溢れ出る冷気と拮抗する、蒼い霊力の波。いつしか雪は止んで、この季節らしい青空が広がっていく。その風を浴びながら、李瓜は難しい顔をして立っていた。
(何があったかは分からない、けど……。)
少し不思議で、妹気質の、幼馴染み。ゆったりした袖をぶんぶん振って、走り去っていく笑顔を思い出す。手を組んだ李瓜は、店先でぎゅっと目を閉じた。
(どうか、咏夢が無事でいられますように……)
―――――
自分の中に渦巻いている力が、一体どういうもので、どこから湧いてくるのか、咏夢は分からなかった。でも知っている。この感覚、高め合っていくような、さらけ出していくような。
「っ、まだまだぁ!」
「……!」
炎の剣で大きく薙ぎ払う咏夢に対し、藍姉は口の端に余裕めいた笑みを浮かべていた。神力に覆われた冷気を器用に操り、何十カラットあるか分からないほど大粒の、ダイヤモンドを造り出した。
「"アイスジェムシュート"!」
「"飛翔晴明"!」
大切な人とぶつかり合う事。咏夢はこの楽しさを、昔に、遠い閉ざされた記憶の中で、知っていたような気がした。
同じく大切な人のスペルを借りて、藍姉の攻撃を砕くと、咏夢はお祓い棒を使った近接戦闘は避けて、次なる攻撃の手段を考えた。もし仮に触れあうような事があれば、瞬く間に氷漬けエンドである。
(ここはもう一度スペルカードを……)
そうは言っても、彼女の覚えている博麗の技は少なく使えるものとなると、さらに少なくなる。目の前の藍姉は、いつもとは違う雰囲気で、並大抵の攻撃は通らないようだ。咏夢は、鈍器と化した氷塊を必死に避けて、針を投擲した。
「当たらないよ、そんなのじゃあね!」
「うう……何であんなに強いの……?」
この時の咏夢は、神力というものに触れたことが無かった。そのため、藍姉の規格外の力に圧倒されていた。いつもの銀髪は水色に染まり、指先から光る冷気の尾を引いて、優雅な動きでそれを操っている。恐ろしいのはそれだけではない。
――凍っている。
彼女の能力は"ありとあらゆるものを凍らせる"。一度彼女にそれとなく訊ねたら、昔は力を上手く制御できずに、大変だったという。また、彼女がいつも身につけている、シルクのようなチョーカーは、彼女のリミッターなのだと聞いた。今、それは彼女の首もとに無い。能力は最大限に使える状態にあるということだ。
氷漬けになるぞ、というシュガーの忠告を思い出し、咏夢は気を引き締めた。これは、本気の戦いになる。勘は囁いていた、もう少し進めば"資格"が得られる。そうすれば、どうしてか分からないが、大切な人に会う事ができる。
そのためなら。何も惜しむことは無いだろう。
「絶対負けない……私は……!」
本物にならなればならない、認められなければ。そうでなければ、幻想郷へ三度足を踏み入れる資格は無い。
――彼女に会うために、その手を掴むために。
「強く、なるんだぁぁぁ!!!」
この世のどんな空より蒼く、澄み渡った光。藍姉の目が見開かれる。絶叫の先にあったのは、果ての無い力の片鱗だった。
「"夢想封印"――!」
この日、博麗咏夢は能力を完全に開化させた。
"ありとあらゆるものを「写す」"こと。
"世界を変える陰陽師の資格"の欠片が、初めて現世に姿を見せた、その少女は真に"博麗"の片割れだった。
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