ていうか戦闘が無い。
GW楽しみましょ~ね~!
詠唱院に息を切らして辿り着いた、いや、帰り着いた咏夢に、紫が微笑む。
「……やっと、気づいたようね。」
「え、ええっ!しっ、知ってたんですかっ!?」
「あら。私に訊かなかっただけじゃないの。」
優雅に、子供っぽく笑う紫は、傍らの橙に声をかけると、咏夢と一緒に行くように命じた。
―――――
「うぅ……寒い……」
「って事は、こっちで合ってるんだよね?よーし!」
「あっ、ちょっと咏夢!何が居るか分かんないのに、先行かないでよねーっ!」
白い息を吐きながら、橙は慌てて咏夢を追いかける。自室の方へ駆けていく巫女服の袖を掴むと、橙は彼女の隣に並び、険しい顔で言う。
「それで?元凶が見つかったらどうするつもりなの?」
「うーん……考えてなかったなぁ。」
「はあぁ?!」
咏夢のあまりに無鉄砲な発言に、橙はキレた声で詰め寄る。咏夢は苦笑いで両手を上げると、今度はゆっくり歩き始めた。
「まぁでも、橙が居るなら大丈夫でしょ?それに、まずは説得してみるし……」
「いきなり吹雪かせるようなキチガイが、説得に応じるとは思えないけどね~?」
「何か事情があるのかもしれないじゃん!」
「例えば?」
「え、えーと……とにかく!会えば分かるよ!」
答えに詰まった咏夢は誤魔化すように、橙の手を引いて先に進む。橙も呆れつつ、それに付いていく。
数分後、彼女達は凍りついた襖の前に立っていた。橙が取っ手に手を掛けるが、びくともしない。後ろに立つ咏夢は、それを心配そうに呟きながら見ている。
「此所って、藍姉の部屋だ……藍姉、大丈夫かな……」
「藍姉、って……あぁ。あの女の子ね。」
「橙とは一回だけ会った事あるよね。」
「まぁ、話してないけど……っあーもう!煩わしい!」
橙は正規の方法で開けるのを諦めたようで、手に妖力を集めて殴るつもりのようだ。咏夢もお祓い棒に霊力を込めて、襖を貫くイメージをした。そして思いきり前に突き出すと、――軽々と跳ね返された。
「「いっ……たぁぁぁ!!?」」
二人分の悲鳴が廊下に響く。涙目になっている橙と、背中から投げ出された咏夢は顔を見合わせた。
「何これ硬い!硬すぎる!」
「ホントに氷なの~……?」
「とりあえず、開ける方法を考えないとね……」
「ドリルとか持ってくれば」
「河童の所行かなきゃじゃん。却下。」
「う、そっか……」
途方に暮れる二人、張り詰める冷気に身をすくませ、寄り添いながら案を出していく。
「スペルカードはどう?」
「詠唱院壊れちゃうよ!絶対ダメだからね!」
「えー……」
「文さん連れてきて、吹き飛ばしてもらう!」
「さっき自分で壊れるって言ったばっかりじゃん」
「あ。」
「どうしよー……橙、槍かなんか無いの?」
「あるわけないじゃん……そっちこそ、何かないの。」
「うーん……私が知る限りはないかなー……、?」
咏夢はそう呟きながら、ふと何かの気配を感じた。橙を見ると同じく辺りを見渡している。数秒して、橙は宙をじっと見つめた。
「……咏夢、下がって。」
「え?」
「いいから、来るよっ!」
木製の床が軋む音。橙と咏夢が横に素早く移動すると、橙の見つめていた空中が裂けた。ぱっくり開いた口から出てきたのは……数日前、茶を交わした少女達だった。
――――――
「それで……何でスキマからあんた達が?」
「んー……それを話すと長く……ならないか。」
橙の質問に、シュガーが答える。四人は廊下に立ったまま、今度はフランが話を続ける。
「えぇと。お姉様に、現惣村のことを聞いたんです。」
『貴女、咏夢にお礼がしたいのよね?』
『え?う、うん。そうだよ、お姉様。』
『シュガー……貴女の能力が、咏夢を助けてあげられるかもしれないの。』
『え?フランじゃなくて、私?』
その言葉に、フランも首を傾げる。妹二人にレミリアは、衝撃の事実を切り出した。
『あのね、フラン。貴女の能力は今、シュガーに移っているみたいなの。』
『シュガーに、移った……?私の能力が?』
『えぇ。パチュリーに、調べてもらったんだけどね。』
レミリアはティーカップを置くと、懐から二枚の札を取り出した。シュガーは見たことが無いらしく、さらに首を傾げたが、フランは少し瞳を曇らせた。彼女の能力が発覚したあの日は、彼女にとってもレミリアにとっても、あまり良い記憶では無いのだ。
『まず最初にシュガーの能力を調べたの。』
片方の札を差し出すレミリア。フランとシュガーは、そこに書いてある文字を読み解く。
『"ありとあらゆるものを破壊する"……』
『これは本来、フランが持っていた能力。でも私は……特に疑問には思わなかったのよ。何故だか分かる?』
『そりゃあ……私がフランから生まれた存在だから。』
『そう、そうなのよ。だから同じ能力でも、大して驚きもしなかった。でもね?パチュリーは違った。』
――同じ能力は、この世界には存在しない。
パチュリーはそう言ったという。レミリアはその概念を父から教えられていたが、特に気にすることも無く、ただの個性の象徴程度に思っていた。
しかし、それは事実なのだ。全く同じ能力というのは幻想郷には存在しない。もし存在するとしたら、それは自分自身であり、同じ世界に居ることはできないはずだと。
『それじゃあ……、え、どういうことだ?私の能力と、フランの能力が一緒だから、どっちかが消えなきゃ……ってことなのか?あ、いや……ん?でもそれだと……』
『少し落ち着きなさい、シュガー。まだ話は、終わってないわよ。』
『あー、ごめん。それで?』
レミリアはシュガーを嗜めると、もう一枚の札を机に置いた。
『何これ……えーと、"ありとあらゆるものを、』
『護る"……?護る、ってこれは……?』
『貴女の能力よ、フラン。』
『えっ!?』
『はっ!?どういうことだよ!』
「えええ!?ど、どういうこと……?」
「まぁ、そうなるよな。んで、私もレミィを問い詰めた」
戸惑う咏夢に、シュガーが頷く。フランは、橙の隣に立って、二人に言葉を選びながら説明する。
「私が幼い時に、一度能力を調べました。その時の判定は、"ありとあらゆるものを破壊する程度"だった。でもそれは、私の中に居たシュガーの能力だったんです。」
「それじゃ……今は、シュガーが外に居るから、フランの本来の能力が出てきた、ってこと?」
「本来の能力、かどうかは……分からないけどね。」
シュガーがそう締めくくると、大体の話は終わった。橙は、話を戻すためにもう一度尋ねた。
「それで?どうしてスキマから出てきたの?」
「あっ、その話な。その後レミィに、咏夢を助けるために私の能力を使ってこいって言われて……」
「でも、私達が村を通ってきたらパニックになっちゃうから……お姉様から紫さんに頼んでもらったんです。」
「なるほどね……」
ようやく前置きが終わった所で、四人は再び襖に向き直った。
「……誰か、居るな。」
「うん。相当強いのが居る……でも、自衛できる状況では無さそう……」
「それって……!」
「強ーい誰かさんが、倒れてるってこと?」
「多分……」
不安そうなフランと咏夢に対して、シュガーは初めての状況にワクワクしているようにも見える。橙は彼女に能力の制御を教えているようだが、心許ない。
「一応、周りの部屋に結界は張っておくからね!」
「あ、私も手伝う!」
「いい?シュガー、私が中の人を"護る"から、絶対に襖だけ"壊す"の。」
「大丈夫だって!これでも能力は使い慣れたし。誰かのおかげでね~」
シュガーは咏夢をちらと見ると、右の手のひらを襖に向けた。フランは、さらにその奥を見つめて、両手を襖に翳した。
「いくよっ!」
「「……っ!」」
「お前を……"壊す"!」
「貴女を……"護る"!」
次の瞬間、全てを切り裂くような冷風が、四人の前に吹き荒れた。
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