

 レミリア・スカーレット。

 その名を呼ばれたレミリアは、肩を小さく震わせた。一つのため息、その刹那戦闘が始まった。

 両者が全力を出すことに迷いは無く、水属性を中心とした魔力と、この郷でトップ級の妖力がぶつかり合う。弱点を突いても尚、力の差は歴然としており、パチュリーの額には冷や汗が流れる。親友の槍を、咄嗟に張った結界で往なして避けるが、その間に肉薄されてしまう。

 目の前で煌めく鋭利な刃から目を逸らし、パチュリーはレミリアの瞳を見つめた。明らかに怒りの色が浮かぶ奥を覗きこむように、魔法使いはただその紅を見つめ続けた。当人は、その悲壮な色に心を揺らすが、今折れる訳にはいかない。せめて、気絶させることが出来れば……。

 

 ヒュンッ、と空気を切り裂く音が重なる。片や金属質の衝撃音と共にナイフを弾き飛ばし、片や"気"を放ち、レミリアを数㍍後ろへと退けた。

 

「……どうして、こう敵が増えるのかしらね?」

              . . .

「いえ、敵ではありませんよ。お嬢様」

「私は……私達は、従者として過ちを正すだけです。」

 

 その言葉に、初めて片頬で笑うレミリア。その真意が明かされる事はないが、今。

 

 十六夜咲夜、紅美鈴は、従者としての命に従った。

 

――――――

 

 

 壊れたように笑うシュガー。その叫びの内にふと、誰かの声がする。弱々しくすぐ押し潰されそうな、声。

 

『嫌、止めて……もう、嫌だよ……!助けて……!』

「誰……?そこにいるの!?」

『嫌、嫌だッ!う、ぁ……あああああああ!!!』

「ッ!?」

 

 咏夢は、勘に助けられ全力で後ろに跳んだ。その直後、目を見張る光景がそこにあった。

 

「助け、ハハ、お姉……アハ、ハ……さ、ま……!」

「えっ……シュガー……?!」

 

 どす黒いオーラ、それに何故か苦しむような表情のシュガー。いや、そもそも本当にシュガーなのか?という疑問が、泡のように浮かぶ咏夢。記憶が弾けて、一つのワードを思い出す。

 

「もしかして。貴女が……"フラン"、なの?」

「ああ、ぁ……助け、て……怖いよ、もう嫌だよ……!怖いよ、助けて…………お姉様……!」

「お姉様……あっ!」

 

 咏夢の脳裏には、あの銀髪の吸血鬼が思い浮かんでいた。かといって、彼女を連れてくればいいわけでも無かろうし、まず自分が行けば殺される事確定なのだから、一体どうすればいいのか。

 

「……黙ッテテヨ!今ハシュガーガ遊ンデルノヨ!」

「……!」

 

 叫びに、冷たく甘い声音が戻っている。苛立ちを隠す様子もなく、グッと握られた拳。しかし――

 

その瞳は、未だ濡れていた。

 

「何デ、何ナノヨ……!コンナノ、悲シクモ……ナイノニ……ドウシテ、ドウシテ……ッ!」

「……貴女の中に、フランがいるから。」

「――ッ」

「どうして……どうして、フランを使って暴れるの?!」

「違ウ……ッ!アノ子ハ……フランハ優シスギルノヨ!」

 

 シュガーと名乗った少女が語るのは、何もかもが暗い世界。生まれつき持った華々しいはずの能力は、彼女に抑えきれない程の破壊衝動を与えた。フランは、それを自身の狂気と見なして、制御しようとした。一人で地下に留まる事を選び、姉や若きメイドに迷惑をかけないようにと、孤独を選んだ。

 それでも、シュガーは幼かった。

 力を幾度となく暴走させ、自身の快楽をフランの欲求と共に満たしていった。それを知覚する度に、フランは傷つき涙を流した。それが、もう一人の自分のサダメであることを知って、なおかつ抗う事を選び、今も狂気に蝕まれ苦しんでいる事も、知ってはいるけれど。

 

「フランニハ、衝動ヲ消シ去ル術ハナイ……レミリアモ知ッテル事ヨ。フランヲ護ルタメニ、私ハ……!」

「それでも、もう良いんじゃない?」

「ナ……!」

 

 ふいに語りかけるような声。咏夢の蒼い瞳は、微かに濡れている。その光は、新たな力として目覚めたモノ。

 

「何でかな、分かるんだ。シュガーの壊したいって気持ちが、フランに伝わってるみたいに……フランの、皆を傷つけたくないって思いも、シュガーにはあるんじゃない?

私、さっき貴女の中にフランがいるって言ったけど、違うんだね。……きっと、手を繋いでるんだよ。思ってる事が全然反対でも、一緒にいるしかないから互いに傷ついてる。」

 

 ポツポツと語るその瞳が、シュガーの心情を映すかのようにさざ波を立てて……涙が零れた。

 

「本当に何でかな……貴女を見てると、悲しくなる。胸がキュッて締め付けられる感じなの。でも、フランが……シュガーが感じている痛みは、こんなものじゃ、無いはずだから……!」

 

 右手に握りしめられた白紙の札は、予備であるために陰陽師の力を持たない。しかしそれが今は、咏夢の想いに呼応するように、鮮やかな青の輝きに染まった。

 ただ全てを終わらせて、フラン/シュガーを助け出すために。それだけのために、この技を使う。使いこなしてみせる。咏夢には、不思議な自信があった。

 

 セピアの光景の中、ノイズ交じりに聞こえたスペル。

 

 

 

 

 

 

 

「複製"レーヴァテイン"」

 

 直後、蒼い焔が降り下ろされて、闘いに終わりを刻みつけた。

 

 

 

 

 

 




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