二章の幕開けとして、短いですが投稿させてください!
前兆「検索・異常気象」
そろそろ春の訪れ。桜の蕾膨らむ。
そんな記事が載るはずであろうこの時期。咏夢は一人炬燵に潜って、何度目かのため息をついた。
「……寒い。」
厚さのある毛布は、何とかこの冷気を遮断してくれているが、にしたって寒いものは寒いのだ。咏夢は寝間着のままかれこれ半日はこうしていた。本人達には、当然解らないことだが、姉妹はやはり似るものなのだろう。
「ううぅ……文さん来ないかなぁ……。また異変でも起きてるんじゃないかな……?」
「ホントですよねぇ。でも、生憎寒いのは此処だけですよ、咏夢。」
「うわあっ!?」
跳ね起きた咏夢は、またすぐに布団を肩まで引き上げながら、当人に顔を向けた。
「そうなんですか?」
「はい、ほらこれ。」
新聞の最新号の一面は、「人里の桜、ついに開花」。
咏夢は、信じられないという風にページを捲るが、どれも平和な記事ばかりだ。
「そんなことって……」
「あるのね。現惣村でしか起こらない異常気象……前例は?」
「……もう驚きませんよ、紫さんっ!チャン!」
「チェン!バカにしてるの?!」
咏夢は頬を膨らませながら、後ろに寝返りを打つ。橙はそれ以上にご立腹の様子だが、そちらはあまり気に止めずに、咏夢は考えた。
「前例、かぁ……。私の知る限りは、無いですけど……あんまり長くないから、昔の事は知らないし……あ!」
「どうしたんです?」
文が不思議そうに首を傾げると、咏夢はひょいと起き上がってにこりと笑った。
「そういうのに詳しい友達が居るんです!」
――――――
「いらっしゃい!貸本屋は今日も元気に営業中!って、咏夢じゃない!へぇ~久しぶり!……あ、扉閉めてね?」
「あはは、相変わらずだね~李瓜。」
捲し立てるように話す少女は、赤い花柄の着物の振り袖を縛り上げた、アクティブな印象だ。彼女の名前は、本居李瓜(もとおりりか)。この貸本屋の一人娘で、父は人間で、母方は何かの妖怪らしい。
現惣村に住む人妖の中で、咏夢の歳に近い、いわゆる幼馴染みだがとても博識だ。明るくマシンガントークな所もあるが、仕事の事になると真剣になる。
「それで?あんたが来たからには、何か探し物?」
「うん。李瓜、手伝ってくれる?」
「もちろん!何を探せばいいの?」
頼もしく、可愛らしく、首を傾げる李瓜に、咏夢は指を立てていくつか条件を言った。
「えーと、異常気象、現惣村、寒い……で、よろしく。」
「要するに、今みたいな事が前にもあったか、って事?」
「そう、それ!お願いします!」
「承りましたっ」
李瓜は店の本棚に向き直ると、ゆっくり目を閉じた。ぶつぶつと先程のワードを繰り返しながら、両手で探るようにして背表紙を撫でる。
しばらくして彼女が手に取ったのは、新聞のまとめてあるファイルだった。さらに、それをパラパラとめくると、およそ50年前の記事にたどり着いた。
「これじゃないかな?」
「有ったの?……あっ!」
見出しは、「突然の吹雪、被害はあるのか」、まさに今年のような現象が起こったという内容だった。咏夢は、李瓜の手を取るとぱあっと笑顔を浮かべた。
「ありがとう!すっごく助かった!あ、借りていってもいいかな?」
「もちろん、それが仕事だしね。役に立てて良かったよ、頑張って!」
李瓜の能力は、"検索する程度の能力"。その名の通り、自分が見たことのある書物や情報の中からワードを元に検索するという、貸本屋にピッタリの力だ。幼い頃から何度かお世話になっている咏夢は、前例、という言葉を聞いて、真っ先に彼女を訪ねる事を決めたのだった。
咏夢はファイルを小脇に抱えると、もう一度手を振って、詠唱院へと駆け戻っていった。
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